金碧艦隊~艦これ~   作:ダンテこったい聖司

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第3話

山内の部屋を後にした二人は引き続き廊下を歩いていた。

 

「次はどこへ向かっているんだ」

「兵器工廠です。そこで私達の兵装等が研究、開発、製造されています」

「海軍学校で教わった通りだな。今は何かの製造はされているのか? 」

「現在、艦上攻撃機・流星、艦上戦闘機・烈風の製造が主に行なわれています。私の船体の完成が近付いているので、そこに搭載する目的であると思われます」

「そうだったな。翔鶴の船体完成は数日後だったな。それよりも、新任提督に新造艦。そこに最新鋭の艦載機か。どう考えても優遇され過ぎている。普通はここまで好待遇じゃないと聞いているぞ」

「はい。私も他の空母の方からお話を聞きました。やはり大石元帥が関係しているのでしょうか」

「待て。今、何と言った? 」

「え? 大石元帥が関係しているのでしょうか。ですか? 」

「やはりか! やはり大石長官が関わっているのか! 資料も大石長官からだったからな。もしかしたら、と考えていたが、やはりだったのか」

 

 大石孝蔵(おおいしこうぞう)。小木曾の海軍兵学校での恩師であり、海軍元帥の位を持ち、横須賀鎮守府の総司令官を任される程の名将であった。

 ただしこの大石。軍歴を見るだけならば有能な男であるのだが、完璧な人間など存在しないと身を以て教えられると言うのだろうか、気に入った人間に対して度を過ぎる程にいたずら好きなのである。

 それも時として今回の様に自分の地位を利用して好き放題にするのである。それを学生時代に嫌というほど味わっていた小木曾は自分の予想に違わない事実に思わず声を大きくして喚いた。

 

「それよりも、翔鶴は大石長官の事を知っていたのだな」

 

 疲れた様な表情を浮かべながら小木曾は翔鶴に顔を向けながら問いかけた。

 

「はい。と言いますか私、ここに配属される前、サルベージされた直後は大石元帥の隊に所属していたんです。なので提督の事も大石元帥から少しだけですが聞かされていました」

「なるほど。道理で俺の秘書に翔鶴を回す事が出来たというわけか」

「あ、それから提督が一人称を一人きりの時や親しい間柄の人には“俺”。そうでない人には“私”と使い分けている事も聞いていますよ」

 

 翔鶴が笑顔と共に放った自身のささやかな秘密を聞かされ、小木曾は自分の顔がやつれる様な、そんな気分に浸った。

 

「そ、そんな事まで聞いているのか。翔鶴、すまんが今夜辺りにでもどんな事を聞いているか全て聞かせてくれないか」

「はい、かしこまりました。ところで提督、どうしたんですか? そんなげっそりとした顔をされて」

「あ、いや。ちょっと昔を思い出してしまってね」

「ふふ。提督と大石元帥は仲が良いのですね」

「一方的に遊び道具にされている、の間違いだ」

 

 そう言って小木曾は今までに大石から受けてきたイタズラの多くを思い出し苦い顔をした。

 道中にそんな事を話しながら屋外へと出た二人を出迎えたのは生ぬるくジメッとした風と――

「おや、見慣れない人だね。もしかして今日から僕らの提督になる人かな? 」

 

ぼんやりと空を見上げていた一人の少女は小木曾と翔鶴の気配に気付くと振り返り声をかけてきた。

 

「あら、時雨ちゃん。ええ、今日から私達の提督になる小木曾准将よ」

「そうなんだ。よろしく、小木曾提督。一緒に頑張ろうね」

「ああ、よろしく。という事は君も艦娘なのかな」

 

 時雨と呼ばれた少女と小木曾は握手を交わす。翔鶴に比べてずっと小柄な彼女の手は想像通りに小さいものだった。

 

「そうだよ。僕は白露型駆逐艦二番艦の時雨」

「そうか、時雨だな。小木曾正博准将だ。改めてよろしく」

「ところで二人は何をしていたんだい? 」

 

 時雨は翔鶴を見上げながら問いかける。

 

「提督は今日着任でしょ? だから施設の案内をして回っていたのよ」

「なるほどね。良ければ僕も一緒に行ってもいいかな。提督さんとお話もしたいし」

 

 無表情にも近いが微笑みながら時雨は小木曾を見上げた。

 

「私は構いませんが、提督はよろしいですか? 」

「私も構わないよ」

 

 特に不便もないので、小木曾は翔鶴に向かって頷いた。

 

「それじゃあ、時雨ちゃんも一緒に行きましょうか」

 

 そうして時雨も加えて三人は鎮守府巡りを再開する。

 程なくして兵器工廠へと辿り着く。如何にも工場といった建物の中からは機械の駆動音、アーク溶接機の火花が散る音、塗装材の有機溶剤の臭い、それから作業員の声が聴こえる。

 外から中を覗くと完成を間近とした流星や烈風、機体が完成し塗装を施されるものが目立っており、順調に製造作業が進んでいるのが一目瞭然だった。

 

「誰だ!? そこで覗いてるのは! 」

 

 油で薄汚れた作業着を着て、顔も油汚れが付いた厳つい顔の作業員が怒号を飛ばしてながら小木曾の方へと歩いて来る。

 小木曾は一歩前へ歩み出て短く敬礼をする。

 

「邪魔をしてすまん。今日からここへ着任した小木曾だ。よろしくお願いする」

「こ、これは准将殿でありましたか! ご無礼失礼しました! 」

 

 やって来た作業員は慌てて背筋を伸ばし、小木曾へ返礼する。

 小木曾はやや苦笑を浮かべるが、その事には特に触れず要件を切り出すことにした。

 

「作業は順調のようだな。ところで工場長はどこにいるかな」

「はっ! 自分が工場長です! 」

「おっと、そうだったか。名前はなんと言うか」

「はっ。猪原一誠(いのはらいっせい)であります」

 

 猪原は再び敬礼をしながら大声で答える。

 

「猪原工場長、艦載機だが、予定までに必要数は生産出来そうか」

「はい、生産はすこぶる順調。この調子なら必要数はおろか予備分も生産可能です」

「そうか、なら予備分も幾らか作っておいてくれ」

「了解しました」

 

 それから幾つかの確認事項を猪原と話し合った小木曾は満足気に兵器工廠から外へ出る。工廠内は思っていたより暑かったのか、不快であったはずの外の風がとても心地よく感じられた。

 と、そこで外で待っていたらしかった翔鶴と時雨が近付いて来る。

 

「お待たせ。外ではなく一緒に中へ来れば良かったものを」

「いえ、私達は……」

「うん、ちょっと……」

 

 小木曾は如何にも不思議そうに二人へと問いかけたが、二人は少々遠慮する様な顔付きになりながら答えた。

 

「確かに少しばかり油臭いが、そこまで嫌か? 」

「油臭いのはいいんです。ただ……作業員の人達が……」

「みんな声が大きいからどうしても怒られてる気になって怖いんだよ」

「あー、そういうことか」

 

 妙に納得してしまった小木曾。それもそのはず。小木曾も猪原の声が大き過ぎるとは感じていたからであった。

 そんな事もありながら、続いて隣の造船ドッグと修理ドッグも覗き、そこで就任中の提督には専用でドックが造船と修理で各二箇所割り当てられていることを聞き、小木曾を驚かせた。

 工廠区を離れ、兵舎区へと赴く。

 兵舎区は大きく二つの区画で分けられており、艦娘用の区画と一般の兵卒および作業員用の区画である。一般区画には更に男女で分かれているが、ここでは深く触れないものとする。

さて、ここで艦娘用区画について触れておこう。

 艦娘自体が貴重かつ特殊な存在であるが故の配慮でこうして区画が分かれているが、一般の兵卒、作業員は男女問わずこの区画への立ち入りは固く禁じられており、該当鎮守府の司令長官の許可無く立ち入った場合は如何なる理由があろうとも厳しく罰せられる事となっている。

 しかしながら例外というものはあるもので、該当鎮守府へ就任している提督に関してはこの限りではないものとされている。但し、就任鎮守府以外の鎮守府では一般の兵卒等と同様に鎮守府司令長官の許可を必要としていた。

 ともあれ、手厚く保護されている艦娘だが、艦娘区画に備えている施設もまた優遇されており、食堂『間宮』と呼ばれる、かつての給糧艦になぞらえた施設も用意しており、任務に疲れたり、お腹を空かせた艦娘達の食事処や憩いの場として親しまれている。

 ただ、無償という訳には行かず、酒保としての側面が多分に含まれている他、甘味の価格が艦娘にとっては些か高額な為、仕える提督に甘味をせがむ艦娘の姿が頻繁に見られるのもこの施設ならではの風物詩になっている。

 他、艦娘の為に用意された大浴場もあり、そこでもお互いに身体を洗い合ったりする艦娘の姿が見られるが、当然男性である提督は中に入ることは禁じられているので、それを見た事のある提督は恐らくいないだろう。

 また、兵舎と呼ばれるだけあって艦娘達はこの区画の自室を寝室としても利用するが、一部例外で提督執務室等で外泊する場合もあるという事だけ触れさせてもらう。

 ともあれ、非常に好待遇な艦娘用区画であるが、それだけに彼女達の負う責任は重く、また重要である。

 

 ちなみに提督は執務室の奥に寝室としての自室を完備しているため、一般兵舎には自室を持たない。

 ここで話を鎮守府巡りを続ける小木曾、翔鶴、時雨の三人に戻そう。

 艦娘区画の兵舎へと立ち寄った三人はまず間宮へと足を運んだ。時雨から他の艦娘がちょうど集まっている頃だろうという事で、顔を出しておこうという小木曾の意向からだった。

 間宮と掛札の掛かったスライド式の扉の横には律儀に『佐世保店』と書かれた大きな木札が打ち付けられており、その扉の中へと進むと予想を超える広さに小木曾は驚かされた。

 その部屋には程よいスペースで長机と椅子が並べられ、思い思いの席に座り、食事や施設自慢の甘味に顔をとろけさせている艦娘も見て取れ、他には注文の品を運んだり注文を受けたりと厨房とホールを行ったり来たりする女性の姿が数人確認できただけであり、入室した三人に特に興味を示した者はいなかった。

 三人は給仕をしている女性の一人に好きな席へ座るよう促され手近な席へとまとまって座り、適当に注文を済ますと小木曾は改めて室内を見渡した。

 

「かなりの人数が来ているようだな。いつもこの時間はそうなのか? 」

 

 小木曾は腕時計を見ながら翔鶴に訊ねる。時刻は十五時をちょうど回ったくらいで、おやつの時間と子供ならはしゃいでいてもおかしくない時間だった。

 

「そうですね。大体いつもこれくらいの時間に鎮守府にいる子達は示し合わせた様に集まってお話をしたり、おやつに甘味を食べたりとしてます。あっ、あとは艦娘に引きずられて連れて来られた他の提督の方もよく見られますよ。昨日は卯野原(うのはら)元帥が摩耶ちゃん達に連れて来られてましたね」

「卯野原元帥が? さすがの佐世保の総司令官も艦娘相手では形無しか」

 

 小木曾は少し不憫に思い肩をすくめる。

 

「そういえば、卯野原元帥が戻られるのはまだまだ先だったな。えーと、再来週の中頃まではいらっしゃらないんだったか」

「はい。今回は中央で総司令会議を行なった後に各鎮守府の総司令全員で主要造船所を視察して回る予定らしいです」

「また随分と頑張るな。ゆっくりと見て回る余裕はないんじゃないか」

 

 ふと小木曾は背後に誰かが立った気配を察し、振り返る。そこには好戦的な眼差しと右目の眼帯が特徴的な少女が立っており、その背後には栗色の髪の毛を後ろで編んだ髪型とやけに露出が多い、特にお腹はへそが丸出しのセーラー服のような服装が特徴的な少女がやや隠れる様に立っていた。

 

「よぉ、あんたが小木曾司令かい? 」

「ああ。今日ここへ着任した小木曾だ。そういう君は? 」

「俺の名は木曾。司令官、あんたの名前と被ってるからどんな奴かと楽しみにしてたぜ。よろしくな」

「こちらこそよろしく頼む。それから、後ろの子は? 」

「はい、私は軽巡洋艦・能代です。小木曾提督の艦隊に配属となります。これからよろしくお願いします」

「そうなのか。至らぬことも多いだろうが、こちらもよろしく頼む」

「おっと、俺もあんたの隊に配属だからな。よろしく」

「ああ、木曾もよろしく頼む。と、そうだ。ちょうどいいからゆっくりと話をしようじゃないか。座ってくれ」

 

 小木曾に勧められるがままに木曾と能代は席へと着く。

 

「翔鶴、我が艦隊には他に誰が配属となっているかな。それともこれで全員かな? 」

 

 小木曾は翔鶴に訊ねるが、翔鶴は首を横に振る。

 

「いえ、あと阿賀野さんと夕立ちゃんが配属となっていますね」

「阿賀野姉ぇはもうすぐここへ来るかと思います」

「なんだ、お前また置いて来たのか? 」

「だっていつも阿賀野姉ぇったら準備が遅いから」

 

 木曾は「またか」といった様な視線を横目に能代寄越すが、能代は特に気にした様子もなく、寧ろ呆れた顔で頬杖をつきつつぼやいた。

 

「阿賀野、と言ったか。その子はいつものんびり屋なのか? 」

「あ、はい。そうですね、本人にはそんなつもりないみたいですが、他人から見ればかなりのんびり、というよりもおっとりしてますね」

「確かに。のんびりより、おっとりが合っているかも知れません。変に間延びした喋り方なんか特にそうですよ」

 

 能代と翔鶴の意見を聞き、小木曾はどんな艦娘なのかと、能代をおっとりにしてみたらと想像をしてみるが、まるで想像が付かずに諦めた。

 

「そうなのか。と、それから夕立は今どこにいるんだろうか。せっかくだから全員集まって顔合わせを――」

「あ~、やっぱり能代ったら先に来てたぁ」

「あ、時雨ちゃん見つけた! 」

 

 妙に気の抜けるような、そんな雰囲気のある間延びした声とハツラツとした元気のいい声が聞こえ、小木曾達は店の入口の方を見やった。

 そこには能代とよく似た服を着た長い黒髪の少女と、時雨とよく似た黒い服を着たブロンドヘアーの少女が並んでいた。

 その二人はそれぞれにこの場にいる能代と時雨の名を口にすると、小木曾達の元へと早足でやって来た。

 

「もぉ、ひどいよぉ。いっつも一人で先に行っちゃってー」

「そんなの阿賀野姉ぇがいつものんびりしてるのがいけないんでしょ。今日は提督が着任されるし、きっと間宮に顔を出すだろうから、行って待ってようよって昨日言い出したのは阿賀野姉ぇでしょ。なのに、もぉ! そんなことよりも、ほら阿賀野姉ぇ、この方が今日から私達の提督になった小木曾提督だよ! 挨拶しなくちゃ」

「能代ちゃんはせっかち過ぎだよぉ。あ、提督はじめましてぇ。軽巡洋艦・阿賀野と申します。よろしくお願いしまぁす」

 

 能代にまくし立てられながらも、マイペースに挨拶をして来た阿賀野と名乗った艦娘は能代の隣へと腰掛けた。

 

「初めまして、白露型駆逐艦の夕立です! よろしくね! 」

「ああ、よろしく頼む。……さて、これで我が艦隊の面々は揃ったかな? 」

「はい。これで全員です」

 

 翔鶴は小木曾に頷きを返すと、立ち上がり、

 

「全員が全員未だ実戦経験のない新人ばかりで、その点で提督には多々ご迷惑をお掛けするかと思いますが、どうぞよろしくお願いします」

 

 そう言いながら、深々と頭を下げた。

 

「俺とて実戦経験はないさ。それはお互い様だ」

 

 小木曾は一言、そこで一旦切ると立ち上がり全員の顔を見渡す。

 

「提督と艦娘、お互いに信頼し合い、助け合う事こそ深海棲艦との戦いで勝利する為に必要不可欠な要素となるだろう。こちらこそ、改めてよろしく頼む」

 

 そう言うと、艦娘に対して深々と頭を下げる。

 再び腰を下ろすと、珈琲を一口飲み、目を瞑る。

そして小木曾は心中、自分の責務を改めて自身に言い聞かせた。

 

「さて、これからの我々の行動だが、実のところまだ決まってはいない。だが、未だ翔鶴の艦体が完成していない事からも分かる通り本格的な作戦行動は行なわないものと思ってくれて構わない。翔鶴の艦体の完成予定があと約三日。それを横須賀造船所からここ佐世保へと航行移送するのに燃料搭載期間含めて約二日。その他諸々の作業を含めて考えると翔鶴が軍艦として本格的に艦隊に加われるのは一週間から一週間半は掛かると思う」

 

 小木曾は一度そこで言葉を切ると、一呼吸を置き再度口を開く。

 

「また、皆知っての通り最近佐世保鎮守府近海に深海棲艦の駆逐艦が頻繁に見られるようになっている。現在は山内中将率いる白玉(はくぎょく)艦隊が修理補給に帰港しているついでに該当海域の哨戒にあたっているが、白玉艦隊には印援任務がある。そう長くはここの哨戒をしているわけにもいかないだろうし、柳原(やなぎはら)大将の蒼玉(そうぎょく)艦隊は現在、豪援任務に出ている。とすればこの佐世保鎮守府に残る実働可能な艦隊は俺達の隊と卯野原元帥の隊だけとなる。最終的にどうなるかは大本営からの決定待ちとなるが、恐らく暫くは練度向上の為に鎮守府近海で敵艦哨戒任務に就く事となると思う。皆もそのつもりでいてくれ。俺から聞いて欲しいのはそれだけだ。何か質問などはあるか」

 

 スッと木曾の手が挙がり、小木曾は目で発言を促す。

 

「その大本営決定ってのはいつ出るものなんだ? 」

「決定ではないが明日か明後日には下るだろう。旗艦が未就航だからと言ってもそれ以外は既に就航済みの上に燃料弾薬の積み込みまで完了しているんだ。いつまでも遊ばせているというのはないだろうな」

 

 木曾の問い掛けに小木曾は頷きつつ答える。

 

「では、翔鶴さんの艦体が本格的に就航するまで提督は任務にはどう就かれるのでしょうか」

 

 能代は挙手をしながら問い掛ける。

 

「うん、その事なんだが近海ならば通信も十分に届くだろう。なので俺は執務室で連絡を取りつつ待機しようと考えている。常在戦場を訓示とする海軍将校では本来あり得ない選択ではあるが、処理せねばならない書類等もあるのでな」

「分かりました。では、敵と接敵、交戦中は提督と密に連絡を取りつつ任務にあたります」

「それで頼む。他にはあるかな」

 

 見渡すも誰も不服も疑問もなさそうだと小木曾は察し、肩から力を抜く。任務、作戦の話をする時は聞くも話すも肩が凝ると内心、息をついた。

 

「さぁ、お固い話はここまでだ。せっかくだ、ここは俺が持つ。好きな甘味を一つだけ頼んでいいぞ」

「やったー!提督太っ腹っぽい! 」

「あんまり大声を出すと周りに迷惑だよ、夕立」

 

 予期せぬ小木曾の申し出に一気に艦娘達が沸いた。

 個性様々ではあるが、一様に世間では遊びたい盛りの年頃にしか見えぬ少女達である。

 小木曾だけはその光景を見て、そんな少女達をただ合致する兵器をより強力に運用できる能力を持っている。ただそれだけの理由で戦場へと駆り立てねばならない自分達軍人の不甲斐なさを悔やみ、その事態を招いた元凶である深海棲艦との戦いに一日でも早く決着を付けねばならないと心に誓うのであった。

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