緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet93

 

 壮絶なカーチェイスを終えてその場が一旦仕切り直しの形になっていたところ。

 孫もオレに助けられたからか一応は大人しくしているが、まだまだやれるという気概みたいなのは漏れ出ていてオレも困り顔になってしまう。

 それでも1度立ち上がって車から降りてきたキンジと白雪に軽く会釈してから、ハニーゴールドの下着を露にしている理子にはとりあえず着ていたジャケットを脱いで投げ渡してやるが、ベシッ。手で弾いて拒否。

 したのだが、やっぱりそのままの姿はよろしくないと思ったのか渋々拾い直して羽織るように着てアッカンベー。まだ怒ってますのアピール。

 それを横目に今度は先に趙煬によって脱出していた劉蘭が趙煬を引き連れて走ってきて、オレの目の前で転ぶというやらかしをするので地面に転ぶ前に受け止めてやると、すぐに首に腕を回してギュッ。抱きついて離さなかった。

 それによって後ろから相当な威圧感を放つ理子のご機嫌が良くない方向にいってそうなのを感じつつも、ちょっと泣いてる劉蘭は本気でオレのことを心配していたのだろうから、ソッと背中を叩いて大丈夫と示せばゆっくりと離れてくれた。

 

「ご無事で何よりです」

 

「これ、忘れ物だ」

 

 そしてあのドタバタの中でも放さなかった劉蘭のポーチを渡してやると、諦めていたのか目を真ん丸にしてから喜んで受け取ってくれるが、よく見ればポーチがちょっと開いていて、中を確認した劉蘭はその中に写真や小物がないことに気付くも、オレが買ってやった髪留めはあったからか心底安堵した表情へと変わる。衝撃でいくつかヴィクトリア湾に落ちちまったか。

 

「さて猿飛。ここからどうする?」

 

 と、オレ達のやり取りに一段落ついたと判断して、孫ともちょっと話をしてきたキンジは、進んできた道路の方を見ながらにそんな質問してくるのでそちらを見れば、ココ達の乗る装甲車がこちらの射程から離れてあちらが有効な距離で止まっていたので、逃げ道は封じられた形だ。

 

「劉蘭、頼めるか」

 

「お任せください」

 

 そこでこの突破口を開く切り札として劉蘭に頼れば、キリッとした表情に変わった劉蘭が立ち上がって装甲車から降りてきたココ4姉妹に向き直って、孫に対して見せたような威風堂々な態度で口を開いた。

 

「ココ、孫まで連れ出したあなた達の独断専行は目に余ります! よってこの件を上海藍幇に報告。藍幇中将の権限を以て然るべき処置の後、あなた達の位階を最低でも5つは落とし、しばらくは大人しくしていてもらいます」

 

「権力振りかざす暴君ネ! 劉蘭のアホー!」

 

「だから劉備の家系は嫌いネ!」

 

「食えない女ー!」

 

「キョーヤから離れるヨ、バカ劉蘭!!」

 

 実際にココ達よりも位階の高い劉蘭の言葉にはやはり力があるのか、ココ達から闘争の意思が霧散し、口々に劉蘭に悪口を吐き出す。

 最後だけ狙姐なのはわかったが、あとは眼鏡をかけたココくらいしか見分けがつかない。ホントよく似た姉妹だな。

 そうして劉蘭が名乗ったことでキンジ達も多少の驚きを見せていたが、なんとかなりそうな事態への安堵の色の方が濃く、警戒も解くように銃をしまい、孫もシラケたのかその場であぐらをかいて座り込んでしまった。

 

「なんか終わっちゃったみたいね」

 

 と、この場の雰囲気が変わったところで、平賀製の飛行ユニットを装備して空から降りてきたアリアが、両手で抱えていたレキを降ろしてオレ達の近くに着地。

 どうやら途中からいたようだが、慣れない車の運転――そもそも無免許だ――をしていたのと状況が状況だったこともあって今さら気付いた。

 おそらくこちらの様子次第で対応を変えていただろうが、その必要もなかったから素直に降りてきたっぽい。

 

「で、京夜は何でここにいるのよ」

 

「そこの女とデートするためだよ」

 

 ココ達が大人しくなってるからか、まずはキンジにひと睨みしてからオレに対して質問したアリアだが、何故かノータイムで理子がそれに答えてオレが睨めばプイッ。余計なことすんなアホ。

 

「あんた、流れからして藍幇の人間みたいだけど?」

 

「お初にお目にかかります。神崎・H・アリア様ですね。私は劉蘭と申します。京夜様はやんごとなき事情によって真田幸音様に招集され、その延長で私と行動を共にしておりました。ですので藍幇がどうこうというお話はあまり関係ありません」

 

「真田? ああ、あのカナと一緒にいた……ってことなら事情はわかったけど、ほ! う! こ! く! はするのが当然でしょ?」

 

「……悪かった」

 

 理子の答えには話半分くらいで納得したようなアリアは、ありがたいことに事情を説明してくれた劉蘭の言葉をとりあえず信じて怒るところは怒ってそれに素直に謝罪すればそれで終わってくれた。やっぱ昨日のうちに連絡してれば良かったか。

 そんなプチ反省会を内心でしていたら、遅れてやってきた諸葛が白馬に乗って優雅にオレ達とココ達の間で止まると、沈静化した状況にキョトン。

 劉蘭とアイコンタクトを取ってからホッと息を吐きつつその口を開いた。

 

「どうやら私の出番はなかったようですね。いやはや、劉蘭お嬢様にはご迷惑をお掛けしました。もちろん、猿飛さん達にも」

 

「諸葛! 何で劉蘭来てること話さなかったアルか!」

 

「おかげでココ達大目玉ネ!」

 

「私は上役と会合があると話しましたよ。それなのに酒を飲みながら釈放の記念だと騒いでいたのは誰ですか。それにあなた達の今の役目は闘うことではないでしょう」

 

 劉蘭が言っていた通り、騒動を止めに来た諸葛はブーブー言うココ達に呆れつつで少しだけ怒ると、ピタッと黙ったココ達から視線をオレ達に戻して白馬から降りると、キンジの前で中国的なお辞儀をすると、何やら猴と会って講和案を持っていかせてたらしいキンジに同意する旨を伝えていた。

 だが、それが上手くいかなった場合は決戦もやむなしとキンジが意思表示すれば、ともかく場所を変えて改めて話したいと進言した諸葛。

 

「なので、バスカービル諸氏を香港藍幇の本営――藍幇城へご招待します。皆さまが香港入りされたことは随分前から存じていたので、貴賓客としてお迎えする準備も整っておりますよ」

 

 その場所というのが自らの拠点となる藍幇城と聞けば当然警戒もするが、どこにあるかもわからなかった拠点にわざわざ案内してくれるのだから行くべき。

 みたいな喜び方で理子がはしゃいだので、全員揃って意見を合わせられたバスカービルは行くことを決定した。

 バスカービルメンバーの招待に成功した諸葛は、何やら喧嘩のようなどつき漫才を始めてしまったキンジ達を苦笑いで躱しながら、次にオレの方に近寄ってそのニコニコ笑顔を向けてくる。

 

「猿飛さんはどうなさいますか? 劉蘭お嬢様も真田の姫君とディナーのあとはこちらに来られるのですが」

 

「……オレが行く意味はあまりない気もするが」

 

「京夜様、出来るならば藍幇城に来てくださいませんか? 狙姐も交えてのお話もしたいですし、京夜様もどうやらあちらの方と確執がある様子でした。それでしたら話し合いは早くにするべきかと思います」

 

 バスカービルだけでなくオレも招こうとする諸葛に1度は断ろうとしたのだが、オレより色々と考えていた劉蘭がアリア達とじゃれてる理子を見ながらにそう意見してきて、それに納得してしまったオレは反論できる要素がなかったため、劉蘭の言うようにその招きに応じることにした。そこで解決できればいいんだがな……

 その後キンジ達は諸葛の用意した車に分乗して藍幇城へと先に向かい、オレと劉蘭、趙煬も別の車で1度香港島を出て九龍へと戻りそれぞれ制服とチャイナドレスに着替えると、ディナーの約束をしていた幸姉と誠夜と予約してあった店で合流。

 何も知らない幸姉は昼間はちゃんと仕事をしていたようで、夕食の満漢全席に手をつけながらやたらと喋り続けてストレスの発散をしていた。神経を使う対人交渉でもあったのだろう。

 劉蘭の方が万倍は楽に相手できるとか失礼なことまで言ってるしな。それを笑って流せる劉蘭の方が人間としてできてる気がする。

 そしてその夕食の時に香港島で聞かなかったことを、早速プレゼントした金の髪留めを付けた劉蘭に尋ねておく。

 

「なぁ劉蘭。香港島ではココ達に上海藍幇に報告して位階を下げるとか言ってたが、本当にそんなことできるのか?」

 

「可能ではありますが、私はそれを行使する気も、上海藍幇に報告する気もありません。それではココ達からますます嫌われてしまいますからね。あれはあの場を治めるために言った脅しです」

 

「だが実際に位階くらい下げた方が大人しくはならないか?」

 

「それは確かにそうですが、今日のことを報告すれば、事はココ達への罰だけで済まないかもしれませんから。ひいては上役である静幻にも火の粉は振りかかり、上海藍幇の新たな人員を招き入れる隙を与えてしまいかねません。香港藍幇はまだ、静幻に治めてもらわねば困りますから。幸い、香港島で臥龍鳳雛(がりょうほうすう)からそのような措置を取る承諾はいただきましたので、角は立たないでしょう」

 

 オレの質問に対して淡々と答えた劉蘭は、臥龍鳳雛。諸葛が言うにはキンジとアリアを指す通り名らしいが、あの場でちゃんと事後処理を済ませていた旨を教えてきて感心する。

 そこまで考えてその腹の内を見せずにここに戻ってきたのか。大したもんだ。

 人に信じられやすい人間性を上手く利用したそのポーカーフェイスは確かに食えない女、なのかもしれないな。

 そして幸姉とのディナーを終えたオレ達は、明日も中国のお偉いさんと調整会議があるとかですでに半分寝ていた幸姉と別れて趙煬の運転する車で藍幇城へと向かう。

 ちなみに劉蘭も明日は会議に参加するようだが、香港藍幇でもやることがあるからと明日早くに藍幇城を出る手はずのようで、その忙しさの中でオレとデートしてたと思うと相当スケジュールは詰めていたんだなと実感する。

 そんな素振りをまた見せないから、余計にもっと何かしてあげられたのではないかと考えてしまう。

 そうした思いもある中で再び香港島へと舞い戻ってくると、車は夜の香港島を迷うことなく進んで少し。

 いったん船着き場で停まって車を降りると、そこでオレ達を待っていたココ。

 ほぼ間違いなく狙姐が弾丸のようにオレの腹に突撃してきて、それをなんとか受け止めつつ抱きつきから胸に顔をスリスリしてくる狙姐はなんか小動物みたいで可愛いが、それもとりあえずやめさせて、洋上にあるという藍幇城に狙姐操縦のクルーザーで進む。

 あまり陸から離れてないのか、クルーザーで進むのも少しで到着した藍幇城は、横幅約200メートル。奥行き約50メートルほどの豪華絢爛な3階建ての水上建造物だった。その佇まいは学園島の縮小版といったところか。

 クルーザーを降りて藍幇城の正面玄関に足を踏み入れたところで、待っていた諸葛が出迎えてはくれたが、これはオレというよりは劉蘭に対しての配慮だろう事はすぐわかったので、挨拶もそこそこに諸葛と劉蘭、趙煬は話があるからと移動を始めてしまい、オレの接待は腕に抱きついてきた狙姐がしてくれるらしい。

 

「キョーヤはどうしたいアルか? 遊戯も食事も出来るヨ。それとももう寝るアルか? そ、それなら私が『相手』するネ」

 

「アリア達はどこにいる? まずはそっちと合流したい」

 

 2人になった途端に年齢不相応な大人なことを言ってきた狙姐はとりあえずスルーしてアリア達と会いたいと言えば、スルーされてムスッとはしたが、オレの要求とあって素直に聞き入れると2階へと上がり、そこにあった貴賓室の扉の前まで案内される。

 ここにいるのかと思うものの、アリア達にしては中がやたらと静かなので不思議に思いつつ扉を少し開けてみると、その広い室内ではなんか、すでに豪遊したような暴れたような荒れた感じが漂っていて、その床では泣きながらのアリアに毛布をかけられてる白雪。正座のままのレキが寝ていた。

 これは、あれだな。騒ぎ疲れて寝たというよりは、何か別の要素が加わってダウンした感じだ。

 よくよく見れば毛布の中で白雪がヒョウタンを抱えてるので、酒だな。

 中国は飲酒制限が緩いから違反にはならないが、こんなになったらダメダメだろ。

 そんなわけで狙姐にこれは見せられないのでソッと扉を閉めて見なかったことにして、中にいなかったキンジと理子がどこか別の場所にいるかと思って、狙姐のご機嫌取りをする意味でも藍幇城の案内を頼むと、嬉々として案内を始めた狙姐によって藍幇城の大まかな全体図を把握していく。

 いざという時に困るのは避けたいしな。

 藍幇城の内部構造をだいぶ把握したオレは、それらを整理しながらそろそろどこかで落ち着こうよという雰囲気の狙姐の表情を読み取って、何かゲームでもやるかと提案してみると脱衣ルールありか? みたいな質問が返ってきたのでデコピンで跳ね返しつつ頭数と準備をするように言えば、自分達が使ってる部屋に色々あるからと先ほどチラッと案内された場所に後で来るように言って先に行ってしまう。

 先に行ったのはやっぱり女の子。プライバシーのなんちゃらで片付けがあるのだろう。

 というわけでわずかながら1人の時間を作れたので、狙姐が案内しなかった場所を穴埋めするように藍幇城を再捜索してみたオレは、1階のあるところで常時、人が立ってる部屋。かどうかはわからないが扉があるのを発見。

 広い藍幇城でこういった警戒があったのは他に諸葛達が現在進行形で使ってる部屋くらいで、後は割とオープンな感じだった。

 なのであそこには何かあると勘繰りつつ、一応は客人の立場であるオレならと何気ない感じでその扉の前に立つメイド風の門番に近寄って、ちょっとぎこちないが中国語で「ここには何が?」みたいな質問をしてみる。

 それに対して発言権がないのか、教えられないと答えたメイドさんはとても申し訳なさそうに頭を下げたが、そういう制限があるならやはり重要なものが奥にあるっぽいな。とりあえずこの場所はチェックだ。

 ここは時間を開けてまた様子見することにして、探っていたのがバレないようにキョロキョロしながら中国語が変じゃないかとかどうでもいい会話をしてメイドさんと別れ、もと来た道を戻ると、ちょうど諸葛との話を終えた劉蘭が趙煬と一緒に階段近くに現れてこちらに気付くと笑顔を向けてくるのでオレから近付き話しかける。また走られて転ばれても困る。

 

「狙姐はどうなさいましたか?」

 

「ああ、今はゲームでもするかって言って準備してる。そろそろ頃合いだし行ってみるかな」

 

「まぁ。それではご一緒してもよろしいですか? 日中の中断されたデートの延長ということで」

 

 夜もだいぶ深くなりつつあるが、疲れた表情ひとつ見せない劉蘭はこれから狙姐とゲームをやるという話に乗っかって自分も参加を表明してきて、デートの話を持ち出されると今は弱いオレは、どうせ頭数は必要だったしと了承。

 先に休みを言い渡された趙煬は何も言わずに1人でどこかへと行ってしまい、劉蘭に手を引かれたオレは3階にあるココ達の部屋へと向かった。

 しかし向かったその部屋では何があったのか、ずいぶんと荒れたような痕跡があって、フーフー息を荒立ててるアリア様がヘトヘトになったココ3人を重ねて尻に敷いていて、それをパシャパシャ携帯で撮ってるお団子頭に藍色のチャイナドレスを着た、悔しいがくっそ可愛い理子がハイテンションで盛り上げて、その2人をなだめて追い出そうとしてる狙姐の図である。

 

「何やってんだお前ら……」

 

 と、意味不明な状況にツッコまざるを得なかったオレの声に気付いた全員がオレと劉蘭を見て、その瞬間からいつものニコニコ笑顔を消してブスッとした理子によって場は盛り下がる。

 それからストレス発散でもしていたアリアはドスドス足を鳴らして部屋を出ていき、ヘロヘロのココ達は互いに支え合いながら今日はもうお休みモードっぽく意識が散漫になっていた。

 そしてオレがいるからか理子もつまらなそうに無言で部屋から出ていこうとしたが、その手をまさかの劉蘭が引いて止めて、ちょっと素の理子が怖い顔を劉蘭に向けて振り返る。

 

「どうやら理子様はまだまだお元気な様子ですし、もう少しだけ私達にお付き合いいただけませんか? 丁度これから狙姐と京夜様とでゲームをするところでしたので、3人より4人。数は何事も偶数の方が都合が良いですから」

 

「劉蘭、お前お呼びじゃないネ!」

 

「では……こうしましょう。ゲームに勝った者は参加者を指名して2人っきりの時間を獲得できる。狙姐が勝てば京夜様を。理子様が勝ってどうなさるかはご自由に。私が勝てたならば、京夜様と素敵な夜景を見ながら杯でも交わしてきましょうか。酔った勢いで何か起こるやもしれませんが、それもやむなしの心持ちではあります」

 

 理子の手を掴みながら、まさかのゲームへの勧誘をした劉蘭は、横で喚く狙姐も納得するゲームのルールを提案し、目付きの変わった狙姐はやる気満々に。

 対して理子はルールを聞いた時は流して戻ろうとしたが、挑発するような劉蘭のやってもいないのに語った勝利後のプランに負けず嫌いが働いたのか狙姐同様に目付きが変わって手を振りほどくと、

 

「いいぞ。そのゲームに参加してやるよ。あたしが勝ったらお前を裸にひい剥いて京夜の前で辱しめてやる」

 

 なんか勝者特権が歪曲しておかしなことになってるが、それを取り消すつもりもない理子は明確に劉蘭を敵と認定したようで、めっちゃガン垂れてる。

 そして劉蘭もこういう時に無駄な胆力を持っているから涼しい顔で受けて立ってるし。

 そんな女子が悪い意味で盛り上がったゲームは、オレ、理子、劉蘭、狙姐の4人でやることになり、部屋の中にはPS3やPSPなどがあったが、お国柄ってこともあってか、理子がドカドカ歩いてその先にあった麻雀の卓に手をついて反対の手で劉蘭達を挑発。

 まさか自国のゲームで挑まれて逃げたりしないだろうな、と無言で語った理子に、劉蘭も狙姐も不敵な笑みを浮かべてそれぞれ麻雀卓に近寄っていき、何故か意見を述べる権利すらなくなっていたオレも早く来いと顎で示されてしまい、公正な席決めによってそれぞれが四角形の卓の一辺に腰を下ろした。

 席は東家に狙姐。南家に理子。西家にオレ。北家に劉蘭という並びになり、両隣が物凄い視線をバチバチさせてあの狙姐さえもちょっと臆していたが、負けじとその視線のぶつけ合いに参加。

 無言のやり取りが非常に心臓に悪いのでとりあえずオレから進行をしておく。

 

「ルールはどうする? 理子もオレも中国ルールで出来るが、2人は?」

 

「私も狙姐もどちらでも構いませんが、ここは日本のポピュラーなルールで行いましょう。中国ルールにはスピーディーさがあまりありませんし、立直(リーチ)もあった方が盛り上がるかと」

 

「負けた時の言い訳作りかよ。食えない女は保険がお好きなようで」

 

「劉蘭言うこと正論ネ。それに夜ふかし女の天敵。早く終わるに日本のルールがよろし」

 

「まぁ今から一荘はしんどいしな。半荘なら1時間かからんだろ」

 

 とりあえずまずはルールからと思ったが、ここからもう理子が喧嘩腰で困ってしまう。口が悪いにもほどがある。

 日本と中国では麻雀のルールが全然違う――そもそも中国では麻将と書く――ため、ここで揉めるのも仕方ないが、夜も更けてきたからと日本のルールで異論はなくなり、舌打ちしながら理子が全自動卓に日本の牌を入れて起家決めからスタート。

 自動卓だと積み込みとかのイカサマは使えないが、この場にいる全員がイカサマに対して黙認の形っぽいので、起家が狙姐に決まってから一応、イカサマがバレたらビリ確定の即終了でその時点での得点で順位を競うことを合意させて、いよいよ心臓に悪い夜の麻雀対決が幕を開けた。

 ん、何でこんなことになったんだっけ?

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