私の名はネメシス。10年程の時を経てこの帝都に帰ってきた。...が、帰ってきてみると何故かリュートやアルの行方はおろかリュートの家が無くなっていた。
そして帝都中探し回るも運悪く警備隊とも遭遇出来ず終い。一度拠点....帝都から離れた所に建てた館に帰ろうとした時、帝都に着き別れたばかりのタツミと早めの再会を果たしてしまった。
だがタツミがどうなろうが私の知った事ではない。適当に話を済ませさっさと立ち去ろうとした。
「おお、アリアがまた誰か連れてきたぞ?」
「クセよねぇ。これで何人目かしら?」
アリアという娘の父親と母親らしき者が優しい表情で私とタツミを迎えてくれた。
ネメシス(うん、何故こうなった。)
私は地方から来たタツミとは違い家があると言うのに...。
対してタツミはというとアリアの屋敷に入った瞬間から周りをキョロキョロと見渡し続けたと思ったら拳を握り喜びの表情を上げていた。
タツミ「ひろって頂き、ありがとうございます!」
直後タツミはアリアに向けて深々と礼儀正しいお辞儀をする。純粋な子供だな。
そのタツミのお辞儀に対しアリアは「当然の事をしたまで」というような姿勢で対応する。
一見するとこの家族、親切な金持ちのようにも思えるが....。
ネメシス「.....。」
「えーと、そこの貴方?さっきからそこに立っているかど、遠慮しなくてもいいんですよ?」
気にかけてくれたのかアリアの母がネメシスに語りかける。
ネメシス「いや...すまない。ついクセで用心してしまった。申しわけない。」
「ハハハ、そう固くならないでもいいんですよ。ささ、2人とも長旅で疲れているだろう。どうぞ座って。」
続きアリアの父がネメシスとタツミに腰をかけるよう先導してきてくれた。ネメシスは「失礼」と言い椅子に腰を掛ける。
が、タツミは何か考えているような顔つきのまま立ち続けていた。
アリア「どうかしたの?」
タツミ「あの...実は1つお願いしたいことがあるんですが...。」
アリアとその家族を信用したタツミは故郷の村を救うために軍で出世して村を救うために帝都にやってきたことを話す。
そしてタツミは離れ離れになって2人の仲間、サヨとイエヤスの事も話す。
その話を私、ネメシスも隅で聞く。と言ってもこの話は既に帝都に来る道中で聞いていたが。
親切なアリアの父は軍の知り合いにタツミをプロデュースさせてくれ、更に2人の捜索もさせてくれるといった。
.....親切すぎて怪しいな。
タツミ「あの、ここにいる間おれに手伝えることって何かないですか?いつまでも世話になってるままなのも失礼だから....。」
アリア「あ、じゃあアリアの護衛をしてよ!他の人達と一緒に!」
「それはいい!それじゃあガウリ君、頼んだよ!」
ガウリ「....わかりました。」
かくしてタツミは居候している間、ガウリという男の下でアリアの護衛をすることとなった。
「それで....君はどうする?」
ネメシス「ん?私か?」
アリア「貴方も私の護衛をしてくれる?タツミより強そうだし頼りになりそう!」
タツミ「あ、アリアさん?何気に俺のこと蹴落としてるような....。(汗)」
アリア「冗談よ冗談♡」
どうやら私も誘っているらしい。だが残念ながら私はこれを拒否する。
ネメシス「生憎だが私はタツミと違い元々この帝都の近くで住んでいた。そのため帰る場所がある。親切心を踏みにじるようで悪いが私は帰らせてもらう。」
「あらそうなの?でももうこんな時間だから今夜は泊まっていったらどうかしら?」
「うむそれがいいだろう。今夜はとまっていくといい。」
タツミ「できればおれもネメシスに泊まっていって欲しいな。短い付き合いだけど知ってる人がいたら安心できるしさ!」
ネメシス「....。まぁ今すぐ帰らなければならないという訳でもないし....。一泊させてもらおう。」
結局泊まることになりました。
翌朝.....もとい翌昼。
ネメシス「寝過ぎた。」
これも人間になった影響か?少し歩き続けただけでそこまで疲労が溜まるとは....。やはり不便な体だな。
「おやネメシス君。今起きたのかい?」
「相当疲れていたのね?フフ...。今紅茶入れた所だけどどうかしら?」
ネメシス「むぅ...。頂こう....。」
もう昼だが寝起きの紅茶を一服するネメシス。実はネメシス、紅茶は好物で前世の時から忙しくても1日1回は飲む程だ。
アリアの両親と共に味わうティータイム。その最中ネメシスはタツミとアリアが居ないことに気づく。
ネメシス「そういえばタツミとアリアが居ないが...どこかに出かけたのか? 」
「アリアの買い物に付き合っていったのよ。」
「アリアは買い物の度に沢山買うからなぁ。誰の影響かだろうな。」
「フフ♪さぁ誰でしょうねぇ。」
仲の良い事で....。
ネメシス「....そうか。ところで聞きたいことがあるのだが。」
「何かね?」
ネメシス「アリアは何度もタツミのような境遇の者をこの家に招き入れてきたと言っていたな。」
「それがどうかしたかしら?」
ネメシス「いや、もうその者達はここを出ていったのかもしれんが....それにしても誰一人いないというのはおかしくないか?」
「「.....」」
ネメシス「今のこの時期、タツミのような地方から軍に志願してくる若者はたくさんいる。あのお嬢様がそんな地方民を何人も連れてくるなら私達が来た時に1人か2人居てもおかしくない気がするのだが....。」
「...少し考えすぎではないか?」
ネメシス「おっと失礼。確かに考えすぎたかもしれないな。
では私はここらで失礼する。紅茶、ごちそうさま。」
ネメシスは長剣を手に持ち屋敷を後にする。
(あの男...何か気づいていたのか?...まさかな。)
(そういえばあの紅茶に睡眠薬いれていたのに...分量間違えたのかしら....?)
善人の皮を被った外道の顔に気付かず.....
ネメシス「....なんて思ったか?」
残念、奴らの本性は最初から気づいていたよ。アリアと会った瞬間から既にね。
私は人間のマイナスエネルギー....つまり負の感情を視覚化できる。アリアやその家族からは外道特有のドス黒いオーラが濃く漂っていたさ。
あの紅茶にも睡眠薬か何か盛られていたが残念ながら通用しない。何故なら私の脳だけは前世のもののまま。つまり人外のもの。人間相手に想定された量では効果はない。
さて私は今屋敷を去った振りをして敷地内に潜んでいる。この家に来た時からずっと気になっていた、この大きな倉庫。もはや蔵だな。ここから今にも消えそうな気が大量に感じ取れる。
私の予想が正しければこの中にいるのは....。
ネメシス「とにかく中に入るか。」
鞘から『暗黒の腕』を取り出し、倉庫の壁に丸い穴を開け中に入る。
ネメシス「....これは...。」
目の前に広がっていた景色。例えるなら地獄。まるで地獄の鬼に痛めつけられ拷問されているかのようや景色。手足がちぎられ縄で吊るされている者。拷問道具で全身痛めつけられ血だらけアザだらけの者。何か盛られたのか体中に斑点が付いているもの。
その他様々だがほとんどの者が息絶えており息があるのはほとんどいなかった。
ネメシス「これ程とはな。私の知っているどの人間もここまでやった者はそうそういない....。」
これが、帝都の闇。
普通の人間なら一目見ただけで吐き気を催すであろう異様の景色を平然と眺めるネメシス。
「誰...だ?」
ふと、声が聞こえた。声が聞こえた方に振り向くとオリの中に息もたえだえとした少年がこちらを見ていた。
「アンタ...誰だ...?どうやって、ここ...に。」
ネメシス「私はネメシス。壁に穴を開け中に入ってきた。お前は?」
イエヤス「おれの名は...イエヤス....。そこでぶら下がって死んでるサヨって奴と一緒に...ここへ連れてこられて...きた。」
ネメシス「イエヤス?サヨ....だと?」
偶然か必然か....。ネメシスは離れ離れになったきりだというタツミの仲間、イエヤスとサヨと出会った。
だが非常にも既にサヨという少女は死に、目の前のイエヤスも今すぐにも息絶えそうな状態だった...。
続く