ハイスクールD³   作:K/K

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試合、開始

 レーディングゲーム当日。シンはいつもの様に授業を受け、そしていつもの様に帰宅をする。しかし、これから数時間後には一人の存在の人生を賭けた戦いが始まろうとしていた。

 シンは帰宅をするものの特にすることも思い浮かばず、ピクシー、ジャックフロストを連れて集合場所となる部室に赴いていた。合宿の帰りに仲魔になったジャックフロストは自分が最初に一緒についてくるように誘ったという理由からシンの家で預かっていた。シンはピクシー、ジャックフロストは置いていくつもりであったが、あまりに強く反発するため渋々ながらレーティングゲームの会場へと連れて行くこととなった。

 事前にリアスから集合時間と好きな格好で来るように指示をされていたが、シンは特にこれといってする格好も思いつかず、無難に駒王学園の制服を纏っていた。

 シンは壁に掛けてある時計を見ると時間は十時を少し回っていた。集合時間の二時間も前にやってきたという事実に、知らず知らずの内に自分が緊張をしているということを悟る。

 しかし、そのシンの緊張をよそに連れてきた妖精二体は普段通りの様子で、シンが前もって買っていたケーキを二人仲良く食べている。

 

「もーらい!」

「ヒホー! 取っちゃダメホー!」

 

 目の前でショートケーキのイチゴの取り合いをしているのを見ていると緊張が解れる所か萎えてしまい、ついさっきまでの自分が馬鹿らしくなってしまう。

 それから暫くして部室のドアが開く。

 

「あら、一番乗りだと思っていたけど早いのね」

「あらあら、間薙くんもやる気に満ちていますね」

 

 入ってきたのは、リアスと朱乃の二人。二人ともシンと同じく制服を着ていた。

 

「ヒホ!」

「やほー!」

「あら、その二人も連れてきたの?」

「あまりにうるさくて……」

「だって、家に居たってシンが居なかったら暇なんだもん」

「ヒホー! 仲魔外れは嫌だホー!」

 

 無邪気な様子のピクシーとジャックフロストにリアス、朱乃は微笑み、戦いの前という殺伐とした空気を浄化されているようであった。

 

「ふふふ、元気ね。あなたたちを見ていると癒やされるわ」

「うふふ、そうですね」

 

 リアスはそのままソファーへと座り、朱乃はお茶の準備を始める。少しの時間が経った後、リアスと朱乃、そしてシンの分が注がれたティーカップがテーブルの上に置かれる。

 

「どうぞ」

「いただきます」

 

 シンがカップに口を付けるとほぼ同じタイミングで部室のドアが開かれた。扉の前に立っていたのは木場であった。格好は制服であるが両腕には手甲、足には脛当て、そしてその手には鞘に入った一本の剣が握られていた。

 

「やあ、こんばんは。皆、早いですね」

 

 物々しい格好をしている木場は既に既視感すら感じさせるような程見慣れた笑みを部室内にいる全員に向ける。

 

「こんばんは、木場くん。どうです? 木場くんもお茶でも」

「それじゃあ、お言葉に甘えて」

 

 剣を壁に立て掛けると木場も皆に倣ってソファーへと座る。

 

「いよいよだね」

「ああ、そうだな」

「緊張はしているかい」

「ああ」

「あまりそうは見えないけど?」

 

 木場はシンの顔を眺める。そこにはいつもの無表情が張り付けられてあった。

 

「表面上は、な。あまり気分は落ち着いてはいない」

 

 未だシンの体内では、臓腑が下から押し上げられるかのような感覚が断片的に続いている。それは、時間が進むにつれて心なしか強くなっているようであった。

 

「おかげで集合時間より二時間も前に来てしまった」

「ふふふ、僕も同じだよ」

「あらあら、なら私たちも一緒ですね。ねえ、部長?」

 

 お茶を持ってきた朱乃がテーブルの上に置きながらリアスに話し掛ける。リアスは少しだけ照れた表情をしつつ、シン、木場から目線を逸らしながらぽつりと呟く。

 

「もう……言わないでよ、朱乃」

 

 普段、超然としている三人が揃って緊張をしているという事実を口にする。秘密の共有とは少し違うが、内にある感情を相手に見せるという行為によって、僅かながらこの場に居る全員の空気が和らいだ気がした。

 

「……こんばんは」

 

 そんな空気の中に現れる小猫。木場が部室に来てから数分後の到着である。この時点でまだ集合時間まで一時間半以上余っている状況である。格好は皆と同じく制服であったが、両手には拳を保護するためなのか、黒革のオープンフィンガーグローブが着けてあった。

 

「早いな、塔城」

「……みなさんこそ早過ぎです」

「こねこも緊張して早く来ちゃった?」

「ヒホ? こねこちゃんもかホー?」

 

 イチゴの取り合いを止め、つい先程までシンたちの会話を真似て妖精二人組が悪気も無く直線的に尋ねる。この質問に小猫も一瞬言葉を詰まらせ、他のメンバーの顔を見た後にか細く小さな声で「……はい」とだけ言った。この時、珍しく小猫の無表情に照れや羞恥心が色濃く出ており頬が朱色になっていた。

 

「恥ずかしがるな、塔城。この時間で恥ずかしがるなら俺が恥知らずになってしまう」

 

 シンは小猫をフォローする様な言葉を言って、扉の前でいつまでも立っておらずソファーに座るよう促す。それに従って小猫がソファーへと座るとほぼ同時に、朱乃は小猫の前にティーカップを置く。

 

「……ありがとうございます」

「うふふ、大丈夫。みんなも小猫ちゃんと同じ気持ちですから」

 

 小猫が置かれたお茶に口を付けると、しばしの間全員お茶を飲むことに意識を向けたせいか無言が続く。その中で相変わらずピクシーとジャックフロストはわいわいとはしゃいでいる。一応、これからなにをするかシンから伝えられているが、それでも皆の緊張した空気に感化されることなく普段通りでいる二人は、凄まじいまでに肝が据わっているか、ただ単にそういうことに対し鈍いだけであるかのどちらかである。シンの個人的な感想としては後者に属すると思っている。

 皆がそれぞれに注がれたお茶を飲み終えると、各自各々のやり方で時間を過ごし始める。リアスと朱乃はそのままお茶会を継続し、木場は立て掛けていた剣を手に取り念入りに手入れを始める。小猫は一旦ソファーから離れるものの、何処からか持ってきた本を手に持って再びソファーへと座る。シンも特にすることもなかったので軽く腕を組み、目を閉じて瞑想の様な格好をしたまま微動だにしなくなった。

 ピクシー、ジャックフロストはケーキを食べ終わると、暇を持て余したのか部室内をうろちょろし始める。ピクシーはリアスたちのお茶会に参加し、いつの間にか作られていたピクシー専用のティーカップにお茶を注がれ、朱乃に礼を言ってから飲み始める。

 ジャックフロストは剣の手入れをする木場を興味深そうに見た後に本を読んでいる小猫に近付き、本の内容についてあれこれ質問をしていた。その際、ちゃっかり小猫の膝の上に乗って読み聞かされている様な状態となっていたが、特に小猫の方も嫌がる素振りを見せず、ジャックフロストの質問にも言葉の数は少ないもののきちんと答えていた。

 深夜十一時半。最後のメンバーが部室に現れる。

 

「こんばんはーっす! ありゃ? もしかして俺たちが最後ですか?」

「こんばんは! あ、あの、もしかして私たち来るのが遅かったですか?」

 

 部室に入って早々の一誠とアーシアの言葉。アーシアの方が皆がもう既に揃っているという事態に不安になったのか、恐る恐る尋ねる口調であった。

 

「そんなことはないわ。イッセーにアーシアも時間通りよ。ちょっと私たちが早く来過ぎただけ」

 

 アーシアの不安を払拭させるようにリアスは優しげな話し方をする。

 一誠、アーシアが来たことで部員全員が揃うと、シンは今まで閉じていた目を開け二人に視線を向ける。一誠の服装はやはりというべきか学園の制服であった。一方アーシアの方は制服では無く、シンが初めてアーシアとあったとき以来久方ぶりに見るシスターの格好であった。ただし、あのときとは違い、胸には悪魔に害を及ぼす十字架は下げてはいない。

 

「思ったより落ち着いているな」

「ん? ああ、アーシアのことか? アーシアは結構根性ある子だからな」

 

 ソファーに座ろうとする一誠にシンが話し掛ける。アーシアのことを褒める一誠の横顔はシンから見て自分のことのように誇らしげであった。

 

「それもあるが、お前もだよ」

「へ?」

 

 本番前ではあるが、シンには一誠が必要以上に緊張していない風に見えた。全く緊張が無いわけではないが一誠の一連の動作には無駄に力が入っておらず、日常を送っているかのように滑らかに動いている。シン自身余り自慢できるとは思っていないが、合宿の間嫌という程に相手の動きを見てきたからこその感想であった。

 

「そういうお前だって、緊張してる風には見えないぞ」

「面の皮が厚いだけだ」

 

 軽い冗談で返すシン。あと十数分経てば戦いが始まるにしては些か軽い空気が部室内に流れていたが、シンはそれで良いと内心思う。焦り、緊張というものは本人が自覚しなくても他人に伝播していくものであるとシンは考えていた。スポーツのプロなどに於いて、緊張を楽しむことでより実力を発揮できるという話も聞くが、シンや他のメンバーはまだそれに至るまでの精神構造が出来上がっていない。

 過度の焦りと緊張は自分の動きに制限を与える。ならば、開始直前までどんな形であれそういった空気を生み出さない空間が出来るならばそれにこしたことはなかった。

 時計の針が進み、時刻は十一時五十分となる。

 それを合図に部室内に描かれている魔法陣が輝きを放ち、その中から迎えの使者であるグレイフィアが姿を現した。

 魔法陣から現れたグレイフィアが準備の確認をすると、準備が出来たことを示す為に皆が立ち上がる。ついでにピクシーとジャックフロストも一緒に。

 

「申し訳ありませんが、そちらの御二人は?」

「ただの見学者です」

 

 当然起こるグレイフィアの質問にシンが何食わぬ顔でさらりと言う。しかし、シンの予想に反してグレイフィアの表情は若干険しいものとなった。

 

「念のために確認をさせて頂きます。そちらは希少種の妖精であるピクシー、もう片方は絶滅種の妖精であるジャックフロストで間違いないでしょうか?」

 

 リアスや朱乃もジャックフロストが名乗るまで正体を知らなかったが、グレイフィアはあっさりとジャックフロストの存在に気付いた。

 

「そうですが……何か問題でも」

「あまり言いたくはありませんが、その御二人は常に目の届く場所に置いておくべきです。その妖精は悪魔にとっても価値があるものです。参戦者以外の方は魔法陣を移動すれば自動的に観覧席の方へと移動します……不名誉なことですがレーティングゲームの最中にさらわれる可能性も零ではございません」

 

 あくまでグレイフィアは万が一の可能性を示しているものに過ぎない。だが、それはピクシー、ジャックフロストの身を案じた上で話していることをシンは理解していた。それでなければ態々悪魔の印象を悪くするような話を口にする必要も無く、ピクシーたちのことも口に出さず見て見ぬ振りをすればいいだけの話。少なくともグレイフィアの話を一笑することはシンには出来なかった。

 どうしたものか、そう思いながらシンはピクシーとジャックフロストの方に目をやる。ピクシーとジャックフロストは共に置いていくなという共通した意志を宿した目でシンを見返す。

 

「どうにかならないのかしら」

「……無くはございません。今回の一戦は魔王ルシファー様も拝見されておられます。お嬢様の関係者ならば快く同じ場所で観戦することを引き受けて下さると思われます」

「お兄様が?……そう」

 

 リアスとグレイフィアの短い会話の中で聞き捨てならないことが幾つかあった。グレイフィアの提案はよりにもよって悪魔のトップに子守紛いのことをさせようとすること、そして、その魔王を兄と呼ぶリアス。一誠も我が耳を疑った様子でリアスの兄のことについて呟くと、それを聞き間違いではないと木場が答え、駄目押しにリアスも肯定をする。

 そのままの流れで木場がリアスと魔王ルシファーとの関係を説明する。元々個人名であった四大魔王の名は、大戦によってその名を持つ者が亡くなったことにより強大な力を持つ悪魔の肩書きへと変化した。そしてその中でルシファーの名を受け継いだのがリアスの兄であり『紅髪の魔王〈クリムゾン・サタン〉』と呼ばれる、元サーゼクス・グレモリーであり、現サーゼクス・ルシファーである。ルシファーの後を継いだために家督権はサーゼクスからリアスへと移り、リアスが家を継ぐ立場となった。凄まじく穿った見方をすれば今回のレーティングゲームの発端とも言えるであろう。

 

「シン、どうする?」

 

 リアスはシンにグレイフィアの提案を受けるかどうか尋ねてくる。しかし、シンは答えずにピクシーとジャックフロストにグレイフィアの提案を受けるか聞く。シンはあくまで自分の意志では無くピクシーたちの意志を最優先するつもりであった。

 

「別にあたしはいいよ」

「ヒーホー! 魔王は悪魔の王様なんだホー! オイラは会ってみたいホー!」

 

 気が抜けそうになるほどあっさりと了承。むしろ魔王という存在に会うことを楽しみにしている様子であった。

 

「だそうです」

「なら決まりね。お願いするわ、グレイフィア」

「かしこまりました。責任を持って預からせて頂きます」

 

 恭しく頭を下げるグレイフィア。すると、魔法陣が再び輝きを放ち始め、今度は陣に描かれた文字が入れ替わるようにして別の文字へと変化する。

 

「そろそろ時間の様です。皆さま、魔法陣への移動をお願いします」

 

 一同揃って魔法陣へと移動としたとき、あっ、と一誠が何か思い出したような声を洩らす。何事かと皆が一誠の方を見た。

 

「ああ……こんな土壇場ですみません、部長。もう一人の『僧侶』の人は来ないんですか?」

 

 一誠が口にするまでシンもすっかりそのことを失念していた。リアスにはアーシア以外にもう一人『僧侶』がいる。しかし、一誠もシンもその存在には入部してから一度も会ったことが無い。合宿の際にも姿を見せなかった為、完全にその存在について忘れ去っていた。

 以前、リアスにその人物について尋ねたところ、諸事情の為に姿を見せないと言っていたが、主であるリアスの将来を賭けた戦いにも姿を見せないことに少々疑問に感じずにはいられない。

 その人物について知っているリアスたちの態度は微妙なものであった。分かっているが呼び寄せる訳にはいかない、そういったあえて見て見ぬ振りをしていたという反応。

 

「もう一名の『僧侶』はこの戦いには出ないわ。そのことについてはいずれ説明するわ」

 

 如何にも訳ありといった感じの口振りであったが、どちらにせよもう呼び寄せる時間は無い。一誠の方も深くは追及せず、分かりましたと頭を軽く下げて大人しく下がる。

 

「よろしいですか?」

 

 改めて準備の確認をするグレイフィア。それに応じて皆が少し早足で魔法陣の中へと入っていく。

 

「それでは参ります」

 

 魔法陣から強い魔力の光が溢れ出し、シンたちを戦いの場へと誘う。

 

 

 

 

「あれ?」

「ヒホ?」

 

 光が消え、あたりを見回したピクシーとジャックフロストの一声。そこは豪華絢爛とした装飾が施された見知らぬ場所。先程まで一緒に居たシンやリアスたちの姿はそこには無い。

 

「ほう、その二人がリアスの協力者の眷属か?」

 

 二人が声の方へと目を向けると、そこには重厚な鎧を身に纏った、リアスと同じ真紅の髪を持つ見目麗しい青年が立っている。

 

「んー? もしかしてキミがリアスのお兄さん?」

「ヒホ! 悪魔の王様なんだホー!」

 

 もし、他の悪魔がこの場に居たのならば卒倒し兼ねない程に軽く、馴れ馴れしいと言える言動。事前に説明を受けて目の前の存在が如何程の実力を秘め、ピクシー、ジャックフロストなど一秒も掛からず塵と化せる差があるのかを知っていてのこの態度。

 

「ははは、無邪気かつ元気な子達だ。キミたちの主が少々羨ましい」

 

 気分を害した様子も無く、逆に上機嫌といった様子で笑いながら二人を見る。

 

「あとね、あたしたちシンの眷属じゃないよ」

「そうだホー、オイラ達はシンの『仲魔』だホー」

「成程、それは失敬した。ふむ、『仲魔』か――悪くない響きだ」

 

 独り頷く魔王ことサーゼクス。他にも何かを聞こうとするが、口を開いた瞬間に頭部でも殴られたかの様に顔を僅かに顰める。

 

「キミたちとはもう少し話をしてみたいが、グレイフィアが急かすのでな。話の続きは場所を移してからにしよう。ついてきたまえ」

 

 先導の為に先を歩くサーゼクスの後ろをちょこちょことついていく二人。目的の場所に着いたサーゼクスは足を止め、それに合わせてピクシーとジャックフロストも止まる。

 そこには金の装飾に幾つもの宝石が散りばめられた派手な見た目の玉座、そしてその前方にはリアスたちとライザーたちの現状を映し出した映像が宙に投影されていた。

 

「あ、シンたちだ」

「ヒホ? あそこは部室じゃないのかホ? シンたちはまだこっちに来ていないのかホ?」

「いや、彼らはこちらへとちゃんと来ている。今回の戦いの舞台はリアスの通う『駒王学園』を参考にして造ったレプリカだ」

 

 ジャックフロストの素朴な疑問にもきちんと応じるサーゼクス。魔王という肩書を持つ者とは思えない親しみ易さであった。

 

「ああ、もうそろそろゲームが始まる時間のようだ」

 

 サーゼクスは玉座へと座り、ピクシーたちの方を見る。

 

「すぐにキミたちの席も用意しよう。少し待っていてくれないか?」

「オイラはここでいいホー」

「じゃあ、あたしはこっち」

 

 ジャックフロストは座っているサーゼクスの膝の上に座り、ピクシーはサーゼクスの肩に腰を下ろす。この光景を他の悪魔に見られた瞬間には二人ともその場で処刑されていてもおかしくは無いほどの態度。だが、サーゼクスは少し驚いた顔をしたもののすぐに表情を綻ばせ、その状態で観戦をする姿勢となる。

 

「そういえば、あのグレイフィアって女の人はここにはいないの?」

「彼女は今回のゲームの審判役なのでね。共にリアスの奮闘を見たかったが仕方あるまい。もう一人連れてきてはいるが少し離れた場所で見ている。頼れるが少々頭が固いせいか、自分がいると私に悪い噂が立つかもしれないと言ってこちらの言うことを中々聞こうとはしない」

 

 軽く肩を竦ませるサーゼクスの姿にピクシーはくすくすと笑う。すると宙に浮かぶ映像の中からグレイフィアの声が聞こえてきた。グレイフィアは校内放送を利用し、リアス陣営とライザー陣営にゲームを行う場所、基本ルールを一通り説明をする。

 その説明の中、ジャックフロストは何を思ったかサーゼクスの衣服の一部を引っ張り、自分の方に意識を向けさせる。

 

「どうかしたかい、雪の精くん」

「オイラ王様に会ったら聞いてみたいことがあったんだホー! 聞いていいホ?」

「構わないよ」

「どうやったら王様になれるんだホー?」

「王にか……ふむ、難しい質問だ」

「もう、誰彼構わず聞き過ぎじゃない?」

「しょうがないホー! オイラも王様になりたいんだホー!」

 

 短い距離でぎゃあぎゃあと言い争いを始める二人。しかし、サーゼクスはそれを咎めることはせず、顎に手を当て真剣な表情でジャックフロストへの答えを考えている。

 

「すまない、質問を質問で返してしまうがキミは何故王様になりたいんだい?」

「ヒーホー! オイラが王様になればジャックフロストたちを生み出すことが出来るんだホー! そしてみんなと遊ぶんだホー!」

「――ああ、そうか。すまない、軽率な質問だった」

「大丈夫だホ。少しさみしいけど、今は前よりもさみしくはないホー」

「そうだよね、きっと前だったらメソメソ泣いてたもんね」

「泣かないホ! オイラは泣き虫じゃないんだホー!」

「はいはい」

 

 再び言い争う二人であったが、サーゼクスは微笑み、二人の頭を実の子に接するかのように優しく撫でる。

 

「雪の子くん。さっきの質問の答えなんだが――」

「ヒホ! どうやったらなれるんだホ!」

「キミの中にある想いを決して忘れないでくれ。そして、王様になってからもずっとそれを持ち続けて欲しい」

「ヒーホー? それだけでなれるんだホ?」

 

 首を傾げるジャックフロストにサーゼクスは優しく微笑みかける。

 

「簡単なようでとても難しいことさ。――大丈夫だ、キミには王になれる素質がある」

 

 三人の前に浮かぶ映像の中からチャイムの音が聞こえる。それはレーティングゲームの開始を告げる合図であった。

 

 

 

 

 シンの耳にゲームの開始を告げるチャイムの音が入ってくる。この場にいないピクシーとジャックフロストのことが気がかりであったが、一先ずの間開始されたゲームの方に意識を集中させることを選ぶ。

 木場がテーブルの上に学校の全体図を広げ、朱乃も数枚の写真を机に置いた。全体図にはマスの区切りと縦横には数字と英文字が描かれチェス盤に見立てた風になっており、写真の方には見覚えのある人物が映っており、写真の隅には与えられた特性を示す為にチェスの駒が描かれている。

 ライザーとの眷属たちとは一度顔を会わせているが、場所と状況のせいで余り容姿の方を覚えていない為、改めて見直す。

 写真には写るのは、フード付きのローブを目深に被ってあまり顔の見えない『女王』の女性、全身に鎧を着こんだ女性、それと対称的に軽装で固め大剣を背負った『騎士』の女性二人、一誠と一戦交える寸前となったミラと呼ばれていた少女、容姿の幼い双子の少女に頭に犬か猫の耳を生やした少女が二人、大人びた容姿の女性二人に薄い布の様な服装の女性、それら全員が『兵士』。どういった理由でつけているのかは分からないが顔半分に仮面を付けた女性とチャイナドレスを纏った二人の女性は『戦車』。着物を着た日本人と思える容姿をした少女に金髪で西欧のお嬢様といった出で立ちの少女は二人とも『僧侶』。

 まじまじと写真を見ているとライザーという悪魔の広い趣味が露骨なまでに浮き上がってくる。およそ大半の人はこの眷属の一覧を見て、主が女好きであることを悟るのは間違いなかった。

 ちなみにシンは今回のレーティングゲームでは仮の駒として『戦車』の役割を与えられていた。何らかの駒が当てられていないと不便であるという理由からであり、特にシンも不満に思うことも無くそれを事前に承諾していた。

 シンは写真に目を通しながらも耳ではリアスたちの会話を聞いている。リアスたちの本陣である旧校舎のオカルト研究部部室からライザーの本陣である新校舎の生徒会室に行くにはどうするか、主にリアスと木場、朱乃が中心となって戦略を立てていた。自分でも戦うことしか役割が無いと自覚しているシンは口を挟むことなく、ただ三人の話を一字一句聞き逃さない様に頭へと叩き込んでいく。

 最初にやるべきことは決まり、木場と小猫はライザーの眷属たちの足止めをする為の罠を設置に、朱乃も同じく足止めの為に大掛かりな幻術を張る為に部室の外へと行く。部室に残ったのはリアス、一誠、アーシアとシンの四人。

 何かをしたいという気持ちがあったが、現状のシンでは特にするべきことも無く何とも歯痒い気持ちのまま部室内で待機をする。

 するとリアスが一誠を手招きし、自分の太腿の上に横になるように指示をする。それを聞いた一誠は落雷でも受けたかのような反応を見せた後に、錆びついた機械の様にぎこちない動きでリアスの下に移動をしていく。そんな一誠を見た後にシンは横目でアーシアの方を見る。そこには案の定、頬を膨らませて嫉妬の表情をするアーシアの姿があった。

 シンはさりげなくアーシアに近づく。

 

「今度やってみたらどうだ?」

「ええっ! その、私……」

「――多分、あれぐらいの反応はしてくれる筈だ」

 

 シンが指差す方向にはリアスの膝枕の上で感涙を流す一誠の姿。素直に感情を示すことは別に悪いことではないが、その極端な反応にはシンも内心では呆れていた。

 リアスは一誠を膝枕した状態で一誠の頭を撫でたとき、一誠の纏う魔力が高まったのをシンは感じた。一誠本人も自分の体の変化を感じ戸惑った視線をリアスに向けるが、安心させる様にリアスは一誠の頭を撫でたまま、『兵士』の駒に施されていた封印を解いたと告げる。

 その言葉に一誠は訝しげな表情となる一誠にリアスは丁寧に封印を施していた理由を説明し始める。一誠が『神滅器』を持っていた為、悪魔に転生するのに『兵士』の駒を八つ消費する必要があったが、ただの人間が八つも『悪魔の駒』を用いて転生することに危険性を感じていたリアスは駒の力を押さえた状態で一誠を転生させた。

 結果としてはリアスの判断は正しいものであった。悲しいことに一誠という元人間は、悪魔としての素質が全く無いというのが後日分かったからである。もし通常の駒で転生をさせた場合、転生した瞬間に一誠という悪魔は消滅していた。その封印を解放したということは、一誠の悪魔としての器が少し成長したという証拠である。

 

「部長! 俺、絶対に部長を勝たせてみせます!」

「ええ、期待しているわ。私の可愛いイッセー」

 

 戦意を高揚させ、新たに勝利を決意する一誠とそれに微笑んで応じるリアス。この部分だけを切り出せば絵になる光景ではあるが、シンの横で既に涙目になって嫉妬しているアーシアの存在が、少なくともシンの視点からそれらを締まらないものとする。

 このまま放っておくことも出来ず、シンは周囲に聞こえないぐらい小さな溜息を吐くといまだ膝枕をされている一誠に近寄る。

 

「ちょっといいか」

「何だよ、人が英気を養ってる最中に」

「話がある」

「話……まさか……! この場所を譲れと言うつもりか!」

「違う」

 

 縄張りを荒らされた肉食獣の様な目で見る一誠に即答で否定する。

 

「――アーシアが膝枕してくれるらしいぞ」

「えっ」

「ええ!」

 

 リアスの膝に頭を乗せたまま一誠は器用に首を動かしてアーシアの方に目を向ける。アーシアの方もシンの突然の言葉に赤面し、あたふたし始めていた。

 

「ま、マジか! アーシア!」

「ええ……その……イッセーさんが良ければ……」

 

 恥ずかしさを押し込め、消え入りそうな声で了承の意志を示すアーシアに一誠は上体を起こす――かに思われたが、リアスの膝枕にも未練があるのか、頭は膝に乗せた状態で首から下が持ち上がった不気味な体勢となる。

 

「くっ……部長の膝枕……だが、アーシアの膝枕……! 俺は、俺は……!」

 

 一誠は血管が千切れそうな苦悶の表情で真剣に頭を悩ます。究極の二択を突き付けられ迷うその姿は滑稽、不気味、というよりもシュールといっていいものであった。

 シンは本日二度目となる小さな溜息を吐く。その溜息はどちらの膝枕にしようか悩む一誠の姿――にでは無く、戦いの最中に態々他人の恋路の手伝いなどをする自分にであった。

 

(我ながら緊張感が無いな)

 

 苦悩する一誠の姿を見て、あれと自分に差はないと思いながらシンは三度目の溜息を吐くのであった。

 

 

 

 

 体育館の裏側。そこに一誠、シン、小猫が息を潜ませて近づいていた。目的は体育館の奪取及び新校舎への道の確保の為である。

 ここに来る途中に既に木場と別れ、朱乃、アーシアは本陣でリアスと共に待機をしている。シン個人としては戦力を均等にする為に木場と行動する考えもあったが、シンの速度と木場の速度では明らかな差が有り結論としては断念。大人しく体育館の占領を指示された一誠と小猫の手助けをするということとなった。

 シンが裏口のドアノブを回し一歩中に入った瞬間、肌を差すような気配が中から漂ってくる。合宿の成果か、あるいは緊張のせいでやや神経質になっている為か、その気配を感じたと同時に頭の中に四人という数字が浮かぶ。

 

「――いるぞ」

 

 二人にしか聞こえない程の抑えた声で敵の存在を告げると一誠、小猫の顔が引き締まる。

 リアスから事前に敵もここに配置をしていると推測をしていたが、その考えは的中していた。

 

「……どうしますか?」

「どうせ戦うんだから先手必勝! ――ってのは駄目か?」

「あまり時間も掛けられない。単純だがそれで行くか」

 

 一誠の考えにシンは賛同し、小猫も特に異論を唱えることは無かった。

 

「よし! 行くぞ!」

 

 掛け声と共に一誠が『赤龍帝の籠手』を顕在させ先陣を走る、その後にシンと小猫も続く。一気に演壇まで駆け抜け、演壇から体育館内にあるコートへと降りようとしたとき、そこに敵はいた。

 

「来たわね、グレモリーの下僕さんたち!」

 

 コート内に居たのはシンが思い浮かんだ数字の通り四人。チャイナドレスを着た『戦車』にミラと呼ばれていた『兵士』と双子の『兵士』。

 

「……イッセー先輩と間薙先輩は『兵士』をお願いします。私は『戦車』を押さえます」

「ああ!」

「分かった」

 

 演壇から降りると小猫は一直線に敵の『戦車』へと向かって行く。相手もシンたちと同じ考えなのか、『戦車』は構えて小猫を迎撃する姿勢となり、他の『兵士』は小猫を無視してシンたちに迫る。

 

『Boost!』

 

戦いの始まりを合図するかの様に一誠の『赤龍帝の籠手』から倍加が告げられる。それと同時に耳障りな音がシンたちの鼓膜を震わす、見るといつの間にか双子の手にはチェーンソーが握られており、激しいエンジン音を唸らせて迫ってきている。

 

『解体しまーす!』

 

 物騒な宣言と共に双子は分かれて一誠とシンにチェーンソーを振り下ろす。だが、その速度は合宿で何度も見せられた木場の剣速に比べれば遥かに遅い。

 一誠は身を捩じらせてその攻撃を躱すが、シンは逆に前へと踏み込んで右腕を突き出す。シンの右手首が双子の片割れのチェーンソーを握る手に押し当てる形となって攻撃を未然に防ぐ。だが、それでもチェーンソーの視覚的な威圧感は拭い消えるものではなく、防いだシンの背中には冷たい汗が流れていた。

 

「あー、もう!」

 

 上手く攻撃を決められなかった双子の片方が苛立った声を出してシンとの距離を開けようとするが、それよりも早くシンの左手が胸倉を掴む。

 

「あ」

 

 その先を言う前にシンは双子の片方の足を払う。瞬く間も無いシンの行動に事態についていけないのか呆けた顔をしていたが、それをまじまじと見る間も無くシンはもう片方の双子へと投げ飛ばす。

 

「避けてー!」

「えっ? きゃあ!」

 

 双子同士が衝突し地面へと倒れ込む。シンは持った武器による同士討ちも狙っていたが、相手の方も上手い具合に体勢を変えて最悪の事態は避けていた。だが、そのせいで無理な体勢になってしまったせいか双子はすぐに立ち上がることはできない。

 その隙を逃さず一誠が追い打ちを掛けようとするが、そうはさせまいとミラの棍が一誠に振るわれた。しかし、一誠も特訓成果を発揮し棍の間合いに入る前に床を踏みしめて急停止、棍はその風圧で一誠の前髪を微かに乱す程度であった。一誠も避けられたと分かると前へと踏み出し左手を突き出すが、ミラの方もそれに反応し後方へと下がる。一誠の反撃はミラに指先が触れる程度で終わってしまった。

 

『Boost!』

 

 二度目の倍加が完了した合図。一誠は追撃してくるミラの棍が何処を狙っているのかを視認し、その場所に左手を翳す。

 響く衝突音。その音の後にあったものはミラの棍を掴み、動きを止めている一誠であった。

 

「むっ!」

 

 最初に対峙したときは微動だに出来なかった一誠が、相手の動きを完全に見切り、なおかつ受け止める。それは、一誠の成長を確かのものとする場面であった。

 

「しっかり掴んでいろ」

「お前もしくじるなよ!」

 

 横から現れたシンの言葉に一誠は軽口で返し、棍を握る手に更なる力を加える。シンも右拳を強く握りしめると、それに呼応し浮かびあがる紋様の蛍光が更に輝きを増す。気合いの声も無く無言で拳を棍へと振り降ろす。静かな動作から入ったにも関わらず、拳が触れたと同時に棍は二つに砕け、破片が当たりに散っていく。

 

「っ痛!」

 

 戦う者としてのプライドか最後まで棍を手放さなかったミラであったが、拳の威力は棍を通じてミラにも伝わり、棍を握っていた手が細かく震え、直ぐに戦える状態ではない。

 

「くっ!」

 

 別の方向からも女性の痛みに耐える声が聞こえる。声の方ではチャイナドレスの女性が片膝を着き、荒い息を吐いている。その女性の両腕にはいくつか青痣が出来ていた。それを造った小猫も表情は変わらないものの衣服が何箇所か裂かれており、その下から下着が露わになっているが傷などは無い。

 

「もう! よくもやったわね!」

「絶対、ぜーったい! バラバラにしてやる!」

 

 苛立ちを露わにして双子が再度チェーンソーを振りかざす。

 

『Boost! Explosion!』

「よっしゃあ! いくぜ!」

 

 三度目の倍加を告げられると一誠は力の倍増を一旦止め、その状態を維持する。これにより積み重なっていく負担を抑え、しばらくの間能力が数倍に上昇した状態で戦うことが出来る。

 一誠が床を蹴りつける。それによって前に踏み込むがその速度は双子の数段早い。難なく双子の片方の懐に入り込むと一誠はチェーンソーを握る手に手刀を当てる。

 

「うう!」

 

 倍増した一誠の手刀の威力は一瞬にしてチェーンソーを握る手から握力を奪い、床へとチェーンソーを落とさせてしまう。床に落ちたチェーンソーは床板を抉りながら不規則な動きをしていたが、すぐにその動きを止めて沈黙する。

 片割れを傷付けられたことに怒りを燃やすもう片方の双子が、一誠の背後から胴体に向けて横薙ぎにチェーンソーを払う。一誠はそれを避けようとする気配を見せない。

 グァンという音と共にチェーンソーを持っていた手が上に跳ね上がる。

 

「ああ!」

 

 動揺する双子の目に入ったのは自分のチェーンソーを下から蹴り上げたシンの姿であった。一誠から一歩遅れて距離を詰めたシンは、横薙ぎに振るわれるチェーンソーに躊躇うことなく右足を振り上げ、刃が高速回転するチェーンソーのガイドバーを蹴り上げた。それは、並みの人間には出来ない決断と精神である。

 シンのサポートを見越していた一誠は素早く背後へ振り向くと掌打を繰り出す。それは双子の肩へと当たり、後方の床へと倒れ込ませた。

 それを見た一誠の顔に笑みが浮かぶ。その笑みは合宿中、シンが何度か見た善からぬ笑みである。シンの直感がこれから起きることに警鐘を鳴らす。

 

「ふふふ、準備は整った! くらえ! 俺の新必殺技!」

 

 一誠が高々と左腕を掲げる。

 

「『洋服破壊〈ドレス・ブレイク〉ッ!』」

 

 体育館に良く響く程の音量で一誠が指を鳴らした瞬間、シンの思考は戦闘中では有るまじきことではあるが完全に停止した。しかし、それは無理も無いことであった。何故なら一誠が指を鳴らしたと同時に双子とミラの衣服が下着も残さずに弾けて消え、裸体を堂々と晒すという事態になったからだ。

 刹那の間の後に体育館に響く少女たちの羞恥心に染まった悲鳴。服を消し去った本人はそれを見て満足そうな笑みで鼻血を流し、高らかに自らの能力を説明し始める。

 『洋服破壊』。一誠が元々低い魔力を如何にして上手く活用するかという考えの回答であり、ひたすら頭の中で女性を裸にする妄想を延々とし続けて出来るようになった努力と煩悩の結晶。

 その説明を側から聞いていたシンは完全に引いていた。あの合宿で延々とそんなことを考え続けられる執念。そして、それを妄想で終わらせずきちんと形にする努力。凄いとは思うが何一つ尊敬できない。

 

(凄まじいを通り越して恐ろしい奴だ……)

 

 このときシンは初めて一誠に恐怖に近い感情を覚える。

 

「お前のサポートで上手くいったぜ!」

 

 一誠がシンの方を向き、達成感に満ちた表情で親指を立ててシンを労う。それに対するシンの返答は――

 

「済まないが気安く話しかけないでくれ。――仲間だと思われる」

「えっ!」

「……私にもあまり話しかけないでくださいね」

「小猫ちゃんも!」

 

 




ようやくレーティングゲーム編へと入りました。
まだまだ書くことがありますが、アニメ版が終わる頃までには
二巻の話を終えて三巻の話に入りたいですね。

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