緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet90

 辿り着いた香港の地で久しぶりに幸姉と再会したのはいいとして、藍幇の諸葛やらオレの知らぬところで約束されていた許嫁の劉蘭やらとてんこ盛りの出会いが待っていて、正直落ち着いてるのが不思議なくらいだが、世間話もほどほどに和やかな雰囲気から少し真剣さを増した感じを劉蘭が放つと、幸姉も諸葛もすぐに察して黙り、オレも会話に参加してなかったがとりあえず黙っておく。

 

「それでは京夜様が疑問に思ったでしょうことについてお話いたします」

 

 と、劉蘭がまだオレが口にもしていないはずの疑問について話すと言うので首を傾げそうになるが、何かを尋ねようとした雰囲気を感じ取ってそう言ったのか。

 

「京夜様はおそらく、この度の会合と先の銃器類の密輸の問題が矛盾していると、そうお思いになられたはずです」

 

「……まぁ否定はしない」

 

「素直じゃないんだから」

 

「良いのですよ幸音様。武偵というものは心の内を晒さないものなのでしょうから、素直なだけでは他につけ込まれる元です」

 

 まさにズバリな疑問だったが、感心したら諸葛もいるしと平静を装ったものの、幸姉が余計なことを言ってからかい、それすら寛容な劉蘭はいいと言って話を再開。

 この辺が藍幇で評価されてるってところか。御世辞でも戦闘能力が買われてるとは言えないし。

 

「藍幇という組織は巨大です。それだけに古くからの武闘派や近年の政財界に根を持つ社会派や頭脳派。様々な思想と個人の思惑が複雑に入り交じっています。とりわけ上海藍幇というのは攻撃一辺倒な思想が根強く、武闘派も多く集まっています。ここにいる趙煬もその1人です。自慢ではありませんが、この趙煬は武闘派の筆頭で京夜様が知るどのココよりも強いでしょう。申し上げにくいですが、京夜様よりもおそらく……」

 

 強いでしょう。

 そう最後までは言わなかった劉蘭だが、説明を受けながらずっとオレを見ていた趙煬と視線を合わせると、その趙煬はふんっ、と視線を逸らしてしまう。

 まぁだが、単純な強さならそうなんだろうよ。戦力分析ができないほどバカじゃない。

 あいつはまともに戦り合ったらダメな部類。日本で言うところの公安0課相当だ。

 

「そんな武闘派の上海藍幇はどこか時代に取り残されてる。と私は常々思っていました。ですから私は今、上海藍幇を変えようとしているのです。攻めるだけの組織から、他を受け入れて平和的に共存の道を目指す新たな組織へと。その思想をいずれは藍幇全体に。そのために、私は動いています」

 

 つまりは先の一件は劉蘭の思想とは違って上海藍幇の大きな流れの中での決定で、今回の会合はその流れに抗って取りつけたこと。そういうことか。

 

「香港藍幇は私の思想を現実にしている集団の1つ。昔は武闘派でしたが、静幻にここを統治させたのは私の意思です。逆に生温いと武闘派のココを差し向けたのが私をよく思わない派閥です」

 

「劉蘭お嬢様には大きな恩がありましてね。ご先祖様もそうですが、劉蘭お嬢様には人を惹き付ける魅力があります。私も趙煬も、それに惹かれた者だということです。まぁ、私や趙煬が劉蘭お嬢様に従うのは運命だったのでしょうがね」

 

「ここにいる3人とも、ご先祖様が蜀の名将なのよ。名前でなんとなく察せるでしょうから説明は省くけどね」

 

 なるほどな。劉蘭が立派にやってることはよくわかった。諸葛も趙煬もそんな劉蘭に賛同している人物なのも理解した。

 そして諸葛と幸姉の言ったことも納得だ。

 よくよく名前を確認すれば、劉蘭はおそらく蜀の大将。劉備玄徳が祖先で、諸葛は言わずもがな諸葛亮公明。趙煬は、槍の名手と謳われた趙雲子龍がそうだろうな。あとは関羽と張飛がいたら豪華なメンバーになってたな。

 

「話はわかった。だが、いっぱしの武偵であるオレにその話をしたからってどうこうなる話でもないだろ。邪魔ならここから追い出して本来の話をすれば良かっただけだ。それで機嫌を悪くするほどオレは人間できてないつもりはないが」

 

「京夜様が寛大でお優しいことは理解していますが、これだけは知ってもらいたかったのです。藍幇が決して悪事を働くだけの組織ではないことを。そして、私という人間を知ってもらいたかった。そのために京夜様にお話をいたしました」

 

 そうした話をわざわざした劉蘭が、オレの機嫌をどうこうという次元で説明していたわけではないことはわかっていたが、もしかしたら劉蘭が自分の懐にオレを入れようとしているのではないか。

 という可能性も捨てきれなかったので意地悪な言い方をしたが、全く迷うことなく言い切った劉蘭に嘘はない。

 断言できる。この子は本心でオレに理解してもらおうとしただけ。同時にその腹の内を幸姉にも見せたことになる。

 

「ですが、一緒の席に座られるのもここまでになります。ここからは本当にビジネスのお話をいたしますので、京夜様には席を外していただくことになりますが、静幻が取り計らってくれています。大丈夫ですね、静幻」

 

「はい。会合が終わるまでは退屈しないでしょう。ああ、先に言っておきますが、女性をはべらせてお楽しみ、みたいなことはありませんので。そのような歓迎をすれば劉蘭お嬢様が本気で怒ってしまいますからね」

 

 とはいえ、本来ならいるべきではないオレはここで退席のようで、申し訳なさそうにする劉蘭には気にするなと言っておいたが、一緒に席を立った諸葛の怪しさは拭えない。

 なんだかんだで今、藍幇は眷属。敵対勢力であることは変わらないからな。

 

「ああ、忘れないうちにこれをお返ししておきますね」

 

 と、警戒しながら部屋の外に出た矢先で懐から小さな小箱を取り出してオレに手渡してくるので、警戒しながらそれを受け取り中を確認すると、アリアの緋緋色金を封じる殻金だ。どういうつもりだこいつ。

 

「そちらの解析はもう終わりましたので、我々が持ち続けてあなた方からずっと狙われるのは本望ではありませんからね。ただ1つ、お頼みしたいことがありまして、それの返却に当たって、現在香港で確認されてる師団の皆様と話し合いの場を設けてはいただけませんか。私としては争いはなるべくならば避けて通りたいのです」

 

 柔らかい物腰でオレにそうした要求をしてきた諸葛。

 どうやらすでにキンジ達の存在は知られているようだが、目的は果たせてるか。

 キンジ達は藍幇に仕掛けさせるために香港をウロウロしてるはずだからな。

 殻金を受け取ってしまった以上、要求に応えないわけにはいかない。

 と思うかもしれないが、元々アリアの物を取り返したに過ぎないわけで、無条件の返却は当然とも取れる。

 それに何より諸葛が本心を語ってるのはわかるのだが、

 

「それは、香港藍幇の総意か? お前1人の判断でそういった席を設けようってことなら、応じてはやれない」

 

「うーん、ですよねぇ。ですが、その殻金は少しいじってしまったのでアリアさんの体に戻すだけでもそれなりの手順を踏まねばならないでしょうから、私達との問題は迅速に解決して帰るべきとは思いませんか。それがそちらに戻ったからといって、藍幇との敵対関係は変わらないわけですしね」

 

「……オレは今回、こっちのことには頭数で入ってない。伝えるだけならいいが、決定権は向こうにあるぞ」

 

「それで構いません。こちらにその意思があるということを理解してもらえるだけでも様相は変わってくるでしょうからね。さて、私はあの会合に戻らねばなりませんから、猿飛さんはご自由にどうぞ」

 

 話しながら要求の方は伝えるだけでも構わないという妥協にまで持っていけた。

 諸葛もあわよくば程度で考えていたのかあっさりと退いたし、やはり諸葛個人の意思であったわけだ。

 いくら香港藍幇のトップとはいえ、下の意見を押さえ込むような抑圧的な人間でもなさそうだし、そんな集団を劉蘭が支持しているわけもない。

 そんなわけで店内の別の個室へと案内されたオレは、その扉の前で入るように促して自分は戻ると言ってさっさと行ってしまった諸葛を見送りつつ、何が待ってるのかわからないその扉をゆっくりと開けて中へと入ると、室内は先ほどよりひと回りほど小さかったが、基本的には同じ造りで中央には果物が大量に置かれた円卓。

 その果物の奥に何やら食事中の人物がいて、ゆっくりと見える位置まで移動してみると、

 

「こ、猴!?」

 

「……あい?」

 

 低身長で地面に付くほどの長い黒髪に名古屋武偵女子高のカットオフ・セーラーを着た猴。孫悟空が、クリックリな丸い目をこちらに向けながら両手にバナナを持って、今まさにバナナを食べようとした形で硬直していた。

 なんか、過去の2回から受ける印象が全く違うのだが、諸葛のやつ、孫悟空はいないとか言っといてこれか!

 

「あ、あなたは孫の如意棒を『避けてくれた』!」

 

「あ? 撃ったのはお前だろ。避けてくれたってのはどういう……っていうか、なんか……」

 

「ひいいぃぃいい! あの時は猴も頑張って孫を抑えたです! それでも如意棒を止められなくて死んだと思ったです! ですがあなたは生きててそれで……」

 

 思いもしなかった人物? に少し動揺して身構えたオレだったが、何故か意味不明なことを言って椅子から飛び退いてビビりまくりの姿を見たら、なんか冷静になれた。

 それで改めて諸葛の意図を読めば、オレが死ぬかもしれない状況に放り込んだりはしないはずで、今の猴の発言を察するに、こいつは孫悟空ではない。

 こういった不思議な発言をする人を身近で見てきたからなんとなく察するが、猴と孫悟空は別人格的なものなのかもしれない。

 そういった考えに至ったオレに対して、最初こそ怯えていた猴だったが、腰に巻いていた尻尾をピンと立てて露骨に見せ何かに反応したような顔でオレをじっと見ると、ひょこひょこと近寄ってきて間近で顔を覗き込んでくるが、スンスン。

 視覚的な観察ではなく臭覚に切り替えた猴はオレの匂いを嗅いでから、だきっ! 突然その体に抱きついてきた。

 

「あ、あいぃい!! 違うです! これは体が勝手に動いてしまったですからして!」

 

 と思ったらすぐに飛び退いてシュパッ!

 バックステップ土下座という妙技を披露した猴は、それ以降頭を上げないのでオレも困ってしまうが、今の行動には心当たりがあるのでとりあえず話をしようか。

 

「別に怒ってないから座れ。あとオレはどうやら動物系統には好かれる匂いをしてるらしいから、今のも不思議に思ってない」

 

「あい……」

 

 なるべく怖がらせないように言ったつもりだが、まだどこか警戒というか顔色をうかがうような猴はゆっくりと元いた席に戻って座り、オレも話がしやすいように猴の隣に椅子を移動させて座ると、やはり匂いが気になるのか落ち着かない感じでそわそわするので、バナナを手渡しつつ匂いから注目を遠ざけておく。

 

「猴は……孫悟空とは別人ってことなのか?」

 

「あい。簡単に説明すると、昔々の皇帝が、自らが神になる実験として猴の中に孫を入れたです。ですが孫は本来、猴にだけ出し入れできるが良かったですが、外部からも出し入れできることがわかったです」

 

「つまり実験は失敗したわけか。そしてその外部からの切り替えを藍幇ができると」

 

 まずは確認として猴と孫の関係についてを尋ねれば、素直なのかペラペラと秘密を話した猴は、続けた質問にバナナを食べながら首を縦に振る。

 緊張感が一気になくなった。この方が気は楽だが。

 

「そういえばまだ名前、知らないです」

 

「おっと、悪い。オレは猿飛京夜っていうんだ。よろしくな」

 

「猿、ですか。猴と同じですね」

 

「だからってオレが猿なわけじゃないぞ」

 

 もきゅもきゅバナナを食べる猴がなんか愛らしいからボケッと見てたら、まだ名乗ってもいなかったことを指摘されて自己紹介。

 変な共通点を見つけた猴に思わずツッコんでしまい、それには猴も笑ってくれる。ちょっとは気を許してくれたか。

 

「それで、猴はどうしてここに?」

 

「諸葛に呼ばれてここにいるように言われました。そしたら京夜が来たです」

 

「だろうな。目的を知ってたらオレに驚くこともなかったし。一応説明しておくと、オレを暇潰しさせるために呼ばれたっぽいぞ」

 

「暇潰しですか……こ、猴はそこまで芸達者ではないですが! 精一杯楽しませてみるです!」

 

「ん、別にそういうのはいいよ」

 

 自己紹介してすぐに名前で呼ばれたことにはちょっと驚くが、ここに呼ばれた理由も聞かされてなかったと言う猴は慌てて大道芸でもやろうとバナナを持ったまま立ち上がるが、無理してそうなのでやめさせるとバナナをマラカス扱いにしてダンスでもしそうな珍妙なポーズで止まった猴は、恥ずかしそうに椅子に戻って今度は桃にかじりつく。

 

「では何をするですか? 猴はお話もそんなに上手ないです」

 

「オレも話は得意じゃない。とはいえ気まずい沈黙も嫌だ。となるとやれることは……」

 

 だがそうなると時間を潰すことが難しいので、猴も困り顔になってしまい、オレもどうしたものかと視線をさ迷わせていると、部屋の片隅に3人掛けくらいの大きさのソファーが配置されていたのを見つけて、

 

「……寝るか」

 

「あい?」

 

 何気なくそう言えば、リンゴに手を出した猴も何度目かのあいで応える。

 疑問系の応答のままだが、客人扱いであるオレがバナナとリンゴだけ持ってソファーに移動すると、同じように手に持てるだけの果物を持ってちょこちょこついてきた猴は、バナナとリンゴを端に置いて真ん中辺りでリラックスして座ったオレに合わせてすぐ隣で足を投げ出して座り、反対の端に果物を置く。

 正直飛行機で寝てたので全然眠くないが、猴が寝てくれれば気まずい沈黙もなくなって思考の方を別のことに向けられる。

 そんな考えでとりあえず眠そうに背もたれに腕を乗っけて頭を投げ出して天井を見ていたら、急に太ももに程よい重さが乗っかってきて下を見れば、猴がオレで膝枕をしてリラックスしていた。

 やっぱり匂い的なものが自然とそうするのか。猴はたぶん、玉藻様と同じ化生の類いだと思うんだが、元が動物だと化生でもそう変わらないっぽいな。

 それから速攻でぐっすり寝てしまった猴は、自然体ゆえかだいぶだらしない格好で開脚したり、よだれみたいなものも見えていたが、膝枕から落ちないようにだけ気をつけてそのままにしておき、これからのことについて思考を働かせていった。

 それから1時間程度だろうか。

 そのくらいが経った頃に会合を終えた幸姉達が部屋にやって来て、オレと寝ている猴を見るなり三者三様の反応をしてちょっと騒がしくなると、猴も起きて飛び退き、またもバックステップ土下座を披露するのだった。

 そしてその日は劉蘭が予約していた日系のホテルにオレ達も一緒に宿泊させてもらって、それぞれ個室でくつろいでいた。

 オレの部屋からは香港で一番高いというICCビルが見え、こっちもそれなりに高いのだが、向こうはそれでももう20階分ほどは高いな。

 とかなんとかぼんやり考えていたら、部屋に来客があってそれに応じると、ずいぶんと楽な格好になった幸姉だったので招き入れると、我が家同然にベッドにダイブした幸姉は、うつ伏せ状態のままベッドに腰を下ろしたオレと話をする。

 

「今回はごめんね京夜。本当なら今頃ジャンヌ達とキャッキャウフフなんてことやってたかもなのに」

 

「そんなことにはならなかっただろうけど、もう気にしてない」

 

「劉蘭のことも、事前に話しておけば良かったね」

 

「それは……そうだな。突然すぎてどうすればいいかわからなかったし」

 

「許嫁の話はお互いになかったことにはできそうよ。だから劉蘭には悪いけど京夜に対してのアドバンテージはなくなった形ね」

 

 改めて今回のことを謝る幸姉に、なってしまったものは仕方ないと話しすと、会合の後にでも話したのだろう許嫁の件の取り消しを伝えられて、オレもその辺は気になってたからその結果にはちょっとだけホッとしてしまう。

 もし劉蘭が押し通したりして話がこじれたら、オレも話し合いに応じなければならなかったはずだ。

 諸葛の言葉を借りるみたいだが、そんな許嫁の件がなくても、劉蘭とはこれからも良い関係でいたいと素直に思ったし、そう思わせるだけの何かを持ってるのは確かなのだ。

 

「アドバンテージはなくなったけど、それではいおしまいってのは正直どうなのよって話ではあるわよね」

 

「…………何か仕掛けたな……」

 

「イエス! 仮にも10年以上京夜を想ってきた女の子に私は味方する。てなわけで明日、劉蘭とデートしてきなさい。これは命令であり決定事項です。もう劉蘭もその気だから、行かなかったら大変なことになるわよ。下手したら上海から趙煬みたいなのがわらわらと……」

 

「勝手にオレの予定を決めるなよ……ったく、こっちもこっちで大変なのに……」

 

 とはいえ、と劉蘭に対して同性として思うところがあった幸姉はオレの了承なしにデートを決めたらしく、唐突に明日は劉蘭とデートが組まれてしまい、シンガポールに行くのもそれ以降にしなさいと付け足されてしまう。

 明日はこっそりアリアに連絡入れて理子を探そうと思ってたが、早くも断念せざるを得なくなったし、下手したらもっと面倒なことになるかもしれない。

 明日は一切気を抜けないぞ。死ぬ気でやるしかない。

 

「それからさ、この前の問題の答えはわかった?」

 

「あ? ああ…………ああ。そういやそんな問題出されてたっけ」

 

 従者をやめてもオレを振り回す幸姉にはホトホト困ってしまうものの、やってることは納得がいくので文句も言いにくい中で、さらに忘れかけていたことまで引っ張り出してきたから困る困る。

 それが表情に出たからか頬を引っ張られてしまうが、あの日の幸姉がどの幸姉かなんて結構どうでもよかったしな。今日もそんなの気にしてな……

 と、そこでようやくその問題を引っ張り出してきた理由がわかってハッとする。

 仕事だったしとか色々あるが、今日の幸姉もなんだか安定した性格の特徴が見られなかった気がする。

 

「……幸姉、まさか七変化を……」

 

「やっと気付いたか。先月末くらいに無事に解呪に成功いたしまして、元の幸音お姉さんに戻りましたぁ!」

 

 パンパカパーン!

 そんな効果音でも付きそうな万歳で問題の答えを教えた幸姉は、そこからオレに抱きついてきて少し沈黙。

 これにはオレも今日一番で驚くが、後から湧いてきたのは純粋な喜び。

 それを表すように抱きつく幸姉の背中にオレも手を回して抱き締める。

 

「確か解呪にはもう2、3年はかかるはずじゃなかったか?」

 

「そうなんだけど、やっぱりイ・ウーにいた期間は無駄じゃなかったみたいね。十数年単位で超能力を磨いたから、その分が解呪の短縮に繋がったみたいで、伏見様も、京都に来た玉藻様も驚かれてたわ」

 

「……そっか。おめでとう、幸姉。それから、『おかえり』かな」

 

「それはちょっと違うけど……うん。『ただいま』」

 

 色々と問題はあるが、そんなことをひと時だけでも忘れさせるような事実に、少しの間だけ思考を放棄し喜びを分かち合うのだった。

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