ハイスクールD³   作:K/K

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返礼、高慢

 その日の夜の兵藤家は騒がしいものであった。

 飲みに行った筈のオーディン、アザゼル、ロスヴァイセが予想外に早く戻って来た。何故か野暮用で出掛けていたシンと、血に染まったバラキエルを連れて。

 地下の大広間で談笑していたリアスたちも、負傷しているバラキエルを見て言葉を失う。特に朱乃など顔面蒼白となっていた。

 すぐにアーシアの神器によってバラキエルに治療が施される。腕や肩に斬傷を負っていたが、出血の割に傷は深く無くすぐに塞がった。

 その間にアザゼルは、バラキエルから直接聞いたことをリアスたちに説明する。

 

「……どうやら駒王町にマタドールが潜伏しているらしい」

『なっ!』

 

 アザゼルから知らされた凶報に誰もが驚き、二の句が継げなくなってしまう。

 魔人、それも好戦的で悪名高いマタドールが駒王町の何処かに潜んでいる。通り魔などの比では無い惨劇を予感させ、縄張りの主であるリアスの顔色が変わった。

 

「ソーナに連絡してすぐにでも警戒態勢を──」

「ちょっと待て」

「何故止めるの!」

「下手な真似をすれば奴を刺激するだけだ。最低でも俺かオーディンの爺さんぐらいが当たらないと余計な犠牲が出る」

 

 リアスはアザゼルの言葉に反論出来ず、悔しそうに唇を噛む。彼女の兄であるサーゼクスもマタドールと戦った過去があるが、その際に重傷を負っている。魔王クラスでも命の危険がある相手。そこに至っていない自分たちでは、アザゼルの言う通りマタドールの贄になるだけである。

 

「別に何もするなとはまで言わない。だが、事が事だ。慎重に進めないとな。バラキエルにもう少し詳しい事情を聞く。お前らはそれまで待機していろ」

「……分かったわ」

 

 本当ならば駒王町という縄張りの主として、方針を決めるべきはリアスである。しかし、今回ばかりはプライド云々は置いて、アザゼルの言う通り慎重に考えるべき事案であった。

 犠牲になるのは駒王町の人々だけではない。彼女の大切な眷属や友人たちもマタドールの毒牙に掛かるかもしれないのだ。

 リアスは、他のメンバーに詳細を知るまで待機する様に指示を出す。念の為に木場、ギャスパー、シンに外出を控えさせ、兵藤家に泊まる様に指示を出す。そして、ソーナに今回のことを連絡し、互いの今後の動き方について相談をすることとなった。

 リアスが冷静な判断が出来ていると分かると、アザゼルは治療を終えたバラキエルの下へ向かう。

 アザゼルはバラキエルと二言三言喋ると、別の部屋に移動することを皆に告げ、上の階へ上がっていった。バラキエルがアザゼルと一対一で話したいことがあるらしい。

 話が終わるまで待機という形になったが、全員が非常事態に備えているせいで張り詰めた空気となる。

 ピクシーたちもその空気に中てられていつもの明るさと騒がしさは鳴りを潜め、リアスたちの動向を眺めていた。

 待っている間、ただ時間が過ぎていくのを黙っている訳も無く、リアスは今後の方針について大まかに決め、眷属たちと話し、検討して内容を詰めていく。

 オーディンたちはリアスたちの会話に口を挟まず、成り行きを黙って見ている。余所者である自分たちは下手に参加するべきではないという意思表示であった。

 リアスにとっては頭の痛い話である。ただでさえ『禍の団』の英雄派が時折襲撃を仕掛けてきているのに、追い打ちの如くもっと質の悪いマタドールまでもが来襲してきたのだから。

 一瞬、英雄派とマタドールを衝突させるという策も考えた。両方とも同盟関係では無いので、出会えば何かしらの諍いが起こるだろう、がすぐに却下した。

 争うことはほぼ間違いないが、そうなると周りの被害など関係無く暴れる可能性が高い。リアスたちは駒王町に被害が出ないよう細心の注意を払っているが、英雄派やマタドールにそんな気遣いなど期待出来ない。

 また、『禍の団』に属している魔人、マザーハーロットとだいそうじょうが出てくる危険性もある。駒王町を魔人たちの戦場にさせる訳にはいかない。

 悔しいことに、考えれば考える程自分たちが大したことが出来ないことに気付かされる。グレモリーの名と駒王町を治める者としていることに誇りを持つリアスにすれば屈辱であった。

 理不尽に屈しない力が欲しいと切に思う。ただ、願い念じれば向こうの方から勝手に転がり込んでくるものだとは思っていない。せめて今起こっている理不尽を自らの糧に出来る程の成長はしたい。

 眷属たちと話し合いながら、リアスは頭の隅でそんなことを考えていた。

 

「──という具合にしたいのだけど、朱乃、貴女はどう思う?」

 

 右腕である朱乃に意見を求める。しかし、返事は無い。朱乃の方を見ると、眉間に皺を寄せ何かを真剣に考えている様子であった。

 

「朱乃?」

「──は、はい! 何でしょうか?」

 

 もう一度リアスに名前を呼ばれてようやく気付く。その様子からマタドールのことでは無く、別のことを考えていたらしい。

 

(父親のことでしょうね……)

 

 ギクシャクとした親子関係であったも、血を流す父親を見て平静を保てない様子。リアスはそれを咎めるよりも、そのことに今になって気付いた自分の視界の狭さを自責する。

 

(私も朱乃と変わらないわね)

 

 気負い過ぎていることを自覚すると、リアスは徐に立ち上がった。

 

「少し行き詰ってきたわね。気分転換にお茶でもしましょう」

「それなら私が──」

「朱乃はそこに居て。偶には私が淹れるわ」

「なら私が手伝います」

「……私もお手伝いします」

 

 アーシアと小猫が手伝いを買って出る。

 

「ワシも飲みたいのぉー」

 

 そう言って横目でチラチラとロスヴァイセを見る。

 

「分かりましたよ、もう。私も手伝います」

「ありがとう。なら行きましょう」

 

 リアスは三人を連れて上の階へ行く。

 残された者たちは、各々がそれぞれのやり方で時間を潰す。

 ゼノヴィア、イリナ、木場は魔人と遭遇した際にどの様にして戦うのか。魔剣、聖剣などは魔人に対して有効なのかを話し合う。

 ギャスパーは震えながらも、自分の魔眼でどれだけ戦えるのかジャックランタンたちに相談していた。以前の三勢力会議でマタドールと会った際に、魔眼の力とシンとの連携で彼に手痛い一撃を入れている──その結果、マタドールに顔と名前を覚えられたが──同じ手は二度とは通じないが、皆の助力にはなるかもしれないと彼らなりの作戦を出していく。

 オーディンは置物の様にその光景を目を細めて眺めていた。

 皆がそれぞれするべきことをする中で、シンはひっそりと立ち上がってこの場を離れる。

 

「どうした?」

 

 途中で一誠が気付く。シンは彼に携帯電話を見せる。

 

「家に連絡だけでも入れておく。もしかしたら親が帰っているかもしれないからな。あとはケルベロスもこっちに喚ぶ必要もあるしな」

 

 自宅で留守番しているケルベロスをいつまでも放っておけないので、こちらに召喚するつもりであった。

 

「そっか」

 

 それで一誠は納得し、シンは今度は引き留められることなく部屋の外に出る。

 部屋から出たシンは迅速な行動で、家の電話にメッセージだけ吹き込み、ケルベロスを兵藤家に喚び出す。

 

「グルルル。何カアッタノカ?」

 

 急に喚ばれたケルベロスは特に動じる様子は無く、そんなケルベロスにシンは今まであったことを軽く説明する。デートのくだりやオーディンたちが現れたことについては興味が無さそうに聞き流していたが、魔人が現れたと聞いた途端、ケルベロスの銀色の体毛が逆立つ。

 

「ホウ……?」

 

 ディオドラとのレーティングゲームの際にケルベロスは魔人の一人であるマザーハーロットと接触し、戦っている。傷を負うことは無かったが、ケルベロスもマザーハーロットにかすり傷一つも与えることが出来ず、更には手を抜かれて戦われていることにも気付いており、それがケルベロスのプライドを甚く傷付け、魔人相手に密かにリベンジすることを狙っていた。

 魔人と遭遇してこう考える方が稀であるらしい。会った大抵の者は死に、残りは殆ど怯えるか二度と会いたくないと思うか。魔人相手に心を折らないのは、アザゼル、サーゼクスなどの上位者ぐらいであった。

 下手をすればこのまま単独で魔人を探しに行きそうな程であったが、シンはしゃがんでケルベロスと目を合わせる。

 

「言っておくが、まだ待機だ」

 

 圧を込めて言うのは好ましいことでは無いが、釘を刺すことでケルベロスが暴走するのを止められるなら、憎まれ役ぐらいは簡単に出来る。

 

「──ワカッタ」

 

 ケルベロスは目線を逸らすとシンに素直に応じる。若干の不満を感じさせる態度であったが、逆らう程では無いらしい。

 シンに言われて一誠たちが居る地下へと向かっていった。

 やることは全て終え、そのままケルベロスの後を追って地下に戻る──のではなく、足が自然とアザゼルたちが居る方に向かう。

 表面上は冷静であっても、シンもまたマタドールの存在に落ち着くことは出来ず気になっていたのだ。同じ魔人として、力或いは本能が刺激されるのか、心がざわつくのが収まらない。

 アザゼル、バラキエルが何処で話し合っているのか分からない筈だが、見えない力の残滓の様なものを直感で感じ取り、特に立ち止まることなく移動する。

 そして、その足はとある一室の前で止まった。

 内容までは聞き取ることは出来ないが、二人の会話する声が聞こえてくる。

 

「アザゼル先生たちはここに居るのかー」

 

 背後から声が聞こえ、後ろを見ると何故か一誠が居る。

 

「ちょっとトイレに行ってて、その途中で気になって」

 

 一誠もまたシンと同じく落ち着かない気分の様子。正直、ここで待っていて一体何になるという不合理を自覚する。落ち着かない心境が彼らに無駄な行動力を与えていた。

 するとドアが開き、中からアザゼルが顔を出す。

 

「何だお前ら。こんな所に居て」

 

 ドアの側で並んで立っている二人にアザゼルは目を丸くする。

 

「──まあいいや。丁度良かったしな。おい、シン。ちょいと付き合え」

「何かするんですか?」

「ん? 釣り」

「は?」

 

 非常事態な筈なのに、アザゼルの釣り宣言を聞いて一誠は呆けた声を出してしまう。

 

「バラキエルはそこまで重傷じゃないがここで休ませておく──気になるんだったら中を覗いてもいいぜぇー」

 

 アザゼルが誰かに呼び掛けると、階段を勢い良く降りて行く音が聞こえてきた。

 

「朱乃さん……?」

「だろうな」

 

 朱乃が複雑な心中を抱えていることが分かる。

 

「朱乃さんとバラキエルさんの間に何があったんですか?」

 

 詳細を知っているだろうアザゼルに聞く。すると、アザゼルは少しだけ顔を顰める。

 

「知っているけどなぁ、俺も所詮は堕天使だ。どうしても身内に肩入れした様な説明になっちまう。とは言え朱乃から聞けば恨み言を含んだ様な話になるだろうしなぁ……。悪いが詳しい事情はサーゼクスかグレイフィアに訊いてくれ。この二人なら中立の立場で説明出来るからな」

「そうですか……。うーん、二人に直接連絡する方法ってあるのか……?」

 

 魔王とその右腕であり伴侶である女王である。いくら身内の眷属だと言っても、こちらから連絡を取ることは難しい様に思えた。

 

「今はこっちも色々と騒がしくなってきているしな。その内、向こうから来るさ。──それよりも、朱乃のことはよく見ておけよ、イッセー。前に気にしてやってくれと言ったが、あいつは今は色んなことが一気に起きて精神的に不安定だ。下手な真似しない様にお前が支えてやれ」

「──はい! 分かりました!」

 

 事情は知らないが、それでも精一杯の支えになろうと意気込んで返事をする一誠。それを聞いて満足そうに頷くとシンを見る。

 

「という訳で出るぞ。ああ、あと爺さんも連れて行くからな」

「オーディンの爺さんも? 釣りに行くんですよね?」

「ああ。だから餌も豪勢にしないとな」

 

 アザゼルの言っていることが理解出来ず一誠は首を傾げるが、シンの方は釣りが何を意味するのかを察する。

 

「──そういうことですか。確かに餌は獲物の好みに合わせた方がいいですね」

「そういうことだ」

「盛り上がっているのぅ」

「うおっ!」

 

 オーディンが音も気配も無くいつの間にかそこに立っており、一誠は急な登場に驚いて声を上げる。

 

「よお、爺さん。ちょっと大物釣りに行こうぜ」

「しょうがない。ちと付き合ってやるか」

 

 オーディンは白い髭を撫でながら了承する。何処まで話を聞いていたか知らないが、アザゼルの言葉にすぐに応じた。

 

「出掛けてくる。ピクシーたちのことを頼んだ」

「ああ、分かった」

 

 仲魔のことを一誠に任せ、三人は玄関へ向かおうとすると、勢い良く階段を駆け上がる音が聞こえてきた。

 

「オーディン様!」

 

 慌てた様子のロスヴァイセが駆け込んでくる。その手に頼まれたお茶が乗った盆を持って。

 

「頼みますから私に黙って動かないで下さいよー! 私は護衛なんですよー! 護衛なのに護衛の仕事が出来なかったらどんな目で見られるか! それともオーディン様は私をリストラしたいのですか!」

 

 半泣き顔で問い詰めるロスヴァイセ。

 

「そう大声を出すな、ロスヴァイセ。そこまで耳は遠くなっておらんわ。あとこの茶はお前が淹れたのか? まあまあだのう。密かに嫁入りの為の修行もしておるわけか」

 

 オーディンは盆に乗っていた筈のカップを戻す。いつの間にか飲み干されていた。

 

「あ、いつの間に! というかそういう分析は止めて下さい! セクハラですよ!」

 

 顔を真っ赤にするロスヴァイセ。図星であったらしい。

 

「まあ、ちょっとばかし出掛けるから今度こそお前はここで待っておれ」

「絶対に嫌です。何度も言いますが私は護衛です。オーディン様から絶対に離れません」

「なんじゃお前。ワシに惚れておるのか?」

「百パーセント仕事です」

「カーッ、そこで『はい』ぐらい言える愛嬌があったらのう」

 

 オーディンは冗談を真面目に返されて嘆く。

 

「はいはい。雑談はそこまでにしときな。絶対に離れないって言うんなら連れて行くしかないだろ。イッセー、リアスにこのこと伝えておいてくれよー」

「は、はい。分かりました」

 

 頼まれて了承したが、すぐに後悔した。ピリピリとしているリアスに、アザゼルたちが独自に動いたと伝えたら、どれだけ不機嫌になるか。とばっちりは来ないだろうが、それを間近で見るのは心臓に悪い。

 アザゼルが先頭を行き、続いてオーディン、ロスヴァイセ。最後尾をシンが歩く。

 その時、シンは肩を強く掴まれた。

 

「──どうした?」

「え?」

 

 肩を掴むのは、一誠の左手であった。何か用があるのかと思い、聞くが一誠の方は惚けた様な声を出す。

 その間にも左手の指先が食い込んでいく肉や骨を潰さんばかりに握られていく。明らかに引き留めることが目的で掴んでいない。

 

「──うおっ!」

 

 一誠は驚いた声を出して左手を離す。今気付いたと言わんばかりに。

 

「悪い……。何でもない。本当に何でもないんだ……」

 

 左手を押さえる様に右手で覆う一誠。一誠自身に何か変化が起きているのは一目瞭然であったが、シンは追求することはしなかった。

 

「そうか」

 

 短く一言だけ。先程のことを何事も無かった様に流してしまうと、先に行ったアザゼルたちの後を追っていく。

 その背を見送った後、一誠は己が左手を見つめる。自分の意思に反して左手が動いた。この手の中に嘗ての赤龍帝の怨念が渦巻いているとしたら。

 そう考えると自分のものである筈の左手が得体の知れないものに見えてしまった。

 

 

 ◇

 

 

 アザゼルがシンたちを連れてきたのは、とあるビルの屋上であった。華やかな装飾で彩られたテーブルと椅子が中央に置かれ、テーブルの上には豪勢な料理と酒瓶が並んでいる。

 屋上だというのに風は無く寒さも無い。室内にいるかの様であった。シンの目には屋上を囲う結界が映っており、これにより外と中を隔絶している。

 

「まあ、座れ」

 

 アザゼルに言われて全員が椅子に座る。

 釣りと聞いていたロスヴァイセは、釣りとは全く無縁な場所に連れてこられて先程から首を傾げている。

 

「このビルはうちが買い取ったもんだ。当然中に居る奴らも全員堕天使だ」

 

 アザゼルは説明しながら豊富な種類の酒瓶の中からワインを手に取り、コルクを抜く。

 

「ほれ、爺さん」

「おお、すまんのう」

 

 オーディンが差し出したワイングラスの中に並々に赤い液体が注がれていく。

 

「お前も飲むか?」

 

 注ぎ終えたアザゼルがシンにも聞いてくる。

 

「俺は未成年ですよ?」

「かてぇな。無礼講で行こうぜ?」

「アザゼル先生は『()()』ですよね?」

 

 わざと先生の部分を強調する。冥界でライザーに勧められて飲んだことはあるが、あくまで冥界のルールに従っただけ。人の世界に居るのならそちらの方に従う。

 

「分かったよ。ちゃんと酒以外にもジュースも用意してあるよ。無添加果汁百パーセントに炭酸飲料、ミネラルウォーターもあるぞ」

 

 アザゼルの言う通り酒の種類が豊富なら、ジュースの種類も豊富であった。

 

「で? 仕掛けの方はどうなっておる?」

「こっち側に入ったら即座に外との繋がりをシャットダウンだ。いくら奴でもそう簡単には外で出られない。ビル内の堕天使には俺らが来たら全員ビルから出る様に伝えてある。最悪の状況になっても被害は最小限で済む筈だ」

「うむ。なら良し」

「あのー……」

 

 ロスヴァイセがおずおずと二人に声を掛ける。

 

「何だ? ああ、お前さんもこれが飲みたいか?」

「あ、ありがとうございます。──じゃなくて! あの、釣りに行くと私は聞いたんですが……?」

 

 すると、アザゼルとオーディンは揃って眉間に皺を寄せる。

 

「だから今から奴を……ってお前、まさか釣りという言葉をそのままの意味で捉えておるのか?」

「──違うんですか?」

「……マタドールを釣り上げられるかどうかを試すって話だぜ」

「え? ……ええええええええ!」

 

 今知った。そんな絶叫を上げる。

 

「お前なぁ……ワシらが魔人が出たというのに呑気に魚釣りに出かける様な無責任な奴らに見えるのか?」

「……すみません」

「おい、爺さん。このヴァルキリー、俺たちのことそういう輩だと思っていたみたいだぞ」

「かー、歳を重ねるのは嫌だのう。若いモンに威厳が届かなくなるわい」

「日頃の行いの賜物ですね」

『やかましいわ!』

 

 シンが皮肉を言うと、二人は声を揃えて反応した。

 

「──まあ、あれこれ言うのは後にして、ロスヴァイセ。知らずに参加したお前に一応説明しておく」

「……はい」

 

 自分の置かれている状況を把握してロスヴァイセは少し意気消沈しているが、返事はする。

 

「バラキエルに聞いた話じゃ、あいつは去り際に暫くの間は大人しくするって言ってたそうだ」

「その言葉を信じるのですか?」

 

 血と死と闘争に飢えた魔人であるマタドールが何もせずにじっとしているなど、ロスヴァイセには考え難いことである。

 

「あいつはナルシストでエゴイストでバトルジャンキーな心底どうしようもない奴だが、そのどうしよもなさに負けないくらいプライドも高い。自分でした約束を反故する様な真似は恐らくはしない。とはいえこっちも完全に信じた訳じゃねぇ。だからこうやって試してんだよ」

「ワシらを餌にしてな」

 

 堕天使のトップ。北欧神話の主神。同属の人修羅。新進気鋭の戦乙女。それが目立つ場所に集って飲み食いをしているのである。マタドール相手にこれ以上の挑発は無い。

 マタドールがプライドに準じれば暫くの間、駒王町は平和である。しかし、戦いへの欲に駆られれば、即座にこの地で闘牛士対神、堕天使、人修羅、戦乙女の戦いが始まる。

 

(とはいえどうしたもんかねぇ……アイツの気配も無いし帰すならまだ間に合う。それとなく伝えるか爺さん?)

(強制もせんし忠誠心を試すつもりは無いからのう。ロスヴァイセが正直に行動すればよい。だがのう、ここで何か言えばそれだけで後ろめたさが生まれるかもしれんなぁ)

 

 ロスヴァイセに聞こえない様にボソボソと小声で話し合う。アザゼルもオーディンもロスヴァイセを引き留める様なことはせず、本人の意思に任せるつもりであった。しかし、何かを言えばそれだけでロスヴァイセの判断を鈍らせるかもしれないと思い、下手なことを言えない状態となる。

 ロスヴァイセ本人は自分が想像以上に危うい場所に居ることを痛感するが、すぐに覚悟を決めた顔付きとなり、グラスを突き出す。

 

「分かりました。私も精一杯釣り餌を成し遂げてみせます」

「よし。良く言った」

 

 早々に決断したロスヴァイセを褒め、オーディンはグラスに酒を注ぐ。グラスに満たされた酒を、ロスヴァイセは一気に飲み干す。アザゼル、オーディン以上のハイペースで酒を消費する。

 

「そういやシン、お前と賭けをしてたなぁ。勝ちか負けかいまいちよく分からん結果になっちまったが、図らずもお前にメシを奢ることになったし、俺の負けでいいか」

「引き分けでいいですよ。白黒つけるのは次の賭けに持ち越しましょう」

「生意気言うねぇ。だが、そりゃいいな。機会が巡ってきたら一勝負と行こう」

 

 魔人と殺し合うかもしれないというのに、そんなことも微塵も感じさせない朗らかな笑みを浮かべながら、アザゼルは既に空になっているシンのグラスにジュースを注いだ。

 

「でも、戦い前にこれだけ飲食をとっても大丈夫でしょうか……?」

「どんだけ食おうが飲もうが大したハンデじゃない」

「大体、ワシらがこの程度平らげて音を上げる訳なかろう」

 

 グラス一杯の酒を飲んでそれなりに体を熱くさせているロスヴァイセに対し、アザゼルたちは冷めた反応をする。

 

「そうですか……その、間薙君の方は?」

「まあ、自制はします」

 

 シンは一気に大量に飲み食いなどはしないが、一定の速度を保ったまま料理と飲み物を消費していく。

 

「じゃあ、私も……」

 

 改めて並んだ酒や料理を眺める。どれもが見たことも無い高級感溢れるもの。

 

「うう……」

 

 強い誘惑に襲われながらも、ロスヴァイセは己を縛めて食事を開始した。

 

 

 ◇

 

 

 食事が始まって二時間後。

 マタドールの襲撃は未だ無く、シンたちは雑談を交えながら食事を続けていた。最初にあった料理も三分の一にまで減っている。

 一見すれば何事も無い楽しい食事会。実際は──

 

「なんじゃロスヴァイセ。さっきから手が止まっておるぞ? グラスも空だわい。ほれ、注いでやる」

「あ、あ、ありがとうございます……」

 

 傾けられる酒瓶にグラスを出すロスヴァイセ。その手は小刻みに震えていた。オーディンがグラスに酒を入れると、嵐の海原の様にグラスの中の酒が波打つ。

 

「あ、ああ、あの……」

「何じゃ?」

「見られていますよね……?」

 

 ロスヴァイセは全身で感じていた。何処からか向けられてくる冷たくも鋭い視線を。止めようとしても体が震え、視線の重圧によって胃に穴が開きそうな気分になる。酒も食べ物も取ることが出来ない。今胃に入れたら確実に戻してしまう。

 

「そうだのう」

 

 マタドールに凝視されていることを簡素な言葉で済まし、オーディンはロスヴァイセに注ぐ筈だった酒を自分のグラスに注ぎ、平然とした態度で飲む。

 ロスヴァイセからすれば理解出来ない行動である。敬愛している主神ではあるが『もしかしたら耄碌が始まっていて色々と鈍くなっているのでは?』と失礼極まりない疑念すら抱いてしまう。

 だが、そんな疑念も残りの二人を見ると霧散してしまった。

 

「──という話さ。朱乃は今でも堕天使が嫌いだろうな。正直な話、朱乃が腹の中で俺のことをどう思っているのか分からねぇ。そういう態度を見せたことは無いが……」

「そういう事情ですか」

「ああ。とは言え話半分で聞いておけよ。俺も堕天使だ。知らない内にバラキエルの肩持つ様な話に歪めているかもしれないからな」

「そうしておきます」

 

 シンはアザゼルから朱乃とバラキエルの過去を聞いていた。話を振ったのはシンであり、最初はアザゼルも渋ったが、結局話すこととなった。シンの性格からして、どちらかを同情したり非難したりしないドライあるいは中立でいられると思ったからだ。

 三者三様でこの状況に適応しているのを見ると、ロスヴァイセは自分が神経質なのではないかと疑ってしまう。

 

「あ、あの! 平気なんですか、皆様は! 確実にいるんですよ! 魔人が! マタドールが! その、生意気を言いますがもう少し緊張感というものを……」

「いいんだよ。俺たちの目的はアイツをこれでもかってぐらい虚仮にしてやることなんだからな。見ているだけならそれで良し。襲い掛かって来てもそれで良し、だ」

「挑発をし過ぎて一般市民に害を為す可能性は……?」

「百パーセント無い、と断言は出来ないが、まあ九十九パーセントは無いだろうな。アイツは間違いなく最悪の通り魔だが非戦闘員に手を出したことは無い。なにせ戦い大好き魔人だからなぁ。戦えない奴を殺しても詰まらない思いをするのは自分だってのをよく知っている」

 

『そういう面があるのもヴァーリが好意的な理由かもしれんが……』という言葉は胸の中で留めておく。

 

「それでも生きた心地がしないのですが……」

「見られているとしても穴が開くわけじゃなかろう。のう?」

「……そうですね」

 

 オーディンもまさか話を振った相手が、視線で物理的に穴を開けることが出来る人物などとは夢にも思わなかっただろう。

 

「因みに、これっていつまで続けるんですか……?」

「日が昇るまで」

 

 日の出まであと数時間はある。その間、ずっとマタドールから視線を送られ続けると思うとげんなりした気分となってくる。

 

「ロスヴァイセ。ちょっと聞きたいんだが、ナルシストと自己中で暴力沙汰をよく起こす男ってどう思う?」

 

 アザゼルからの唐突な質問。しかし、根が真面目なせいかロスヴァイセは答えてしまう。

 

「そういう方は遠慮したいですが……その質問にどんな──」

「だとさぁ! 聞いてるか! お前みたいな男は御免被るとさ! いっつもカッコつけている癖にモテないなぁ! マタドール!」

「ええ!」

 

 見せつけるだけの挑発が直接的なものへと変わり、マタドールを詰る声を飛ばす。

 

「ちょ、ちょちょちょ! ちょっと待ってください! あんまり刺激を!」

「言わせておけ。アザゼルも戦友に血を流させられて腹が立っているのだろう。あわよくば敵討ちをするつもりかもしれん」

 

 アザゼルからの挑発に、視線の圧は増したがそれ以上の変化は起きない。自分の言ったことを忠実に守るつもりの様子。或いは、マタドールはこれすらも勝負事と考えているかもしれない。極上の相手を前にして自分の欲求を押し殺すことを。

 朝陽が昇るまで四人の会食は続き、結局マタドールが姿を見せることは無かった。

 

 

 ◇

 

 

 オーディンが来訪し、マタドールが潜伏していると聞かされた翌日。一誠たちは冥界でグレモリー主催のイベントに参加していた。冥界で大人気特撮番組である『おっぱいドラゴン』として。

 マタドールのこともあって参加に対して前向きではないリアスたちだったが、人間界に居るよりも冥界に居る方が遥かに安全だとアザゼルに言われて送り出された。

 アザゼルが言うには、マタドールは当分の間は問題を起こすことは無いと、身を以って証明してきたと言う。

 流石に勝手にシンを巻き込んだことにはリアスも怒っていたが、当の本人がリアスを宥めたのでそれ以上怒るに怒れなかった。

 イベント会場で行われたのはサインと握手会である。

 おっぱいドラゴンに扮した一誠が子供たちにサイン渡し、握手をする。リアスもスイッチ姫の格好をしてサインや握手をしていた。

 冥界で放送されている『おっぱいドラゴン』では、一誠とリアス以外にキャラクターとして登場しているメンバーがいる。

 それが木場と小猫である。木場は敵組織の幹部『ダークネスナイト・ファング』。小猫は『ヘルキャット』として味方役で出ていた。

 役に合わせて一誠は『赤龍帝の鎧』のレプリカを着装し、リアスもドレスを纏い、木場は黒く鋭利な鎧を装備、小猫は獣を擬人化させた様な衣装を着ている。

 おっぱいドラゴンは子供たちに人気で割合としては男の子の比率が高い。スイッチ姫はその逆。ダークネスナイト・ファングは子供たちの母親などの成人女性からの人気が高く、ヘルキャットは俗に言う大きなお友達に囲まれていた。

 イベントは大盛況の内に終わり、一誠たちは待機用のテントへ帰っていく。

 

「イッセー様。お疲れ様ですわ」

 

 そう言ってタオルを手渡すのは、今回のイベントのスタッフであるレイヴェル・フェニックスであった。グレモリー主催のイベントを聞き、自らスタッフに立候補したという。

 

「おー、わりぃな」

 

 一誠は着ていた鎧を外し、汗だくになった体をタオルで拭く。

 

「お、お気になさらず! 今回のことは冥界の子供たちに夢を与えるとても立派な仕事ですし、将来の冥界を担おう者の一人としてお手伝いすることは当然の義務ですわ!」

 

 レイヴェルは少し赤面して早口で言う。

 

「──何か昔に比べると大分柔らかくなったよなー」

「え、ええ? そうでしょうか?」

「何かこっちのことを見下して、上から目線であれこれと言ってきたしな」

「お、思い出させないで下さい。あの時の私は、まだまだ人を見る目が無かったので!」

 

 レイヴェルは恥ずかしがりながら目線を逸らす。

 

「そ、そんなことよりもイッセー様はお体をご自愛下さい。子供たちとの交流も大事ですが、まだ人間界でのお仕事が残っているのですし」

「そんなに疲れてはいないけどなー。子供たちに夢を与えるって仕事は楽しいし。爺さんの護衛よりかは気が楽だ」

「相手が北欧神話の主神ですからね。気苦労はするでしょうね」

「そうそう。……ん?」

 

 何気無い会話であった為、思わず聞き流しそうになった。

 

「なんで爺さんって言ってオーディンだって分かったんだ?」

 

 オーディンの護衛をしている話は、まだレイヴェルにしていない。

 

「お兄様から聞きました」

「お兄様ってライザー? なんでライザーが知ってるんだ?」

「間薙様からお兄様が聞いたんです。度々連絡を取り合っているので。ああ、偶に私やお兄様の眷属ともしています」

 

 一誠には初耳であった。

 

「ええ……あいつらどんだけ仲良くなったんだ……?」

 

 初めて冥界に来て以降、段々と親交を深めている様な気がする。

 

「とは言ってもお兄様が一方的に罵声の様な言葉を浴びせて、間薙様が全てスルーしながらそこに日常会話を混ぜるという感じですね」

「どんな会話だ……」

 

 少し聞いてみたいと思う一誠。

 

「オーディンの爺さんのこと以外で何か言っていたか?」

「いえ、特には? 人間界で何かトラブルでもあったのですか?」

「──いや、別に何にも。間薙ってあんまりお喋りなイメージが無いけど、実は裏で俺たちのことをあれこれ言っているんじゃないかって」

「ふふふふ。安心して下さい。間薙様の口からイッセー様たちの悪口なんて聞いたことがありません」

「そっか。なら良かった」

 

 レイヴェルの反応から見て、シンも流石にマタドールのことは話していなかった。余計な混乱を招くと分かっている。

 

「イッセー。そろそろ人間界に帰還する時間よ」

 

 テント外でリアスが声を掛ける。

 

「はい。わかりました。──もうそんな時間か」

「話し込んでしまって申し訳ございません。この後は、やはりオーディン様の護衛ですか?」

「そう。早く戻らないと爺さんに愚痴られちまう。レイヴェル、お疲れ様。今日はありがとうな」

「い、いえ。私も色々と勉強になりました。またイベントの時には声を掛けて下さい。私でよろしければ手を貸しますので」

 

 頬を赤くするレイヴェルに別れの挨拶をした後、一誠はリアスたちと共に人間界へ戻り、オーディンの護衛をする。

 オーディンの護衛中、一誠たちはマタドールがいつ来ても対処出来る様に常に神経を張り巡らせていたが、オーディンはそこらの外国人観光客の様に特に気を張り詰めた様子も無く、日本観光を満喫していた。

 リアスとソーナは使い魔などを使い、マタドールの居場所を密かに探るものの一切手掛かりが見つからず、マタドールも最初の日以降不気味な程沈黙し続けていた。

 そのまま何事も無く数日経過する。事態が動き出したのはそんなある日の夜、マタドールでは無く別の存在によるものであった。

 

 

 ◇

 

 

 夜。上空では常人が見ればあり得ない光景があった。八本足の軍馬が馬車を引きながら道なき空を駆け抜けていき、その周囲を黒い翼を広げた悪魔たちが飛ぶ。

 軍馬の名はスレイプニル。オーディンたちが用意したものである。スレイプニルが引く馬車の中にはオーディン、アザゼル、ロスヴァイセ、リアス、一誠、アーシア、朱乃、ギャスパー、そしてシンと仲魔たちが居る。残りの者たちとバラキエルは、馬車の外で護衛をしていた。

 ここ数日、オーディンの観光で日本のあちこちに連れ回されたのとテロリスト、マタドールからの護衛のストレスで、リアスを含め眷属たちはやや疲れ気味の様子。

 

「オーディン様。もうそろそろ旅行気分から切り替えて下さいね。もうすぐ日本の神々との会談がありますので。『禍の団』や魔人の動きが大人しい今が当初の目的を速やかに行う絶好の機会です」

「わーとっるわい、言われなくとものう。お前さん、何でもかんでもキッチリしているよりも多少隙あった方が男に受けるぞ?」

「今は! そんな話! 関係! ありません!」

 

 からかい混じりのオーディンの助言に、ロスヴァイセは顔を真っ赤にして怒鳴る。

 

「──簡単に事が運べばいいがのう……?」

「それは、どういう意味ですか?」

 

 笑みを消し、意味深なことを呟くオーディンにロスヴァイセが訝しむ。

 その時、二人の会話を黙って聞いていたシンが弾かれた様に立ち上がり、馬車の進路方向を見る。明らかに臨戦態勢に入っていた。

 

「──停めるぞ」

「はい?」

 

 オーディンの言葉にロスヴァイセが聞き返そうとするが、オーディンもシンが見ている方向を隻眼で睨んでいる。

 スレイプニルが嘶き馬車が急停止する。中は揺れ、一誠たちは何かに掴まり倒れない様に体を支える。

 揺れが収まると同時に馬車の窓を開き、外を見る。外では木場、イリナ、ゼノヴィアが剣を構え、バラキエルが雷光を発し、戦闘態勢へと入っている。

 彼らが見る方向を一誠たちも見た。そこには黒いローブを纏った長髪の男性が浮遊し、スレイプニルが行く先を阻んでいる。

 

「察しが良くて助かる! 我が子を手に掛けるのは少々忍びないのでな!」

 

 男の声は良く通り、鼓膜の奥がビリビリと震える。

 男の姿を見たロスヴァイセは言葉を失い、アザゼルは短く舌打ちをする。

 

「あっ」

 

 ピクシーたちは、男を見て驚きの声を小さく出す。彼女らと以前会ったことがある人物であった。

 

「まあ、何かあるとしたら事を起こすのはお前さんだと思っていたぞ、ロキ」

 

 いつの間にか馬車の屋根に移動していたオーディンが、隻眼を鋭くさせ男をロキと呼ぶ。

 

「ロキ……北欧の悪神」

「あの男、神様なんですか!」

 

 リアスの呟きに、一誠は男がオーディンと同等の存在と知り驚く。

 

「折角、トールを置いてきたのにのう」

「良くも悪くも付き合いが長いのだ。お互いの考えることはよく理解しているつもりだ。あの目を掻い潜るのはかなり苦労はしたがな」

「ワシが他の神々と接触するのが気に入らんか?」

「全く気に入らないな! 我々が積み重ねてきたものに今更異なるものを交えようとする考え方は!」

「ワシよりも古臭い考え方をしおって。まあ、そんなことを面と向かって言って来るのはお前ぐらいかの」

「心の内では文句があろうと言葉にもしなければ行動にも移さない日和見共など一緒にしないでもらいたい! 私は選んだ! 私は行動した! それが決定的な違いだ!」

 

 比べられること自体不愉快だと顔を顰める。

 

「この阿呆め。灸を据える必要があるのう」

 

 総毛立つ様な威圧感と一目で別格と分かるオーラがオーディンから放たれる。スレイプニルがそれを浴びて巨体を震わす。

 

「ふっ。何なら堕天使のカラス共とグレモリーの小悪魔たちも纏めて来ても構わないぞ? それで対等、ということにしておいてやろう」

 

 全員に向け、ロキは高慢な態度で言い放った。

 




煽られたので煽り返す回となります。

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