緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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 幸姉からの依頼をこなすために最初に訪れたアテでトントン拍子で話が進み、松方組の組長である松方十蔵さんの娘さんのところに厄介になることになったオレは、渡されたメモに従って再び都内を西に進み、神楽坂をさらに越えてその先にある日本女子大学のキャンパスが見えるところまで目白通り沿いに辿り着く。

 日本女子大学を横目に右折して不忍通りに入り、すぐに通りを左折して細い道へと入ると、ちょうど不忍通りと都電、鬼子母神前の中間辺りの位置まで来て、ここがメモにある娘さんのアパートの住所辺りなのを確認。

 立地としては大学も地下鉄も程近いから生活する分には全然良さそうだ。学生視点では。

 それでメモにあるアパートの名前を徐行しながら探してみると、割とすぐにそれは見つかって『佐原荘』の文字に間違いがないことを確認してから渡されたメモを燃やして破棄。

 2階建ての6部屋あるっぽい――上階、下階で3部屋ずつ――そのアパートの敷地にバイクを停めて、下の階の1ー2と表札のある部屋のチャイムを鳴らして、いよいよ十蔵さんの娘さんと対面。

 顔は十蔵さんの部屋に飾ってあった親子3人の家族写真をチラッと見て想像はしたが、何せ写真が10年くらい前の物だったからどう成長してるかはさすがに予想できない。

 極道の娘というと強気で男勝りなイメージが先行しがちだが、それはドラマやらの見すぎ。

 実際はどんな風に育つかなんてその家次第である。

 そうしてついに部屋のドアが開けられて、そこから十蔵さんの娘さんが姿を見せて、小柄――160センチあるかないか程度――なその人は少しオレを見上げる形で顔が見えるが、これは、マズイな。

 腰の上辺りまで伸ばした綺麗な黒髪はどことなく幸姉を思わせるところがあり、その容姿も可愛いから綺麗へと変わりつつある少し大人になりかけてる端整なもので、若干目が垂れ気味でどこかおっとりして優しい印象を受ける。

 体の方は幸姉より出るところは出て、引っ込んでるところは引っ込んでるように見えるが、季節も季節なだけにワンサイズほど大きい暖かそうな白のセーターと薄いピンクのロングスカートを着て完全にスリーサイズはわからな……くていいか。つい観察癖が出てしまった。

 

「キョウ、さんですね。拝見したお写真と違わない素敵な殿方で少し緊張します。父、十蔵の娘、菜々美(ななみ)と申します」

 

 それで少し視線を泳がせたオレに対して、ビックリするぐらい綺麗な言葉遣いとお辞儀で迎えた菜々美さん。

 これは幸姉に見習ってほしい。幸帆はできるのに……

 そんな菜々美さんにオレもペコリとお辞儀で返したら、寒いからまずは中へと迎え入れられてそれに従って中へと入って1DKの1人で暮らすには十分すぎるリビングの中央に置かれた足の低いテーブルのそばに適当に座って、ホットコーヒーを持ってきてくれた菜々美さんにお礼をしつつひと口含んでから、対面する位置にこれまた綺麗な正座で座った菜々美さんと話をする。

 

「すみません。いきなり押しかける形になって、しかも見ず知らずと言っていいオレなんかを招き入れてくれて……」

 

「構いませんよ。父もずっと宙ぶらりんになっていた恩を返せると喜んでいましたし、私もキョウさんには感謝していますから。あのような厳つい父ですが、迷うことなく助けていただき、ありがとうございます」

 

「それはもう十蔵さんに言われたので、改まれると恥ずかしいで……す……」

 

 始めにオレがそんな切り出し方をしてみると、人が良さそうな菜々美さんは言いながらわざわざ横に正座のままスライド移動して三つ指をつき頭を下げるので、やめてくれと返してしまったのだが、その時に頭を下げる菜々美さんがワンサイズ大きいセーター故にその胸元が危ない感じで開いて見えてしまっていて、男の本能でそれをつい見てしまうも、すぐに頭を上げて元の位置に戻ってくれたため気付かれてはいないかな。

 しかし、理子並みだったな。凶器だぞあれは……

 なんというか、今ので何となくわかったのだが、菜々美さんは『悪い方向で無防備』な感じがする。

 悪い方向というのは、男との距離感や男の性質を根本的に理解してないといった感じ。

 それ故に本来なら警戒すべきところで注意がいかない。これなら乙女の時の幸姉の方がよっぽど楽に接することができる。

 このタイプは油断すると危ないから苦手な部類だなぁ。

 そう思って色々あれな菜々美さんとどう接するべきかを思考していたら、なんだかオレを見る菜々美さんが何か言いたそうで言い出せないみたいな雰囲気を醸し出していたので、これから一時的とはいえ同居するわけだしと話し慣れておくために会話を再開する。

 

「あの、オレに敬語を使う必要はないですから、普段の菜々美さんで接してくれるとありがたいです。それで疲れて勉学に支障が出たら困りますし」

 

「あ、はい。じゃあ、お言葉に甘えて普段通りにさせてもらいますね。フフッ。私も年下の子に敬語を使い続けるのはちょっとなぁって思ってて、そう言ってもらえて助かっちゃった。ここからはキョウ君って呼びたいんだけど、いいかな?」

 

「構いませんよ。ですがちょっとしたお願いを聞いてもらいたいんです」

 

「それはもちろん。あ、でもエ、エッチなこととかはよくわかんないから、そっち系のお願いは無理かも……」

 

「そういう話ではないです」

 

 それでまずは敬語をやめるようにお願いすると、これは向こうも若干のストレスになっていたようなのですぐに解消。

 普段の話し方の菜々美さんはおしとやかな感じは消えないが、どこか接しやすい雰囲気で割と好きだ。が、冗談でもそっち系の話を振ってほしくはなかった。

 確かに年上には若干弱いが、十蔵さんの娘さんでこれから図々しくお世話になる人にそんなお願いはしない。

 

「まず、オレのプライベートなことはあまり詮索しないでください。オレも菜々美さんのことは詮索しません。オレがここを出ていく時には、菜々美さんとはもう赤の他人同士。またどこかでばったり会っても知らない人。そうしてもらいたいんです」

 

「プライベートっていうと、出身とか歳とか個人情報の類いかな。そうしないといけない理由があるんだってことなんだろうし……わかった。本当はせっかく知り合えたからずっと仲良くしたかったんだけどね。私にとって初めての男友達になれると思ったんだけど、そこはちょっと残念かな」

 

 オレのお願いに了承してくれた菜々美さんではあったが、オレの依頼が終わってここを出ていく時には赤の他人ということに本当に残念そうにするので、少しだけ酷なお願いだったかなと思うがこれも菜々美さんのため。

 いつかどこかで迷惑をかける可能性は排除しないといけない。

 

「……私ね、家があんなだからせめてって、小学校からずっと女子校通いで普通の男の子と接する機会がなく育ったの。家ではシゲさんとか組員さんにお嬢、お嬢って宝物扱いで。だからキョウ君みたいな子と仲良くなれたらなぁって思ってたんだけど……」

 

「……オレの写メを要求したのは、それに繋がってますか?」

 

「う、うん。だ、だって強面の……それこそシゲさんとかお父さんみたいな子だったら普通じゃないっていうか、気まずいっていうか……だし、そんな子と一緒に暮らすのはせっかく実家を出たのにあんまり変わんなくなっちゃうかなって思って。だからキョウ君みたいな子ならいいかなって……」

 

 そんなお願いをした矢先でいきなり身の上話をしてきた菜々美さんには頭を抱えそうになるが、どうやら男への耐性がないのは推察通りみたいで、小学校からとなるとかなりの世間知らずになってるかもしれない。

 大学も女子大らしいが、ここまで変な男に引っ掛かってないのは奇跡じゃないか?

 そうして自分の情けない部分を両手の指先をつんつん合わせながらに語る菜々美さんは異常に可愛いのだが、それに何か情を持って接すると良くないことになる。

 菜々美さんとの距離感は終始縮めないでいないといけないが、放っておけないという苦手なタイプなだけに相当苦しい日々になりそうで今から不安が大きくなってしまった。

 なるべく早くこの依頼を終わらせないとダメだなこりゃ。

 

「……オレも普通とは言いがたい男ですけど、今後の菜々美さんも心配なのでその、男について学べるだけ学んでみてください。とりあえずそういう服で姿勢を前屈みにするのは良くないですから注意してください。男は見える物は見る生き物ですから」

 

 とかなんとか思いつつも、一緒に暮らす上で菜々美さんの無防備さは放置できない問題なので、せめてそこだけは警戒してもらおうと意見を述べると、割とピンポイントな指摘だったからすぐに先ほどのことだと思い当たったようで、自分の襟元をちょっと摘んで引っ張り余白部分を作り出すと、途端に顔を赤くして胸を押さえてオレを見るので、とりあえず笑って返しておく。

 

「……どのくらい見えちゃった?」

 

「……中に着けてる物くらいは普通に……」

 

「……今回は注意してくれたから許すけど、次は怒っちゃうかもだからね」

 

「その次はなくして欲しいんですが……」

 

 それで正直に見えた物を話して、今回は許してくれるらしい菜々美さんだったが、こりゃまたありそうな予感。

 それに反応のいちいちが普通の女の子なので、オレの周りにあんまりいなかったこともあってこれまでの対応ではダメな感じがしてもう疲れてきた。

 幸姉や理子みたいに見られることにあまり抵抗ないのもあれだが、これもこれであれだ。色々あれだ。表現が曖昧すぎるが、とにかくあれだ。

 

「……そっちの方はオレが気づいたらすぐ注意しますので、菜々美さんも男に見られてることを意識してもらえたらと思います。それで今後の基本行動ですけど、菜々美さんは日中は大学ですよね?」

 

「うん。その後にバイトもしてるから、平日は帰ってくるのが夜の8時から9時くらいになるかな。土曜日はバイトで昼の12時から夕方6時くらいまで。日曜日は完全に休みにしてるから、やりたいことをやってるの」

 

「それじゃあ菜々美さんが家にいない時間帯はオレも出ておきます。オレのせいで無駄な生活費は消費させたくはないですし、元々雨風をしのいで寝泊まりできる場所で良かったので、食べ物もオレの分は必要ありません」

 

「そんなぁ……そこまで気を遣ってくれなくていいのに。お料理も1人分も2人分も変わらないから作る気満々だったし……」

 

「それこそオレに気を遣わないでください。オレは寝床をくださるだけで感謝してもしきれないくらいなんですから」

 

「お父さんの恩人を外出中はずっと閉め出しなんてそれこそ失礼だよ。私のことは気にしないでくつろいでくれていいから」

 

 菜々美さんのあれはあれとして、とにかく決めておくべきことは話さないとと今後の行動方針を話し合うが、なんか互いに気を遣って譲らないから進展しない。

 こういう時こそ羽鳥がいたら楽なんだが……良いタイミングでいなくなるなあいつも。

 

「……オレもやることがあってここに厄介になるんですから、元から日中は動かないといけないですし、菜々美さんだってオレのいない時に済ませたいことだってあるでしょう。だから閉め出してると思わずに『たまたまタイムスケジュールが合ってる』と考えてください。それが呑めないのであれば、オレは別の寝床を探しに出ていきます」

 

 しかしここで譲ると本当に菜々美さんにお世話になりすぎなので、羽鳥の憎たらしい顔を思い浮かべながらあいつの言いそうなことを想像して結構無茶苦茶なことを言うが、父親の恩人をここで帰すのはマズイと思ったのか物凄く渋い顔をしながら唸りつつ苦渋の決断を下した。

 

「……わかったよ。キョウ君がそれでいいならいいけど、でも毎日ちゃんと帰ってくること。それが最低条件ね」

 

「わかりました。では帰宅しても大丈夫になったら、こっちの携帯に着信履歴だけ残してもらえますか。それが確認できたら帰りますので」

 

 どうにかこちらの条件を呑んでくれた菜々美さんにホッとしつつ、十蔵さんから渡された携帯を取り出して互いに電話番号を交換。

 オレの携帯ではないのだが、番号の交換をした菜々美さんはちょっと嬉しそうにその番号を眺めた後、何か思い出したようにハッとしてオレを再び見てくる。

 

「もう1つ最低条件を追加してもいいかな?」

 

「内容によりますとしか……」

 

「今夜の夕食は私の料理を一緒に食べてほしいの。それでこれからよろしくの晩餐会をしよう」

 

 決めるべきことはだいたい決まったかと携帯をしまいながら菜々美さんの追加条件を聞いてみると、本当に人の話を聞いていたのかと言うような晩餐会の要求に頭を抱えそうになるが、それを察した菜々美さんが「最初で最後の1度だけ」とお願いしてくるので、それで気が済むならもういいかとオレもちょっと自棄になって了承すると、今日一番可愛い笑顔で喜んだ菜々美さんは、これまた人の話を聞いていたのかという珍行動で「材料買ってくるからお留守番よろしくね」と言い残して買い物に出かけてしまい、人の話を聞かない菜々美さんにちょっと不満を残しつつも、今後できないであろうちょっとした贅沢である暖かい空間でふて寝を実行したのだった。

 相当なマイペースの菜々美さんに調子を狂わされつつも、これっきりと割り切って今日は納得しながら、夕方6時を少し過ぎた頃に買ってきた食材で料理を終えた菜々美さんは、ほぼ完璧な一汁三菜の料理――豆腐とワカメの味噌汁にしょうが焼きとキャベツの千切り+トマトにほうれん草のお浸し――をテーブルに二人前で並べて席に着くと、可愛いエプロンを着けたまま両手を合わせていただきますの合掌。

 それに従って箸を持つものの、菜々美さんはそんなオレをじっと見て自分は箸を持とうともしないので、これは感想を求められてると直感したオレは順番に少量ずつ口に運んでから、十分に咀嚼して全て飲み込んでから菜々美さんの求めるものに応える。

 

「どれも凄く美味しいです。お世辞抜きでいつでもお嫁に行けると思います」

 

「お嫁とか言いすぎだよキョウ君。でも良かったぁ。男の子に手料理を振る舞うのは初めてだったから、男の子の味覚に合うのか不安だったの」

 

「男女で味覚に差があるものなんですか? それは個人の好き嫌いなのかと……」

 

「えっ? 人間の五感は男女で発達してるものが違うから、違いはあると思ってたけど。男の子は視覚と触覚に優れてて、女の子は聴覚と臭覚と味覚に。進化の過程でそういう脳の発達の仕方を……って、これは脳科学の分野の話だった。ゴメンね難しい話して」

 

 ここで嘘をつく理由もなかったので正直に美味しいと感想を述べれば、ホッと安心した菜々美さんもようやく箸を持って改めて合掌してから料理に手をつけ始めるが、なんだかこんなところで大学生っぽいことを言うのでちょっと面食らう。

 何の勉強をしてるのかはわからないが、当然のように出てきた話が若干難しそうでアホみたいな顔をしたかもしれなく、それを察した菜々美さんが早々に切り上げてくれた。

 

「菜々美さんって、やっぱり大学生なんですね」

 

「むっ、その言い方はちょっと馬鹿にしてないかな。これでも小学校からずっと優等生クラスだったんですからね」

 

「いえ、馬鹿にはしてませんけど、ちょっとおっとりしてるというかマイペースな印象が強くて勉強してるイメージと結びつかなくて」

 

 そういった基礎能力の高さをうかがわせる菜々美さんについつい失礼な発言が出てしまったのだが、良い意味で乗ってくれた菜々美さんは半分くらいわざとらしく怒ってみせて、それにまた微妙なことを言えば、ちょっと膨れた顔をしたかと思うとすぐにクスクスと声に出して笑う。

 

「こうやって男の子と会話しながら食事も初めてだけど、なんだかちょっとだけ照れちゃうな。つ、付き合ってる人同士だと、こんな会話をして食事を楽しんだりするのかな」

 

「それはオレにもわかりません。でも、食事を楽しむ上で会話をするのが悪くないことは実感しています」

 

「となると、キョウ君は女の子との食事は割と頻繁にしてるってことなのかな……っと、こういうことは聞かない方がいいんだったね。ゴメンね」

 

 そうして普通に会話を楽しんでいたら、やはりというか少し突っ込んだ話にも発展してしまって、オレのお願いを思い出した菜々美さんはそれ以降テンションを下げて口数も少なくなってしまい、オレも線引きをした手前で話題作りもなかなか難しくて黙々と料理を食べることしかできなかった。悪いことしてるなぁ、オレ。

 食事を終えてからすぐにお風呂に入っていった菜々美さんに、直前で一応オレがいることも忘れないように言っておいたが、ちょっとだけ不安が残るも入浴中なのを意識しないように部屋の中を何気なく観察していた。

 家はあれで宝物扱いされていたという割りには特別に高そうな物は見当たらず、むしろ自給自足を地で行く等身大の大学生みたいなちょっとした貧しさというか、贅沢さが見当たらない。

 リビングともう1つ、ふすまを隔てた寝室と思われる小部屋もオレがいるのに全開で見えてしまっていて、中には干しっぱなしのあれな物もチラッと見えるが無視。生々しすぎて男には毒だ。

 しかしやはりそちらにも物という物は少なそうで最低限の物を揃えて生活している感じが伝わってくる。

 生活観で言えばオレの部屋と大差ない。むしろソファーとかあるだけまだ贅沢してる気がする。

 リビングで存在感を放つ勉強机は、色んな参考書やレポートの紙が自分なりの整理整頓で置かれているが、この辺でも几帳面そうな性格が出ているな。

 それらの様子を鑑みて、どうやら菜々美さんは家に頼らずに自分なりに一人暮らしをしてみているようだ。

 バイトも週6でやってるみたいだし、本当ならオレを居座らせる余裕なんてほとんどないだろうに、それでも父親の恩人だからと泊めてくれてる。

 その厚意の全てを受け取れないというのが菜々美さんを困らせてしまってることは明白だが、これを通すのがオレなりの優しさ。

 理解してくれなくてもいいし、最終的に嫌われたって構わない。この人の平穏な日常を壊すことだけは、絶対にしてはならない。

 それを誓いに心を鬼にしたオレは、特に何事もなくお風呂から上がった菜々美さんにお風呂を勧められるが、それもキッチリと断り微妙な空気になるも、オレの頑固さに理解が及んできた菜々美さんは自分が折れる形で切り替えて寝るまでの時間を勉強に当て始めて、邪魔になりそうだから外にでも出てようかとも考えたが、そっちの方がかえって心配させそうなので可能な限り静かに今後の行動についてを考えていた。

 しかしそれも30分と考えればだいたい終わってしまい、調査中の食事と衛生面のことも定食屋やコインランドリー、温泉施設を利用することで済ませられるかと考えたところで、やはり近くで勉強してる人というのは気になるところ。

 だから気付かれないように後ろからそっと机の上を覗くも、自分の頭の悪さが露呈してしまいそうな感じが伝わってきて速攻でやめる。

 これダメなやつだ。オレも武偵高の中で上位なだけで頭は良くない部類だからな……言ってて切ない……

 どうでもいいところでダメージを受けてしまったオレだが、割と集中力がある菜々美さんは大きなあくびが出て勉強を終えてから思い出したようにオレに寝る時の毛布を渡してきて、そのまま就寝。

 直前に自分の寝室で寝ていいみたいなことを言いかけたが、オレが断るのを見越して引っ込めたのは学習してくれたようだ。

 渡された毛布を被ってリビングのカーペットの上で横になって寝たオレだったが、暖房がリビングにしかない関係上、寝室のふすまが全開なのをちょっと心配しつつ翌朝を迎えると、案の定目覚めたばかりの菜々美さんは覚醒しきってない中で起きてそのまま着替え始めてしまい、やっぱりとか思いながら菜々美さんがパジャマのボタンに手をかけたところでそっとふすまを閉めてあげるのだった。

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