ポケスペ after   作:稀里

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カントー地方、トキワの森


はじまり
1


 誰かが言った。

 旅立ちはいつだって、突然だと――

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 目の前の物を見て、フレアは目を丸くさせた。

 カントー地方、トキワの森。

 小さい頃から庭のように走り回っていたこの森で、見たことのないそれを見付けたのは四つ目だった。

 渦巻き型の、妙な存在感を醸し出す機械。自然の中に、それだけ人工物であることをありありと感じることができる。

 その機械を彼女のスピアーとヨーギラスが不思議そうに眺めていた。

 「スピアー、ヨーギラス。触っちゃダメだよ」

 そう言ってフレアはポケモンのたまごを抱えたまま歩き出す。

 2匹のポケモンは、先へ歩いていくフレアの後を追っていった。

 向かう先は数年前にトキワの森に出来た小さな湖。そこに繋がる川は、巡りめぐってマサラ沖にまで続いているらしい。

 フレアは少し大きい男物の帽子を被りなおしてその湖の縁に座った。

 「フレア」

 背後から聞こえた声に、フレアは振り返る。

 フードを目深に被った少年。フレアの幼なじみで、二つ年上のレノがフレアの隣に座った。

 続いて、彼の手持ちであるデリバードとイーブイが競うようにレノに飛び付く。

 それを少し羨ましそうにヨーギラスが目を輝かせていた。

 「あんまり出歩くなって言われただろ?」

 「平気だよ」

 「……なんでまたここに?」

 じっと此方を見るレノに、フレアはぎゅっとたまごを抱き締める。

 「なんとなく?」

 「なんで疑問系なんだよ」

 「そういえば、見た?」

 フレアがそう聞くとレノは何を?っと不思議そうな顔をした。

 二人のポケモンたちは構ってくれない主を放って遊んでいる。

 「変な置物。4つくらい見つけた」

 「ああ、俺も見つけた。昨日まで無かったはずだけど……」

 そう言って二人はぼんやりと湖を眺めた。

 「あめ……」

 「飴?」

 フレアがポツリと呟いた言葉にレノは彼女を見る。

 「雨降りそう」

 「は?」

 彼女にならって空を見上げようと顔を上げた瞬間、大量の雨粒がトキワの森一帯に降り注いだ。

 

 

 

 「もう少し、危機感を持って言ってくれ……」

 「ごめんね」

 突然降りだした雨に二人は慌てて木のうろに逃げ込むと、どんよりとした雨雲を見つめた。

 「なんか、嫌な雲だな」

 重たい雨雲にレノはぼそりと呟く。今にもあの雲が割れて中から何かが出てきそうだ。

 「雨、止みそうにないね」

 「そうだな。……川の方も危ないな。野生のポケモン達が流されなきゃいいけど」

 レノは向かいに見える川を見て不安気に眉を寄せる。

 未だ止む気配のない雨に二人はため息を漏らした。

 そのまま二人でボーッと外を眺めていると、フレアのスピアーがレノの頭にのし掛かってくる。

 フレアのスピアーとは、ビードルの時からの付き合いだ。頭の上に乗るのが大好きなようだが、乗られるのはいつもレノである。

 それを見たヨーギラスがまた羨ましそうにレノを見てきたが、彼にのし掛かられたら一貫の終わりだ。

 イーブイとデリバードはというと、大きな雨雲と降り続ける雨を見つめてはしゃいでいる。

 「雨止まなかったらどうしよう」

 不安気にそう言ったフレアに、レノは困ったように眉を寄せた。

 この大樹はトキワの森の中でも、トキワシティの反対にある。

 帰るまでにずぶ濡れになるのは必至だった。

 再び雨雲を見上げたその時、空が眩しく光り、直ぐに爆音が響く。

 思わず二人は目をつぶり、前後からレノの腹に何かが体当たりをする。

 背後からヨーギラス、前からはイーブイのたいあたりを食らって、レノはうっと息を詰まらせる。ついでに右にいたフレアに腕を掴まれる。

 そして、フレアとポケモンたちの小さな悲鳴を掻き消すようなデリバードの大きな悲鳴。

 慌てて目を開けると、パニック状態のデリバードが外へと飛び出した所だった。

 「デリバード!戻れ!」

 「え……!デリバード!?」

 モンスターボールをデリバードへと向けるが、間に合わず、デリバードは川沿いに更に駆けていく。

 「フレアはここにいろ!」

 言うが早いか、レノはイーブイをモンスターボールに戻すと、木のうろから飛び出した。

 「待って、レノ!スピアー、ヨーギラス戻って」

 続いてフレアも二匹をモンスターボールへと戻し、レノを追って木のうろから飛び出す。

 顔面に雨が打ち付けられ、まともに目が開けられなかった。

 フレアは被っていた帽子を深く被り、レノに続く。

 「デリバード!」

 再びレノが叫ぶとようやくデリバードに声が届いたのか、立ち止まりキョロキョロと辺りを見渡し、レノを見付けると飛び付いた。

 「デリバード、大丈夫?」

 「大丈夫。戻れ、デリバード」

 くっついているデリバードをモンスターボールへと戻して、レノはフレアを見る。

 「あそこにいろって言っただろ?」

 「ごめん……」

 「戻ろう。このままだと俺たちも危ない」

 レノの言うとおり、さっきよりも水かさの増した川は流れも早くなっていて、今にも溢れそうだ。

 戻ろうと足を進めた二人は、ふと雨音に混じり、話し声が聞こえてきて顔を見合わせた。水を吸って重くなっているフードを少し持ち上げ、レノは睨むように声の方を見る。

 数人の男女が、傘もささずに雨のなか何かをしている。

 ポケモンたちでさえ、今にも雷が落ちそうなこの天気に雨宿りしているというのに。

 「何やってるんだろ」

 「さあ……。とにかく、早く戻ろう」

 そう言って戻ろうと歩き出したその時、視界が真っ白になり直後先程の雷よりも大きいドンッという爆音が響いた。

 慌ててフレアの手を引く。グッと目をつぶり、ゆっくりと開けると霞んでいた視界がクリアになっていく。

 「びっくりした……」

 フレアが小さく呟き、レノはホッと胸を撫で下ろす。

 

 一体何が。

 

 二人は未だ光を放つ空を見上げ目を見開いた。

 雷を纏ったポケモン。伝説であるはずのポケモン、サンダーがそこにいた。

 プレッシャーに動けないでいると、サンダーは大きく羽ばたく。

 突風が二人を押し、更に強く。フワリと二人の体が浮いた。

 「「うわぁぁぁぁ!」」

 そのまま何も出来ずに二人は背後の川に落ちる。

 濁流に流されながらレノはフレアの手を掴み、川の中でモンスターボールを開く。

 

 「ラプラス!」

 

 そして、濁流が二人を飲み込んだ。




始まってしまった。

現在のてもち
フレア
・スピアー
・ヨーギラス
・たまご

レノ
・ラプラス
・デリバード
・イーブイ
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