神生学園記   作:汐入 那月

12 / 18
どうも鐳波です。
ちまちま書いていた神聖学園記も更新できました!
ではお楽しみください


合宿終了日

朝各々が起き、まず一番最初に動いたのはシャドーだった。

窓を開けタバコを吸う。

 

「お、おはようシャドー君」

 

「あぁ、おはよう」

座布団に腰掛け、先程運ばれた書類の山を片付け始める。

 

「ふ、二人はまだ寝てるね・・・疲れてるのかな?」

 

「俺は一番に寝たから知らんが…どうせ深夜まで飛ばしたんだろ」

 

「わ、私も起きてたかったなぁ」

 

「お前は能力を常に使い続けてるからな。体力がないのも頷ける」

頬杖を突きめんどくさそうに書類に文字を書き込む。

 

「う、うん、制御が難しくて・・・」

 

「それも課題だな。基礎体力を付けた後に制御方法を考えてみよう」

 

「う、うん」

 

「ふぁ~おはよう」

洸天が目をこすりながら起きる。

 

「やっと起きたか」

書類の10分の2を終わらせた辺りで顔を上げる。

 

「お仕事、大変そうだね」

 

「いや、特に大変ではないな。大体くだらんことを綴るだけだ。毎日の現状報告だからな」

軽く腰を楽にして煙を蒸かして遊ぶ。

 

「ふーん、妖王だっけ?大変だね」

 

「我の星では破壊しかなかったからな、お前たちの言う『勉強』というやつが最初は慣れるのに苦労したぞ」

気づいたらガルトーラも起きていた。

 

「へえ、俺は…気づいたら妖王なってて、気づいたらこんなことをやる破目に」

火がフィルターに近づいたタバコを灰皿で押しつぶし、最後の一本のMarlboro(マールボロ)を吸う。

 

「嫌なの?」

 

「好きではないな。人間の頃の経験のおかげで慣れてはいるが…もう少し気楽に過ごしたい」

 

「・・・過ごせばいいのに。自由なことができないようには見えないけど」

 

「これでも縛られてるんだよ。他人に悟られたくないだけだ」

そう言った後勢いよく襖が開け放たれ、シャドーは押し倒される。

 

「シャドーくんお帰り!!なんでボク連絡くれなかったのさ!?」

アザトースだった。

帰ってきて連絡なしに一日過ごしたのが気に喰わないらしく、腰から出した触手で四肢を拘束されてしまった。

 

「…助けてくれないですか。寝起きはめんどくさい」

 

「その子、君の所の子だろ、僕たちは関係ないし~」

 

「俺は勝手に押し倒されただけだから。動くのめんどくさいの、だから助けろ」

アザトースは息を荒くして服を剥ぎ取り始めている。

 

「わ、私ちょっと外出てくるねっ!」

ルネはそう言って外に駆けて行ってしまった。

 

「僕もちょっとトイレ~」

 

「我は日課のランニングだな」

各々がシャドーも無視して外に出ていく。

 

「ちっ、白状者多すぎかよ。これ以上は汐音に怒られるな…」

シャドーはアザトースの腹を膝で蹴り、外に放り投げる。

その様子を見ていたアドバンスが横目でシャドーを見る。

 

「女の子に・・・可哀想に」

 

「あいつはいいんだ、強いから。あ、それより昨日はすっぽかしてすまなかった」

 

「俺も村で遊んでたからいいよ、後で来てくれションとかにも用あるから」

 

「ん、了解だ」

そう言って仕事に戻る。

少し時間が経ってアドバンスの部屋に行く。

 

「入るぞ」

襖を開けて中に入るのと一緒にJPSに火をつける。

 

「よ、シャドー来たか」

そこにはアドバンスの他にヴラディミールとションが居た。

 

「なんだ、お前もいたのか」

 

「僕も呼ばれてね」

短い会話を終わらせてアドバンスを見る。

 

「で、何の用だ」

 

「ちょっとな、錬創術について面白い記事を見つけてな、そこにお前とション、ついでにヴラディミールも連れて行こうかと思ってな」

 

「ふむ。面白そうじゃないか」

吸っていたタバコを灰皿に入れる。

 

「場所は火星、こっちのな」

 

「へぇ…随分と近場だな。ペルナンタ達を使えばすぐ行けるな、普通でも行けるが」

 

「まぁそうだけど・・・№は危なすぎだろ」

 

「なら足で行こう」

 

「あ、アドバンスさん。昨日は行けなくてすいません。それで、創神器はいつ辺りに貰えるんですか?」

 

「すぐだ、火星で作るんだよ、一次元超えた今までにない創神器をな」

 

「何?お前・・・何をする気だ」

 

「さー?なんでしょうね」

 

「良く分からないけどすごそうだな。羨ましい」

 

「でもシャドーくんはたまにその刀と話してるじゃないか。それの方が楽しそうだけど」

 

「こいつは気難しいぞ…」

 

「ん?別に話すのは変わらないぞ、ただ一次元超えてるだけだ」

 

「面白そうですね」

少し楽しそうにしている。

 

「ああ、楽しみにしとけ」

 

「・・・シャドー、こいつがおかしな真似したらすぐ消し飛ばせ」

 

「お前、めんどくさい事を一々人に押し付けんなよな。いいけどさ」

 

「とりあえず行こうぜ」

アドバンスはそう言うと三人を火星に連れて行く。

 

「おぉ、あのゴミクズ共もやるときはやるんだな。流石だよ」

感心しながら辺りを見回す。

 

「ゴミクズって・・・人間を貶し過ぎだろ」

 

「まぁ、俺より格下だしな。いいんだよ」

 

「アドバンス、さっさとその錬創術のある場所を言え」

 

「ションはせっかちだなぁ、久しぶりの地球人じゃん、楽しもうぜ」

 

「今更こいつらに用なんてないだろ。やることだけをさっさと終わらせるぞ」

 

「つまんね~二人してさ~」

 

「おい貴様ら何者だ!」

喋っていると警備員が二人係で話しかけてきた。

 

「…」

シャドーは創刀の柄に手をかけようとするが、瞬間にシャドーを小瓶に閉じ込める。

 

「いやぁすいません、すぐに立ち去るんで」

 

「・・・」

同時に何かしようとしたションも小瓶に閉じ込める。

 

「い、行くぞヴラディミール」

 

「あ~あ、二人とも血の気が多くて困りますね~」

ヴラディミールはニコニコしている。

 

「さて、んじゃ神殿行きますかね」

 

「いやぁ、楽しみですね」

二人は話しながら神殿へと足を運ぶ。

 

「んで、二人は何時出すんですか?」

 

「神殿着いてからだ、自由にさせてたらなにしでかすかわかったもんじゃないからな」

 

「まぁ、正しいかもですね」

苦笑をしてそれからは何も喋らず歩き、神殿に着く。

 

「ここだな、当然人間・・・は居ないけど嫌な空気が流れてるな、無か?これ」

 

「さぁ?あずかり知りませんね」

 

「ふむ、とりあえず行ってみるか」

 

「ですね。あとそろそろ二人も出しとかないと戦力たりなくなりますよ?」

鉄の剣を引き抜いて、切先を地面に擦らせながら歩く。

 

「だな」

アドバンスはそう言うと小瓶から二人を出す。

 

「やっとか…なんだよちょこっと遊ぼうと思っただけなのに」

待ちわびたようにタバコを咥え、創刀引き抜く。

 

「ここからは気を引き締めていけ、無の気配がする」

 

「おい待て、お前なんで無の気配なんて感じ取った」

 

「無の気配はないからな、驚くのも無理はないか」

 

「俺の創剣の能力だ、『完全探知』ありとあらゆる意思を探知することができる。でも完全の無は無理だ、あくまで半無だけだよ」

 

「ふむ…今度から大事な戦闘の時とかはお前を呼ぶことにするよ。さぁ行こう」

 

「そりゃどうも」

 

「やめとけシャドー、こいつの事はお前もよく知っているだろう、役に立つとは思えないが」

 

「うっせーよション、俺だって役に立っときはあるんだよ」

 

「百万分の一でな」

 

「ああ!?」

 

「やるときはしっかり頼むぞ」

そのまま中に入ると、一人の赤黒い髪の男性がいて、その先には迷路が広がっていた。

 

「・・・何者だお前」

 

「…?おぉ、久しぶりだなション。少しだけ遊んでやろう」

赤黒い髪の男性は妖しく微笑んだ後、シャドー以外の皆が一瞬で攻撃されアドバンス以外うずくまる。

 

「まだまだ弱いなお前達。鍛えが足りてないんじゃないか?」

 

「クソっ!」

アドバンスその状態から男の足元の死角に回り創剣で下から振り上げる。

男はそれを左手で受け止める。

 

「お終いだ、今ここで再びお前らを殺しても面白くない。自己紹介をしよう、俺はシャドーだ」

シャドーの愛煙しているJPSを吸う。

 

「なっ!?」

 

「まぁ、これから40億年後の、だがな」

そこには長年の生から成人者の孤独を知った憂いを帯びた印象を受ける半笑いのシャドーが居た。

 

「先程のいきなりの攻撃は詫びよう。覚えているぞ、この後錬創術の手がかりをここで探しに行くんだろう?ここで待ってるから終わったら学園に行かせてくれよ」

随分と柔らかい笑みを浮かべる。

 

「ふざけんな!お前みたいなやつ連れて行くわけないだろう!」

 

「頼むよ、何もしないからさ。絶対戦闘とかしないから。ただ殺した相手にまた会えると…なんか、こう…話したくなるんだよ。ここ10億年はまともに人と話してないんだ」

 

「やはりか・・・お前は『虚無のシャドー』か」

 

「そうだな…俺から言えることはたくさんあるが一つだけ言わせてくれ。あまり破滅に向かいすぎるなよ、自分を見失うことになる」

どこか嘲笑う。

 

「…?」

シャドーは良く分かってないようだったがとりあえず頷いた

 

「じ、じゃあ…とりあえず行きましょうか」

ヴラディミールが話を切り出す。

 

「ちっ、何が未来のシャドーだ、桁違いの気配じゃねーか。これじゃまるで・・・」

 

「無と意思存在『アッガスアトランテ』か?」

 

「理事長たちと同じ・・・・」

 

「まぁ、母親も母親だし…とは思うが、あれが俺なのか…」

 

「あの兄さん、随分と寂しそうでしたね」

 

「ありゃ生き過ぎた奴の目だ。俺でもまだあの境地には達せない…か」

シャドーは頭を掻きむしる。

 

「達してほしくはないものだ、俺は確かに行き過ぎた目でもあるがすべてを失ったやつの目にも見える」

 

「どちらにしろ敵になったら厄介じゃすまなそうだしな、とりあえず警戒だけしとくか」

 

「最低限の警戒でいいと思うぞ。俺だからわかるが、約束だけは絶対に破らない自信がある」

 

「・・・ならいいが」

 

「じゃあ早速迷路脱出だな、待っててくれ」

シャドーは翼部分を黒い霧にして出口を探す。

 

「いつも通りの便利体質だな」

 

「俺も霧になれるように改造しようかな」

 

「やったらこの世から拒絶させるからな」

 

「なぜ!?」

 

「自分で考えろ」

 

「ココロアタリナイデスネー」

 

「…?良く分からないが母さんに感謝だな、うん」

軽く笑ってから霧の視点に意識を集中させる。

 

「出口がないな、記憶云々はないからバスタルーツ現象に近しくも少し違う感じがするんだ。ション、知恵を貸せ」

 

「道がないか・・・ならデスアル現象かルートレス現象だな、しかし出口がないとなるとデスアルの方が有力だな」

 

「デスアル現象?少し説明頼む」

タバコを壁に擦りつけて新しいのを吸う。

 

「そうだな、迷路や入り組んだ建物等で出口が無くなると言った現象の事だ、主に偶然的に起こるケースや念などの物質が起こす場合もある」

 

「なら物理解決はできそうにないってことか…下手に突かない方がいいよな…」

 

「どうしましょうか…迷路をまっすぐ突き抜けるタブーだけはやりたくないですね」

そう言いながらも壊す気満々で剣を振るヴラディミール。

 

「やめろ、俺がここより頭おかしい所行ったときはもう、全てが罠みたいなもんだった」

 

「う~ん…レイラさんとグレイが居たら少しスムーズに行けそうですが…居ない人の話をしても仕方ありません。ションさんの説明ですと大まかには視覚的に見えないだけですし、いくつか方法はあります」

ヴラディミールは電波のように妖力を流し始める。

 

「そうだな、現象の事象解明はまだだが対象法はある程度わかっている、視覚に直接働きかけるこれらは目をつぶっていたりする者には無害らしい」

 

「ヴラディミール、少し頭の中貰うぞ」

シャドーはヴラディミールの額に指をあててから一つの道に黒い霧を密集させる。

 

「こっちだな」

迷路を抜け少し進むと分かれ道が広がる。

 

「じゃあ…俺とション、ヴラディミールとアドバンスだ。俺は左に行かせてもらう」

 

「じゃあ俺たちは右だな、行くぜヴラディミール」

 

「は~い」

先程と同じく切先を地面に擦ってアドバンスに続く。

 

「さて、うるさい奴らも消えたしちゃちゃっとここ終わらせようぜ」

 

「もう少し気を引き締めてください。戦場ではそういうのが命取りになり…時に僕に殺される可能性もありますよ」

ヴラディミールの目はもう怖い程にぎらつき、薄ら笑いを浮かべている。

 

「物騒だな、まぁいいや・・・で、こりゃなんだ」

アドバンスたちの前に無限回廊の廊下が現れた。

 

「随分と長いですね」

腰から取り出したナイフをまっすぐ投げる、しかしそのナイフは戻ってこなかった。

 

「・・・メビウスの輪じゃなさそうだね」

 

「それだったら後ろから帰ってきますもんね。一発切ってみましょう」

鉄の剣を構え、深呼吸をして妖力を溜め斬撃に乗せて放つ。

放たれた斬撃は壁を切りながら真っ直ぐに飛んでいき影も形もなくなった。

 

「・・・。」

 

「…とりあえず中入ってみましょうか」

 

「あぁ」

二人が中に入ると瞬時に入口が無くなり前後左右上下が無限回廊になる。

 

「う~ん…どうしましょうか。アドバンスさん、頭使ってくださいよ」

 

「俺かよ・・・ん~切られた壁の部分は綺麗に無くなってるな、修復・・・って感じでない気がするが・・・上下にも廊下、自分の位置を把握するのも困難だな、唯一俺たちの立っているこの地面だけが足場があるがな」

 

「脱出…は分かりませんがもう少し進んでみましょうか」

そのまま奥へと足を進める。

 

「・・・・」

しかしアドバンスはその場に立ち尽くす。

 

「あれ、どうしたんですか?」

 

「いや、さっきから誰かに見られてる気が・・・」

 

「ちょっと創神器の力使って集中してください。なにか感じ取れるかもしれないです」

 

「いや、こいつは常にフル稼働中だ、それでも位置が探知できない・・・なんか気配が至る所にあるような・・・」

 

「う、う~ん…とりあえず行動だけしてみましょうか」

ナイフを上360°全てに投げ、上着から取り出した1枚のカードを使い電撃をナイフに浴びせ、そこを基点に幅広い電撃が通路内に走る、ナイフは上に飛んでいき電流も届かなくなるほど遠くへ行った直後真後ろからナイフが勢いよく飛んできた。

 

「うお!?」

ヴラディミールは飛んできたナイフを軌道を変えるようにナイフを投げる、軌道が変わったすべてのナイフは

それぞれ地面に刺さったり壁に刺さったりしたが一本だけ上に向かっていくと再び真後ろから飛んできた。

 

「帰ってくるんですね…」

ヴラディミールは上に向かって広範囲の衝撃波を伴う斬撃を繰り出す。

すると壁やらを一切傷つけることなく斬撃は真上に飛んでいき遠くまで言った直後また後ろから飛んで切る、横から飛んできた斬撃は壁を両断しながら飛んでいった。

 

「えっと…これはどういう…」

ヴラディミールの頭の中には?が渦巻いていた。

 

「さぁな、しかし少し見えてきたぞ、上にだけの攻撃が何故か死角から飛んで切るってことは理解できたが・・・上に行けば何かわかるか?」

 

「いえ、上だけに固執し過ぎるのもよくはないかと。アドバンスさん上に攻撃お願いします。僕は下にやってみます」

二人は同時に上下に攻撃する、瞬間下の地面が崩れ同じ無限回廊が現れ真っ直ぐに下に落ちる、同時にアドバンスが放った砲撃は帰ってこなくなった。

 

「もっかい下にやってみましょうか」

少し溜めた妖力弾を下に放つ、すると放った瞬間に真上から飛んで来る。

 

「これって下に近づいてるってことなんですかね?」

 

「・・・ちょっと違うな」

 

「僕...やっぱこの世界嫌いかもしれないです」

舌打ちをしてあらゆる方向に動き始める、すると空間が歪みだす。

 

「なるほど、わざわざ無限回廊に従わなくたっていいよな、全部壊して好きに進めばいいだよな。ま、ちょっと危険だけど」

 

「シャドーくんならやりそうなことですね…」

剣で壁を切り放つ、すると壁や空間は脆く崩れ元の道に戻ると同時に目の前に一人の男が現れる。

 

「ば、馬鹿な・・・この無限回廊が解けるわけ・・・」

 

「本当…苦労しましたよ」

軽くイライラしてるようで、頭を荒く掻きむしる。

 

「ちっ、それを解いたくらいでいい気になるなよっ!」

男は掌に白い箱を作り出す、そしてそれをヴラディミールに飛ばす。

ヴラディミールは首を傾け、そのまま股間から脳まで真っ二つにする。

 

「よっし、できました」

 

「うわ、エグいことするなぁもう」

アドバンスは即座にその男に近づき修復し寝かせる。

 

「こいつには本気の殺意がなかった、たぶん命令されてたんだろう、無暗に殺すな」

 

「殺意がないから殺すなってのは理解できません。そしたら戦争が成り立たないですし…まぁ、いいですけど」

 

「よく言われる、でもなんかやっぱり殺戮者とかと一緒にはされたくなくてな、あ、別にヴラディミールが殺戮者って言ってるわけじゃねーぞ?今のは完全に正当防衛だしな」

 

「?僕は殺戮は好きですから殺戮マシーンと解釈しても差し支えないですが」

 

「ま、お前にはまだわからないさ、もうちょっと勉強するんだな」

 

「なにか子ども扱いされた気がするんですが…間違ってはいないか…」

納得してしまった自分に軽く唸る。

 

「さ、先に進もうぜ」

一方、時を遡ったシャドー達は。

 

「さて、行くか」

シャドーはもうこういうのは慣れたと言わんばかりに慎重ではありながらも普通に進む。

 

「あぁ、あのうるさいのと一緒にいるとこっちがどうにかなりそうだ」

 

「ヴラディミールに厄介者を押し付けたし俺らは俺らでゆったり行けばいいさ」

無くした片腕に少しの違和感を覚えながらも右手で創刀を握りしめる。

少し歩くと小部屋に出て、奥には似たような部屋が連なっていた。

 

「随分とでかいな」

黒い霧を少量各部屋に飛ばし手元に残した黒い霧で地図を作る。

 

「今いるのはここだ」

テンキーのようになった9つの部屋の中で真ん中の一番下の部屋を指差す。

 

「ふむ、不思議な形の部屋だな」

 

「なんかゲームのダンジョンでありそうな形だよな。ともあれ、手掛かりのありそうな部屋を調べよう。なんか見つけたらそこが赤黒く光る」

髪の毛から黒い霧を出して部屋全てを調べる。

 

「ほんと便利な体だな、まぁとりあえず頼む」

 

「真ん中の部屋には祭壇があり、左上から右上までに一つずつレバーがある。とりあえずは祭壇を見よう」

 

「わかった」

祭壇のある部屋に進み、真っ先に祭壇に目をやる。

 

「この祭壇についてる玉、外れるみたいだな」

少し神力を通してみるが、反応は帰ってこなかった。

 

「ダメか、ならレバーでも引いてみるか?」

 

「ふむ、ここの神殿のシステムが生きているなら危険かもしれないが・・・何か手掛かりがないかもう少し辺りを探ってみてはどうだ?」

 

「探索ねぇ…宝具探しで嫌になってたんだがなぁ」

もう一度黒い霧を全ての部屋に散開させ、今度は壁を意識して探索を進める。

 

「ダメだ、分からん。この玉が何かに使えるとは思うんだがな」

シャドーはふぅむ、と困ってから玉を力いっぱい落とす。

すると中からは紙が出てくる。

 

『ここは無限回廊、出口は下への階段、無限回廊には似つかわしくない部屋に行け、そこが真のスタート地点』

 

「とは言っても全部一緒だよな…あ、そうだ。唯一数字が描かれていなかった左の部屋に行こう」

 

「レバーは良いのか?」

 

「レバーのある部屋も数字が描かれているんだ、レバーはその次に回ろうと思う」

 

「わかった」

 

「何もない、か。レバーの部屋だな左上から行こう」

前の方へ緩やかな足取りで入る。

 

「良く分からないが、とりあえず一回だけ下ろしてみるか」

神力と妖力を練りこんだ障壁を展開しレバーを下ろす。

すると左上と右上に扉が現れて、それが開く。

隣の真ん中上の部屋にあるレバーも下ろす。

するとその部屋にも扉が現れて開き、別の部屋でも扉が開く音がした。

 

「色々開いたな…とりあえずはこの部屋の扉の奥を見てみよう」

真ん中上の扉の中に霧を忍ばせる。

すると左の壁から霧が出てくる。

 

「あぁ、確かに無限回廊だな」

次は左上の部屋に入る。

すると先程のように右上の部屋から出てくる。

 

「じゃあ次は左だな」

左の部屋に移動し扉の中に入ると、部屋があった。

 

「ダメだ、ループするんじゃ無限回廊その物じゃないか。一度祭壇の所に戻るぞ」

シャドーは中央の部屋に戻り祭壇をジッと見つめる。

すると祭壇が動かされた跡がうっすらと見えることに気づき、祭壇を蹴って動かす。

それの真下にはボタンがあり、シャドーはそれを足で踏みつける。

左の部屋に階段が現れるのを霧で観測し、その階段を降りていく。

その後道を進んでいくと別れた二人とも合流する。

 

「おぉ、お前達も脱出できたか」

そこでシャドーはタバコを吸う。

 

「そうだな、意外と難しかった」

 

「ただ宝具探しよりは楽だったさ」

シャドーは煙を蒸かして遊ぶ。

 

「さて、次の部屋に行くぞ」

肺喫煙を楽しみながら足を進める。

急に景色が夜の森のように変わり、その先にはホラゲーなどでよく見る廃病院が佇んでいた。

 

「おぉ、迫力満点」

 

「意味が分からないぞシャドー」

 

「嫌な予感しかしねぇな」

 

「俺人間の頃こういう所よく来たなぁ」

呑気な事を言いながら中に入るとロビーが広がり、右手の方に階段がある。

霧をナイフに付着させて目の前の廊下にまっすぐ投げる。

奥の部屋があり、診察室と職員室、そして男女それぞれのトイレが見える。

シャドーはそれを皆に説明した後、霧で子供サイズのシャドーを構成し二階へと上がらせ、ロビーの探索に取り掛かる。

 

「どこから調べる?」

 

「二手に分かれるってのもありだがこの場所はやばそうだしな、固まってた方が良い気もするなぁ」

 

「別々で行動させるのは俺の分身のみでいい。とりあえず目につくものすべてひっくり返すんだ」

シャドーは植木をひっくり返し、妖刀で土をかき分ける。

 

「ったくよ」

アドバンスもソファーの中やカウンターを調べる。

 

「・・・。」

ションはそれを黙ってみていた。

 

「どしたション?」

 

「・・・いやなんでもない」

 

「小さなことが正解につながることもある。とりあえず言ってみろよ」

 

「・・・いや、ここに入ってから少し体調が悪くてな、このソファーで休んでもいいか?」

 

「お前が体調不良?珍しいな」

 

「何故か・・・肩が地面に引っ張られるような・・・・とにかく俺は少し休む」

そう言うとションはソファーに寝転がり瞬間に死んだように眠りについてしまった。

 

「・・・どう思うシャドー?」

 

「う~ん、幽霊とか?こう言う所にいるとお決まりだよな。俺は人間の頃こう言う所きてて本物に会った事もあるし」

 

「俺らも似たようなもんだけどな、とりあえずこいつはここにおいてこの辺をもうちょっと調べようぜ」

 

「そうだな」

自動販売機に目を向けると釣りを出すところに100円が置いてある。

それを入れ、お茶、ポロリスエッツ、コーラ、おしるこの四つがある中のおしるこを押す。

ただのおしるこが出てきた。

製造日は西暦100年らしい、その当時に自販機は製造されていないはずだが…

 

「こんなもん飲めるか。そもそも俺は甘いものが飲めないのになぜ押したんだ…」

タブを開けて中身を地面に捨てる。

 

 

「もったいねーな、ま、お前たちヴァンパイアにそういう感情はないか」

 

「いや、望むものはいくらでも手に入ったからという金持ち感覚の方が俺は強い」

缶を握りつぶし投げ捨てる。

 

「そうかい、まぁ次は奥の部屋だな」

 

「ちっ、収穫なしか」

舌打ちを打ってから奥の部屋へと進む。

 

「アドバンス、女子トイレ入れ。俺男子トイレ入る」

タバコを吸って扉を蹴り上げる。

 

「はぁ!?なんでだよ!」

 

「いや、お前変態的な事ばっかするから…喜ぶかと…?」

シャドーは首を傾げる。

 

「この状況下じゃそんな気失せるわ、まぁいいけどさぁ」

アドバンスは不貞腐れながら女子トイレに入っていく。

シャドーはくつくつ笑いながら男子トイレに入り辺りを見回し、「しけてやがる…」とぼやいて男子トイレから出る。

それと同時にアドバンスも出てきた。

 

「どうせなにもなかっただろう?」

 

「ご名答」

アドバンスは手を上に向け肩を上げる。

 

「とりあえず職員室に入ろう」

 

「りょーかい」

部屋に入った瞬間に分身の視界が切断されシャドーは素早く反応し後ろに飛び退く。

 

「どうしたシャドー?」

 

「いや、この部屋に入った瞬間に分身の視界が切断されたせいで少しビビった。二階に何かいるかもしれない」

 

「まじかよ、早くも二階行きたくなくなったわ」

 

「ここにはさっきから嫌な気しか感じないから戦闘も避けたいですしね」

ここに来てやっとヴラディミールが口を開いた。

恐らく常に充てられている殺気に呼応して殺気を当て続けていたのだろう、物凄く怯えながらも楽しそうな顔をしている。

シャドーは改めて職員室へと足を進める。

何か呪詛のようにぶつぶつ言っている女性のような何かが壁の端っこでうずくまっている。

 

「おい女、どうした」

なるべく威圧しないように、シャドーの中ではできるだけ優しく喋りかける。

 

「家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族家族・・・」

女性は『家族』と呟きながらうずくまっている

 

「おい、こいつ殺そう。良く分からない奴は殺した方が早い」

 

「ひどいこと言うなお前、ヴラディミールはどう思う?」

 

「……僕はぁ、そうだなぁ…」

ヴラディミールは頭があまりよく働いていないようで、う~んとずっと考え続けている。

 

「がああああ!!」

すると女性は急に襲い掛かってきた。

 

「は!?」

ヴラディミールは素早く斬りかかるがそれを手で止められ勢いのまま後ろにずり下がる。

アドバンスはすぐさま女性の背後に回り切りつけるがあっさりと交わされてしまう。

 

「アドバンス、遊びか本気でやるか…選ばせてやる」

 

「好きにしろよ、ただの殺し合いだ」

 

「全部俺が決めるのは退屈だな、やれやれ」

シャドーは創刀を空中で一回転して柄を強く握り、まっすぐ投げるが単調な攻撃はすぐ見きられてかわされる。

女性はがいきなり消え次の瞬間シャドー達を覆うようにレーザーの槍が降り注ぐ。

広範囲で有りながらも隙間のある攻撃は案の定簡単に避けられてしまった。

 

「戦場でのミスは一切許されない…」

ピンと張った糸の様に張りつめた殺気を放つヴラディミールは鉄の剣を構える。

横に切り払うとしっかりとは当たらない物の掠り少しはダメージを与えられたようだ。

 

「ちっ、ちょこまかと」

アドバンスは陣を展開し光の柱を高速で飛ばすが普通にかわされる。

 

「おぉ、随分と面白い奴じゃないか」

シャドーは左肩甲骨から炎の刺青の様なものが伸びて顔半分を覆う。

断罪の烙印(コンディクション・スティグメ)

 

「封印を解くほどではないがこいつは使っといたほうがいいかもな」

シャドーは「くたばれ!」と言う掛け声と共に女性を真上から叩っ斬る。

しかし女性は瞬時に殺気を察知して避ける。

 

「カゾクハドコ?」

瞬間アドバンスの懐に入り掌に高エネルギーを溜める。

 

「そんなもん知りませんよっ」

女性の股を潜り抜けアドバンスに背を向けて、体をねじり女性の頬を蹴り飛ばす。

 

「助かったぜ、今のは危なかった」

 

「あれは時間停止ですね。そりゃアドバンスさんも動けない訳です」

 

「時間停止か、厄介な能力だな」

 

「咲夜で慣れたつもりではあったが…あいつの超強化版と考えればいいのか」

 

「じゃあちょこっと頑張りましょうかね」

剣を自分に突き刺し、滴る血液を結晶化させて斬りつけるが見事に避けられる。

 

「ほんと厄介だな」

再びアドバンスは陣を展開し相手を陣の中に誘い込み陣を大爆発させる、手ごたえは確かにあったがほぼ無傷で爆炎から出てくる。

 

「ちっ、奴は不死身か?」

 

「強いな…少し特殊な炎でも使ってみるか。質量を持った炎を喰らいやがれバケモン」

 

鈍炎【グラビティ・フラム】

妖力と魔力で生成された質量のある鉛の様に重い炎の砲撃を魔法陣を介し、息を吹いてブレスのように放つ。

時をその瞬間だけ切り取ったかのようにその女性は広範囲の炎のブレスを真横に移動することでかわしている。

同時に敵が何かを呟く。

 

鈍炎【グラビティ・フラム】

神力で生成されたた質量のある鉛の様に重い炎の砲撃を鞭のように操りヴラディミールに攻撃する。

ヴラディミールはしばらく耐えしのぐが、張りつめ過ぎた殺気のせいで一転にしか意識が向かず多方向からの鞭に気づかず、それに攻撃されダメージを受ける。

 

「ぐっ、シャドーくん。これ痛すぎなんだけど…」

 

「グレイ対策に創ったんだ当たり前だろ…」

 

「あ~、そっか…」

鉄剣に妖力を流し込みヴラディミールの身長の二倍はある大剣に変え、手始めに左肩に振り下げる。

しかしそれは見事に空振り地面に突き刺さる。

 

「はぁ?なんだこいつ、めんどくさすぎだろ」

アドバンスはそう言いながら極小ハレーを放つ、それは光速で飛んでいき命中するが無傷の様に爆煙から出てくる。

 

「無傷かよおい」

 

「仕方ない、少し喝の入った技を出すしかないな」

 

暗灼【Scorching Barrel】

漆黒に染まる炎のように漆黒の妖力が揺らめぎ、その妖力は砲撃とも斬撃とも言える攻撃を放つ。

しかし連続のミスが力みさせ過ぎたのか空をかすめる。

シャドーは怒りに身を任せ拳を女性の顔面に叩き込む。

 

「がああああああああああああああ!!!!!」

 

「おう、やるじゃんシャドー」

 

「ころろろろろろろっろっす!!!」

女性は目にもとまらぬ速さでシャドーに突っ込んで行く、あまりに突発的な直線でシャドーは構がワンテンポ遅れ直撃する。

 

「ぐっ…」

口に溜まった血痰を吐き捨て構え直す。

ヴラディミールはもう一度大剣で頭をかち割る勢いで脳天目掛け振り下ろす。しかし単調すぎる攻撃は容易に見破られる。

アドバンスもヴラディミールに続き攻撃する。

 

千符【月落とし】

千の夜の月が堕ち、大陸を飲み込む、しかしその月が堕ちずに停止し女性がそれを持ち上げアドバンスに投げつける。

それを創刀でぶった切り消し去る。

 

「厄介だなほんと」

 

「威力は少し下がるが範囲を広げようか」

シャドーは黒い霧で四人に分裂し四人一気にScorching Barrelを放つ。

 

「よっし!!」

シャドーは右腕で力強くこぶしを握る。

 

「やっと勝てたな」

 

「なんとかな。やはり俺は一撃一撃の火力が低い、もう少し機能的に力へ関係する修行法は無い物か」

イライラしているときにはタバコの吸い口を噛むという癖が現れている。

 

「・・・あれ、私は何を?」

倒れていた女性が目を覚ます。

 

「なんだ、生きてるのか。先程の様な嫌な気配は感じないが…」

 

「・・・?、あなたたちは?」

 

「お前、さっきまで俺たちと命の奪い合いをしてたんだよ」

シャドーは呑気に状況を教える。

 

「あら、そうなの?それはごめんなさい、お詫びに正面玄関を開けといてあげるわ、先に進みなさい」

 

「おぉ、ありがたい。じゃあこれで失礼」

吸い殻を灰皿に入れてピースと言うタバコを吸う。

 

「久しぶりにこんな重たいの吸ったな」

少し笑って正面玄関を通る。

 

「さて、次の所だな」

 

「さっさと終わらせて帰ろう。ここは疲れる」

ダンジョンみたいな青黒いレンガに一定間隔でたいまつが置かれている。

そしてその先には、前髪が左目を覆い、茶色のロングコートを羽織りタバコのような物を口に咥えている剽軽な男性がいる。

シャドーは警戒して創刀を抜く。

 

「相手が構えてない以上どんなスタイルかわかったもんじゃない、気をつけろ」

 

「分かってる」

シャドーは精神を研ぎ澄ませるがそこに一人緩い声が響く。

 

「おぉ、まだやってるのか、随分とちんたらやってるんだなぁ」

タバコを咥え未来のシャドーが壁に腰かける。

シャドーはそれを気にせず相手に向かって真っすぐ殺意を投げつける、それに乗せるかのように殺気とは違う歪な気配を乗せシャドーにぶつける。

 

「あの未来の俺は恐らく余程のことがない限り動かないだろうし…かかるしかない」

牽制にナイフを3本投げる、しかしそのナイフは男を取り巻く煙に触れた瞬間跡形もなく白くなって消えた。

 

「やはり半無」

創刀でアキレスから首まで斬りあげる。

それを軽くかわしシャドーの周りを煙で埋め尽くす。

しかし黒い霧となり素早く拡散し距離を置いたところで実体化する、同時に煙がシャドーを追尾する。

 

「なんだよ、追いかけてくるのか」

前方に巨大な岩壁を創る、しかし煙に触れる瞬間に白くなって消えていってしまう。

シャドーは霧になり地面の粒子の中を進み男の真後ろで実体化して創刀で斬りつける、それを左腕で止め更にシャドーに蹴りを入れ、吹っ飛ばす。

 

「うおっと、危ない危ない」

空中で体勢を整え、魔法陣を4つ展開しそれから炎と雷を放ち、それに便乗しシャドーも創刀で斬りつける。

同時に白い煙が炎と雷を消し去り創刀を左腕でつかみ取り後ろに投げて再び左腕でシャドーのみぞおちにパンチを入れるがすり抜けてしまう。

でたらめな場所にナイフを投げてから左腕目掛けて創刀で斬りかかるがそれは左腕でガードされる。

しかしシャドーは先ほど投げたナイフの場所に瞬間移動し一秒にも満たない速さで右脇腹にボディーブローを決める、その腕を両手で持ち振り回しながら遠心力で投げ飛んでいった先に魔法陣を展開し中から雷の槍が飛んで来る。

空気を殴り横に逸れて雷の槍の術式を自分の物に書き換え、勢いを活かしてさらに強く敵に投げつける。

それを煙で消し去りそのまま煙で攻撃する。

 

「喰らえっ」

魔術【アビス・ブレイズ】

辺りに無数の黒い魔法陣が展開され、煙目掛けて黒い劫火が放たれる。

 

「・・・。」

それらを煙で身を囲むようにしてガードしシャドーの真後ろに陣を展開して雷撃を放つ。

 

「埒が明かないな…」

【二十固め、捌之神月】

シャドーから赤黒い妖力のほかに暗い紫色の癪気が放たれ始める。

 

「こっからは新スタイルで行かせてもらうぜ」

シャドーは創刀を人差し指と親指で、妖刀を人差し指と中指で挟むとシャドーを中心に刀が繋がれている円がうっすらと見える。

そして創刀を勢いよく投げると弧を描きその円の軌道通りに回る。

それから半無に急接近し妖刀を投げる、それを左腕で弾きシャドーを煙で覆い尽くし出入り口を完全封鎖する。

三つ首龍の目を開き、半無と自分の位置を移す。

 

「・・・へぇ、君の力は多様性があって面白いね」

そう言うと煙は半無の周りから消えていった。

 

「どういうつもりだ?」

タバコを咥える。

 

「俺はお前たちにここから帰ってほしいだけだ、害を加えるきはない」

 

「そうはいかないな、錬創術の手がかりを手に入れるまでは帰ることはできない」

未来のシャドーは退屈そうに大きな欠伸をしている。

 

「君も・・・またそれを狙ってきた者なんだね・・・」

 

するとアドバンスがシャドーの近くに来る。

「おい、シャドー勝機あんのか?、ありゃやべーぞ」

 

「何か守る理由があるようだ、何とかしてみせる」

そう言って刀を納める。

 

「おいお前、なんでそれを守ってるんだ?」

警戒は緩めずともそこでゆったりタバコを吸い始める。

 

「守ってるわけじゃないんだ、でも、束縛の世界から人々を開放するにはどうしても”彼ら”のちからが必要なんだよ」

 

「彼ら?つまり錬創術を使える奴が必要なのか?」

 

「いや・・・そうじゃない、この先の物は彼らに必要ということだ、悪いけど君たちには渡せない物んだよ」

 

「なら錬創術の手がかりはとりあえず諦めよう。その代わりに対価を用意してもらう」

 

「・・・?」

 

「お前はここから動けるのか?」

 

「…」

未来のシャドーは少しだけ眉を吊り上げて少し笑みを浮かべる。

 

「無理だね、ここを守ってあげるのが俺の役目だし」

 

「ここが守れればなんでもいいのか?」

 

「単に結界や封印ではだめなんだよ、俺じゃないと・・・俺じゃないとここは守れない」

 

「なら交渉決裂だな、残念だ」

【二十固め、拾伍之鐳月】

シャドーの髪からは赤黒さが消え漆黒に染まり、漆黒の雷が時折シャドーから弾ける。

 

「おい、シャドーいいのか?」

 

「仕方ないさ、どっちか持ち帰りたいじゃないか。なにも無しで変えるなんてバカみたいなこと、俺はしたくない」

創刀を握り距離を開ける。

 

「・・・なら俺も手を貸そうか?」

 

「そうだな、頼んだぞ。俺は左から、お前は右から行ってくれ。速さはお前に合わせる」

 

「そりゃありがたい」

瞬間、無数の柱が半無の頭上を覆い右から創剣で切りかかり、シャドーも同時に胴体目掛け創刀で斬りあげる。

それらすべての攻撃を突如現れた煙が消し去り創剣、創刀での攻撃も鋼のように硬い煙によって防がれる。

 

「アドバンス、こいつ煙か左腕のどちらかが創神器である可能性がある」

シャドーは一瞬意識が抜けたかのようになるがすぐに立ち直る。

 

「へぇ?そんな形の創神器聞いたことないけどな?」

 

「・・・しかし存在しないとも言えないな」

ションが横に並んで話しかけてくる。

 

「だからこそ仲間に欲しかったんだが、交渉は決裂してしまったからな」

シャドーは何故かいきなり執拗に半無に攻撃を仕掛ける。

そしてシャドーの分身は地面を通り抜け半無が守っていた奥へ行く。

同時にその分身が突如現れた煙に激突し白くなって消えてしまった。

 

「ちっ」

シャドーは創刀に自分の力のほとんどを入れて斬撃を飛ばす。

 

「・・・。」

それを煙が取り囲んで消滅させる。

 

「おいション、知恵貸せ。あの煙どうしたらいいと思う?」

 

「見た目無の力のようだが・・・得体の知れんやつだな」

 

「あの手も厄介過ぎるぜ?どっちかが無でどっちかが創神器だったとしても結局変わらないじゃんか」

 

「ふむ・・・賭けに出てみるか?」

 

「いや、その前に一つ考えがある」

 

「?」

 

「こいつは切った物を無条件で一キロぶっ飛ばせるから、それであの煙と半無の距離を離す。俺は常に煙を相手にするからその間に奴を叩いてくれればいい」

 

「なるほど、それで行ってみるか」

 

「おっしゃ任せとけ」

 

「じゃあ、始めるぞ」

シャドーは素早く煙目掛けて切り払い、衝撃が響いて相当な距離を吹き飛ぶ。

 

「・・・!」

 

「さて、反撃させてもらいますぜ!」

同時にアドバンスが複数人に分身し様々な方向から斬撃を入れるが、それは左手で防ぎ続けられる。

 

「終わりだ」

何かの呪文を唱え終わったションが半無に狙いを定める。

 

(レクサ)雷の咆哮(サンデルンドボルス)

背後に雷の龍のようなものが現れ口から巨大なレーザーを放つ。

瞬間、周りが終わったと思ったのと同時にアドバンスが右方向にふっ飛ばされ、右手でそのレーザーを受け止め跳ね返す、そしてシャドーと相手をしているはずの煙が消え去り半無の元へ戻る。

跳ね返ってきたレーザーはウラディミールが切り捨てる。

 

「ちっ、完全に体制を崩していたはずだが?」

 

「あてて・・・なんだ、今何かおかしなものが見えたような」

 

「おかしなもの?なんだそれは」

 

「なんか魔神みたいな・・・」

 

「魔神?・・・やつは一体何なんだ」

 

「俺はここを守るだけ、君たちにはこれ以上危害は加えたくない、早く退いてくれ」

 

「もしかしたらその煙こそがその魔神と言っている物かもしれん。これは一人一人で叩くより三人同時に攻撃した方が良さそうだ」

タバコを投げ捨てて新しい物を咥える。

 

「連携か」

 

「僕は創神器を持っていないので見てるだけですねぇ」

ヴラディミールは少し後ろに下がる。

 

「仕方ねーよ、お前は敵の観察でも頼むわ」

 

「さて、未知数の力か・・・俺の考察で言うと左手と煙は創神器だろうと無だろうと当たれば死ぬ、右手はみた感じでは攻撃を質量そのままで跳ね返すといったところだろう、陣などからは電気しか出てないところを見ると雷属性系統・・・アドバンスが見た魔神はわからんがシャドーのいう通り煙がその正体かもな、どちらにせよ当たらないようにしなければ・・・と、言った感じだ」

 

「左半身は触れば消し飛ぶ、右半身は殴ってもそのままカウンターされる、ならば…くっついている体の中心、そこに狙いを定めるのはいいかもしれない」

 

「・・・よし!ちょっとやってみるか!」

 

「・・・お前の作戦は大丈夫なんだろうな?」

 

「ま、まぁなんとかなるだろ」

 

「こいつと居ると毎回死にかけて心臓に悪い」

 

「さて、シャドーお前の刀で奴の左側を攻撃してくれ、俺はその間右を狙う、さらにション、お前は杖で真ん中を叩け」

 

「よし、行くか…」

翼を広げ全速力で奴の左半身の脇腹に切先を付けようとするが、煙がそれを許してくれない。

速度はそこまで無いが確実に防護されてしまう。

それに続くようにアドバンスが右側を攻撃、しかしそれも煙でガードされ素人の様に振り下ろされるションの杖による攻撃も余裕で煙に飛ばされる。

 

「今だシャドー!その刀で煙ごとやつを吹っ飛ばせ!」

 

「おっし、任せろ!!」

上で一回転させてから、まるで野球のホームランを狙うかのように半無目掛けて創刀を煙に叩きつける。

 

「・・・!」

半無はそれを左手で受け止める、しかし真下にアドバンスが入り込む。

 

「まさかは煙が跳ね帰ってくるなんて思わないだろ?」

アドバンスはそのまま半無を切り上げる、案の定出てきた煙に紙一重で防がれるが確実に相手との距離が縮まる。

 

「なるほどなぁ…」

 

「畳み掛けるぞシャドー!」

 

「ようし任せろ」

シャドーは黒い霧となり辺りに散布する。

まるでハチが群がっているかのようにできた黒い半球の中に半無は閉じ込められる。

それを煙で薙ぎ払おうとするが粒子化したシャルドニュクスで素早く切り付け四方八方身動きできないようにする。

 

「チェックメイトだ、シャドー。殺してしまっては意味がないだろう?俺たちが調べに行っている間こいつの見張りを頼む」

 

「お前しかできねーしな」

 

「任せてくれ。逃がしはしなし逃げもしないはずだ」

奥で未来のシャドーは先ほどの戦闘を見てうずうずしていたのか未来のシャドーの周りはボロボロになっていて濃い殺気のせいで岩などが浮いている。

 

「おい、そこのシャドー、お前も動くんじゃないぞ」

ションたちはそう言って奥へと消えて行った。

 

「臆病な奴」

くすくす笑ってその場に座りタバコを吸う。

二人のシャドーは顔を見合わせるがすぐにふいとそっぽを向いてしまう。

すると奥の方でとてつもない爆発音が通路に響き渡る。

 

「お前はこいつを見てろ、俺が行ってきてやるよ」

未来のシャドーが髪をかき上げてめんどくさそうに通路へ向かう。

ヴラディミール、アドバンス、ションがゴーレムによりボッコボコにされていた。

 

「ふふっ、お前らざまぁないな」

シャドーは三人を馬鹿にする。

 

「ぐっ、き、貴様、なんでここに・・・」

 

「彼は霧となり奴を抑えてるからな。代わりに俺が遊びに来たって訳さ」

シャドーはひゅうと口笛を吹いて魔法陣の中から一本のギターを取り出す、同時にゴーレムが拳を振り下ろす。

それを足で軽くいなしてタッピング奏法で音を紡いでいく。

 

魔奏【デス・カーニバル】

不気味な音符の組み合わせにより死霊を呼び出し死の癪気により生命力を奪っていく、それをゴーレムは拳で薙ぎ払っていく。

 

「まぁ、無機物に生命があるわけがないよな」

 

魔奏【ワードエマージ】

歯でギターを弾きならし始める。

その間ゴーレムの胸部に「emeth」と言う文字が浮かび上がる。

そしてシャドーは錬創術によりこのゴーレムと地球発進のゴーレムの原理を同一化させて、胸の最初の「e」を消して「meth」へと変えるとそのゴーレムは崩れ落ちる。

 

「ふん、弱すぎるな」

やれやれと溜め息を吐いて壁に寄り掛かる。

 

「ちっ、余計な・・・」

 

「それにしても未来のやつってのは本当らしいな、錬創術をデメリット無しに使いやがる」

 

「兄さんらしくないですね」

 

「おいおい、俺の味方ゼロかよ。たかが未来で宇宙を破滅に追いやっただけで酷い嫌われようだな」

シャドーは特に反応を見せず飄々とした態度で薄ら笑いを浮かべている。

 

「ただの殺戮だろ」

 

「理不尽な破壊だな」

 

「俺についてこれない周りが悪いのさ」

シャドーは悪びれた様子もなく笑って答える。

所変わって現代のシャドーは相変わらず半無を囲っていた。

 

「・・・。」

 

「まさか本当に何もしないとは思わなかった」

シャドーがつぶやくように声を発した。

 

「俺は負けた、敗者はおとなしくしてるのが普通だろ」

 

「随分と潔い奴だな」

 

「・・・。」

 

「じゃあ決裂した交渉でも始めようかね。改めてだが、俺の下に就く気は?」

 

「なぜ俺に拘る」

 

「さっきの戦闘を通して確信したがお前は防御に関しては腕がたつ。故にさ」

 

「・・・そう、でも無理だよ、俺は彼らを守らなきゃ」

 

「ならその彼らをぶっ殺せばいいんだな」

 

「変わらないよ、ここを守るのも彼らを守るのも同じ、ここがある限り、彼らがいる限り・・・俺がいる限り、守り続ける」

 

「めんどくせぇ奴。そんな物に囚われてると自分がゴミクズよりちっちゃい奴とか思わないのか?」

 

「そんな思想はない、俺はただ・・・」

二人が話していると急に通路が崩落する。

 

「…お前が守る物壊れちゃったみたいだけど?」

シャドーも少し驚いた感じで問いかける。

 

「・・・これは、一体・・・」

 

「ハウザー殿」

急に後ろに男がひとり現れる。

 

「・・・なんだ」

 

「アルデオンの起動が整いました、つきましてはそのご報告にと」

 

「そうか、よかったね、ならさっさと出てってくれないか、これで交渉は済んだだろ」

 

「はい、すぐに出ていきますとも・・・その前に、あなたにはここで死んでもらいますがね」

 

「・・・なぜ?」

 

「我々が見つけたこの『古代兵器』、他者が知っているということほど邪魔なことはありませんのでね」

 

「君ごときで俺が倒せるとでも?」

 

「あなたは今その霧の者にとらわれている身、どうです?霧の御仁、我々と取引しませんか?」

 

「断る。俺はあくまで誠実な方法でこいつを戴く所存なのでね」

シャドーは素早く実体化して男の前に立つ、同時に男はシャドーたちと距離を取る。

 

「それは残念、あなた達なら良い使い物になったのですがね」

 

「・・・。」

 

「ハウザーとか言ったな、お前俺の腕を噛め。俺の妖力ならお前の力に浸透して回復できるはずだ」

服の袖をまくり上げハウザーの前に出す。

 

「別にいいよ、こいつくらい俺一人でやれる」

 

「おやおや仲間割れですか?お先が真っ暗ですねぇ?」

 

「仕方ない、さっきまで拳を交えていたんだ。そんなすぐ仲間になったような気でいる奴の方がおかしいさ」

静かに創刀を鞘から抜く。

 

「おやおや物騒なものをお持ちですねぇ?怖い怖い、『そんな物騒なものすぐしまいなさい』」

すると創刀が静かに鞘に収まり固く閉ざされる。

 

「いやな能力だな。強制的に従わせる奴なんてけったくそわりぃ」

自分を幻にしてまっすぐ突っ込む。

 

「いけませんねぇ、そうやって隠れてコソコソと・・・『そういうのはやめなさい』」

するとシャドーの体がもと来た道を逆走し幻も解けてしまった。

 

「・・・。」

ハウザーは辺りに煙を展開させ男を覆い尽くす。

 

「おやおや、視界が・・・怖いですねぇ多種多様な能力を持つ方々は。『そういうのはいけませんよ?』」

男が笑いながら言うと煙がみるみる引いていき跡形もなく消える。

 

「・・・。」

 

「おやおや、『何だこいつの能力は』と、言いたげな顔ですねぇ?それはこっちのセリフですよ」

刹那、二人に何か違和感が走る。

 

「能力が使用不可、になってるな。体質のみ使えるようだ」

『愛した者に殺戮を。恨んだ者に祝福を…』

闇血剣【モールキャッセ】

黒い剣を手に持ちそして体全身に揺らめぐ炎の様な刺青が広がる。

 

「フル装備だくそ野郎」

妖特有の眼光をぎらつかせ、口から黒い癪気を吐きながら素早く駆けて男の喉を狙う。

 

「おお、怖い怖い、『危ないとこはしなさんな』」

するとまた来た道を逆走し口から吐いていた癪気が消え目の眼光も消え元の形に戻る。

 

「ついでに『その刀もしまっといてはどうですかな?』」

するとシャドーの体は言われるがままにモールキャッセを魔法陣にしまう。

 

「・・・何やってんだお前」

 

「い、いやぁ…こんな奴初めてで…」

恥ずかしそうに頭を掻く。

 

「おや?私のようなものと手合わせするのは初めてでしたかな?それでは、手加減してさしあげましょう、それでもお命の方は貰い受けますがね」

男がそう言うと上から瓦礫が降り注ぎ地面が揺れ地が割れる。

 

「仕方ない。おい、状況を整理するぞハウザー」

 

「『言葉にしたことが現実化』と言った所か?」

 

「そうはなるがさっきは別に瓦礫が降り注ぐことに関連したことは言っていなかった。つまり複数個の能力の併用か口で発した物に囚われない範囲の広い能力を一つ、と言った感じだろう」

 

「おやおや相談ですか?悠長ですねぇ、これは戦いですよ?『しっかりしなさい』」

するとシャドーとハウザーがお互いの目を潰しにかかるが紙一重でかわす。

 

「な、何しやがるお前」

 

「…なるほど、つまりは言ったことがその通りになるのはそうだが、現象を指定しないで言った場合は結果論でそのようになるように行動させられるようだ」

 

「それだけに着眼点を置く訳にはいかないが・・・その線で行ってみるか」

 

「やはりあなた達は危険ですねぇ、私の判断は間違っていなかったようで。それがわかっただけでも収穫ですねぇ、それではお二人さん『さようなら』」

男はそう言うとどこかへ立ち去ってしまう、同時にシャドーが創刀を引き抜きハウザーを斬りつける、それを右手でガードし煙でシャドーを覆うものの霧となり回避し二人は距離を置く。

お互い体の自由が効かない。

 

「な・・・んだこりゃ」

 

「また殺し合いかぁやる気が削がれるなぁ」

指先を巧みに使ってタバコだけは無理やり吸う。

体は言う事を効かない状態だったが気分は最高だった。このまま身をゆだねていれば最強に上りつめられるかもしれない。

暴走した時ほどの高揚感は無かったが、二十固めは16までしっかりと解放されていた。

全妖力と神力をScorching Meteorを繰り出すのに使う。

漆黒に染まる炎のように漆黒の妖力や神力を掌に集め空に放ち漆黒の妖力を纏った球体が無数に降り注ぐのが無数に放たれる。

それをハウザーはどこからともなく現れた白い魔神に止めさせる、するとそれは白い霧となって消える、それが永遠と続く、さらに処理しきれない分も煙と右手、更には後ろに無数の魔法陣を展開しシャドーとハウザー、お互いに体を削り合う。

 

「・・・随分と派手だな」

 

「いやぁ、すごい楽しくて」

 

「他人に体好き勝手されて楽しいのか?おかしなもんだな」

 

「いやぁ、自分以上の身体能力を使えるのは勉強になるからな」

技を出すのをやめると体術に移る。

体はいつも使っている以上に最低限の筋肉を使っていつも以上に素早く力強い猛攻を繰り出していた。

ハウザーはそれを煙で辺りを埋めて回避する。

得体の知れない底力により右腕が強化されて触ったら即死するかもしれないと思うほどのパンチを繰り出す。

 

「お前ら何やってんだ!」

するとアドバンス血相を変えて二人を止める。

 

「良く分からん奴の能力でこいつと殺し合いをさせられてるんだ、結構楽しいが」

 

「能力か・・・よし、ちょっと待ってろ」

アドバンスはそう行って創剣を構える。

 

『地獄の灯篭よ、我が身を焦がせ』

すると創剣が燃えだし同時に火の粉がシャドーとハウザーを焼く、しかし二人は無傷のまま体に自由が戻る。

 

「…助かった、けど…すこしざんねんだな。とりあえずお前は俺に加勢しろって言いに来たんだろ。ハウザー、お前も付き合え」

シャドーはそう言ってすぐに崩れた通路の奥へ進む。

 

「いつの間に仲良くなったかは知らねーが話が早くて助かる」

 

「・・・俺はやつに用がある、別にお前たちに加勢するわけじゃない」

 

「・・・なんなんだこいつ」

その場に着くと必死で応戦しているションとヴラディミール。

そしてそれを見てくすくす笑っているシャドー。止むを得ない場合以外は手を貸してくれないみたいだ。

 

「よし、早く終わらせなきゃな。俺はさっさと帰りたいんだ」

すると未来のシャドーが一本の白い鞘の刀を投げてくる。

 

「俺の相方を貸してやる。シャル、しっかりと教えてやるんだぞ」

 

「はぁ、仕方ないわね。この時の貴方はおつむが悪いから好みではないのだけれど…まぁ、いいわ特例よ」

刀から聞き覚えのある声が出る。

 

「よ、よろしく頼む…」

シャドーは不服そうだが楽しそうでもあった。

 

「頼もしい限りではあるが・・・こいつは手強そうだ」

 

「ぎゃあああああ!!!!」

ゴーレムの咆哮だけで辺りが揺れる。

 

「どうやって倒すシャドー?」

 

「そうだな…ゴーレムか。それなら地球の作り方と連動させれば」

 

「確かにそれで未来のシャドーならできたけれど、貴方にはそこまでの力はないわね。相手は古代兵器、貴方は地球から出て来たばかりの弱小妖怪兼魔界神なのだから、知識の技術が圧倒的に無さすぎるわ」

未来のシャルドニュクス厳しい指摘をシャドーに向ける。

 

「じゃあどうすれば…」

 

「人に物を聞きすぎるのは現在の貴方の悪い癖よ。あっちのシャドーなら自分で試すわ」

 

「自分で…わかった」

シャドーは地面を滑るように移動して相手の裏に回り膝裏を強く蹴り体制を崩してからゴーレムの一部をシャルドニュクスの力により飛ばす。

ゴーレムは外れた部位の場所をマグマに変換しそれを操りシャドーを襲う

それは創刀を上に刺して魔法陣から転送したモールキャッセでマグマを吸収して創刀でゴーレムの体に穴をあけてそこにモールキャッセを振るいマグマをぶち込む。

 

「おやおや、どうやって抜け出してきたんですか?『止まりなさい』」

するとシャドーはモールキャッセと創刀をしまってアドバンス達のもとへと素直に帰ってしまった。

 

「なら俺が…!」

未来のシャドーが初々しさを出して適当な刀を構えて切りかかる。

 

「む、新手ですか、こんな老いぼれに若い人が集ってはいけませんよぉ?」

男はそう言うとその刀をゴーレムに防がせる。

 

「まぁ、防がれるのは分かっていたさ」

ゴーレムを右手で捕まえて自分の後ろに置いて男の方へゆっくり歩く。

 

「あなたは誰ですかねぇ?」

 

「俺は全ての大罪人シャドーエッジ・クライシス。そう呼んでくれて構わない、俺に名前などもう無意味だからな」

 

「そうなんですか?では私と取引などいかがでしょうか?」

 

「話は聞いてやろうか」

タバコに火をつける。

 

「そうですねぇ、あなたは何か悩み事などありませんか?」

 

「ない」

 

「そうなんですか?生き物として1つや2つ悩みがあるものですけどねぇ」

 

「悪いが俺は生き物として換算されてはいけない」

 

「おやおや、そうでしたか、それは失礼、ですが私とあなたが闘う理由はないと思いますが?」

 

「俺はそこでゴーレムと苦戦していた紅髪の女みたいな奴と同一人物だ、今ここであいつを邪魔されると俺が困るんだよ」

現代のシャドーを親指で指す。

 

「おやおや、それはそれはご不便なことで・・・では『彼と戦ってみては?』」

言葉を発するとともに未来のシャドーは高速で現代のシャドーに近づき刀で斬りつける。

 

「これくらいなら…いや、何もわかっていないのに結論を出すのは危険か」

無の手の方に創刀を持ち替えて左の無の手で男を、右手でシャドーと戦う。

 

「おやおや、その手・・・『無』ですか?それは分が悪いですねぇ」

 

「ちょっとな。宛てがあって無王ちゃんから無理やり頂いたんだ」

 

「無王?それはなんですか?新しい何かですか?」

 

「これは知るべき者以外は知ってはならんのさ。ともあれそう気負いすることはないさ、俺はお前を殺さない」

そして自分の彼と戦うと言う状態をションに映す。

 

「な、なんだ」

同時にションは魔法陣を無数に展開し中から巨大な石像を召喚してシャドーを襲わせる。

シャドーはそれを強力な封印術をかけた壁を展開して防ぐ。

 

「さて、どうするかな」

 

「戦力的にあの二人が使えないのはキツイんだが?」

 

「お前ならションの弱点を知ってるだろ、シャドーと使えるならヴラディミールも使って動きを止めればいい。あのジジイは俺が動きを止めといてやるからさ」

シャドーは体質の一つを使い、自分へ干渉する物を一切消す。

 

「それは助かる、よしシャドー、ヴラディミール、異能という異能をすべて切れ」

 

「あいよ」

二人は同時に互いの剣を振り下ろす。

 

「ぐっ!?」

いつもなら防げるものを魔法陣も展開せず一方的にやられる。

 

「ションの能力は『すべての魔法、異能より強くなる』だからな、それが無いなら俺らよりに強くなることはできないからな、当然魔法陣だって使えない」

 

「なら声を奪って四肢を切り落とすか」

シャドーはションの喉に妖力を流して声を封じて、四肢を切り落とす。

 

「なら授業の時間だシャドー」

クライシスがタバコを吸って普通の刀を錬創術で創り出して切先で呼び込む。

 

「授業?何か教えてくれるのか」

 

「俺の技術を少しな。1秒間に10回レイプ発言と片腕で5つの刀を扱う方法、どっちがいい?」

 

「…片腕の方」

 

「前者の方がすごいと思うけどな、まぁ、その方法は至って簡単だ。お前アリスに人形の操り方を教わっただろう?あれの応用で視認不可能の妖力を紡いでそれを手のように扱えばいいだけだ」

クライシスが実演してみせる。

彼の背中に先程の刀が浮いている。

 

「まぁ、こういうことだ。簡単だろ?すべては頭の中を馬鹿みたいに緩くすればできるのさ」

 

「俺の授業はおしまいかな。レイプの方はレイとイプを同時に発音することで出来るぞ」

やらなくていいのにそれも実演するクライシス。

 

「俺の『操作』に似てるな」

 

「バカ言うな。お前のは火力重視の単純操作で、俺のは精密性を活かす細かい作業だしあれはほんの少しの力で出来る」

 

「そりゃそうか、んじゃさっさと終わらせるか!」

アドバンスはそう言うと男の方に剣を向ける。

 

「早いのはアドバンスの取られた力を戻すのが早いがそれだとこっちでも大罪人になっちまいそうだからな、牢獄暮らしはこりごりだ」

クライシスは適当な小さい機械を男側に向ける。

 

「お前たちは耳栓でもしてろ」

人数分の耳栓を渡して各自それをつけ、それからクライシスは拳で男に殴りかかる。

 

「おっと、怖い怖い、体術は苦手でね」

男はそう言ってゴーレムを盾にし自分は後ろに下がる。

それを障害物とも見ず自分を幻化させゴーレムをすり抜けた所で実体に戻る。

 

「おっと?やりますねぇ」

男はそう言うと空間を捻じ曲げ空間でできた槍でクライシスを襲う。

それは一瞬肌に触れるがすぐ幻に変わりすり抜けてしまう。

 

「ちっ、俺じゃダメか。シャドー、お前が行け」

 

「わかった」

クライシスに首元に何かを仕掛けられたが気にせず創刀を持って斬りかかる。

 

「おっと、あなたが出てきますか、なら『伏せ』」

クライシスが奥で「その言葉、そっくり返すぜ」とつぶやき、その後に先程置いた小さな機械から男の声が反響する。

 

『伏せ』

その言葉は反響し響き渡るが男に特に変化はない。

 

「スピーカーですか?無駄だねぇ、『やりなさい』」

そう言うとシャドーはクライシスに創刀で斬りかかる。

 

「簡単に操られやがって。アドバンス、頼んだ」

 

「了解っと」

アドバンスはそう言うとさっきシャドーたちを開放した炎で再びシャドーを開放する。

クライシスはそれを瓶の中に少し詰めて手に握る。

 

「色々手掛かりは手に入れたがそれを無視して力業に出る。あいつの喉を潰す、だから操られ始めた時すぐその炎を俺に当ててくれ」

小さい声でそう言うと手に妖力を溜めてフルスピードで駆ける。

 

「わかったよ、でも無限に使えるわけじゃねーんだなこれが、なるべく操られないようにしてくれよ」

 

「おやおやこんな老いぼれ相手にコソコソと、あなた達も随分と器の小さい人たちですねぇ?」

 

「生憎矮小なる存在である妖なのでね、器の小ささは随一かもな」

溜めた妖力を男の口にぶち込んで引き抜く。

 

「こいつ、ほんとムカつくやつだな」

 

「・・・!」

同時に男が指を鳴らす、するとシャドーは男の喉を回復させる、しかしシャドーがアドバンスたちに攻撃しようとした瞬間シャドーを炎により開放する。

 

「ちっ、早速操ってきたか!」

 

「本性を出したな。別に操られててもよかったんだぜ?全身の骨が砕け散る程度に殴ったのにな」

 

「そんなことされたら目も当てられないな」

シャドーは乾いた笑いを浮かべてから二人のシャドーは霧になり二つの塊が入り混じり男を取り囲み次々に攻撃を仕掛ける。

 

「くっ、彼らの中に私の能力を防げるものが居たとは・・・!あなた達も随分と悪ですねぇ?」

男はそう行って自らの内から大風を巻き起こし脱出を図る

 

「そう簡単には逃がさんぞ」

その風の流れに合わせて速度を上げて推進力を生み男の方向へ流れが向いた時に実体化して二人で連撃を繰り出す。

 

「・・・ふう、ここまでですか、まぁそれなりに楽しめましたよ」

あと一歩で止まってシャドーが話しかける。

 

「一つだけ生き残る道を作ってやろう。俺ら学園の下に就け」

 

「・・・・死ぬよりは、まし、ですかね?」

 

「命あっての無駄な生だからな。賢明な判断だろうな」

クライシスが少しつまらなさそうにタバコを吸う。

 

「・・・はいはいわかりましたよ、降参です」

 

「じゃあ進む、のか。やだなぁ、こいつより強い奴いるんだろどーせさぁ」

シャドーがもう帰りたいと言わんばかりにションを睨む、と同時に四肢をい捨てているのを忘れていてすぐに傷をなかったことにする。

 

「そうですね、リーダーは・・・まぁ知りませんが私以外にもう一人女が居ますよ」

 

「へぇ、女か」

クライシスが少し興味を示す。

 

「さて、私はここで休ませてもらいますよ、年なんでね、ゴーレムはつかせてあげますよ」

 

「そんなおもちゃより俺の腕の方がつかえる。護衛にでもつけとけよジジイ」

そう言ってクライシスを筆頭に奥へ進んでいく。

 

「そうですか、まぁあなた達ほどの実力があればそれも行けるでしょう」

 

「おう、殺されんなよ」

そのまま奥に進む。

少し進むと小さなトラのぬいぐるみと会話する少女が居た。

 

「なにあれ、可愛いんだけど」

その少女を見てあ^~とクライシスが和む。

 

「これ、ほんとシャドーかよ」

 

「・・・あいつも敵か?」

 

「・・・。」

 

「多分な、ガキをぶっ殺すのは俺でも多少は善意が…ごめん、なんでもない」

クライシスは自分には善意など欠片も、塵も、ミクロサイズでも存在していないことを思い出す。

 

「・・・お主たち誰じゃ?」

 

「この宮殿の奥へ行き錬創術の手がかりを漁りに来た盗人だ」

シャドーが答える。

 

「お主たちも錬創術目当てか、じゃが悪いな、あれは妾たちが最初に目をつけたのでな、渡すことはできぬぞ」

 

「ガキのわがままを聞くほどいい人してないんだ。失せろ」

クライシスは何処から取り出したが瓶ビールをラッパ飲みしている。

 

「・・・まぁここにいる時点で只の人間ではないことは確かだな、女、これが最後の忠告だ、道を開けろ」

ションが杖を少女に向け言う。

 

「だからあれは妾たちのものじゃと行っておろう、そっちこそ立ち去るがいい」

少女がそう言うとぬいぐるみが本物のトラへと変異する。

 

「このガキはさっきのジジイ程の強さはない、少しは余裕をもって接してやれ」

クライシスはそう言って壁に寄り掛かる。

 

「よし、皆好きに動け。俺はそれを後押ししよう」

 

「舐めるなよお主ら」

少女がそう言うと突如空間に巨大な先目ができ中から灰色の巨人が三体出て来る。

 

「またなんか出てくるのか…でかいのはもうこりごりだ」

シャドーはその三体の首元を素早く創刀で切って少女へかかと落としを繰り出す。

 

「む、創神器か、ならこれじゃな」

そう言うと再び裂け目から創神器を持った神が六人出てくる、それらは出てきた瞬間シャドーたちを襲う。

シャドーは何とかその場をしのげる。

そして期を狙っていたクライシスは仰向けになり地面を数ミリと言う高さで滑るように早く飛び少女のスカートを軽くめくりあげ股を通り抜ける。

 

「…随分と意外な大人パンツだった」

ついでで少女の腕を曲げてはいけない方向に曲げる。

 

「いったい!?・・・うっ」

少女はその場にうずくまり涙目でふさぎ込んでしまった。

 

「これじゃ戦えないか」

クライシスは慣れた手つきで肩に骨を嵌めて軽く痛みを緩くする。

 

「な、なぁ!可哀想だから1対1でやってやろうぜ…?」

シャドーがなんとも言えない表情で提案する。

 

「わ、妾もう嫌じゃ、戦いたくない!こんな強いなんて聞いてないぞ・・・」

またそのままうずくまってしまう。

 

「シャドー、お前たち先に行っててくれ。俺がやらかしたんだしケツは俺が拭く」

そう言って錬創術でテーブルと二つの椅子、そしてコーヒーを創る。

 

「・・・まぁいいだろう、シャドー行くぞ」

 

「わ、妾、こいつ、嫌い」

 

「だってよクライシスさん」

 

「そんなことはどうでもいい。お前は負けたんだ、俺の下に就いてもらう。とりあえずここに来た経緯でもい話してもらおうか」

少女の前にコーヒーと少し多めの角砂糖を置く。

 

「くっ、し、仕方ないのぉ、経緯か、少し前にとある古代の書物ですべての作り変える究極の古代兵器が有るという情報を見てな、錬創術に精通している書物から『アドバレイオン』という兵器がここに眠っているらしい」

 

「あぁ、聞いたことはあったな。特に興味は湧かなかったが」

 

「お前はな、お前とこっちのシャドーを一緒にすんな」

 

「いやション、あいつ、同一人物」

 

「過去に来た時点で未来は改変される、もう同じにはならん」

 

「ま、まぁそうだけどさぁ」

 

「なんだ、お前たちまだ居たのか。俺はこいつとティーパーティだから行ってていいぞ」

 

「わかった」

シャドー達はクライシスと少女を残し奥へと進む、少し狭い通路を抜け再び広い場所につくと強大な機械じかけの何かに乗った若い男がこちらに背を向け何かをしていた。

シャドーは創刀をモールキャッセを取り出しクライシスに教えてもらった技術を使い二つの剣を掴む。

 

漆創【アビス・クリエシオン】

漆黒の剣は真黒で引きずり込まれそうな闇を纏い、創刀は赤黒くも救いを見せる輝きを纏い止まって見える程の斬連撃を叩き込む。

 

「・・・!」

男はその攻撃を受けたあとこちらを向く。

 

「どうしたシャドー」

 

「もうさっさと帰りたいんだよ、疲れた」

タバコの吸い口を噛んでいる。

 

「確かに・・・精神的に疲れはしたがそれで思考を落とし判断がつかなくなるのはどうかと思うが?」

 

「ションさー、こいつだってこっちの世界来てまだ日が浅いんだぜ?逆にここまでついてきたこいつを褒めてやったほうがいいと思うがなー」

 

「まぁ・・・確かにな、しかしそれとこれとは話が別だ」

 

「いやいや、別じゃねーよ」

 

「・・・とりあえず今この会話にメリットはない、俺が話をつけてやる」

ションはそう言って男に近づく。

 

「・・・。」

 

「そこの男、我々は錬創術についての情報がほしいだけだ、お前たちの古代兵器には正直興味がない、こいつ(シャドー)は知らんがな・・・とにかくここで争うのはお互い好ましくはないと思うが?」

 

「・・・あなたは神ですか?」

 

「あ?、んまぁそうだな、種族で言えば神とくくられるな」

 

「ほう、お目にかかるのは初めてだ、神という種族は低能で話しぬ通用しないバカばかりかと思っていましたが・・・だいぶイメージと違いますね」

 

「お前の見解など俺たちには関係ない、戦うのか、引くのか、決めろ」

 

「・・・あの二人は?」

 

「・・・」

 

「ん?」

 

「殺した」

 

「ふむ、所詮神と人間の力に差がありすぎたということですな、いいでしょう、ここは手を引きます」

 

「・・・1ついいか?」

 

「はい?」

 

「ここの眠っていた『アドバレイオン』とはなんだ?」

 

「ふむ、殺す前に彼らから情報でも抜きましたか、そうですね、あなた達賢者の石という代物を知ってますか?」

 

「・・・錬金術の、あれか」

 

「はい、まぁその世界の錬金術によって製造方法、用途は違いますが、基本的にエネルギーの塊ということですね」

 

「そうだな」

 

「ではそれを錬創術で製造した場合、何ができるでしょう?」

 

「・・・錬創術にそういった代物はないと思っていたんだがな」

 

「まだまだ低俗ですね、やはり神というものはバカの集まりでしたか」

 

「いちいち癇に障るやつだな」

アドバンスがそう言って剣を振り回す。

 

「相手にするな」

 

「見たところ・・・全員神・・・ではないようですね、二人ほど違うものが居ますね」

 

「無駄話はやめにしよう、確かにお前が言ったとおり二人ほど神ではないがそれでも貴様をこの世から消すなど造作もない者たちだ、死ぬか?」

 

「怖いですね、それでは私はこれで・・・」

男はそう言って空間に穴を開けその中に入り姿を消した。

 

「お前達も随分暇な奴の煽りに乗るもんだな」

クライシスがタバコを吸い少女を連れて歩いてくる。

 

「乗ったわけじゃない、平和的解決をしただけだ」

 

「ぶっ飛ばしちゃえば終わった気がするけどな」

 

「アドバンス・・・お前はもう少し慎重に動け」

 

「さっさと見つけるもの見つけて帰ろう、実家に行って皆と合流したらすぐさま帰宅だ」

そう言って辺りを見回る。

 

「そうだな、俺もさすがに少し疲れた」

 

「おーい、ヴラディミール~、学園帰ったら俺についてきてもらっていいかー?」

 

「分かりました」

シャドーが古い書物と古代兵器を見つける。

クライシスはその古代兵器をコートの内ポケットの中にいれる。

 

「さて、ここにももう要はないな、で、だ、お前、ハウザーだったか?どうする?」

 

「・・・。」

 

「ここを守るだったな、さんざん荒らされた挙句お宝は盗まれたようだが?」

 

「・・・。」

ハウザーは何も言わず背を向け歩きだす。

 

「返答無しか」

 

「馴れ合いはしない」

ハウザーそう言うとどこかへ行ってしまった。

 

「ちっ、喰っとけばよかった」

シャドーは少し惜しく思うが目当ての物は手に入ったので満足はしていた。

そして男と戦った場所まで戻る。クライシスはその間少女の首襟をつかみ引きづっていた。

 

「お前聞いてなかったのか?『馴れ合いはしない』つまり『ついては来る』ってことだろ」

 

「へぇ、可愛げのない奴」

入り口に着き男を呼ぶ。

 

「おや、終わりましたか?」

 

「平和的解決とやらをしてきた」

少し離れた所でクライシスが少女に創刀の刃を徐々に首元に近づけて恐れる姿を見て啜り笑っている。

 

「彼が話を聞いたんですか?」

 

「そのようじゃの」

 

「ほうほう、面白いことも有るものですねぇ」

 

「ともあれ学園に行く前に二人を神に変えておく必要がある」

シャドーが能力を使おうとするとクライシスに止められる。

 

「お前だと不完全になりかねん。俺がやる」

クライシスの錬創術により二人の種族を神に変える。

 

「じゃあとりあえず名前だけ教えてくれ」

 

「私はブーシュ・タヴー、まぁ趣味で執事をしております」

 

「妾は雨宮呼姫じゃ、な、馴れ合いはせんぞ!」

 

「この子は前からこうなんです、気にしないであげて下さい」

 

「うるさい!」

呼姫はそう言って弱々しくブーシュを攻撃するが当たっても全く動じない、てか効かない。

 

「さて、行きますか?」

ブーシュはそう言って呼姫を担ぐ。

 

「お、降ろせ!歩ける!」

しかしブージュは聞く耳を持たない。

 

「まぁ、俺の下に就いたからには多少過酷な環境しかないだろうから、死なないようにな」

クライシスは特に冗談めかした様子もなく真面目なトーンで忠告する。

シャドーはこっから自宅までのワープゾーンを創り、皆その中に入る。

それからすぐにメンバーを集めてこれまでの事を簡潔に説明する。

 

「・・・そりゃ大変だったな」

 

「なんかシャドー君って難解に遭遇すること多くない?」

 

「うむ!かわいそうになるほどの悪運だな!!!」

 

「うるせぇ、俺だって好きでこんなのに巻き込まれてるわけじゃないんだ」

シャドーはここから学園の校門に続くゲートを創り、クライシスはガルトーラたちをまじまじと見る。

 

「・・・そいやこの人は?」

 

「40億年後の大罪人としての死に方を選んだシャドーだ。左腕は無だから容易に触れないほうがいい」

 

「・・・?」

洸天達は何を言っているのかわからないと言いたげな顔でシャドーを見る。

 

「つまりこの宇宙を滅ぼした未来の俺だ」

シャドーが大雑把な説明を入れる。

 

「うわぁ、それは怖いねぇ」

洸天達はよく理解できてないように返答する。

 

「おい、クライシス、シャドー、ちょっとこっち来い」

ションは二人を建物の裏に連れて行く。

 

「なんだ」

クライシスが話を急かす。

 

「歴史の改変には興味がないが無駄な情報で世界の循環に影響を与えるのはやめてくれ、賢者の一人としてあまりこの世界の壊したくない」

 

「なにあれくらいの事は言っても理解できんさ」

タバコを吸い、少女を引きずってゲートを潜り、それをはじめとして皆学園へ戻り、各自自由になるがクライシスがオウネを引き留める。

 

「オウネ、久しぶりに戦おうじゃないか。学園に居た頃はナイフを腹に刺すのがやっとだったし未来では一撃で消し飛ばしちゃったからな…楽しませてくれ」

タバコを咥えて、優しく微笑む。

 

「・・・別に構わないが、お互いただでは済みそうにないな」

 

「いざとなれば無の左腕で消し飛ばしてやるから安心しろ」

愉快そうに笑うが目が笑っていない。

 

「その左手・・・厄介そうだな」

オウネはよっこらせと腰を上げ構える。

 

「おいシャル、お前は実体化して見てろ」

シャルドニュクスは実体化し、シャドーの隣には黒い布地に赤黒いフリルの付いたゴスロリを身にまとった16歳程度の少女の姿になる。

 

「はぁ…余裕になるのはいいけど、あまり恥ずかしい展開にならないでほしいわね。やるならしっかり圧倒的差をつけて勝ちなさいよね」

シャルドニュクスは椅子に座って足を組む。

 

「また出たよカッコマンめ、見た目を重視し過ぎるなよ。あ、いつでもいいぞ」

リラックスするために煙混じりの息を深く吐き両手をポケットに入れる。

 

「では、早急に終わらせよう」

瞬間、シャドーの首が飛ぶ。

 

「おっと…いきなりだな」

頭を捕まえ、首に斬り口をつけると瞬時に繋がる。

 

「いい太刀筋だが、緩いな」

軽く笑いタバコの煙を吐くと、それが拳の形となりオウネを殴り飛ばす。

 

「ふ、面白い」

 

「さぁ、好きなだけ来いよ」

 

「いいだろう」

その言葉と同時にシャドーの腹にナイフが数千本刺さる。

 

「これは…昔の仕返しか?随分と大げさに返されたな」

ナイフを一本持ち全て落として、それに妖力、神力を練り混ぜてオウネの左目めがけて飛ばす。

オウネはあえてその攻撃を受け、同時にシャドーの左目が飛ぶ。

 

「強いな」

 

「これくらいで強いなんて言われてもな」

自身の時を遡り、受ける前のシャドーに入れ替わる。

 

「違法だな、時間の入れ替えは」

瞬間、シャドーの懐に入り創鞭でシャドーを三枚に下ろす。

 

「別の世界線で学園どころか宇宙をひっくり返した大罪人にそれはないだろ」

それを秒速50億光年でかわし背後に回り、胸を地面に叩きつけ片腕に妖力を溜めて腹に叩きつける。

その叩き付けた腕を掴み塵にするとシャドーの首を鞭で飛ばし左腕以外の部分を全て鞭で原子分解する。

その原子分解された原子は全て黒い霧となり、またシャドーを形造る。

 

「残念だったな。お遊びもここらでおしまいにしておこう」

シャドーから殺気がドッと溢れ出し、近づきすぎたら生気を吸われてしまいそうな禍々しいオーラを纏う。

そしてそれを全て右腕に集中させ、オウネの右頬へ抉りこませる。

 

「確かに、喰らったらやばそうだ」

と、言いつつそれが直撃する、同時にその力がそのままシャドーの体内で破裂する。

 

「流石にこれくらいの力なら俺も耐えられる、やはり武器を使うしかないのか…もな」

内ポケットから一つの直刀を取り出し、それに爪でルーン文字を彫る。

そして素早くオウネを斬りつけ血が付いたまま自分の両足を切ると、二人の足は一切動かなくなる。

 

「ほう、呪いか?」

しかし動かないはずの足でずかずかと歩いてきてドでかい柱でシャドーを押し潰しさらに創鞭で柱ごと薙ぎ払う。

 

「直接戦闘型でない能力であることは確かだが…なぜだ、何故効かない?」

シャドーはその創鞭を左手でつかみ、ポイっと投げて動かないはずの足の膝を折り曲げて普通に胡坐をかき思想を巡らす。

 

「ちっ、その手は厄介だな」

そう言うと飛んで行った鞭が光速でシャドーをを貫き左腕を分断して飛ばして見せる。

しかし左手から新たに生えた赤子の手のように物凄く小さな手がそれを受け止める。

 

「オウネ、人が考え事してる時に手を出すな」

少し怒った風に言いながらいつの間にかオウネの後ろへ移動し、かかと落としを脳天に、そして腹に数十発の拳で追撃する。

 

「いつになったらお互いダメージが入るんだろうな」

 

「さぁな。それにしても…ガルトーラはお前にはどう足掻いても勝てなさそうだな」

辺りから奪い取った神力を球状に溜め、エネルギー波として放つ。

 

「単純な・・・」

それはぶつかる前にオウネの前で消滅する

 

「ならば…」

シャドーはオウネと目を合わせ見開く。

それからオウネは目の前に理事長がはだけて寝ている姿が写る。

 

「り、理事長・・・ってかかるかーー!!!」

瞬間、オウネはシャドーの顔面を拳骨で吹っ飛ばす。

 

「いや、これはガキの頃からやりたかったんだ。念願がかなってうれしいよ」

シャドーは笑ってそれを受け止める。

 

「ともかく俺の負けだな。こんなに時間をかけても相手の能力を炙り出せないなら実戦では負けている。ありがとう、楽しかったよ」

 

「・・・ついでだ、教えてやろうか?」

 

「あ~…そうだな。これからは同僚として共に働くこともあるだろうし…うん、聞いておこうか」

 

「たぶんお前はただの調査隊だろうがな」

そう言ってオウネは半径一キロメートルほどのドームを視覚化する。

 

「これが私の間合い、つまり陣地だ、能力は『魔王城』、この中なら物質理論無効であらゆることを可能にできる、まぁその分消費は激しいがな」

 

「いやらしい能力だ、俺みたいな近接は苦手じゃないか…あ、バレルさんの上位互換か、なるほどなぁ。あ、そうそう…戦ってる間に100回以上はパンツ見れたから、あまり気を緩めないようにな?気をつけろよ」

 

「・・・・・。」

オウネは無言で後ろを向いて歩きだす。

 

「よし勝った」

小さいガッツポーズを握りしめる。

満足したのか適当な木の上に乗って眠りにつく。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。