ハイスクールD³   作:K/K

76 / 190
選択、進路(中編)

 眼前に迸る魔力の光。至近距離から放った全力の一撃は間違いなく直撃した。一誠はそう確信していた。

 ――が、次に腹部から背に突き抜ける衝撃で、その確信も霧散する。

 

「がはっ!」

 

 耐え切れず両足が地面から離れ、十数メートル離れた位置に生える木の幹に背中から叩き付けられた。

 咳き込む一誠。その時吐く唾には赤いものが混じっている。

 

「ひどいことするにゃー」

 

 光の収まった場所では黒歌が平然とした様子で立っていた。

 

「乙女の柔肌に傷を付けるなんて最低だにゃ」

 

 着物から覗く黒歌の白い腕の一部が火傷の様に赤く染まっている。確かに一誠の攻撃は届いていた。しかし、黒歌を倒すには至らなかったのだ。

 

「無駄な抵抗をしなければ優しく殺してあげたのに――」

 

 黒歌は一誠から受けた傷に舌を這わせる。

 

「――そんなに惨たらしく死にたいのかにゃん?」

 

 殺意で冷たく濡れる黒歌の瞳を見た時、一誠の背筋に悪寒が走る。そして、反射的に腕を掲げた。

 途端、背後から何かが首に巻き付き一気に締め上げられる。腕を掲げていたおかげで指が挟まり完全に絞まることは無かったが、それでも呼吸が途絶えそうになるほどの力で圧迫される。

 僅かに視界に映ったそれは変哲も無い植物の蔦だったが、黒歌の気の影響を受けて人を軽々と持ち上げ、尚且つ絞め殺す程の強度を得ていた。

 頸部への圧迫が、今度は上向きになる。その途端全体重が首へと掛かり、首の骨が外れそうになる。

 

「ッツ!」

 

 圧迫された声帯では苦悶の声すら上げることが出来ない。爪先が辛うじて地面に触れているだけで支えにもならない。

 常人ならばとっくに意識を失っていてもおかしくはなかったが、何とか一誠は意識を繋ぎ止めていた。しかし、徐々に端から黒くなっていく視界に命の危機を覚えるものの、流れが滞っている思考では上手い脱出の方も思いつかない。

 一誠の命は刻一刻と尽きようとしていた。

 

「イッセー!」

 

 絞め殺されようとしている一誠の姿にリアスは叫び、あらん限りの力を以て襲い掛かっていた花の刃を消滅させる。

 一気に魔力を消費したことで立ち眩みを感じたが、それを捻じ伏せて一誠の救助へと向かおうとした。

 

「え?」

 

 前触れも無くリアスは膝から崩れ落ちる。すぐに立ち上がろうとするも、手や足に力が入らず立ち上がれない。

 

「な……に……これ……は……?」

 

 舌も上手く動かない。全身から力が抜けていた。

 

「……う、く……これは」

 

 小猫もまた、リアスと同じ様に膝を突いて苦しがっていた。

 身体の自由が効かなくなった時になって初めて気付く。この場一帯に薄い霧が立ち込めていることに。

 

「気付いたかしら? この霧は、悪魔や妖怪だけに効く毒霧にゃん。その気になれば夢見る様に死なせてあげることも出来るけど、貴女たちは後後。そこで赤龍帝が縊り殺されるのを見届けるにゃん」

 

「ふざけ……ないで……!」

 

 リアスは、渾身の力を込めた魔力の弾を黒歌に向けて放つ。避ける暇も与えず、赤い魔力が黒歌に直撃――が、魔力を受けた黒歌の体は解ける様に霧へと変わってしまった。

 

「無駄にゃー無駄無駄」

 

 消えた黒歌の隣に黒歌が立つ。当然ながらリアスから受けた傷など無い。

 

「幻術を使えば貴女の眼を惑わせるなんて簡単だにゃん。貴女の攻撃は私には届かない」

「だった……ら……!」

 

 再び魔力を集め、それを放つ。しかし、今度の狙いは黒歌では無い。一誠を吊り上げている蔦目掛けてであった。せめて消え行く一誠の命だけでも救おうとしての行為。

 

「だから無駄無駄にゃー」

 

 だが、それも黒歌にとって想定内の行動であった。魔力の弾を防ぐ様に霧が移動し、視界を遮る程の濃霧と化す。

 濃霧に包まれたリアスの魔力弾は、霧に触れた途端球状を維持できなくなる。不安定に形を変え続けるが、やがて霧に吸い込まれる様に消えてしまった。

 

「そん……な……」

「触れれば消滅する魔力なんて考えるだけでも恐ろしいけど、どうやら一度に消滅させる量には限度があるみたいだにゃ。それだったら話は簡単。許容範囲以上の気を与えて、消される前に貴女の魔力を狂わせるだけだにゃん」

 

 限界に達したのか、リアスは地面に突っ伏してしまう。しかし、それでも目だけは黒歌を睨み付けていた。

 怖い、怖いと言いながらもリアスの現状を笑う。立って見下ろす黒歌。それを見上げるリアス。第三者が見れば、誰が勝者かなど一目瞭然であった。

 そして、一誠の方も限界が迫っていた。血流が止まり掛けているせいで一誠の顔色が赤黒く変色し始めていた。

 意識が途切れる。そう思った時――

 

「貴様、何をしている」

 

 空から聞こえる頼もしい声。同時に凄まじい衝撃が走り、吊られていた一誠の体は地面に落下する。

 止まっていた血が一気に流れ込み、血管が広がっていく感覚を体感しながら、蔦が巻き付いていた首を擦りながら咳き込む一誠。

 

「リアス嬢と兵藤一誠が森に入ったと聞いて、万が一のことを考えて来てみれば――どうやら正解だったみたいだな」

 

 一誠が吊るされていた木を踏み潰した状態で腕を組み、威風堂々と立つのは――

 

「タン、ニーンの、おっさ、ん!」

 

 掠れた声ながらも喜びを露わにしながらその名を呼ぶ。

 

「元龍王タンニーン……こんな大物が来るなんて予想外にゃん。結界が張ってあったと思うけど……」

「タイミングを見誤ったな。結界が張られたのは俺『たち』が範囲内に入ってからだ」

 

 タンニーンの言葉を聞いて、初めて黒歌は飄々とした表情を崩し、顔を顰めた。

 

「それはミスったにゃん――俺『たち』?」

 

 聞き捨てならない言葉があり、思わず聞き返す。

 すると場に漂っていた霧が急に移動をし始めた。初めはゆっくりと動いていたが徐々に速くなっていき、最後の方になると白い線と化していた。

 霧の移動する先に目を向ければ、そこには大きく口が開いていた。比喩抜きで本当に大きな口なのである。上顎と下顎との位置の差が、成人男性が収まる程開いている。ずらりと並ぶ牙、喉の奥には何も無い闇が広がっており、霧はその闇の向こうへと吸い込まれている。

 霧が全て消え去ると大きな口は閉ざされ、その陰に隠されていた本体が現れる。

 

「マダ、師匠!」

「おうおう。無様にやられてるなぁ」

 

 一誠の傷付いた状態を心配するどころかケタケタ笑いながら、手に持っていた瓢箪を一誠に向かって投げた。

 

「ほれ。飲め飲め」

 

 言われるがまま、栓を抜いて中の物を飲む。嚥下した途端かっと腹の底が熱くなったが、それが消えると身体中にあった痛みが傷ごと消えてしまう。

 

「元龍王のタンニーンどころか阿修羅のマダも……流石に二人相手は無理っぽいにゃん」

 

 顔は笑っているものの、黒歌の頬には一筋の汗が流れている。二人の実力を知っている者ならば、表面上とはいえよく笑っていられるものだと感心するだろう。

 

「そのどす黒いオーラ。パーティーには相応しくない来客だな」

「にゃんと! 折角おめかししてきたのにそんな言い方は悲しいにゃん……」

 

 よよよ、と泣き真似をしてみせるが、そんな冗談などタンニーンに通じる訳が無かった。

 

「ほざけ」

 

 一蹴すると同時に黒歌に向け、タンニーンが炎を吐き出す。容赦も躊躇も全く無い。

 当然、黒歌も避ける暇も無く炎に呑まれる。

 

「……姉、さま!」

 

 先程まで殺意を向けられていたとはいえ、流石に実姉が焼かれることに動揺し、声を上げる。

 

「おうおうおうおう。いきなり呼ばれて急いで来てみれば、こっちはこっちで大当たりじゃないかぃ!」

 

 しかし、それも上から降ってきた声によって杞憂であることが分かる。

 皆が一斉に空を見上げる。するとそこには筋斗雲に立つ美候と、猫の様に着物の襟を掴まれている無傷の黒歌がいた。

 

「美候!」

「よお。赤龍帝」

 

 名を叫ぶ一誠に、美候は気軽な態度で手を振る。

 

「助けてもらったのはお礼を言うけど。少し乱暴じゃない?」

「折角、楽しんでいたときに水を差されたんだ。これぐらいは我慢しろぃ」

「楽しんでた? ――一体誰と戦っていたの? 美候」

 

 美候の鎧の一部が損傷していることに気付き、問うが美候は答えない。既に彼の目と意識はタンニーンに向けられていた。

 

「『魔聖龍』のタンニーンと戦えるなんて、腕が鳴るねぃ!」

「相変わらずやんちゃだなぁ、美候」

「ん? ……げっ」

 

 気安く名を呼ばれたので声の方に目を向けると、美候は拒絶が混じった声を上げる。

 

「何でマダのおっさんがここに……」

「猿の奴は元気か? あとおっさん言うな、クソガキ」

 

 互いに顔見知りといった態度。

 

「知り合いか?」

「あいつんとこの爺とは飲み仲間だからなぁ。そのついでに小さい頃はよく可愛がってやったもんだ」

「……あんたには殴られているか、ぶっ飛ばされているかの記憶しかないぜぃ」

 

 思い出話を懐かしむマダに対し、美候は終始しかめっ面であった。

 

「昔馴染みということで見逃してやってもいいぜぇ?」

「寝言言ってんじゃないぜぃ、おっさん。いつまでもガキと思っていると痛い目みるぜぃ?」

「はははははははは!」

 

 マダは笑いながら軽く身を屈め、地面に片手を突き刺す。すると地鳴りが場に響き渡り始め、地面に伏せている一誠たちの身体が激しく揺さぶられる。

 

「ほれ」

 

 マダが腕を上げると同時に大地も持ち上がり、それを美候たちに向けて軽々と放った。地割れの音と共に、数十トンの土の巨塊が飛んでいる美候たちに圧し掛かる。

 

「相変わらず派手だねぃ!」

 

 美候は掴んでいた黒歌を放り投げる。その際抗議する声が上がったが、美候は無視した。

 

「上限三十三天」

 

 如意棒を頭上で回し始める美候。

 

「下限陳莫」

 

 回す度に如意棒は長く、そして太く変化していく。

 

「斤一万三千」

 

 最早大木を振り回しているかのようであったが、美候は重さなど感じていないのか軽々とそれを旋回させる。

 

「神珍如意金箍棒!」

 

 変化した如意棒を迫る土の壁に向かって一振り。振るわれた如意棒は、土の壁と変わらない程の大きさにまでなっていた。

 棍と壁が衝突。土の巨塊は如意棒の一撃によって粉砕され、辺りに土や木が雨の様に降り注ぐ。

 

「やるじゃねぇか」

 

 あっさり防がれたが、マダは寧ろ楽し気であった。

 

「何時までも昔と同じじゃないっつーの」

「なら今度は俺が試してやろう」

 

 いつの間にか飛び立っていたタンニーンが美候の側に現れる。

 それに驚くことなく美候は指先で如意棒を軽く叩くと如意棒が元の太さに戻る。素早く振るう為の変化であった。

 美候は如意棒をタンニーン目掛けて振るう。その先端に巨大な土塊を纏わせた状態で。

 

「温いわっ!」

 

 触れずに纏っていた土塊が粉砕された。

 数メートルはある土塊を避けるのでは無く、受け止めるのでも無く、咆哮一つで砕いてしまう。

 

「いいねぃ!」

 

 咆哮に弾かれた如意棒をすぐさま軌道修正し横薙ぎに振るうが、タンニーンは巨体にあるまじき俊敏さでそれを回避する。美候も続けて突き、払い、打ち下ろしと棍を操ってみせるが、タンニーンは翼を巧みに動かし空中で自由自在に動いて、それらを全て躱してしまった。

 タンニーンが口を広げる。喉の奥から紅蓮の光が溢れ出す。美候は攻めるのを止めて伸ばしていた如意棒を縮めた。

 大質量の炎が暗闇の空に吐かれ、世界が夕暮れの如き赤の光に染められる。

 炎に呑み込まれた美候であったが、すぐに炎を突き破って姿を見せた。

 鎧の一部が白煙を上げていたが、それを手で叩いて消す。

 

「いいねぃ! 燃えてきたぜぃ!」

「美候――孫悟空の血筋か。このタンニーンの炎を受けて燃え尽きなかったことは褒めてやろう」

「手加減されているのに褒められても嬉しくないぜい」

 

 気の流れを見ることが出来る美候にはさっきの炎が抑えられていたことが分かっていた。理由もすぐに分かる。本気を出せばここにいる一誠たちだけでなく、パーティー会場にいる者たちも巻き込んでしまうからだ。

 だからこそ気に入らない。手を抜いても勝てると思われていることが。

 

「すぐに全力出させてやるぜぃ!」

「ぬかせ、猿!」

 

 上空で両者激しくぶつかり合う。

 

「やれやれにゃー。美候は女の扱い方が雑だにゃん」

 

 美候に空から放り投げられた黒歌は、不機嫌そうな顔で空を見上げていたが、すぐにその目を一誠たちに向ける。

 

「で? こっちはそっちが相手してくれるのかにゃん?」

 

 マダに対し挑発的な言葉を掛ける。

 

「別にそれでもいいけどな――」

 

 マダの視線が一誠に向けられた。それが何を意味しているのかは読み取れる。お前は戦うのか、戦わないのかどちらなんだと。

 戦わないことを選べばきっと代わりにマダが戦ってくれるだろう。しかし、そんなことは出来ない。主であるリアスや仲間の小猫、師であるタンニーンやマダの前で背を向けて逃げ出すことなど出来る訳が無い。

 

「まだ! 俺は! 戦えます!」

 

 立ち上がる一誠にマダはニヤリと笑い、近くにある木を蹴り付け小枝の様にへし折ると、根元を即席の椅子にして座り、脚に肘を付け、その手に顎を乗せるという完全に観戦する形をとる。

 

「じゃあやってみな」

 

 短い言葉で一誠の背を押す。

 

「……駄目、です」

 

 しかし、小猫は逆にそれを止めようとする。

 

「……姉、様の力は、最上級悪魔にも、匹敵します……神器を使えない、今のイッセー先輩には、勝つどころか、捉えることも、出来ません」

 

 毒霧の影響で苦しみながらも、必死になって一誠が戦うのを止めようとする。

 

「白音の言う通りだにゃん。大人しくしていれば優しく、丁寧に殺してあげるにゃん」

「ふざ、けんな!」

 

 例え神器を使えなくとも戦おうとしたとき――

 

「だったら神器〈それ〉が使える様になるまで俺が時間を稼ぐ」

 

 言葉と共に頭上から魔力の渦が黒歌を襲う。

 

「にゃん?」

 

 軽やかな動きで後転し、渦の射程から逃れる黒歌。外れた渦は地面を抉り、捲り上げ、砕いた後に破壊の跡だけを残して消えた。

 そして、その破壊された場所に立つ人影。

 

「間薙!」

 

 現れた人物の名を思わず叫んでしまう。

 シンは声の方には目を向けず、黒歌に視線を固定させたまま話す。

 

「名前を呼んでいる暇があったらさっさと自分のことに集中しろ。こっちは全部引き受けておく」

 

 素っ気ない態度をとるシン。それに対し一誠の反応は歯切れの悪いものだった。

 

「……正直、俺はどうやったら禁手が出来るか分からない」

「そうか」

「もしかしたら成れないかもしれない」

「そうか」

「……それでも時間を稼いでくれるか?」

「最初に言った通りだ」

 

 成功の保証も無いことに全力をかけてくれる友の背中。これほどまでに頼もしいものはない。

 

「おいおい。弟子の出番をとるなよぉ」

 

 笑い混じりの野次がマダから飛ぶ。

 

「良い所は譲りますよ」

 

 それを軽く流す。マダは一笑するとどこからか瓢箪を取り出し、それの中身を呑み始めた。

 

「グルルルルル」

 

 唸り声を出しながらケルベロスもまた姿を見せた。ケルベロスはシンに助力することはなく、倒れているリアスたちの側に立つ。

 

「貴方、は……」

「シンニオマエタチヲ守レト言ワレタ。ソコノオマエ」

「俺?」

「オマエダ。オマエ。コノ二人ハオレガ全力デマモル。ダカラ自分ノコトニ集中シロ」

 

 皆の期待が背に掛かる様な気がした。重い。確かな重みを感じる。何としてもこの期待に応えねばと強く決意する。

 

「赤龍帝の次は貴方? ていうかどちらさんだにゃん?」

「誰でもいいだろう」

 

 冷めた反応を示すシンをジロジロと観察する様に見ていたが、何か思い至ったのか、小さく口を開ける。

 

「もしかして、ヴァーリの言っていた『人修羅』かにゃん?」

 

 その言葉にシンは微かに表情を歪ませる。一方、リアスと小猫はシンが何故そんな名で呼ばれたのか分からず怪訝な表情をしていたが、マダと一誠はそれが何の名か思い至る節があり、敢えて反応を表に出さなかった。

 

「それがどうかしたか?」

 

 あくまで淡々とした態度を崩さない。

 

「ヴァーリは貴方のことも気に入っていたみたいだけど、邪魔をするなら白音共々殺しちゃうにゃん」

「――殺すなんて言葉、あまり口に出さない方がいい」

「お説教? 私の妹を私がどう可愛がるかなんて私の自由だにゃん」

 

 黒歌の身体が空間に溶け込む様にして消えていく。仙術、妖術、魔力などの技術を組み合わせた隠遁術。音もニオイも気配すらも絶ち、この世から完全に姿を晦ます。

 消えた黒歌を探す様に視線を左右させるシン。姿を隠していた黒歌はそれを嘲笑し、背後からその鋭い爪をシンの頸椎に突き立てようと、腕をゆっくりと振り上げる。

 

「別に説教じゃない」

 

 まるで最初から見えていたかの様にシンは振り返り、皆から見て何も無い筈の虚空を掴むと、そのまま地面に向けて叩き付ける動きをする。すると地面に人型の窪みができ、消えていた黒歌の姿が現れる。

 

「出来ないことを口に出せば後で恥をかくのは自分だ」

 

 呻き声一つ上げることが出来ない黒歌。

 倒れている黒歌にシンは腕を振り上げ、そのまま振り下ろす――のではなく自分の背後に向けて伸ばす。

 首筋辺りで何かを掴むシン。すると浮き上がってくるのは鋭い爪を揃えた女の手。シンの足元で倒れている筈の黒歌が、何故かシンの背後に立っていた。

 

「ありゃ? ばれてたかにゃん?」

 

 慌てる様子を見せず、惚ける様に小首を傾げる。するとシンの足元に倒れていた黒歌が煙の様に消えていく。

 

「初見で幻術を見破るなんて、大したものね」

「さっき似た様なことをされたからな」

「あのお猿さんね。もう! 楽しいと手の内をどんどん見せるんだから! 感心しないにゃん! 貴方もそう思わないかにゃ?」

 

 頬を膨らませ、今も上空で戦っている美候への不満を露わにする。

 シンは無言のまま掴んでいる手に力を込める。すると黒歌の腕が枯れ枝の様に容易くへし折られた。

 自分の身に何が起こっているのか分からないといった表情をする黒歌の首に、シンは振り向き様に折れた腕を無理矢理巻き付ける。肘、肩といった複数の箇所から鳴る骨折音。

 腕が首に完全に巻き付くと同時にシンは黒歌の腹部を蹴り上げる。その威力に後方へ飛ばされたる黒歌の体。しかし、シンがしっかりと腕を掴んでいる為急停止し、首に巻き付く腕は更に絞まり、黒歌の顔色を死人の色に変える。

 シンが手を離すと黒歌は前のめりに倒れていく。するとシンは片足を上げ、黒歌の額が地面に着く直前、後頭部に踵を叩き付けた。

 リアス、小猫、一誠は、流れる様に起きた容赦の欠片も無い一連の行動にただ唖然とする。女性の頭を躊躇無く踏み潰したシンに、どんな感情を向けたらいいのか分からなかった。

 

「本当にひどいにゃー」

 

 踏み付けられている黒歌の横で、『黒歌』がそれを眺めていた。

 

「貴方って女性に対する気遣いは無いのかにゃん?」

「十分している」

 

 現れた黒歌に驚くことなく、シンは踏み付けている足に力を込めた。すると踏み付けている黒歌の頭はガラスの様に砕け、その全身も同様に砕ける。

 

「幻術って知っていてわざとやったのかにゃん? 何でそんな無駄なことを?」

「気にするな。ただの嫌がらせだ」

 

 その露骨な挑発に、黒歌は唇を歪めさせ牙の如き八重歯を見せると、笑っているとも怒っているともとれる曖昧な表情でゆっくりと立ち上がり、シンの眼前に立つ。

 互いの瞳にお互いが映り込んでいるのが分かる程の近距離。間合いなどとうに超えた零の位置で不気味な程静かに睨み合う。

 見ている方も息が詰まりそうになる緊張感。

 どちらが先に動くのか。見守る者たちがそんなことを考えていたとき、突如頭上で大きな爆発が響く。

 思わず空を見上げてしまう一誠たち。上空でタンニーンと美候が何かをして起こされた爆発らしい。

 タンニーンたちに意識をとられていることに気付き、慌ててシンたちの方に視線を戻す。

 両者の戦いは既に始まっていた。

 側頭部を打ち抜く様に振られたシンの拳を、黒歌は後方に跳んでひらりと躱す。猫の様に四肢で着地するも、それと同時に爪先が黒歌の顎下から突き上げられた。

 頭を後ろに引いてそれも躱す。触れればその箇所が千切れそうな勢いの蹴りが、黒歌の目の前を通り過ぎていった。

 黒歌の右手に禍々しい力が宿る。妖力が込められた爪が、蹴り上げられたシンの足に突き立てられようとするが、シンは軸足を回し、それによって足が突如軌道が修正され、後ろ回し蹴りの様な格好となる。

 その状態から姿勢を低くし更に足払いの形に変え、黒歌の両足を薙ぐ様に放つ。

 しかし、それも黒歌は跳んであっさりと避けてしまった。宙に跳んだ黒歌は右手を突き出す。すると指の先から込められた妖力が糸の様に伸び、それが束ねられ鞭の様に変化。うねりながらシンの首を狙う。

 不規則な動きをするものの左眼はしっかりとその動きを追っており、狙う箇所を把握し避けようとしたとき、シンの足が止まった。

 何かが足に巻き付き地面に固定させている。確認しようにもそんな猶予など無い。

 不利になるのを覚悟で地面に向かって仰向けになって倒れる。直後、通り過ぎていく妖力の鞭。頭髪に僅かに掠り、数本の毛髪が宙に舞うものの、妖力の影響がそのまま溶けて消えてしまった。

 地面に倒れたシンは素早く立ち上がろうとするが、突如地面を突き破って現れたものが右腕に巻き付く。

 泥に塗れた茶褐色の物体。木の根である。地面に張り巡っている木の根が生き物の様に絡まり、拘束する。足の動きを止めたのもこの木の根である。

 この時点で仙術について詳細を知らないシンだが、これが黒歌の仕業であることはすぐに分かった。すぐに引き千切ろうと力を込めるも、幾重に巻き付いた木の根が数本千切れただけ。植物の根とは思えないぐらい固く、しなやかであった。

 それでも力を込めればその分だけ纏わりつく木の根も千切れていく。だが、それを静観している様な相手ではない。

 地面から伸びる木の根は更に本数を増やし、シンの両腕だけでなく胴体にも巻き付いて、完全にシンの動きを封じた。

 木々に覆われた森という舞台。当然地中に伸びる木の根の数は途方も無いもの。恐らく至る所にそれが張り巡らされている。それは蜘蛛の巣の上で足掻く羽虫に等しい。

 身動きが取れなくなったシン。その姿を見て、リアスと小猫は助ける為に立ち上がろうとするも毒霧の影響ですぐに倒れ伏せる。

 ならばと自由に動ける一誠が、シンを救う為に動こうとした。

 

「来るな」

 

 しかし、それをシン本人が止める。

 

「お前は自分のことだけに集中しろ」

 

 あくまで禁手を発動させることを優先させる。だが、そんなことを言われ素直に応じる一誠ではない。確かに自分がやろうとしていることも重要である。しかし、それを優先し友の危機を放っておくなどという、薄情な真似など到底出来はしなかった。

 

「今から――」

「だーめにゃん」

 

 一誠が動くよりも先に黒歌の魔力弾が胸部へ直撃。その威力で後方へと飛び、巨木に背中から激突する。

 

「がはっ!」

 

 衝撃で肺の内にある空気を無理矢理吐き出され、地面に倒れるとそのまま身動きしなくなる。

 

「弱。これが本当にヴァーリのライバル? 本当にヴァーリに手傷を与えたの? お話になんないにゃん」

 

 動けない一誠を黒歌は嘲笑う。倒れている一誠にまだ意識が有るらしく、黒歌の嘲笑を聞いてその爪を地面に突き立てた。

 

「こっちもこっちで手応えないにゃん。こんなんじゃあすぐ皆殺しだにゃん」

「――ふっ」

 

 余裕の宣言をする黒歌に水を差す鼻で笑う音。音の主はシンであった。

 

「――何がおかしいにゃん?」

「もう一度言う。出来ないことを口に出せば後で恥をかくのは自分だ」

 

 黒歌の顔が、明らかに不愉快だと言わんばかりの表情と化す。

 身動き出来ず、助けも無い状態だというのに焦りも恐怖も無い余裕の態度。それどころかこちらを軽んじる様な言葉すら吐いてくる始末。気分を害さない訳が無い。

 

「決めたにゃ。まずは貴方。その次は赤龍帝だにゃん」

 

 黒歌の死刑宣告。しかし、シンは――

 

「恥の上塗りだな」

 

 ――それすらも挑発を以て返す。

 黒歌の両手に仙術、妖術の異なる力が集まっていく。この混じり合った力が注がれれば肉体は原型も無く崩壊する。当然治癒する方法など無い。確実に相手を殺す為の技である。

 近付いてくる死を前に、シンは冷や汗一つかかない。その面の厚さを不愉快に思うと同時に黒歌は不審に思う。

 黒歌を見る双眸。無機質とも呼べる程感情の揺れが無い。しかし、何処か黒歌を測っている様にも見えた。

 直感に従い、接近しながら黒歌は『目』を切り替える。相手の体内の力の流れを見る為のものである。

 一目シンを見た瞬間、黒歌の足が止まる。体の中に流れる力が胸部の中心に向かって集中しているのが見えた。

 何が起こるかは分からない。だが、これ以上近付くのは危険と判断する。

 シンも黒歌が気付いたことに気付く。もう数歩接近していれば確実に当てることが出来たであろうが、察知されたのならばこれ以上近付くことは無い。

 シンは体の内に溜めていた力を解放する。

 背部から放たれる無数の魔弾。地面に接している為、地表を破壊し巻き付く木の根を大地ごと吹き飛ばす。

 地面が吹き飛んだことで出来た隙間から、残りの魔弾が黒歌に向け一斉に襲い掛かった。

 四方から迫る魔弾を仙術、妖術を合わせた力で次々に撃墜していく。

 距離が遠かったこと。放った体勢が悪く弾数が減ってしまっていたせいもあり、シンの攻撃は黒歌に届かない。

 だが、全く無意味な行為では無い。何故なら、黒歌の意識は否が応にも魔弾の方に向けざるを得なかった。

 全てを捌き終えた黒歌は、急いでシンの姿を探そうとする。

 

「ッ!」

 

 既にシンは黒歌の目の前に立ち、右手の五指を鉤爪の様に広げた状態で振り上げている。

 避ける暇が無いと即座に判断すると両手を突き出す。すると黒歌の姿が歪む。

 正確にはシンの目から見て黒歌が歪んで見えた。一誠たちを逃がさない為に空間を操作し外界と遮断する為の結界。小規模にしたそれを、盾としてシンの前に創り出す。

 空間そのものを操作している為あらゆる攻撃を遮断し、歪めて作っているので直に触れればその歪みに巻き込まれることもある。

 黒歌が自信を持って生み出した結界。事情を知らないシンは、躊躇することなくその結界に向かって右手を振り下ろす。

 その姿に内心ほくそ笑む黒歌であったが、次の光景に目を剥いた。

 結界にシンの右手が触れた瞬間、その指先が結界を突き破って現れる。指の第一関節までが埋まり、干渉出来ない筈のものに干渉していた。

 在り得ないと驚愕する黒歌の前で突き入れられた指先が徐々に下ろされていき、結界を裂いていく。

 シンとの戦いが始まる前、黒歌の中にはある小さな疑問があった。それは、シンが何故結界内にいるのかというもの。それをタンニーンやマダと同じく、結界が張られる前に中に居たのだと一人解釈していた。

 しかし、本当の答えは目の前で起きている。

 振るう右腕に力が加わり、弓の弦の様にしなっていく。初めはゆっくりと裂かれていた結界も、裂かれる速度が増していく。

 これ以上守り続けるのは拙いと判断するのと同時に結界が半ばまで裂かれ、結界がシンの力に耐え切れなくなり、空間の歪みが若干弱まる。抵抗が少なくなると抑え込まれていた力が一気に解放され、その力を以て結界を完全に引き裂く。

 黒歌は結界が引き裂かれる直前にその場で宙返りをし、高く跳び上がった。結界を引き裂いたシンの指は空を切ることとなるが、空振った先の黒歌が立っていた地面には深い裂創が刻まれた。

 宙にいる黒歌は、何も無い場所を片足で蹴り付ける。見えない足場があるかの様に反動が起こり、シンと距離をとるように後ろへと跳んでいった。

 着地した黒歌の表情は、余裕から一変し苦々しいものとなる。

 気を使い肉体の内外を強化することが出来る。だが、先程の結界のことを考えると接近戦は危うい。どんなに強化してもそれらを無視し、貫いてくるのでは無意味。通常では干渉出来ないものに干渉をしてみせるということは、そういった可能性が高いということである。

 こうなってくると、最早近付いて戦う気も失せる。

 距離を空けられたシンであったが、追撃はしなかった。未だに相手の力の詳細が分からず、更に手札も多いため、下手に攻めて思わぬ反撃を受けるのを考慮してのことであった。

 木の根による拘束を解いたせいでボロボロになったスーツを破り脱ぐ。借り物だが美候との戦いの時に既に焼け焦げていたので、今更きちんと返品出来るものではない。それに纏わりついているだけの襤褸切れを着ているぐらいなら、一層脱ぎ捨てた方がまだましである。

 上半身を露わにしたシンを見て、リアスも小猫も驚く。決してその行動に驚いている訳では無い。初めて見るシンの右手から背部にかけて伸びる紋様、そして左手にも同じ輝く紋様が。

 リアスたちが最初に見た時、シンの紋様は右手の甲までしかなかった。だが、今は無かった筈の左手にまで浮かび上がっている。胸中に覚えるのは漠然とした不安であった。はたしてこれを成長と呼んでいいのであろうか。

 不安がるリアスや小猫とは異なり、マダはその背を興味深そうに眺めていた。

 黒歌の周辺から薄い霧が生じ始める。シンがそれを視認すると霧は一気に広がり始め、シンの足元付近まで伸びてきた。

 

「それ、を、吸っちゃだめ! 毒、よ!」

 

 リアスが苦しそうにしながらもシンに警告を飛ばす。

 毒霧の中心に立つ黒歌。すると霧が広がる度に別の黒歌が現れ始める。霧と幻術を併用してきた。

 目を凝らし、本体を探ろうとするが漂う霧がそれを妨害する。霧越しに見ると霧自体に力が込められているせいか、どれもこれもがぼやけた感じに見えてしまい判別がつかなくなる。

 そうこうしている内に毒霧はシンの足元付近にまで伸びて来ていた。あと数分もかからずに呑み込まれてしまう。

 

『特別にその子たちの時よりも濃い霧にしてあげたにゃん。一息吸えば、五臓六腑が腐れ落ちちゃうかも』

 

 全ての黒歌が口を揃えて喋る。判別する材料を少しでも与えない為か、一切の乱れが無かった。

 吸えば即死に繋がる毒の霧。それを聞いたシンが思ったことは一つ。

 

(だったら問題は無い)

 

 触れれば溶ける様なものであるのなら少し厄介だったかもしれない。そうでなければ恐れる必要など何一つ無い。

 要は吸わなければいいだけのことである。

 足元付近にまで伸びていた霧は更にその先端を伸ばし、這う様に身体へ触れようとしたとき、音も無く霧が消え失せる。

 

「――にゃ?」

 

 少し間を空けた後、意味が分からないという表情と声を出す黒歌。

 術の解除などしていない。だというのに霧が消えてしまった。理由が分からず、目を何度も瞬かせる。

 消えるのは触れようとした霧だけに留まらず、最初にシンの足元の霧が消え、更に半径二メートル内の霧も消えていく。広がっていた霧が逆に見えざる力に呑まれていく。

 一体何が原因なのかと考える黒歌の頬に、撫でる様に風が触れていく。

 暖かい――など通り越し、熱いと言える段階の風。

 霧が消えた理由を察すると同時に、黒歌の前でシンの両手に火が起こる。

 揺らぎながらも煌々と燃え盛る二つの火。シンは両腕を上げ、二つの火を頭上に掲げ、それは炎と化す。

 吹き抜けていく風は熱いというのに、黒歌の背中に流れるのは冷たい汗。

 結界を張り、身を守ることも考えたが、結界を素手で破壊する様な者が放つ技に、同じことが出来ないと楽観的に考えられない。

 炎を掲げる両手が黒歌に向かって突き出される。

 放たれたソレは最早炎では無かった。熱によって造り固められた柱。あるいは世界を溶かすことで描かれる灼熱の一筆。圧縮された炎の迫撃は、不思議なことに見る者に熱気ではなく寒気を与える。

 群れ為す幻影の中で一人動き出す者がいた。本体である黒歌である。

 一直線に伸びた炎が幻影たちの中心を貫いていく。触れていない筈なのに、炎が通過していく度に黒歌の幻影が姿を消していく。

 いち早く動いたことで炎から逃れたかに思えた黒歌。しかし、シンはそれに対し何もしない筈が無い。

 突き出している両腕を黒歌の方に向けて振るう。炎もまたその動きに合わせ、横薙ぎに走る。

 軌道にあるものは木であろうと岩であろうと問答無用で焼き切っていく。その様子は刃を振るうが如く。

 地を滑る様にして全速力で駆ける黒歌。そのすぐ背後には炎が迫っている。二股に分かれた尾の先端にチリチリとした熱を感じる。

 このままでは不味いかもしれないと思い始めたとき、唐突に熱の気配が消えた。急停止はせずに走りながらシンの方を見ると、その手から炎が消えている。

 炎が消えた両腕を冷ます為に軽く振りながら、シンは短く息を吐く。この炎、威力はかなりのものであるが、持続力に関してまだまだ改良する点が多い。単純に炎の扱いに慣れていないせいもあるが、燃費が非常に悪い。数秒間維持するだけで、熱波剣を数発放った様な疲労感を覚えていた。

 

「危ないにゃー。自慢の尻尾が焦げたらどう責任をとってくれるんだにゃん?」

「元から黒いから目立たないだろ」

 

 表面上でも余裕を見せる為に冗談を言うが、シンはそれを切り捨てる様に返す。

 

「でも惜しかったわね。私を倒すにはちょっと足りなかったにゃん」

「元から倒すつもりなんて無い。最初に言った通りあくまで時間稼ぎだ」

「……ふーん。あんな弱い赤龍帝が私を倒せるとも?」

「その時が来るまで分からない」

 

 すると一誠とリアスの会話が聞こえてきた。黒歌に吹き飛ばされていたが立ち上がったらしい。

 

「――部長。俺、自分の何が足りなくて禁手に至れないのか、少し分かった気がします。俺が禁手に至るには恐らく部長の力が必要です!」

 

 決意に満ちた一誠の言葉に、リアスはまだ毒の状態が薄れていない中でも引き受ける。

 

「分かったわ! ――それで私は何をすればいいの?」

「――おっぱいをつつかせて下さい」

 

 良く通る声で、阿呆みたいな内容の言葉が戦場を駆け抜けていく。結果、誰もが戦う手を止めてしまい、場が沈黙する。

 

「――あんなこと言っているけどいいにゃん?」

「……」

 

 黒歌が聞いてきたが、シンは黙る。シン本人も何故この様な状況であんなことを言い出したのか全く分からなかった。

 きっと、恐らく、多分、何らかの理由がある筈である。理由があっての行動の筈。が、それを差し引いてもシンの戦意は若干下がるのであった。

 

 




後編は、明日か明後日に投稿する予定です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。