緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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香港編
Bullet86


 

 割と長引いた幸姉からの依頼を完遂させて、ようやくゆったりとした時間を使えるかと思ったところ、小鳥は依頼か何かで出払っていて、夕食を考えなきゃと思って借りてたものを返却し終えて帰路につけば、オレを探してたらしい幸帆が泊まりに来たいと言うので、夕食を作ってくれるならと言えば快く引き受けてくれて、買い物をしてから2人で帰宅。

 早速調理の方に取りかかっていく幸帆を横目にリビングに移動していけば、なんかいた。

 我が物顔でソファーに座って携帯ゲームをやってる理子が。

 そういや今日はテキトーにあしらったからご立腹なのかね……

 

「おいおいキョーやんや。その面倒臭そうな顔はやめんさい。理子は約束を果たしてもらうために参上したんだからね」

 

 その理子はようやく来たかと携帯ゲームをソファーに置いてズビシッ! とオレのあからさまな顔にツッコミつつここにいた理由について話す。

 あー、そういや依頼の前に構ってやるみたいなこと言った気がするな。

 そうやって思い出すような表情で理子を見れば、なんかムフムフ言いながら要求を述べたそうにしてたのでちょっとイラッ。

 

「あれ、理子先輩……」

 

 しかし約束したのは事実なので仕方なく要求に応じようとしたところでオレ以外の声が聞こえたからかキッチンから幸帆が顔を覗かせて、理子を見るなりなんとも言えない表情を浮かべる。

 その表情によくわからないと思いつつ2人に挟まれたオレが目を合わせる双方を交互に見れば、無言で真剣な顔に変わった両者の睨み合い? はすぐに終わりを迎える。

 

「んー、今日はタイミング悪かったかなぁ。てことでキョーやんにはまた後日、構ってもらうことにして退散させてもらいます!」

 

 ビシッ!

 そうして敬礼しながらに携帯ゲーム機を持って帰ると言った理子は、その急な予定変更に理解が追い付かないオレを無視して寝室の上下扉へと向かう。

 

「何だ急に。オレが何かしたのか?」

 

「キョーやんは関係ありませーん。理子はKYじゃないからこうするんだよーん。それに『チャンスは誰にでも平等にあるべき』だと思うし。たとえそれが敵でもね……バイバイキーン!」

 

 別に機嫌を悪くしたわけでもなさそうだったのだが、理子が引き下がるような行動は珍しいので何事かと呼び止めるものの、そうやって曖昧な答えで幸帆に対してウィンクしてから寝室のドアを閉めて消えた理子に、幸帆は深いお辞儀で返していた。

 な、なんか女子の間で不思議なやり取りがあった、らしい。

 しかしまぁ、今のタイミングで理子に引っ付かれるのは色々と疲れるから、結果として良かったわけだが、考えてみると幸帆と2人でのんびりする時間というのもずいぶん久しぶりな気がして、なるべく同じ時間を共有したいと思って料理の手伝いに乗り出してみると、凄く嬉しそうにするのでマジで照れる。

 それにしてもエプロン姿の幸帆はザ・主婦みたいな雰囲気があるな。

 この辺は白雪に似た大和撫子特有の存在感なのかもしれない。

 

「そういや小鳥はどこで何してるんだろうな。金曜日までには帰るみたいだが」

 

「小鳥さんはご両親と帰省のようですよ。なんでも今年はもうご両親が海外から帰ってこれないみたいなことをメールで言ってましたので、実家で家族団らんをするそうです」

 

「あー、あの人達は忙しそうだからな。日本に帰ってくるのも大変なんだろ」

 

「小鳥さんのご両親とお会いしたことがあるんですか?」

 

「吉鷹さんにはいきなり追っかけ回されたけどな……」

 

「ふふっ、なんですかそれ」

 

 作業をしながらそんな他愛ない会話をして沈黙を無くしていたが、昔から幸帆とは話題で困ったことはないんだよな。

 どっちかが必ず話を繋げるように自然と話題を振って気まずい雰囲気は出来たことがない。これは幸帆だけな気がする。

 そういった意味で幸帆は特別な存在かもな。オレが会話を続けようとする人はあんまりいないから。

 頼んでもいないのに勝手に話しまくるやつは別として。

 そんな中で今日は少しだけ違う感じがあって、オレが視線を逸らしてる間に幸帆が妙に見てくる。

 一緒に夕食を食べてても、何か考えてるような顔でオレを見ては視線を逸らすといった挙動があり、これは泊まりに来たことと関係あるのかもなと思いつつも、オレから聞いていいものでもなさそうだと判断して幸帆から切り出してくるのを待つと、なんか夕食を食べ終えてしまった。

 ん、判断を間違ったか。はたまたタイミング的なものがあったのか。

 とにかく幸帆なりの目的はあるとは思うので、いつでも話を聞けるようにリビングでくつろいでいたら、片付けを終えた幸帆もソファーに座ってテレビを一緒に観始めるが、やはり時々テレビではなくオレをボーッと見ることがあってもどかしい。

 何かあるならいい加減に話してはくれませんかね、幸帆さん……こちとらそれが気になって、世界の絶景を探そうとか言ってるテレビがどうでもよくなってるんですよ。

 だから綺麗ですねみたいな共感を求める会話はこっちを焦らしてるみたいで意地悪されてるんじゃないかと勘繰っちゃうんだって。

 だがそんな焦らしは番組が終わるまで続き、夜の9時になってからシャワーを浴びに行ってしまった幸帆に変に緊張してしまったオレは、ソファーに横になってこの後はもう自分から切り出すかと痺れを切らせるような思考に切り替わる。

 ここまで来るともしかしたらオレから聞いた方がいいことなのかもしれないしな。

 言いたいことを言わないことも少なくない幸帆ならあり得るが、遠慮なんてオレに対して必要ないのに。

 兄妹同然で育って、色んな恥ずかしい過去だって知ってるわけだしな。

 そんないつもと少しだけ違う感じの幸帆を待つ間に、単分子振動刀の手入れを割と丁寧にしていたが、刃こぼれ1つないなこれ。

 サブマシンガンをぶった切ったはずなんだが、洒落にならん性能だわ。さすが先端科学兵装ってところか。よく考えたら手入れの方法すらよくわからないな。

 まぁそれでも汚れを取ったりはできるからやっていたら、ここでの宿泊用に常備しているパジャマを着た幸帆がリビングへと戻ってきて、シャワーで温まったからかほんのりと顔を赤らめてオレの近くへと寄ってくる。

 

「京様……」

 

 ちょっとだけ艶やかさを帯びた声で隣に来た幸帆だったが、次にはオレが予想もしなかったことをしてきて正直ビックリする。

 なんと、幸帆がオレをソファーに押し倒して馬乗りしてきたのだ。これには驚かずにはいられない。

 こんなことされたことは今まで1度もないが、どうしたんだ……

 

「…………どうしたんだ、幸帆」

 

 オレの上に乗りまっすぐに視線を合わせ物言わぬ幸帆に、なんだかこちらから聞かずにはいられなかったため口を開いてみると、意を決したように目を閉じて開いた幸帆はようやくその口を開いて話し始める。

 

「……京様にとって私は、どんな存在でしょうか。今の素直な言葉を、お聞かせくださいませんか?」

 

「どんなって……兄妹同然に大切に思ってるし、オレのことを理解してくれてる人間の1人だと個人的には思ってる、けど」

 

 質問の意図はよくわからないまでも、ここで嘘を言っても仕方ないと素直に幸帆をどう思ってるのか話せば、その答えを聞いて顔を俯かせた幸帆は、表情が見えづらい状態でまた口を開く。

 

「私も……京様のことは実の兄のように思い慕っております。姉上に対して劣等感から敬遠してた私にとって、京様は気を許せる数少ない大切な存在で、これから先もそれは変わらないです」

 

「…………そうか。ありがとう」

 

「お礼を言うのは私の方です。こんな私にいつも優しくしてくださる京様が、どれだけ私の心の支えとなっていたか。今の私があるのも、ひとえに京様のおかげと言っても過言ではないほどです」

 

「……それは過言だな。幸帆の努力なしに今の幸帆はないんだから、オレはそれに少しだけ助力した程度だって」

 

 幸帆からオレがどう思われてるかなんて初めて聞いたオレにとって、その答えは素直に嬉しかった。

 オレが幸帆のことを大切に思ってるのと同じで、幸帆もまたオレのことを慕ってくれていたことは、相思相愛とは違うが家族として良いことだし、オレもこれからも幸帆のことを大切に思う気持ちが揺らぐことはないだろう。

 だが、少しだけ顔を上げてオレを見る幸帆の表情は、明るい話に反して笑ってはいなかった。

 

「しかし私は、そうして京様のことをお慕いする一方で、ずっと隠してきた感情があります。ですがそれを京様に見せたら、きっと今の関係が壊れてしまう。それが怖くて私はずっと、この気持ちを隠し続けました」

 

 その理由はオレに対して隠してきた感情だと話す幸帆。

 今それを話したということは、おそらくこれからそれをオレに見せる覚悟でもしてきた。

 だから今オレはあり得ない体勢で幸帆と話しているんだろう。こうして気持ちに勢いをつけるように、オレを押し倒して。

「京様は、私のことを大切に思っていると言ってくださいましたね。ですが……」

 

 と、オレの言葉を反復し確認した幸帆は、突然そのパジャマの上着のボタンに手をかけて全て外し、下着をつけていなかったその綺麗な柔肌を際どいところまで見せてくるので、思わず目を逸らしてしまう。

 えっ、何だこれ。これはさすがに予想外すぎる!

 

「京様は、1度でも私のことを『1人の女』として見てくださったことはありますか? 私を……『真田幸帆』をちゃんと見てくださったことは、ありますか?」

 

 予想外の幸帆の行動に思考が追いつかないオレに対して、上着を肩からスルリと落としてその体の前面を完全に見せてしまった幸帆。

 見えちゃいけないものまで見えてるだろう幸帆から視線を逸らしながらも、言ってることの意味についてグサリとくるものを感じる。

 

「私は……京様の妹のような存在であることに不満などありません。ですが私は……それでも京様の妹ではないんです。真田幸帆という、京様のことを大好きな、1人の女の子なんです……」

 

 今にも泣き出しそうな、必死に絞り出すような声でオレに告白した幸帆に、オレは心が痛んでしまう。

 そうなんだ。どんなに兄妹同然で育ったとしても、幸帆はオレの妹ではない。

 そうしてオレが幸帆をちゃんと見てやれなかったことで、幸帆に辛い思いをさせてしまっていた。

 それを今さらに理解できたオレは、自分をちゃんと見てほしいという意思表示として上着を脱いだのだろう幸帆をまっすぐに見ると、もうすでに目に涙を溜めていた、包み隠さないその綺麗な体をちょっとだけ見てから、力の抜けていた幸帆を逆に押し倒して上下を入れ替わると、何かされることを覚悟して目を閉じた幸帆のはだけた上着を着せ直して、見えちゃいけないところを隠してあげてから、予想に反して何もしてこないことに目を開けた幸帆のその目に溜まった涙を拭ってやる。

 

「ごめんな、幸帆。オレはずっと、幸帆のことを見てるようで見てなかった。それが幸帆を悩ませてることも知らずに、妹のようななんてずっと言ってて……」

 

「……京様は悪くありません。私がもっと早くに、この気持ちを伝えるべきでした。でも、私が欲張りだったんです。京様の近くにいるのは、妹のように思われてる方が気が楽でしたし、それを心地よく思う気持ちもありましたから。ただ、このままじゃ私の恋は一生実ることもなく、芽吹く前に終わってしまう。それでは私も前に進めないと思って。だから今日、このような強引なことをしてしまいました。お見苦しい姿を晒して申し訳ありませんでした」

 

「見苦しいなんてことはない。幸帆が全力でオレに伝えた気持ちなんだ。とても綺麗でカッコ良かったよ。ただ……」

 

「わかってます。京様が私にそのような感情を持って接していたなら、私は今、こうして優しくされていることもなかったはずです。京様も男性ですから、その気があればケダモノにもなりますよね? そうならなかったのは、京様が私にその気がない証明です」

 

 本当はそれを望んでたんですが。

 とかなんとか言いそうな幸帆ではあったが、可愛い笑顔で誤魔化すので、下手したら幸帆をどうにかしてたかもしれない色仕掛けは洒落にならんといった意味のデコピンを軽くしてやってから起き上がると、ちゃんと上着のボタンをかけ直して改めて隣に座った幸帆ともう少し話をする。

 

「これからはちゃんと、幸帆のことを見るよ。妹としてとかじゃなくて、ちゃんとな」

 

「そう言っていただけるということは、私にもまだチャンスはありますね。今日はこのような結果になりましたが、私の気持ちはちゃんと伝えられましたから満足です。京様は競争率が高いのですが、その土俵に上がれただけでも良しとします」

 

「諦めたわけじゃないのか」

 

「私は諦めが悪いんです。それにフラれたわけじゃなくて、妹から異性に昇格したんです。だからまだ始まったと言えるのですよ」

 

 た、確かにそうなるのか。

 オレの中で幸帆が今まで完全に恋愛対象外だったのが、対象内になったんだよな。

 それなら今のはフッたフラれたの話じゃないわな。

 

「その辺はまぁ、オレが鈍感だったのが悪かったから何も言わないけどな。今日みたいなアタックは今後はやめてくれ。マジで心臓に悪い」

 

「そ、それはもうはい! 金輪際やらないです! そ、そういうことは正式にお付き合いできたら、ってことですよね。わかってます。わかってますので忘れてください。見えた映像も出来ればよろしくお願いします……」

 

 もう本当に自分の鈍感さを呪いたくなるが、これから異姓として幸帆が接してくるならと注意だけはしておくと、その幸帆も今日のは恥ずかしいを通り越して記憶から抹消したいらしく、オレにもなかったことにしてと頼んでくるが、もう無理だって。

 あんな綺麗な体、脳裏に焼き付いてしばらく鮮明に残るわ。

 

「忘れるのは努力するが、まぁなんだ。幸姉より大きくなってるかもな」

 

「…………姉上のを見たことあるんですか。京様はエッチです」

 

「見せられたが正しいかもしれんが、エッチなのは否定しづらい……オレも男だし、見えるものは見る」

 

「……もう1回だけ見ますか?」

 

「幸帆」

 

「冗談ですよ。次見せる時は、京様の恋人になれた時ですからね。大事な体ですから大切にさせてもらいます」

 

 微妙な雰囲気になりかけていたので、ちょっとした冗談を交えてみたはいいが、告白したことで何か吹っ切れてしまった幸帆はオレを逆に振り回すような言動で動揺させると、困り顔を見てクスクス笑う。

 なんかこういうのは幸姉を彷彿とさせるから、やっぱり姉妹だよな。

 その後なんだかんだで普段絶対しないことをして相当疲れたのか、大きなあくびをした幸帆はそのままオレにお辞儀してから寝室へと先に入って就寝。

 オレも脳裏に残る幸帆のあられもない姿を少しでも消すために、ちょっとだけベランダに出て冷たい夜風に当たる。寒っ!

 

「……はぁ。鈍感とかそんなレベルじゃねーよな。気付こうともしてなかったとか最低だ……」

 

 結果として幸帆は良かったとは言ったが、オレが家族として強く接してきたことで少なからず幸帆を苦しめていた。

 それは揺るがない事実で、そういう気持ちには真剣に向き合うと決めていたのにこの有り様。本格的なバカなんだなオレは……

 

「ほっちゃんのラブラブ光線なんて周りからは丸分かりだったんだからね」

 

 夜の東京湾を眺めながら自分のバカさ加減にイラッとしてたら、すぐ下のベランダ。キンジの部屋だが、そこから理子の声がしてきて、オレのぼやきが聞こえたのか明らかにオレに対してそんなことを言ってくる。そんなに分かりやすかったのかよ……

 

「お前は今日、幸帆が何かすることを察して退散したのか」

 

「ほっちゃんの目がマジだったからねぇ。女はその辺鋭いもんなんだよ」

 

「妹キャラを脱却して、これから幸帆なりのアプローチをしてくるらしい。幸姉に似て美人だから困りものだよホント」

 

「へぇ、やっぱりほっちゃんは燃えてるかぁ。妹キャラもポジション的には美味しかったとは思うけどねぇ。かなめぇとかそんなの関係ねぇって感じのガンガンいこうぜ! だけど、好きな人のそばに自然といられるって特権はあるしさ」

 

「それでも、幸帆はオレに向き合ってもらうことを選んだんだ。だからオレも幸帆とは真剣に向き合うつもりだよ」

 

「…………だったらあたしともちゃんと向き合えバカ京夜」

 

 理子が何故このタイミングで寒いベランダにいたかは置いておいて、ようやく潔く撤退していった理子の意図を理解して、そこから会話へと繋ぐが、オレが幸帆とちゃんと向き合うことを話せば、素の理子が何か言ったのだが、どこかのバカがマフラーをどるんどるん鳴らして寮の近くを通ったらしくほとんどかき消されてしまう。

 

「悪い。雑音で聞こえなかったが、何か言ったか?」

 

「……何にも言ってませんー! あーあ、なんかシラケちゃった。もうキョーやんに構ってもらう約束、どうでもいいや。修学旅行Ⅱも近いしジャンヌとかと旅行プラン練ったりしたらいいんじゃないかな。理子もこれで忙しいし、キョーやんにばっかり構ってられないもんね」

 

「何だよ急に。そんな機嫌悪そうに話すならちゃんと話せよ。オレが悪いなら謝るから」

 

「そーゆーとこ! 鈍感ニブちんバカキョーやん! 学習能力なさすぎ!」

 

 バタンッ!

 何が気に障ったのか、いきなり不機嫌になった理子は捲し立てるようにオレを罵倒してから中に引っ込んでしまい、下を覗けば灯りも漏れてないので寝室にいるか自分の本来の部屋に帰ったかだろうが、ここで追いかけてもそもそも怒らせた原因がわからないから火に油になる可能性が高い。

 明日、学校に行ったらどうにか機嫌を直してもらうしかないか。

 後回しにするのも何だか嫌な予感はしつつも、さすがにオレも体が冷えてきたのでリビングに引っ込んでから、シャワーを浴びてその日は就寝。

 翌日はすっかりいつも通りの幸帆と一緒に登校していって、その途中にちゃっかり手を繋ごうとしてきたのに驚くが、それをスルッと躱しておいて校舎で別れ教室へと入れば、朝から女子を集めておしゃべりに没頭する理子の姿を発見し話しかけるか迷うが、いつもならオレが来れば我先に近寄って挨拶してくるはずなのに、今日はない。

 なんか意図的にオレを見ないようにもしてる感じだ。そんなに怒らせたのか。

 それからホームルームでも授業中でも後ろの理子はいつものちょっかいを出してこないわ、話しかけてもこないわで調子を狂わされていたオレは、努めて普段通りに話しかけてみるものの、無反応とは言わないまでも会話に応じる様子もなく素っ気なく一言二言で向こうから話を終わらせてしまう。

 無視されるよりは全然いいが、理子とはこんな感じになるのが初めてだからどうしていいのか正直全くわからん。

 これが幸姉ならまだ解決策も見出だせるのだが、喜怒哀楽をコロコロしながらも本心を上手く隠す理子だと下手につつくと悪化しかねない。

 そんな感じで急に素っ気なくなった理子との微妙な感じはそれ以降も続き、どうしていいかわからないオレは当たり障りない会話を試み続け解決策を探るしかほかなく、学校に居づらい日々を送ることとなっていた。

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