ポケスペ after   作:稀里

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カントー地方 ななしま 三の島


2

 誰かが言った。

 

 これは全て必然だったと──

 

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

 「博士!グリーン博士!!」

 「なんだ、騒がしいぞ」

 「す、すみません。でも大変なんです!保護中のポケモンが一匹、行方不明で……」

 資料に向かっていた目を上げたグリーンは、徹夜明けの目を更に細くさせて研究員を見た。

 「行方不明? どういうことだ」

 「そ、それが……」

 「ハロー、あ・な・た」

 突然聞こえてきた声。窓を見て口を開けている研究員にならい、グリーンは後ろの窓を見る。

 窓から侵入してきた妻、ブルーを見て妙な胸騒ぎがグリーンを襲う。こめかみを押さえてため息をつく。

 「どういうことだ、ブルー」

 「あら! 私じゃないわよ、失礼ね。まあ、私の分身みたいなものだけど……。流石私たちの子供だと思わない?」

 「……アオイか。放っておけ、夕方には帰ってくるだろ」

 「は、はあ……」

 研究員は窓から入ってきた上司の奥さんに目を白黒させながらかろうじてそう呟く。ここが二階であることは思い出さないようにする。

 しかしそんなグリーンの反応が気に入らなかったのか、ブルーは少し大袈裟にグリーンに詰め寄った。

 「グリーンったらアオイが何歳だと思ってるの? 11歳よ?11歳!これがなんの年齢か分かってるの?」

 「それがなんだ……。待て、まさか」

 無視して資料へと目を落としたが、直ぐにグリーンは視線を上げる。彼女がその顔をしているときは、決まって何かがあるのだ。

 その何か、に気付いて、グリーンはにこりと笑った妻を見た。

 「ピンポーン! 大正解。流石私の子よね、同じことしてるわ」

 グリーンは頭を抱える。11歳と言えば自分たちが旅に出た歳だ。そしてブルーと同じこと。頭が更に痛くなる話だった。

 グリーンはふらりと立ち上がると、固まっている研究員へと近付く。

 「は、博士?」

 「仮眠室借りるぞ……。ポケモンのことは後で俺がどうにかする。あとブルー」

 「なぁに?」

 「ここは土足厳禁だ。いい加減窓から侵入するのは止めろ」

 ドアノブに手をかけたグリーンは何かを思い出したように話を変える。

 「そういえば、ナナキはどうした?」

 「勿論、二人で家出よ」

 先日から遊びに来ていたコガネ弁の甥を思い出しながら、グリーンは再びため息をつく。ポケモンくらい持たせてやるべきだったかと既に働いていない頭で考える。

 「安心して。ナナミさんにはもう連絡したし、あっちのほうで二人を探してるみたいだったから」

 「そうか」

 にこりと笑う妻が楽しんでいることに気づかないふりをしてグリーンは部屋を出た。

 

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 ななしまの連絡船、その甲板で遠くなる三の島を見てナナキは隣で同じように島を見ていたアオイに話しかける。

 「なあ、アオイ。一の島なんかで何するつもりなんや?」

 ナナキの言葉に、アオイはニヤリと笑う。

 この2つ下の従兄弟は時々、思いもかけないことを言い出す。親子でよお似とるわと言ったのは自身の父親だったが、この親にしてこの子ありというのはナナキでもわかった。

 それほどアオイとアオイの母、ブルーはよく似ている。

 顔も母親似でニヤリと笑ったその顔は、ブルーさんの何か面白がっている顔によく似ている。

 「一の島じゃねぇよ。行くのは本土!クチバシティだ」

 「クチバ……クチバやて!?」

 アオイの言葉を反芻して、ナナキは叫んだ。一昨日、ナナキはクチバから船にのり、アオイたち一家の住む三の島へと来たばかりだ。

 「一体どういうことや!」

 「家出。あんなクソ親父の所にいたくないんだよ」

 鞄を漁りながらそう言うアオイにナナキは頭を抱える。彼が父親嫌いなのもそれはもう周知の事実で、三の島中に知れ渡っている。

 昔はあんなにお父さんっ子だった癖に、と思いながらナナキは空を見上げた。綺麗な青空だ。

 そうこうしている内に探していた物が見つかったのか、アオイは鞄から手を引き抜いた。握られていたのはモンスターボールである。

 「お前、ポケモン持っとったんか?」

 「盗んだ」

 「盗んだやて!?犯罪やないか!」

 「あー、煩いな。借りたんだよ。ちゃんと返すし」

 「返す返すって、前にお前に貸したゲーム!あれどないしたんや。まだ返してもろてないで」

 ムスッとしてアオイはモンスターボールを投げる。現れたのはメタモンだ。

 しかし、現れたメタモンの色は青、というか水色だ。見たことのあるメタモンは確かピンク色をしていた筈だった。

 「これ、色違いのメタモンか?……アオイのことやからもっと強いポケモン連れてくるかと」

 「強いか弱いかなんて関係ないんだ。コイツが良かったんだ。な、メタモン」

 そう言って笑いかけると、メタモンも嬉しそうに笑う。そんな光景にナナキはやれやれと肩を竦めた。

 「俺は知らんで。あとでどやされても」

 「安心しろ。この船に乗った時点でお前も共犯だ。クチバまではどのみち止まらないからな」

 「な、なんやて!?そんな事しようもんならマナミ姉えが……!お前もマナミ姉ぇの怖さ知っとるやろ!」

 4歳年上の姉を思い出す。パソコン一つでなんでもしてしまう。恐ろしい姉の姿を思いだし、ナナキは震えた。

 「俺らの居場所なんて直ぐにバレてしもうわ!クチバ港の監視カメラでもハッキングされたら……いや、そもそももうすでにクチバ港に張り込んどるかもしれんで!?」

 「だから逃げるんだろ?気張れよーナナキ」

 「嫌やー!!」

 頭を抱えるナナキを笑いながらアオイはメタモンを見る。

 アオイにとって、始めてのポケモンであり、初めてのパートナー。

 「よろしくな、メタモン」

 大きく頷いたメタモンにアオイは微笑む。

 「それにしても何だって今日はこんなに熱いんだ?」

 「そう言えばそうやな。雲もないもんなぁ……」

 ナナキは目を細めて空を見上げた。

 太陽を背後に大きな影が見えたが、眩しさのあまり一度目を閉じたナナキの横でアオイが声を上げる。

 「あれって、ファイアー!?」

 「は、ファイアーやて?何言っとんのやアオイ。伝説のポケモンやぞ。こんなところに……」

 ようやく眩しさから復活したナナキは再び空を見上げる。

 大きな影。先程より近くに見える、大きな炎のようなポケモン、ファイアーがそこにいた。

 「ヤバイ、ナナキ逃げるぞ!」

 「は?逃げるってここ船の上やぞ!どこに逃げるんや」

 「いいから、早くうわっ!」

 急降下して、船に迫ったファイアーは、船のスレスレを飛んで行く。あまりの突風に体が浮いた。

 「ッ……!メタモン!」

 「アオイ、危ない!」

 飛ばされたのはメタモンも同じで、アオイは船から落ちかけたメタモンに手を伸ばし、船から体を飛び出させる。

 しっかりとメタモンを掴み、引き寄せる。ナナキが慌ててアオイの体を引っ張り、二人とメタモンは甲板に尻餅をついた。

 「大丈夫か、メタモン!」

 「大丈夫かやあらへんわ!お前まで落ちたらどうする気やったんや!ああいうときは、モンスターボールに戻すのが……」

 「あー、煩いな。いいだろ、助かったんだから。な、メタモン」

 甲板には今では沢山の人が出てきており、アオイはメタモンをモンスターボールに戻して、甲板を離れる。

 後ろの方は人が少なく、アオイとナナキは安堵の息をつく。

 「それにしてもなんで伝説のポケモンがこんなところにおるんや。人前に姿を現わさんゆうて有名やろ」

 「さあな。でも、なんか逃げてるみたいだったよな……」

 そう言い、なんとなく海を見ていると遠くに黒い船が見えた。珍しいなと思いながらその船を見送る。

 ファイアーを追いかけるようにその船が進んでいるのを、アオイは特になにも考えずに眺めていた。

 

 




本当は親を出すつもりはなかったのですが、まあいっかという事でグリーンさんとブルーさんを召喚しました。

現在のてもち
アオイ
・メタモン

ナナキ
・ロコン
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