「それでは、行って来る」
アウター港で上陸した小木曾は、まず英国官僚との話し合いの為に港施設へと赴く事となり、翔鶴に留守の間の事を任せ、送迎の車に乗り込んだ。
「初めまして。日本国海軍金碧艦隊司令の小木曾です」
「ようこそイギリスへ。私はレナード・S・P・ナイツです」
両者は笑顔で固く握手を交わす。
「小木曾提督は確か少将でしたね。まだお若いのにすごいですね、驚きました」
「いえいえ、そう言うレナードさんこそ、まだお若いのに国防省の官僚ではないですか。……それで、早速で申し訳ないのですが、現在の北大西洋と欧州海上の状況をお聞かせ願えますか? 」
「はい、勿論です。こちらの地図をご覧ください」
レナードは机の上に広げられた大きな地図を指して小木曾を部屋の奥へと導く。
地図は英国を中心とし、北大西洋を含めた欧州全土が描かれた地図であり、その地図には赤いマークが海洋上にぽつぽつと描かれており、それが恐らく深海棲艦の出没ポイントであろうことを小木曾は見て取った。
「この赤い点、恐らくもうお察しだとは思いますが、深海棲艦の出没が確認されたポイントになります。敵は我々のシーレーンに出没しては商船を襲撃しております。最初は我々も高速艦を用いての少量物資の運送を講じてきましたが、最近になって、その手も通じなくなり現在はフランス、オランダの支援を得て何とか国内物流を保っている状態です」
レナードは苦虫を噛み潰したような顔をして語る。
事実、英国国内の物流は深海棲艦の出現以前よりも遥かに衰えていた。それは既に危険域に達しており、英国だけではなく、欧州全体が深海棲艦の航空攻撃などにより危険な状態にあることもレナードによって語られた。
「状況は概ね理解出来ました。それでは我々は我が国の軍令部と貴国との協議で出した予定通り、明日より二日間の準備期間を設けた後、シーレーンの圧迫をしている敵の撃破を目的として出撃します。シーレーンの確保が出来た後は状況次第ではありますが、欧州陸路を攻撃している敵機動部隊を捜索、撃破するとしようと思います」
「はい、よろしくお願いします」
レナードとの協議から二日の時が経ち、小木曾率いる金碧艦隊の面々は前日深夜まで続いていた補給と整備の最終確認に忙殺されていた。
「各艦は搭載する弾薬の種類、搭載量の最終確認を怠るな。翔鶴、艦載機の点検はどうだ」
「はい、完了しています。瑞鶴、瑞鳳、飛鷹も同様に確認と点検完了の報告が来ています」
「分かった。あとは残りの娘達の報告待ちだな」
小木曾は新たに積み込まれた弾薬のリストと仕様書に目を向けた。
「ふむ。空対潜タ弾に追尾魚雷か。こいつは助かるな」
小木曾の見ているリストにある空対潜タ弾について説明をしておこう。
これは旧帝国海軍において開発された航空機搭載型の空対空、空対地クラスター爆弾を対潜用へと転換した物であり、子弾の数こそ減るものの航空機により効果的な対潜能力を持たせる目的で実験的に開発された弾薬である。また、追尾魚雷には対潜能力も追加されており、潜水艦に対する警戒の強さが見て取れた。
そうして小木曾はリストと仕様書に目を通し終えた頃に艦隊全員が最終確認を完了した事を翔鶴より聞いた。
「よし、征くぞ。両舷前進最微速。全艦に通達、金碧艦隊出撃! 港を出た後に対潜輪形陣を取り北大西洋欧州シーレーンへ進路を取れ! 」
「宜候、両舷前進最微速! 翔鶴、出撃します! 」
こうして、小木曾率いる金碧艦隊は欧州支援の為に大海原へと出撃した。