あれから私は拠点に帰り、その後リュートに詫び(途中の店で買ったケーキ等)を持って会いに行った。
その時あの殺鬼について質問され改めて私と殺鬼、そして闇の怪物について説明した。
その説明を受け、リュートの奴は少し引いていたな。まぁあんな怪物を造った張本人である私を警戒、または恐れるのは当然だろう。(しかし間もなくいつも通りの表情になった。アイツ本当に正義の味方か?)
闇の怪物についてリュートの奴が弱点はないのか?と聞いてきた。
殺鬼の創造者である私なら奴の弱点、良くて対策を知っていると踏んだのだろう。
それに対して私はストレートに答えた。
「弱点はない」と。
そもそも闇の怪物は神の力を授かった強力な種族 神族と戦うために造られた生物兵器。弱点などあるものならすぐ対策されてしまう。そうさせないために何度も作り直し完璧な兵器へと造り上げた。
だから闇の怪物を止めるためには単純にソレよりも強くなり倒すしかない。しかしいくら雑兵レベルの殺鬼とはいえただの人間が適う相手ではない。
まぁ殺鬼については何処へ行ったか知らんがそれなりのダメージを負い当分は動けんだろう。
それにこの間の戦いで警備隊、更に軍も警戒するようになったため私が居なくとも問題なかろう。
アル「私が居なくとも...?主、それはどういうことですか?」
詫びの土産を持ってリュートの家に来て、闇の怪物について説明している中、ネメシスがふと発したこの発言にアルとリュートが反応しアルが先に口を開く。
続いてリュートもネメシスに質問する。
(ちなみにこの時セリューは近所の老人達と共にボランティア活動に参加して不在)
リュート「どういうことだネメシス。まさか帝都から出ていくということか?」
ネメシス「そういうことになるな。実は近いうちにこの帝都の外に出て数年程旅して過ごしてみようと思っている。リュートには悪いがその間アルを見ていてもらおうと....」
アル「嫌だ!主と離れたくない!私も付いていきます!」
アルがそれを拒むようなガラにもなく駄々こねる。
リュート「ネメシス、さすがのおれも理由もなくいきなり預けられても困る。急にどうしたんだ。」
リュートの言うことはご最もである。誰だっていきなり「ちょっと世界旅して来るわ。数年帰ってこないから娘預かってくれ。」と言われたら困る。
何故旅するのか、詳しく聞こうと問う。
ネメシス「...私は殺鬼と相打ち気を失った。それが悔しくてたまらなかった。だから旅をして、身体能力を上げてこようと思っている。」
リュート「でも、あの怪物はとんでもない強さだったじゃないか。相打ちになっただけでも充分じゃないか?」
並の人間の身体能力を超えていて、格闘術にも磨きをかけている警備隊のリュートとオーガを簡単に倒しリュートの後輩を一瞬で両断した殺鬼は長らく警備隊に勤めているリュートにとっても恐ろしい存在だった。
いくら殺鬼の創造者とはいえそんな殺鬼と相打ちになったネメシスは充分な強さを持っている。
兵や警備隊になる訳でもないのにそれ以上強くなってどうするのだろう。
だがリュートのその発言はネメシスの逆鱗に触れた。
リュート「!!!」ゾワッ
アル「ひっ...」
突如部屋の空気が重くなりネメシスの輪郭が歪むように揺れる。
ネメシス「相打ちだからだよ....この私が!殺鬼ごときに!!」
闇の怪物には十数種類ものタイプが存在し殺鬼はその最弱に位置する。上位クラスなら星を壊すこともでしるし最も強いタイプ...闇の怪物の王となれば宇宙一つ消し飛ばす事も容易い。
そんな強力で弱点のない意思ある兵器を何故ネメシスがコントロールできたのか。答えは単純。
前世のネメシスはそれらより強かった。ただそれだけだ。
全ての闇の怪物を超えた力を持っていたネメシスが弱体化&人間化しているとはいえ最弱の殺鬼に負けた。
これらネメシスのプライドを酷く傷つけた。
ネメシス「私として...『ネメシス』として!殺鬼などに負けたことは屈辱でしかない。その屈辱を取り消したいがための旅だ。勝手だというのは承知している。だが頼む。」
周りの空間が元の状態に戻り、ネメシスがリュートに頭を下げる。
彼の宿敵『次元戦士』が見れば夢だと思う行為だ。残虐非道にして巨悪のネメシスが人間に頭を下げている。
リュート「.....どうせおれの言うことに耳は貸さないだろうな。この借りは大きいぞ?」
ネメシス「すまないな、リュート。」
リュート「だがおれが許可しても意味無いだろ?アルちゃんが納得しないと。」
アル「.....。」
アルがさっきから恨めしそうにネメシスを睨んでいる。
ネメシス「アル....私のわがままで済まないがどうか許してはくれないか?」
アル「なら私も連れていけばいいではないですか。私はあなたの従者ですよ!?」
ネメシス「ただ旅するだけなら問題はない。だが私はその最中で超級危険種ともやり合うつもりだ。そうなれば流石にお荷物にしかならん。」
アル「そんな!私だって主に鍛えられて....」
ネメシス「一級危険種も倒せんのにどうやって超級に挑む?聞けば超級は自然災害にも匹敵しうる生物らしい。そんな奴にお前を巻き込みたくはない。」
アル「.....。わかりました。リュートさんが言うように、誰の言葉も耳を貸さないようですね。なら従者に過ぎない私は大人しく待っています。」
諦め、不貞腐れるようにそう言い残しアルは部屋から出ていく。
ネメシス「....悪いことをしてしまった....かな?」
リュート「当然だ。あの娘もう両親はいないんだろう?従者なんて言ってるがあの娘にとってネメシスは親だ。その親から数年間帰れないと言われたらショックだろう。」
ネメシス「そうだな....。さて、と。」
椅子に座っていたがゆっくりと立ち上がる。
リュート「....行くのか?」
ネメシス「まだ行かん。だが準備をしなきゃいかんし、Drにも別れを言わねばならん。」
治療してもらい、それ以降ネメシスは何度もスタイリッシュの研究所にお邪魔し、両者とも研究の一部を分け与えている。
ネメシスが言うにスタイリッシュの研究はこの世界の時代より何世紀も先に行っているらしくとても興味を持っていた。もちろんスタイリッシュもまた同じである。
スタイリッシュの性格は慣れないがそれなりに友好関係であるので最後に挨拶ぐらいはしていこうと思ったのだ。
リュート「同じような人種とはいえよくあの人と仲良くなれるよな....。」
ネメシス「同じような人種だからこそ仲良くなれるのだよ。彼は面白い考えを持った人間だ。前世で知り合っていれば是非部下にしたかった。」
リュート(どちらにせよ部下かよ。)
ネメシス「では行ってくる。達者でなリュート」
リュート「ああ。この貸し、忘れるなよ?忘れたら毎日善行作業に参加してもらう。」
ネメシス「そ、それは嫌だな...。肝に銘じておこう。アルを頼んだぞ。またいずれ会おう。」
最後リュートに言われたことにネメシスが本気で堪えたかのように苦笑いしながらリュートの家から去るネメシス。
この2日後、ネメシスは帝都から去った。
「またいずれ会おう。」
ネメシスが最後に残した言葉。いつになるかわからないがリュートはまた再会できることを信じた。
しかしリュートも、ネメシスも予想出来なかっただろう。これが生涯の別れだという事に。
ネメシスが去り一年程経った時、リュートはある悪徳貴族の裏を取ろうとした。
しかしその貴族はある人物と繋がった者だった。
「んん~。このリュートという警備隊員、邪魔ですねぇ。彼が逮捕されるのは構いませんが実に鬱陶しい。暗殺しておきましょうか....」
それまで大臣だったチョウリを政治から追い出し新たな大臣となった男 オネスト。彼は自分と関わりのある貴族の周りでチョロチョロしているネズミ....リュートを暗殺する計画を進めていた。
そしてその日は来る。
セリュー「パパぁーーー!!!」
アル「リュート...さん?」
リュート「セ..リュー....。アル.....。」
セリュー「パパ!パパぁ!!嫌だぁぁぁ!!!」
リュート「セリュー....。正義の味方に、警備隊になるんだろ....。なら悪にも屈しない、正義の味方になるんだ....。いいな....?」
セリュー「うん...わかった..!!」
アル「リュートさん....。」
リュート「ごめんなぁ...アルちゃん。ネメシスに任されたのに......。一人にしてごめんなぁ....。」
リュート(ネメシス.....悪い。もう会えそうにないや....。)
ネメシス「...!!」バッ
「旅人の兄さん、どうかしたかい?」
帝都から遠く離れた地。別の地にいく道中乗せてもらった馬車で寝ていた頃、ネメシスは急に起き上がる。
ネメシス「....いや何でもない。悪かった。(嫌な予感がしたが.....まさかな。)」
そして10年後。
帝都で激動の物語が始まるその時代。
暗黒は帝都へ帰ってくる。
続く
次回、やっと原作開始。長かった。