金碧艦隊~艦これ~   作:ダンテこったい聖司

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第7話

 欧州支援の為に出撃した金碧艦隊は、敵潜水艦と艦載機に警戒をし、常に偵察機「 彩雲」を飛ばしつつ北大西洋へと進路を取っていた。

 

「翔鶴、彩雲から敵発見の通告は入っていないか? 」

「はい、今のところ敵艦も敵艦載機も発見していないようです」

「そうか。瑞鳳と飛鷹に常時彩雲での索敵を続けるよう再度下命してくれ」

「了解しました」

 

 小木曾は席を立ち、窓に近づくとじっと遠くを睨み付けた。

 

「提督、どうかされたんですか? 何やら落ち着かない様子ですが」

「ああ。少しおかしいと思ってな」

「少しおかしい? 」

「英国等の船がかなりの被害を受けているというのに深海棲艦が発見されないのは何故だろうと思ってな」

「そういえばそうですね。すぐに襲い掛かって来ると私も考えておりましたが、全く気配がないですね」

「俺は 防空艦橋へ上がる。敵発見の報があったら教えてくれ」

「はい、かしこまりました」

 

 小木曾は長官席の背もたれに引っ掛けてあった双眼鏡を手にすると 戦闘艦橋の真上にある防空艦橋へと上がると、すぐに双眼鏡を覗き込み、四方をゆっくりと見回した。

 と、そこへ直ぐさま戦闘艦橋にいる翔鶴から敵艦載機発見の報が入った。

 

「方角と距離、それから規模は」

「十時方向、距離五◯◯◯◯、数四二です」

「分かった、全艦左対空戦用意。陣形このまま。瑞鶴、瑞鳳に戦闘機発進を下命。翔鶴、飛鷹は攻撃隊発進用意で待機せよ」

「かしこまりました」

 

 小木曾は報告のあった方に視線を向け、双眼鏡を覗き込む。双眼鏡越しに小さくも徐々にハッキリと見え始める敵艦載機の姿が見えた。

 ここで遅ればせながら、金碧艦隊の面々を陣形配置と共に紹介しよう。

 旗艦である翔鶴のやや後ろに瑞鶴、翔鶴と瑞鶴の中間距離の左側に瑞鳳、右側に飛鷹が配置され、翔鶴の前を木曾を先頭とし摩耶、榛名。翔鶴の斜め前方の左右を初風、浜風と固められ、瑞鳳の左面を阿賀野が、飛鷹の右面を能代が守り、瑞鶴の斜め後方左右を夕立、時雨。そして瑞鶴の真後ろを最後尾から夕雲、神通、利根で守る。空母を中心とした輪形陣を組んでいた。

 この陣形は、対潜警戒は勿論の事、対空戦にも効果を発揮する。

 それでは話を戻そう。

 敵艦載機が接近した事で迎撃するべく瑞鶴、瑞鳳から発進した烈風が殺到してゆく。

 その間にも彩雲によって敵艦隊の索敵が続けられ、その甲斐あって遂に敵艦隊発見の報が小木曾にもたらされた。

 

「軽空母ヌ級数ニ、重巡リ級数一、軽巡ヘ級数三、駆逐ハ級数四、複縦陣でこちらへ接近中です。十時方向、距離十三◯◯◯◯」

「分かった。榛名に対水上戦用意をさせろ。攻撃機発進用意はどうなっている? 」

「はい、準備万端。整っています! 」

「よし、攻撃隊発進始めっ! 飛鷹にも下命! 」

「はい、了解です! 」

 

 小木曾の命令で流星が敵艦に向けて飛び立つ。約半数は上空で編隊を組むとそのまま遥か上空へ上昇し、もう半分は編隊を組みつつ低空飛行で向かっていく。

 艦隊斜め前方で行われている航空戦は激化の一途を辿っており、次々と敵艦載機が海へと没していた。

 それを見て、小木曾が制空権の確保を確信した、その時だった。

 

「雷(らい)跡(せき)確認! 一時方向、数ニ、距離三◯◯◯! 」

「待ち伏せかっ! 全艦回避運動始め! 」

「宜候! 回避運動始めます! 」

 

 翔鶴の返事と共に船体が大きく左へ傾く。小木曾は艦橋の縁に捕まりながら報告のあった方角の海面へと視線を向けた。海面直下を魚雷二本が船体ギリギリを通り過ぎていったのが見え、小木曾はまず胸を撫で下ろす。

 翔鶴を通り過ぎていった魚雷は無事艦隊を通過したようで誰からも爆音は聞こえなかった。

 

「翔鶴、浜風と木曾を雷撃のあった方向へ向かわせ、敵潜水艦撃破を下命しろ。彩雲に索敵誘導をさせろ」

「了解です! 」

 

 すぐさま浜風、木曾が艦隊を離れ魚雷の飛んできた方へと一目散に疾走(はし)っていく。

 小木曾はそれを見届けると、視線を航空戦域へと戻す。

 と、数機の敵艦載機が烈風の防衛線を突破しこちらへと向かって来た。

 各艦が一斉に対空射撃を開始する。勿論、翔鶴あらゆる対空火器も火を噴く。

 一機、また一機と敵機が落とされていく。

 その間にも回避運動が絶え間なく続く。右へ、左へと艦が揺れる。

 小木曾はその間、振り落とされまいと必死に縁に捕まりながら、空を睨み続けた。

敵機の機銃が火を噴き、放たれた弾丸が防空艦橋にいる小木曾の周囲を叩き、弾かれる。 幸いにも小木曾には一発も当たる事はなかった。

翔鶴から小木曾の無事を確認する声が聞こえ、小木曾は怪我がない事を伝えた。

 そして敵機が全滅し、艦の揺れが収まったところで翔鶴から再び連絡が入った。

 

「提督、第一次攻撃隊が帰還しました。戦果は上々、駆逐三、軽巡一が撃沈。重巡一が中破との事です! 」

「分かった。第二次攻撃隊、行けるか? 」

「はい、行けます。それから、提督。やはり危険ですので戦闘艦橋へお戻りください。先程から私、心配で心配で堪りません」

「……分かった。今降りる」

 

 小木曾は翔鶴の申し出を一瞬断ろうかと悩んだが、懇願するような翔鶴の声を思い出し、大人しく戦闘艦橋に降りる事にした。

 

「心配掛けたな、すまなかった。第二次攻撃隊の発進はどうだ」

「はい、全機発進完了しました。それから、本当にお怪我はありませんか? 」

「心配性だな。翔鶴の操舵のおかげで無傷だ。まだ戦闘は終わっていないぞ、集中しろ」

「は、はい! 失礼しました! 」

「さぁ、そろそろ敵も見えてくるぞ。敵艦隊の頭を押さえる。全艦第五戦速! 榛名、聞こえるか! 」

 

 小木曾は長官席に戻りながら榛名を呼び出す。

 

「<<はい! 提督、何でしょうか? >>」

「もう間もなく敵艦隊と接触する。ひとつ、働いてもらうぞ」

「<<はい、お任せください! >>」

「木曾、浜風! 状況を知らせろ! 」

「<<おう、今サメ退治の真っ最中だ! もうちょっと掛かるな! >>」

「<<提督、申し訳ありませんが我々が潜水艦撃破の間、援護して戴けますでしょうか>>」

「分かった、背中は預かろう。しっかり頼むぞ」

「<<おう、任せろ! >>」

「第二次攻撃隊より入電。攻撃成功! ……見えました、敵艦隊です! 距離五◯◯◯◯◯! 」

 

 矢継ぎ早に榛名、木曾、浜風へと連絡を取っていた小木曾は翔鶴の声で即座に双眼鏡を構え遥か彼方へと視線を向ける。

 そこには数隻が黒煙を吹き上げながらもこちらへと突っ込んで来る敵艦隊の姿が小さく見て取れた。

 

「全艦最大戦速! 敵が準備を整える前に接近し、一気呵成に撃破する! 」

「宜候! 最大戦速! 」

 

 艦隊は更に速度を上げ、敵艦隊に接近していく。みるみるうちに敵艦隊の姿がハッキリ、大きく見えてくる。

 そして遂に彼我の距離が戦艦榛名の主砲の射程距離へと近づいた。

 

「全艦回頭、面舵一杯! 」

「宜候! おもーかーじ! 」

 

 小木曾の号令と共に艦隊が一斉に回頭をする。徐々に敵艦隊の姿が正面から左へと移っていく。

 そして艦隊の前衛部が敵艦隊に対して丁字の配置になった。

 

「榛名、砲撃開始ッ! 」

 

その時を待ったかのように間髪入れず小木曾が叫ぶ。その声と同調する様に翔鶴の前方を疾走る榛名の前部甲板上の主砲が轟音と共に火を噴いた。更に一拍置いて後部甲板上の主砲が同じく火を噴く。

 暫くの間を置き、放った砲弾が遥か彼方、敵艦隊周辺で水柱を作った。それを見た榛名がすかさず発射角の修正を試みる。そして再び轟音と閃光。

放たれた砲弾は敵艦のすぐ近くへと着弾した。

 

「<<弾着! 近近遠挟叉! >>」

「榛名、諸元を各艦に伝え! 効力射、始めッ! 」

 

小木曾の掛け声を聞いた榛名の主砲八門から次々と砲弾が放たれる。

 

「敵艦隊、取舵取りました! 」

「回り込め!取舵四◯! 」

「宜候! とーりかーじ!」

 

敵艦隊が丁字状態から脱しようと転舵をするが、小木曾はそれを許さない。

敵艦隊の動きに合わせて艦隊を転舵させ常に敵艦隊に対して丁字状態を保ち、敵の動きに制限を掛け続けた。

そして、その間にも金碧艦隊と敵艦隊の距離は詰まり榛名に続いて、巡洋艦達の射程に入り、各艦の砲塔が次々と砲声を轟かせ始める。

 

「<<ねぇねぇ、司令官さん! 夕立、結構暇っぽい! >>」

「<<そうね。私達駆逐艦の射程じゃないものね。それにもうかなり敵の数も減って来ているし、今回は私達はお役御免かしらね>>」

「<<今回は機動部隊の航空隊が初手の時点で頑張ってくれたからね。仕方ないさ>>」

「<<ほらほら、あんまり戦闘中に私語をしてると提督に怒られるわよ? それに私たちの砲撃が届く位に敵艦隊に近付いてしまうのは、この艦隊にとっては危険なんだから。むしろ、撃たなくて済む状況というのはありがたい事よ? >>」

「<<えー。でも夕立だって、暴れたい!! >>」

「…………」

「? どうかされましたか、提督? 」

「いや、戦闘中だと言うのに、緊張感のない事にどうしたものかと思案していたところだ」

「注意しましょうか? 」

「いや、俺から注意する」

「かしこまりました」

 

小木曾は音通ボタンに指を掛けたところで

 

「<<おい、チビ助たち! さっきからうるさいぞ! あんまり騒ぐとお前らにも砲弾ぶち込むぞ! >>」

「<<ひゃー! 摩耶ちゃんが怒った! >>」

「<<まぁまぁ、摩耶ちゃん。抑えて抑えて。>>」

 

さらに騒ぎ始めた夕立と摩耶、それを制止する榛名の音通に小木曾は、一旦肩を落とすが、改めて音通ボタンに指を掛けると、今度は即座にボタンを押し込み

 

「お前ら!! 今が戦闘中だという事を忘れるな!! もうちょっと真面目にやらんか!! それから夕立、お前は帰港後にすぐ俺の所へ来い!! 以上! 」

 

とうとう爆発した様に怒声を発すると、小木曾は心底疲れた様にぐったりと長官席にもたれ掛かった。

通信では夕立の悲痛な叫びが聞こえたが、小木曾はこれを無視した。

 

「大丈夫ですか、提督」

「ああ、大丈夫だ。それよりも敵艦隊の動きは? 」

「はい、現在重巡を撃沈、大破航行及び戦闘不能が二、中破が二、駆逐一隻が健在です」

「その駆逐艦の動きは? 」

「遁走する機会を作ろうと必死になっている様です。先程から何度か反転する動きを見せていますが、榛名ちゃん達によって全て抑えています」

「それでも健在というのは、すごいものだな」

「はい、恐らくエリートかフラグシップクラスではないかと」

「そうだな。で、やれそうか? 」

「はい。幸いまだ敵駆逐艦は反撃に転じる様子はないので、今のところは。これで反撃に転じられ、魚雷を撃たれたら、陣形を崩され、その隙を突かれる危険性があります」

「そうか。……木曾、浜風、聞こえるか? 」

「<<おう、ばっちり聞こえるぞ! どうした?>>」

「サメ狩りの方はどうだ」

「<<ああ、ちょうど終わったところだぜ。今、そっちに向かっているところだ>>」

「そうか。悪いが、お前達にもう一働きして貰いたい。頼めるか? 」

「<<全く、人使いの荒い提督だぜ。いいぜ、頼まれてやるよ>>」

「助かる。木曾、そちらに夕立、時雨、初風、夕雲を回す。お前が先頭になって今、逃げ回っている敵駆逐艦の後ろから突撃してもらえないか? 奴の頭はこちらがこのまま抑える」

「<<了解した! 浜風、もう一仕事だ! 付いて来い! >>」

「<<ちょっと、命令しないでください! 私は司令の部下であってあなたの部下じゃありません! >>」

「その提督からの命令だ! 逃げ回ってる敵駆逐艦を叩いてくれだとよ! >>」

「<<分かりました。……了解です。それでは司令。行って参ります>>」

「ああ、よろしく頼む」

 

木曾と浜風との通信を終えると、小木曾は全艦音通に切り替え、夕立達に命令を下した。

活躍の場がなく不満気だった夕立は嬉々として木曾の元へと疾走って行き、その後を追うように時雨達が続いて行った。

 

「敵駆逐艦の頭を抑えるぞ。ただし、木曾達が突撃をする。味方に当てたりしないよう、射角調整を榛名達に下命しろ」

「かしこまりました」

 

「木曾ちゃん達が到着、突撃を開始しました! 」

「分かった。牽制開始! 」

 

小木曾の作戦は上手く行った。

金碧艦隊本隊に動きを牽制された敵駆逐艦は後ろより急速に突撃して来た木曾達にまともな反撃に出る事も出来ず、あっという間に魚雷と砲弾の餌食となり、海の底へと没していった。

 

「敵掃討を確認。戦闘終了です、提督」

「ああ、その様だな。諸君、ご苦労。第二次警戒体制に移行せよ。木曾達もご苦労だった。速やかに陣形の再形成へと移ってくれ」

「<<了解した。お前達、行くぞ>>」

 

木曾との音通が切れるのを確認した小木曾は全艦音通開く。

 

「達す。司令の小木曾だ。我々は一先ず敵商船破壊艦隊の一つを撃破する事に成功した。まずは諸君にその働きぶりを感謝したい。だが、我々の倒さねばならない敵はまだまだ、この北大西洋にうろついている。これらを全て叩かない事には欧州の安全を確保する事は叶わない。諸君の更なる奮励努力を期待する。以上! 」

 

こうして、まずは目の前の敵を撃破した小木曾達は、次の敵艦隊を求めて針路を再び欧州シーレーンへと向けるのであった。

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