ハイスクールD³   作:K/K

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鈍感、白龍

 翌朝、一誠は昨晩出された命題に一晩中悩み続けた結果、寝不足と脳細胞の一片まで使い切って妄想に深け込んでいたせいで重くなった頭を枕から持ち上げる。少しの間だけ睡眠を取れたが、それでも眠気や疲れは抜けきらない。

 起き上がった一誠は近くに寝ている筈のサーゼクスたちに目を向けるが、既に起きているらしく丁寧に布団が畳んであった。

 一誠も目を擦りながら立ち上がると、眠気を取る為に洗面所へと足を運ぶ。するとそこには既に先客がおり、鏡越しに一誠の姿を見ると振り返り、丁寧に頭を下げる。

 

「おはようございます。兵藤様」

「あ、おはようございます。セタンタさん」

 

 挨拶を終えるとセタンタはその場から一歩横へと移動し、一誠の為にスペースを作る。

 

「どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

 

 礼を言い、セタンタの隣に立つと、一誠は水を出し洗顔をし始めるが、その間ずっと近くに立つセタンタの存在が気になってしょうがなかった。

 

(物凄い目付きで睨まれたよな……)

 

 リアスと一緒に眠れなかった昨晩、いつもリアスと一緒に寝ていると知った途端、射殺すような目でセタンタに見られたが、正直全身の細胞や内臓から熱が奪われていくような寒気を感じていた。木場の師匠の一人であることもあり、戦っているときの木場以上に研ぎ澄まされた殺気をもろにぶつけられ、その場で震え出さなかったのが今思うと奇跡だと一誠は思う。

 その後にサーゼクスから聞いた話によると、セタンタはリアスが幼い頃から、遊び相手やお守りなどをしてとても可愛がっていたらしく、リアスもセタンタを二人目の兄のように慕っていたという。

 その話を聞いたとき、一誠はセタンタが目を光らせる理由に納得はしたが、同時にある疑問も生じた。リアスの幼い頃から知っていると同時に、サーゼクスとの付き合いも長いとのことだが。

 

(一体、この人は今、いくつ何だろうか……?)

 

 そんなことを考えながら、洗顔を終えた一誠は顔を水から顔を出す。

 

「どうぞ、タオルです」

「すみません。ありがとうございます」

 

 手渡されたタオルを受け取り、それで水気を拭いた一誠が鏡を見ると、鏡越しにセタンタと目が合う。咄嗟に何か言おうかと考えたが、思うような言葉が思い浮かばない。すると両者の間で沈黙が流れ始めてしまう。時間にすれば一秒、二秒程度であるが、若干セタンタに対して苦手意識を持ってしまった一誠にはその一秒、二秒が何百倍にも感じてしまった。

 

(な、何かを言わなければ!)

 

 間に耐え切れず必死になって話題を考える一誠。セタンタの姿をよく見て何か話題にすることは無いかと考えた挙句、出てきた言葉は――

 

「そ、そのマフラー素敵ですね!」

『いきなり何を言ってるんだ……相棒』

 

 ドライグも呆れる程、突拍子の無い言葉。そもそもマフラー自体、出会ったときからセタンタは巻いているので、今更過ぎるものであった。

 ただ自分から言っておいてであるが、四六時中マフラーを巻いているセタンタの姿は確かに気になっていた。夏に入り熱くなってきているにも関わらず、セタンタはマフラーを外さず、食事のときも汚さず器用に、マフラーの下からものを食べるという、奇怪な行動をとっていた。マフラーの下に傷などの、人前に見せるのが余程嫌なものを隠しているのであろうと一誠は考えていた。

 

「――別に特別なものはありませんよ」

 

 そんな一誠の心を簡単に読み取って、セタンタは巻いていたマフラーをずらす。するとセタンタが言った様に傷などの目立つ者は無く、形の良いすっきりとした唇があるだけであった。上から半分見ただけでも中性的な色白の美青年であったが、顔全体を見るとその整った容姿はより完成度を見せる。

 一誠の中で二枚目の代名詞というべき顔は木場であったが、それと互角以上の顔の持ち主であった。

 

「あ、すみません!」

 

 突拍子も無いことを言った挙句無遠慮に眺めてしまっていたことを謝罪するが、セタンタはマフラーを戻しながら気にしないで下さい、と頭を上げる様に言う。

 

「旦那様に拾われる前からこのように身に付けていたせいか、無いと落ち着かないのですよ」

 

 セタンタの目が細まり目尻を下がる。苦笑している様子であった。そんなセタンタの姿を見ていると、生まれた苦手意識が徐々に弱まっていく。故に一誠は一大決心をして、セタンタにある質問をした。

 

「セタンタさんは、その、サーゼクス様とはかなり長い期間一緒に居る訳ですよね……?」

「ええ、まあ」

「なら……やっぱり、リアス部長のことも小さい時から知っているんでしょうか?」

 

 昨日、一誠の家にサーゼクスたちが泊ったときに見せた、リアスの表情。サーゼクスは実の兄であるから、毅然とした顔の中にも、身内にしか見せない柔らかさの様なものがあった。だが、それをセタンタにも向けて見せているのを、一誠は何度も目撃している。

 一誠自身、リアスから可愛がられており、そのときにしか見せない甘い表情を毎晩、毎朝見ているが、それでもセタンタに見せる顔は初めて見るものであった。

 みっとも無いと自覚しているが、それを見て嫉妬に近い感情を覚えてしまう。もしかしたらセタンタはリアスにとって身内以上の存在なのでは、と下衆な勘繰りをしてしまい、自己嫌悪もしてしまう。

 ならばいっそ、セタンタの口からこの疑問の答えを聞こうと思い、今口にしてしまった。が、やはり直接聞くには勇気が足りず、遠回しな質問へと変化してしまったが。

 

「そうですね……確かに知っています」

 

 一誠の不自然な質問に対し、セタンタは特に聞き返すことなく素直に話し始めた。

 

「昔から聡明な方でした。自分が生まれた家の名の重さや兄であるサーゼクス様の存在を理解し、それに恥じない様に自分を鍛えることが出来る子でした」

「へぇ、やっぱりそうだったんですか」

 

 昔も今もあまり変わらないリアスに一誠は納得する。

 

「――ですがその反動と言いますか、少しでも早く成長したいと願っていたこともあって、あまり旦那様や奥方様、そしてサーゼクス様に年相応に甘えることが少なかったですね」

 

 甘えるリアス。そう言われると一誠は自慢の妄想力を以てしても、はっきりとその姿を思い描くことが出来なかった。どちらかと言えば一誠の方が甘える側であるため。

 

「そのこともあってかリアス様は自分の眷属には友人、あるいは兄弟、姉妹のような感覚で接していますね。このようなことはあまり声にして出したくはないのですが、置かれている立場もあって自分の齢に近しい友人が中々出来なかったものですので」

 

 セタンタの言葉を聞いて一誠は意外だと思ったが、よくよく考えてみるとリアスが友人として接している姿を見たのは朱乃かソーナぐらいしかいない。他は遠くから憧れや尊敬の眼差しで見ている連中、偶にリアスから話しかけられていることもあったが、誰もが恐れ多いといった様子で、目も合わせず口早に会話を済ませ、逃げる様に去って行く。聞かれた立場からすればきっと、喋りかけられた名誉でその日一日有頂天でいられるであろうが、リアス側からすればどう映るのか。

 かく言う一誠もほんの少し前までは遠巻きから眺めている連中の一人に過ぎず、リアスなど雲の上の様な存在だと思っていた。

 

(あのときともう違うけど、なら俺も大事な弟の一人ってことかなー、それはそれでいいけどちょっと残念というか、でもな……)

 

 出来ればそれ以上になりたい、という思いはあるが、今の自分には遠い未来だと考える。実際にはその願っている枠の中に既に納まっているのではるが、煩悩は人一倍所ではないが恋愛経験に関しては動植物にすら劣る一誠はまだ気付いてはいない。

 

「ですが本当は誰かに優しく接するのではなく、自分の方が甘えられる相手を求めているのかもしれません。リアス様の御守りをしていたときにそのようなことを度々感じていましたので」

(部長が甘えられる相手か……)

 

 それはきっと、心も体も優れている相手でないと務まらないと一誠は考えた。そして同時に、その二つは自分にとって足りないものであるという自覚もある。リアスを振り向かせるにはまだ遠い道のりだと思い胸中で溜息を吐いた。

 

「俺も朱乃先輩や木場、小猫ちゃんみたいに部長に可愛がられているだけですから……程遠い話ですね」

「はあ?」

「え?」

 

 一瞬、セタンタは一誠が何を言っているのか理解出来ないという表情をし、一誠も何故そんな顔をされるのか分からず戸惑う。そのままセタンタは眉間に皺を寄せて考えるような仕草を見せた後、一誠に向かってこう言う。

 

「今の部分は無かったことにしましょう。私も忘れますので貴方も忘れてください。いいですね?」

「は、はい」

「では話は戻して――ですが本当は誰かに優しく接するのではなく、自分の方が甘えられる相手を求めているのかもしれません。リアス様の御守りをしていたときにそのようなことを度々感じていましたので」

「えーと、ならセタンタさんは部長にそんな相手が出来たらどうします?」

 

 強引に会話を戻されるが、一誠も何故かと深くは追及せず、取り敢えず何気ない好奇心から出てきた質問を出した。

 

「リアス様が選んだ相手ならば私は文句など言いません――ただし」

 

 口調が変わった訳では無い。だがその『ただし』という言葉をセタンタが口にした途端、背筋が凍り付くような恐怖が一誠の中で渦巻く。目に見えざる凄まじい圧力が、先程まで穏やかであったセタンタから発せられていた。

 

「その選んだ相手の行い次第ではこちらもそれ相応の態度をとるかもしれませんね。例えば唇を奪う、これは別に仕方の無いことです。恋愛にとってそれは付き物ですから。身体を交える、これも愛し合うものならば避けては通れない道ですのでしょうがないです。別の女性と付き合う、あまり感心はしませんが悪魔には異性を囲む風習があるので一概に切り捨てることはできません。なによりもリアス様が納得していればとやかく言うつもりはありません――百歩譲って」

 

 淡々と並べられていく言葉に一誠はただ慄く。言葉を挟むことすら阻んでしまう程の圧迫感。薄皮一枚越しにそれを浴びせられているせいで下手なことも言えない。言ってしまうとその薄皮を裂いてしまいそうな気になる。

 

「ですが今挙げられたことを全部行った挙句にリアス様を捨て、あまつさえ泣かせることがあったならば……」

「……あったならば?」

 

 一誠は思わず息を飲み込む。

 

「私の手で直々に去勢して差し上げますよ」

「そ、そうですか……」

 

 体のある一部分が縮まっていくのが分かる程、セタンタの言葉は深く重く凄みのあるもであり、一誠もただ形式的な言葉をいうことしか出来なかった。

 

「……まあ、そんな男が現れたら、という仮定の話ですので特にお気になさらず」

「は、はい! そんな奴が現れなければいいですね!」

「――では失礼します」

 

 顔色を蒼褪めさせている一誠に一礼した後、セタンタはその場から去って行った。しばらく移動し、一誠の母、グレイフィア、リアス、アーシアたちが朝食の準備をしている居間付近で足を止める。

 

「彼との会話はどうだったかい? セタンタ」

「……俺の想像していたのとは違っていた」

 

 身だしなみを整えたサーゼクスが壁に背を預け、先程まで一誠と会話をしていたセタンタに感想を問う。

 

「と言うと?」

「ハーレム王になりたいなんていう阿呆みたいなことをほざいている割には肝心のリアスの好意にてんで気付いちゃいない。女をはべらせたいくせに何なんだあの鈍感さは……」

「やれやれ……セタンタ、君は肝心なことを理解していないみたいだね」

 

 額に指を当て、察しの悪い相手に頭を痛めるような動作をするサーゼクス。その姿に若干腹立たしいものを感じて顔を顰めるが、セタンタは大人しくサーゼクスに自分が見落としていることについて聞いた。

 

「……で、何だ? その肝心な部分と言うのは」

「いいかいセタンタ、彼はね……」

 

 妙に溜めた後にサーゼクスは言い放つ。

 

「モテたことがないんだ!」

 

 真顔でそんなことを言い切られ、セタンタは反応できず黙ってしまう。

 

「彼は女性に対して人一倍の関心を持っている。だがモテたことが無い、それ故に多くの女性を囲むという夢を持った、恐らくモテなかった反動で。しかし運命が巡り巡って彼にもその夢を叶える機会がやってきたが、当の本人は全くそのことに気付いてはいない。何故なら他者から恋愛感情を向けられたことがないから、すなわちモテたことが無いから!」

「……お前、実はあいつのこと嫌いなんじゃないよな? 本人が聞いたら確実に傷付くぞ」

 

 あまりにモテたことがないと強調するサーゼクスに、流石のセタンタも一誠に対して同情的になる。

 

「寧ろ好ましく思っているよ。リアスの恋の成就も応援したいと素直に思っている。君だってあまり口にはしないけど、ライザー・フェニックスとの結婚を白紙にしてくれたことに内心感謝している筈だよ」

 

 実際に助力もしていたこともあり、痛い所を突かれたセタンタは憮然とした表情となる。

 

「……それでもリアスの好意が空回りしているようで気に入らない」

「君は本当に生真面目だね。あれこれ心配するのは間違ってはいないけど、だからといって外野が必要以上にどうこうするのは頂けないな。どうなるか長い目で見ようじゃないか、私も君も」

 

 妹の色恋について、自分たちは必要以上に関わってはいけないと主張するサーゼクス。セタンタも自分が過保護なことをしていると自覚があるのか、溜息を一つ吐く。

 

「お前とリアスの意志を尊重するよ。これ以上はあいつには何も言わない。――ただし、俺はやると言ったのなら必ずやる。あいつが泣かせるような真似をしたのならな」

「そのときは君の好きなようにすればいい。まあ、私はそんな事態は来ないと予想するがね」

 

 

 

 

 夏へと入り、空から降り注ぐ太陽の光もより強くなってきた。何もせずとも皮膚から汗が滲み出て来る程の暑さを感じ、夏の訪れをより実感する。

 そんな燦々とした太陽の光が照らす下で、シンは生徒会の仕事である花壇の花への水やりを行っていた。

 本日は休日であり、本来ならば担当の係がいるが、偶々今日はオカルト研究部がプールを先に使用してもいいという条件で生徒会からプールの掃除を頼まれており、ならばついでにということでシンがそれを引き受けていた。

 ここ数日はサーゼクスたちの見聞という名の人間界観光に付き添っており、ようやくそれも一段落したところである。

 後からプールに来るようにとリアスから言われ、シンはピクシーとジャックフロストをリアスたちに預け、独り黙々と、花壇に植えられた花々にホースから出る水を与えていく。

 ただ水を撒くという行為でも既に額からは汗が流れ落ち、背中も汗で服が張り付き不快感が伴う。

 大きな学園である故に水を与える場所が多く、かなり時間をとられてしまうが、それでもシンは愚痴一つ溢さずに作業を続けていた。

 

「こんな暑いのに精がでるな」

 

 ホースで水を撒いているシンの横に、麦わら帽子を被り、浴衣を着た男性が話し掛けてくる。一見すると用務員のような男。その男はシンの側でしゃがみ、花壇に生えた雑草を毟っていた。

 

「まあ、仕事なので」

 

 無難な返事を返すシンに、男は麦わら帽子の下で笑う。

 

「しかし日本って国は湿気が強いな。時間つぶしには持って来いな娯楽は沢山あるのに、この暑さだけは慣れねぇな」

 

 男の口振りから、日本以外の国に住んでいた経験があるようだった。

 

「確かに慣れていないと日本の夏は蒸し暑くて厳しいかもしれませんね」

 

 花壇に撒いた水もすぐに気化し、熱を持って蒸発していくので、より湿気を帯びた暑さを感じる。

 

「ところで貴方は何処の出身なんですか?」

「ん? ああ、日本の夏に慣れていないって言ったからか。まあ確かに外国生まれではあるが……」

「そうじゃないですよ」

「へぇ、じゃあどういうことだ?」

「天使か堕天使、どちらなのか聞いているんですよ。悪魔と堕天使には会ったことはありますが、少なくとも貴方からは悪魔の気配はしないんで」

 

 天使は会ったことないのでまだどういう気配かは知りませんが、とさも世間話でもするかのように尋ねるシンに、麦わら帽子の男は肩を震わせる。帽子のせいで表情は見えないが笑っているようであった。

 

「くくくくく。お前の知り合いは何度も会っても俺の正体に気付かなかったっていうのにな」

 

 知り合い。何度も。正体は天使かあるいは堕天使。それらのことを組み合わせると一人の人物が浮かび上がってくる。

 

「……貴方がアザゼルか」

「ご名答。初めましてだな。俺が堕天使たちの頭をやっているアザゼルだ」

 

 麦わら帽子を指で押し上げる。そこでシンは初めてアザゼルの顔を見た。シンが想像していたよりもずっと若く、どう見ても二十代ぐらいの若者にしか見えない。ただ、顎に生やした髭や後ろへ軽く撫でつけた髪型のせいで少し年齢が増して見え、それすら無くしてしまうと更に若く見える。

 

「何をしにここに?」

 

 顔は花壇の方へと向けながら目線はアザゼルに向けられ、片手はホースを掴みながら、シンは相手の見えない位置で固く拳を握りしめ、いつでも振るえる準備をする。

 

「そう固くなるなよ。ただ、うちのやんちゃ坊主が俺の言うこと聞かずにこの学園に行きたいって我儘言うから、勝手な真似をしないか見に来ただけだ。別に争う気は無い」

 

 にやりと悪戯小僧のような笑みを浮かべながら、シンが戦う準備をしていることを見透かしての言葉。

 

「そう簡単に信じると?」

「当然の反応だ。見た目通り冷静だな。仮にも堕天使の総大将を前にして」

「それはどうも」

 

 アザゼルの言葉を一応褒め言葉と受け取り、口だけで礼を言う。

 シンは顔を動かさず目だけを動かし周囲を探る。アザゼルが言った様に堕天使を纏めるという立場、護衛が付いていてもおかしくは無いが。

 

「今は俺一人だけだぜ」

 

 考えを先読みしたアザゼルが笑いながらそれを否定した。相手の言葉をそう易々と鵜呑みにはしないシンであったが、どういった訳かアザゼルの言葉には、根拠は無いが説得力の様なものが感じられる。それこそ長く生きた者に与えられる貫禄と言葉の重みなのかもしれない。

 

「……それで貴方はここで何をしているんですか? 貴方の言うやんちゃ小僧の付き添いなら俺に話し掛ける必要は無いと思いますが?」

「あいつみたいにつれない態度をするなよ、傷付くぜ。こんな炎天下に一人黙々と作業している若者がいるからつい老婆心で手伝ってやろうとしたまでよ」

「信じられないですね」

「かー、嫌だね。今時の子供は素直に相手を信じる心が失われている。これがゆとり教育の弊害って奴か」

「貴方がそう思うならそうじゃないですか」

 

 わざとらしく嘆くアザゼルに、シンは冷え切った声で素っ気なく対応する。

 

「本当につれないな。俺が何て言ったら信じてくれるんだか……」

「例えば……コカビエルの敵討ち、と言うなら信じるかもしれませんね」

 

 『神を見張る者』の大幹部であるコカビエルとアザゼルは長い付き合いがあり部下でもある。

 シン、リアスと眷属たちでコカビエルと戦った。戦闘不能に追い込んだのはシンである。おまけに象徴というべき黒翼を引き千切り、両手も使用不能にした。何らかの感情を持たない筈が無い。

 直後、真夏の空気が瞬時に冷気と化す。

 

「ほう……」

 

 薄く笑うアザゼルを中心にして、場が一気に支配されるような錯覚を覚えた。外気など気にならなくなるほどの存在感、そして威圧感。それは闘争と狂気に憑りつかれたコカビエルと同等以上のものであった。

 

「もし本当に俺の目的がそれなら、お前はどうする?」

「戦うでしょうね。今、この場で」

 

 迷いも無く答えるシン。それを聞いたアザゼルの反応は――

 

「はっはっはっはっはっはっはっはっはっ!」

 

 ――爆笑であった。このとき、先程までの雰囲気が演技であったことを悟る。

 

「敵討ちね……寧ろ俺としてはあいつを叩きのめしてくれたことに感謝しているぐらいなんだけどな」

「感謝?」

「最悪な事態は避けられたからな」

「全面戦争の回避ですか?」

「それもあるが、俺個人にとっての最悪の事態さ。まあ、もう罰せられた奴には関係の無いことだがな」

 

 あのとき、白龍皇を差し向けてでも、コカビエルをあの場から強引にでも救い出すのが目的だと考えていたが、どうやら少し想像と違っているらしい。

 

「……コカビエルはどうなったんですか?」

「地獄の底の底で凍り付けになって眠っているさ。自力では永久に起きることのない眠りにな。――せめてもの情けに『アイツ』の近くで寝かせてやっている」

 

 最後の部分だけはシンの耳にも届かない程小さく、殆ど口を動かしているだけであったが、それを呟いているときだけはアザゼルの顔から笑みが消えていた。

 

「まあ、最期に追い求めていた奴の『同類』と戦えたんだ。少しぐらいは鬱憤も晴れていただろうな」

 

 何気なく言ったアザゼルの言葉に、シンは鼓動が早まるのを自覚した。コカビエルの追い求めていた存在の『同類』。それについては一つしか心当たりが無かった。

 

「それは……どういった意味ですか……?」

「既に自覚はあるんだろう? 『魔人』の間薙シン」

 

 手に持ったホースが無自覚に籠った力で潰れ、放水していた水が拡散していく。今まで視線は花壇から離さなかったが、聞き捨てならない言葉にシンは初めて、アザゼルを正面から見た。

 

「惚けようが誤魔化そうが意味ないぜ。過去に『魔人』と会った奴ならきっとお前の正体に気付く。忘れようとも忘れられないアイツらとお前は同じ気配を纏っているからな」

 

 有無を言わさないアザゼルの断言。シンはそれを聞いても沈黙していたが、やがてアザゼルから目を離す。いつの間にかホースを握っていた手も緩められていた。

 

「意外と冷静だな」

「コカビエルに言われたときからある程度は。……それでもあまり自覚は無いですけど」

 

 ふーん、と取り乱さないシンの横顔をアザゼルは眺めていたが、そのうち立ち上がり、そのままシンに背を向ける。

 

「さて、俺の下らない話に付き合ってくれてどうもありがとよ。そろそろ御暇させて貰うわ。やんちゃ坊主に目を光らせておかないといけないしな」

 

 アザゼルは振り向かず、後ろに立つシンに手を振りながら離れていく。

 

「では、また」

 

 いずれ顔を合わせるかもしれないと予感しての、再会を暗示させる別れの言葉。

 

「おう、またな。――ああ、そうそう言い忘れていたが一応周りに注意を払っておけよ。『魔人』って奴らは色々な相手に怨みをかっているからな。」

 

 アザゼルも似た予感があったのか同じような挨拶をし、そして不穏な言葉を残して去って行った。

 姿が見えなくなってから、シンは深く長い溜息を吐く。一応は冷静な表情を努めていたが、サーゼクスと同様の上に立つ者特有の存在感のせいで、それに触発された緊張で口の中が乾いていた。ホースもアザゼルと話しているときからずっと動かず、同じ場所ばかりに水を撒いていたせいで一か所だけ大きな水溜りになっている。

 無意識に入った体の力を緩めながらシンは、こうも短期間で立て続けに大物たちと出会うものかと考える。

 大きな力に引き寄せられているのか、あるいは少々自惚れた考えではあるが自分が引き寄せているのか。どちらにしろ、幸不幸を感じるより先に疲れを覚える。

 

(少し頭を冷やすか……)

 

 リアスの誘いを思いだし、シンは体から滲み出る汗と共にこの重い気分を流そうと考え、仕事も一段落終えたのでリアスたちのいるプールを目指す。

 その道中の間、シンはアザゼルと会ったことをどう話そうか考えるのであった。

 

 

 

「あら、やっと来たのね」

 

 プール場に来たシンに出迎えの言葉を掛けたのはリアスであった。プール場に居るので格好は制服では無く、学校指定外の赤いビキニタイプの水着を着用し、プールサイドに置かれているビーチチェアの上に腰掛けていた。

 

「遅くなりました」

「あらあら、間薙くん。汗が凄いですよ」

 

 つい先程まで炎天下にいたシンを見て朱乃がいつもの笑みを浮かべている。やはり朱乃の格好も水着であり、リアスと同じタイプの水着を着用していたが色は対照的な白であった。リアスと朱乃、年齢離れした二人の色気ある格好は、シンの知り合い兼一誠の悪友である二人が見れば即昇天するであろう。

 

「――とりあえず一時休戦としようかしら?」

「――私は構わないですよ」

 

 二人笑みを浮かべているが纏う気配は刺々しく、どうやらシンが来る少し前まで何らかが原因で揉めていた様子であった。

 視線を少し動かすと、同じくビニールシートの上にアーシアがいた。二人とは違いこちらは、学校指定のスクール水着を着ている。既に泳いだ後なのか髪が濡れて体に張り付いており、そしてアーシア自身も泳ぎ疲れたのか無防備な姿で眠っている。

 その近くでは日陰で小猫が本を読みながら座っていた。こっちもアーシアと同じ格好をしている。シンの視線に気付き、小猫は軽く頭を下げて挨拶をしてきた。

 

「あ、やっとシンも来た」

 

 声の方に目を向けると、プールの端でピクシーが、アーシアの使い魔である蒼雷竜のラッセーと一緒に泳いでいる。正確に言えば、犬かきで泳ぐラッセーの背にピクシーが乗っているだけであるが。

 

「ヒーホー! お先に楽しんで居るホー!」

 

 更にその近くには、特別に用意されたビニールプールに浸かっているジャックフロストが居る。どこで手に入れたのかお子様用のサングラスを掛け、いつもの二又に分かれた帽子では無く水泳帽を被っている。

 

「一緒に入るかホー」

「……遠慮しておく」

 

 ジャックフロストの誘いをシンは断る。別に子供用のビニールプールに入るのが恥ずかしいからではない。理由はジャックフロストの入っているプールから立ち昇る白い煙。それは湯気ではなく冷気である。

 常温の水に入るのすら嫌がるジャックフロスト。彼が水などに体を浸かるとき、必ずその水は零下を下回り、凍り付く寸前の温度まで引き下げられる。現にジャックフロストの入っているビニールプールにはいくつもの氷が浮かんでおり、触れれば凍てつくような温度であることを明確に示していた。

 

「そうかホ」

 

 断られたジャックフロストは特に気にした様子も無くビニールプールに背を預け、気持ちよさそうに冷水を堪能する。

 

「やあ、間薙くん。お仕事ご苦労様」

 

 労いの言葉を掛けるのは木場であった。下は学校指定の水着を履いているが上は白のパーカーを着ている。

 

「今日は日差しが強いね。早く間薙くんも着替えて泳いだらいいよ。あ、そうだ。日焼け予防にオイルでも塗ろうか、僕が」

 

 何処か嬉々とした様子で、普通同性から同性へと言わない様なことを提案する木場にシンは黙ってしまう。

 一誠も言っていたことであるが、聖剣絡みの事件以降木場の態度がおかしい。共に命懸けの戦いをし、過去を乗り越えたせいか一層親しげになってきた。別にそれ自体悪いことではないが、流石に面と向かって木場から『君は僕の大事な仲間だ。君の為なら僕は何だって出来る』と真顔且つ熱く宣言されたときには、シンはどう反応していいか内心戸惑ったものである。一誠も似たようなことを言われ、全身から鳥肌が立ったという。

 

「……いや、日焼けし難い体質だから大丈夫だ」

「そうなんだ……」

 

 シュンとした様子で何故か残念そうな表情となる木場。他人に対して献身的になること自体、決して悪いことではなく寧ろ褒められるべきこととではあるが、どうにも木場の献身さは度が強い気がしてならないとシンは思う。

 

(変なことにならなければいいんだがな……)

 

 拭いきれない不安を覚えながら、シンは着替えようと男子用の更衣室に向かおうとしたとき、あることに気付く。

 見回した面々の中に足りない人物が二人、一誠とゼノヴィアである。

 その組み合わせにあまり良くない予感を覚えつつ、何処に行ったのか取り敢えずピクシーとジャックフロストに尋ねる。

 

「んー? イッセーとゼノヴィア? ゼノヴィアなら見たよー」

「オイラもイッセーは見たホー!」

「二人はどうしたんだ?」

「ゼノヴィアはプール掃除が終わった後、何か一人で水着を着る為に更衣室以外で着替えてたよ。ちょっと覗いてみたけど腕の通すとこから頭通してたりして苦労してた。それを見られるのが恥ずかしかったのかも」

「イッセーはリアスにペタペタ塗ってたら朱乃が来て言い争いになったホー。それでイッセーは怖がって逃げたんだホー」

 

 リアスと朱乃が来た時に刺々しい雰囲気だったのはそれが原因であるらしい。

 

「それでゼノヴィアは何処で着替えているんだ? イッセーは何処に行ったんだ?」

『あそこ』

 

 同時に指差すジャックフロストとピクシー。その二人が指した先にあったのはプール用具室であった。

 良くない予感が嫌な予感へと変わる。

 シンはあまり気乗りはしなかったが、一応の確認と用具室前へと移動する。シンの様子を見て何か面白いことでもあると判断したのか、その後ろをピクシーとジャックフロストが付いて来る。

 扉の前へと立つシンたち。耳を澄ますと聞き取りにくいが、確かに中から二人分の会話が聞こえてくる。

 ドアノブを握り一気に引く。

 

「抱いてくれ」

 

 用具室の中に入った瞬間、耳に入ってきたのがその一声であった。

 

「ん?」

「あっ」

 

 中で待っていたものは、顔を真っ赤にしているどころか鼻から血を流している一誠と、上半身を露わにしているゼノヴィアであった。

 入って来た時に聞いたゼノヴィアの声と今の格好。そして一誠の間の抜けた顔、大よその察しはついたが一応念の為にシンは聞いておく。

 

「……何をしているんだ?」

「こ、これは!」

「見ての通りだ。今から私とイッセーは子供を作ろうとしている」

 

 言い訳の言葉でも並べようとしていた一誠の足掻きも、直球過ぎるゼノヴィアの言葉で軽々と粉砕される。

 

「その理由を聞いても……?」

「今まで私には宗教という枷を掛けて生きてきた。別にそれ自体を後悔している訳では無い。だが今はそれを捨て去り悪魔となって転生を果たした。ならば今まで出来なかった女としての本分を全うしようと思ったんだ。そう、女として正しく生きてみたくなった」

 

 上半身を恥ずかしげも無く晒しながら『女として生きる』ことを語るゼノヴィア。今の彼女は言っていることとやっていることがずれていることに気付いているのであろうか。

 

(前に恥じらいやモラルなどを学べと言ったんだがな……)

 

 そんなことを考えているシンを余所に、ゼノヴィアは聞いてもいないのに話を先に進めていく。

 

「そして生まれる子には強く立派になって欲しいとも思っている。だからこそここは伝説の存在である赤龍帝が適任だと思い誘ったんだ。もしかしたら『赤い龍』の力の一端を授かるかもしれないからな」

 

 名案でも語っているかのように一人喋るゼノヴィア。シンはちらりと一誠の左腕を見た。

 

「種馬ならぬ種龍か……」

『おい。今、お前なんて言った?』

 

 ぼそりと呟くシンの言葉に、一誠の左腕に宿るドライグが噛みついてくる。

 

「別に何も」

『嘘付け! 聞き捨てならないことを言っただろう!』

「褒め言葉だ」

『絶対に嘘だ!』

 

 プライドを揺るがされるような一言を言われて怒るドライグを無視し、シンは一誠の方に顔を向ける。

 

「それでお前はここで誘惑されていたという訳か? ――流されやすい奴め」

「――面目ない」

「とりあえずその鼻血を拭け」

 

 自分の断りきれないスケベな性根を実感しているのか、脱力した様子で流れ出ている鼻血を手で拭う。

 そこにやってくるピクシーとジャックフロストの二人。二人はにんまりと口の端を大きく吊り上げて笑うと一誠の顔を覗き込むようにして尋ねる。

 

「ねぇねぇ。イッセーとゼノヴィアはここで何してたの?」

「ヒーホー! 教えて欲しいホー!」

「なっ!」

 

 止せばいいのにわざわざ詳細について尋ねる。用具室の中で何が起きていたのか察してはいないだろうが、こうすることで相手がどんな反応を示すか楽しんでいる。特に一誠は反応が大きく愉快なので、ピクシーとジャックフロストにとって格好の玩具となっていた。

 

「ねぇねぇ何してたのー?」

「何をしてたんだホー?」

「そ、それは……」

「ねぇねぇ?」

「教えてホー」

「止めろぉ! 止めてくれぇぇぇ! そんな純真な眼で今の欲望に染まりきった俺を見ないでくれぇぇ!」

 

 映画かドラマの悪役を彷彿とさせるセリフを言いながら悶える。ああやって律儀に反応して見せるせいで二人が面白がって更に悪戯をするのだが、当の本人は気付いてはいない。それが一誠の良い点なのかもしれないが。

 

「まあ、そういうことだ。済まないがここは空気を読んではくれないか?」

 

 このような状況になってもまだ続きをしようとするゼノヴィアに、シンは深く溜息を吐きながら持っていた水着などが入っているバックを開き、中からロングタオルを取り出す。

 

「まずは上を隠せ」

 

 そしてそれを躊躇う事無くゼノヴィアの顔面に投げつけるのであった。

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 何度目か分からない溜息を吐きながら、シンはピクシーとジャックフロストを連れて校舎の見回りをしていた。

 あの後、用具室の騒ぎを聞きつけリアス、朱乃、小猫、アーシア、木場が現れ、一層騒ぎが激しさを増した。特に女性陣の反応は凄まじく、笑顔で嫉妬の怒気を放ったり、涙目になって何かとんでもないことを言い掛けたりなどし、収拾がつかなくなったのでシンは全てのことを一誠とゼノヴィアに放り投げて、一足先にプールから退散をした。

 流石に色恋沙汰などに首を突っ込む気にはならず、取り敢えず自覚の無い当人に全て背負ってもらうことにした。

 

(まあ、きっとあいつは何で怒られているか自覚はないだろうがな)

 

 問題の原因となっている一誠の鈍感さは、本人以上にシンは理解している。ハーレム王になると息巻いている本人がそれに限りなく近くにいて気付かないのは滑稽というべきか、哀れというべきか、それとも阿呆というべきか。

 結局、プールにも入らずごたごたのせいでアザゼルのことについても話しそびれた。だが今晩、悪魔の仕事も入っているのでそのときにでも話そうと思い、校舎の見回りを続ける。

 そのとき正面から、一人の少年がこちらへと向かって歩いてくる。

 一目見てその少年は異質であった。銀髪の髪に蒼い目といった異国の色を出していたが、そんなことが些細に思える程、ありとあらゆる顔の作りが黄金比で出来ているのではないかと思わせるぐらいに完璧なものであった。

 現実世界から一つ上に浮き出たような存在。それが少年を見たシンの第一印象であった。

 向かって来る美少年はシンを見て微笑むと軽く頭を下げる。それを見たシンも同じく頭を下げ、両者そのまますれ違っていく――かに思えた。

 刹那、背から心臓へと突き抜けていく悪寒。それが何度も浴びたことのある殺気だと判断し、瞬時に反応したシンは一気に力を解放すると、同時に踏み込んでいた右足を軸にして背後へと半回転しながら拳を振るう。

 だが振り向くと同時に一切構えず背を向けたままの少年の姿が目に入り、拳は少年の側頭部を撃ち抜く直前に急停止をした。寸止めをされた拳圧で少年の髪が揺れる。

 

「良い反応をするじゃないか」

 

 突如殴り掛かったシンに怒りを向けるのではなく、シンの行動を讃える少年。

 シンは理解する。自分がこの少年の殺気のみで動かされたことに。

 

「綺麗な色だ。そして輝きも強い。近くで見ると改めてそう思う」

 

 少年を振り返り、寸止めしていたシンの手を掴み、シンの手に浮かび上がる紋様をそう称する。

 一瞬、腕を引っ張ろうと考えたが、掴む手からは想像出来ない凄まじい膂力が込められ、それを阻む。

 

「君とも一度、こうやって素顔で話してみたかった」

 

 その言葉にシンは目の前の人物が誰であるか大よそ見当がついた。

 

「アザゼルが言っていたやんちゃ坊主はお前か」

「やんちゃ坊主? ふふふふ、とっくにそう呼ばれるような齢じゃないんだがな。アザゼルらしい」

 

 愉しげに笑う少年。きっとこの少年の名は――

 

「俺にはヴァーリという立派な名があるんだがな」

「――お前が白龍皇か」

「そう。俺が現白龍皇――『白い龍〈バニシング・ドラゴン〉』だ」

 

 シンと白い龍、このとき初めて邂逅する。

 




シンと原作の地の文は二十代と書かれているけど挿絵とアニメのCVのせいであきらかにそれ以上の年齢に見えるアザゼルとヴァーリとの出会いの話でした。
次ぐらいに幕間で少しだけ出た彼らが出せそうです

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