ショーキドに言われてレッドは鎮守府にやってきた。しばらく大本営でショーキドの艦娘に世話になりながら数日過ごしてこの世界に慣れていった。レッドが鎮守府に着任するにあたり、ショーキドの艦娘を預かることになった。
駆逐艦の吹雪、睦月、夕立。軽巡の川内、那珂、神通。 空母の翔鶴、瑞鶴。あとは大淀と明石がレッドの慣れない提督業のサポートを手伝ってくれて間宮さんが彼女たちのご飯を作ってくれている。
レッドが一番心配したのがポケモンを受け入れてくれるかどうか。最初は戸惑っていた彼女たちだが、今では一緒に遊んだりする仲になっていた。
『レッド、瑞鶴がお願いがあるそうよ』
ミュウがテレパシーで言ってきた。今ではミュウも彼女たちと仲良くやっている。テレパシーが使えるため、他のポケモンたちと艦娘の通訳をやってたりしている。また、明石と妖精さんがレッドのパソコンを改造してポケモン管理システムを改造。マサキのポケモン預かりシステムを通信できるようにしたため、手持ちのポケモンを入れ替えるようになっていた。明石曰く「レッドさんの道具は面白いものばかりで勉強になります」とのこと。いつの間にか自転車が電動アシスト付になったりと変化していっている。マサキにはメールで状況を報告した。とりあえず、シロナさんとグリーンに現状を報告してもらい、オーキド博士とフジろうじんにショーキドさんが生きていたことを報告した。マサキからの返信にはオーキド博士はただ泣いて喜んでいたとのこと、いつかフジろうじんと3人で会おうと言ってた事を書いてあった。
また、ミュウと一緒にやぶれたせかいに飛んでギラティナに安全を報告した。ギラティナは「お二人がご無事で何よりです」と泣いて喜んでいた。また、他の伝説ポケモンたちにも協力を仰いでもしものときは力を貸してほしいことを頼んだ。ディアルガ、パルキア、グラードン、カイオーガ、レックウザ。ルギア、ホウオウ。他にもサンダーフリーザーファイヤーなどなど、快く引き受けてくれた。「レッドとミュウの姉御の頼みならばいつでも駆けつけよう」とのこと、本当にありがたい。
「トレーナーさん、私空を飛びたい!!」
「瑞鶴、レッドさんが困るでしょ。レッドさん、すみませんうちの瑞鶴がわがままを言って」
レッドはチャンピオンになって、デスクワークをやったことがあるので、ほとんどの書類整理は午前中に終わらせることができた。大淀はピカチュウをひざに乗せていろいろと話をしている。妖精さんが通訳できるのでなんら支障は無い。レッドはポケモンたちのご飯を作ろうかと思っていたときにミュウと翔鶴と瑞鶴がやってきていった。
「空を飛びたい?ヘリコプターでも手配しろってか?」
レッドはあえてボケてみせた。
「ちーがーうーよー、トレーナーさんはリザードンの背中に乗って移動したりしてたんでしょ、私も飛んでみたいなぁ~って」
この鎮守府ではレッドを提督と呼ぶ艦娘は少ない。提督と呼ばれるのをレッドが嫌ったため名前で呼ぶか、トレーナーと呼ばれていた。ちなみに制服は着ていない。理由はミュウに似合っていないと笑われたから。ただし、ここではリーグチャンピオンのバッチは価値が無いので代わりに海軍大佐のバッチを着けている。
「もうっ、瑞鶴!だめでしょわがまま言っちゃ」
「でも、艦載機と一緒に空飛んでみたいじゃない。翔鶴ねぇだって思うでしょ」
つまり瑞鶴は『そらをとぶ』で移動してみたいということだろう。べつにレッドは構わないが、ポケモンがなんと言うか分からないので聞いてみることにした。別に断るやつなんていないが、ポケモンはレッドの奴隷ではないので、対等に話し合って相談する。
「別に俺はいいけどさ、リザードンがなんと言うかねぇ。あいつらだって自分の意思を持っているから、断られるかも知れないよ?」
「うん、それならいいよ。あきらめるから」
瑞鶴はまっすぐ正直に答えた。その答えに満足したレッドはモンスターボールを取り出して窓の外に投げた。リザードンが出てきて空中に滞空する。
「なぁリザードン、瑞鶴がお前にお願いがあるってよ。……ほら、瑞鶴」
「ねぇリザードン、私を乗せて空を飛んで欲しいのだけど、いいかな?」
「ごあう」
「お安い御用だってよ」
レッドが通訳した。瑞鶴がキラキラした顔で「ありがとっ!」と言った。
「よしっ表に行こうか」
鎮守府前にはリザードンが待っていた。よくよく考えればリザードンと空を飛ぶのは久方ぶりである。リザードンは喜んでいるようだ。
「よし、瑞鶴おいで」
レッドがリザードンにまたがり目の前に瑞鶴を乗せる。
「リザードン、GO!」
「ガアア!」
リザードンはレッドの指示に答えると翼を羽ばたかせどんどん空高く飛んでいく。
「わっ、わわっ、ふわぁ~~!!」
瑞鶴の上半身が揺れるので、レッドは瑞鶴の腰を両手で支えてあげる。
「と、トレーナーさん、こ、怖くないの?」
「ん、全然?何だ怖いのか?」
「だって、支えが無いもん!!」
「いいか、瑞鶴。バイクと同じで太ももでリザードンを挟めばどんなに揺れても落ちやしないよ」
「私バイク乗ったこと無いもん!!」
「ほぉら、鎮守府あんなに小さいよ。翔鶴とかありんこみたいだな」
「下とか怖くて見れない!!」
瑞鶴はもはや半泣き状態である。
「トレーナーさんの背中にいたほうがいい!」
「分かった、んじゃポジションチェンジ」
そういうとレッドは後ろから瑞鶴を抱きかかえリザードンから飛び降りた。
「いやぁああああ!!トレーナーさんなにするのぉ!!」
レッドは空中で瑞鶴を背負う間、リザードンは旋回して二人を背中に乗せる。
「はいポジション交換完了」
「ふぇぇ~……」
「まぁ、しばらく俺の背中につかまってな」
「トレーナーさんのいじわるぅ」
しばらく瑞鶴はレッドの背中にぎゅっと密着していたが、しばらくすると恐怖心が無くなったのか、はしゃぎ始めた。
「ねぇトレーナーさん、水面ぎりぎり飛べたりできるかな」
「そのくらい簡単だよな。なぁリザードン?」
「グァウ」
リザードンは急降下すると水面から2センチほどまで急降下、そして急上昇。ありとあらゆる挙動を披露した。
「ねぇ、トレーナーさん、ひとつ聞いていい?」
「ん、どうした?」
「どうやったらここまでポケモンと意思疎通できるようになるの?」
「なんだ、急に?」
「私と翔鶴ねぇは妖精さんに艦載機に乗ってもらって戦ってもらうけど、トレーナーさんみたいにこう思い道理に指示して動かすことができていないなぁと思ってね」
「ふうん、なるほどねぇ」
「ね、教えて」
「ひとつ勘違いしているけど、俺はリザードンを思い道理に動かしてはいないよ?一度もそんな風に操ったことは無いよ?」
「えっ、だって何も言わないで自由に右に旋回したり左に旋回したりしたじゃん」
「いいか、覚えておけよ。『ポケモンの心を知り、ポケモンを慈しみ、己に威厳なければポケモンは従わず!』ってね」
「『ポケモンの心を知り、ポケモンを慈しみ、己に威厳なければポケモンは従わず!』?」
「そう。今のせりふのポケモンを人に変えていってごらん?」
「人の心を知り、人を慈しみ、己に威厳無ければ人は従わず」
「つまり、そういうことだ。常日頃から周りを気遣い、慈しみ、しっかりとした姿勢や意気込みが無ければどんなに優秀で恵まれていてもダメなリーダーや、指揮官になってしまうんだよ。俺はいつもポケモンを見ているから、リザードンが羽ばたいたときの様子で『今日の調子や体調』が分かるんだ。だから瑞鶴も艦載機を飛ばす際に妖精さんたちのことを気にかけたりできるようになれば自然と妖精さんたちも瑞鶴の思うように動いてくれると思うよ」
「……すごいね、トレーナーさんは。そこまで考えられるなんて」
「まぁポケモンリーグチャンピオンだからな」
そのくらいはできないとな、ミュウの相棒なんてやってられんのよ。と笑うレッドの背中がとても広くて大きいものに瑞鶴は感じた。
「トレーナーさん、これからもいろいろ教えてね」
「ん?ああ、いいよ」
『なに私のレッドに色目使ってんのよ』
「瑞鶴ったらレッドさんにくっつきすぎじゃないかしら、あとでO☆HA☆NA☆SHIしないといけないわね」
リザードンは背中の二人がいい感じになっているのにホッコリしながら地上から向けられる殺気におびえてなかなか地上に戻れなかったとか。