緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet95

 

 クリスマスイヴの朝。

 劉蘭の見送りを済ませたオレは、頭を働かせるにもまずは飯。

 ということで食堂の方に歩を進めていたら、朝から仲良しなココ4姉妹――後から聞いたが4人目は機嬢(ジーニャン)というらしい――が揃ってあくびをしながら現れて、オレを見るや狙姐? を先頭に「キョーヤ!」「キョーヤ早起きヨ」「ジジ臭いアル」「きっと性格もジジ臭いネ」と好き勝手言って近寄ってくる。

 だったらこの時間に起きてきたお前らはババ臭いわ。口には出さんがな。

 だが狙姐以外がオレに対して興味なしがわかりやすくて、4人の見分けがつくな。

 嬉しそうに腕に抱きついてきたのが狙姐。それを見てニヤニヤしている髪を下ろした長髪のが炮娘。先の一件でレキに狙撃され髪を切られて短いのが猛妹。そして眼鏡をかけてるのが機嬢というわけだ。

 今後もこのまま見分けやすい状態でいてくれないかね。

 そのココ姉妹も朝食にしようとしていたようで、馴れ合うつもりもなかったが邪険にする理由もなかったので一緒に食堂へと移動し、和気あいあいと食事するココ達の横で肉まんとアンまんの食べ比べをしていたら、普通に隣に座っていた狙姐が何やらオレの顔を見てボーッとしていたので、何だと思いって一応話しかけておく。

 

「何か気になることでもあるのか?」

 

「……昨日、劉蘭に嫌なこと言われたヨ」

 

「ふーん。その劉蘭は有意義な時間だったって言ってたが、狙姐にとっては違ったのか」

 

「むっ……そう言われると否定しづらいアルが、やっぱり気分は良くないヨ」

 

 なんだかよくわからない話だが、昨夜の劉蘭との話で何かあったのだということは理解できたオレは、その内容について突っ込むべきか少し迷ったが、話しかけた時点でそれを待ってたっぽい狙姐を察して結局そこに触れる。

 

「劉蘭に言われたネ。私のキョーヤへの気持ち、本当に好きだけかって。キョーヤが劉蘭の許嫁聞いて、それで横取りする気持ちなかったかって」

 

「実際あったんじゃないのか? 確かに初めて会った時にちょっとハプニングはあったが、それだけが理由で惚れるとなると色々ぶっ飛んでるしな」

 

「キョーヤが言うこともっともアル。確かに私は劉蘭嫌いネ。あの頃は劉蘭嫌がることなら何でもやる気もあったヨ。その劉蘭の許嫁奪ったら、きっと泣いて悔しがる思った。それは本当ネ。だから今わからないヨ。こうしてキョーヤと一緒にいる嬉しい。けど、それ純粋に好きか聞かれたら私にはわからないヨ……」

 

 そういやそんなことをデートの時に言ってたなぁ。

 と、劉蘭の話を思い出しながら、本当に困ってしまった表情を浮かべる狙姐にオレも何を言うべきか考える。

 なんと言っても狙姐はまだ14歳。何をするにもこれから学んでいく時期。

 たった3つしか違わないオレから恋愛のなんたるかなんて語るのもアホみたいだし、現在進行形でそれに頭を悩ませてるのだから説得力すらない。

 

「なら、狙姐らしくしてみろよ。誰になに言われたって、結局自分の気持ちをわかってやれるのは自分だけなんだ。らしくしてればわかることもあるかもしれないしな」

 

「私らしく、ネ?」

 

 だから根拠も特にないことではあるが、ちょっとだけ精神論で助言してやると、キョトンとした狙姐は少しだけ考える素振りを見せて「やってみるヨ」と返したのだった。

 ワイワイと賑やかに朝食を食べていたココ姉妹も、それが終われば何かやることがあったのかそそくさと自分達の部屋に戻っていき、それになんか感じつつも、オレもやれることはやっておこうと食堂を出てから、ちょうど上の階から降りてきた諸葛に藍幇城の外に出れるかと問いかけてみるが、大事な交渉の前に目の届かないところにオレが行くのはいただけないとかではっきりと却下されてしまった。そりゃそうか。

 そうなると藍幇城で時間を使うしかなかったので、昨夜行けなかった扉の奥も今日は行けなさそうなことを確認して、そちらは別行動の理子がなんとかするだろうと信用して、いまいち士気というものを上げる才能がないキンジに代わってアリア達の寝ている貴賓室へと踏み込んで、寝ぼけ気味に起きてきたアリア、白雪、レキの身だしなみを整えてから、コイツらと正面に立って会話は色々と捗らないので朝食を取らせて3階にあるカフェテリアに備えてあったビリヤードをやりながら改めて会話をする。

 

「それで、相手に探りを入れたお方はいらっしゃいますか?」

 

 ブレイクショットを打ちながらにしたオレの質問に、球の行方を追いながらのアリア達は口々に「そんなの完璧よ完璧」「ご、ごめんなさい猿飛くん」「問題ありません」と問題ありありな返事をする。白雪は正直だからまぁいいが。

 

「……まぁ、お前らは別のところで働くべきなのもわかってる。だから責めはしないが、やるべき時にちゃんとできるように準備だけは怠るなよ」

 

 別に返事には期待してなかったので、自分の昨日の行動を思い返させた上で気を引き締めさせるようなことを言えば、どんどん球をポケットに入れていくアリアは「それくらい当たり前でしょ」と即答し、二日酔いか若干顔色が悪い白雪は「キンちゃん様は私がお守りします!」となんか個人名が飛び出し、いつもと変わらないレキは「はい」と抑揚のないながら安心する返事で答えた。

 まぁ、元々切り替えられる奴らの集まりだし、こういうのも必要なかったのかもな。

 その後、オレの順番が回ることなくレキの正確無比なショットの前にビリヤードは惨敗して、罰ゲームに同じ空間内にあった弾けもしないピアノを弾かされる始末となって、仕方なしに昔幸姉がやってみせた『猫踏んじゃった』を超高速で弾いて唖然とした3人の隙を突いて離脱。

 罰ゲームはともかくとして目的は果たしたので、それからは藍幇城をブラブラとしつつ何か変化がないかとか色々と見て回っていった。

 こういう仕事はオレや理子の領分だし、アリア達にああ言ったのだから、オレも何かしなきゃ示しがつかない。

 そうこうしながら時間を使っていったら、あっという間に昼、夕方と過ぎて、陽が沈んだ夜を迎えてしまっていた。

 大して藍幇側の動きは見られなかったが、何もなさすぎて不気味にさえ思えてきた。

 夜の食堂に集まっていたオレ達が夕食を待っている間、アリアはクリスマスツリーがなきゃクリスマスじゃないとかグチグチ。

 白雪はキンジがまだ見えないからソワソワ。

 レキはただ呆然と座って前方を見続けるボケー。

 理子はそんなオレ達の顔色をうかがいながらキョロキョロ。

 擬音が似合う方々の中で無心で座っていたオレは、唐突に震えた携帯にちょっとビックリしつつ相手を確認し、落ち着いて話すために1度食堂を出て、そこでキンジとすれ違いつつもスルーし、すぐのところで通話に応じる。

 

「なんかあったのか?」

 

『うむ、ちょっと困ったことになった』

 

 電話の相手、ジャンヌは開口一番のオレの質問に対して本当に困ったような声色で肯定するので、これはただ事ではなさそうだと心する。

 

『実はな、私は今は女子寮の自室にいるのだが……』

 

「おい、シンガポールはどうした。帰国にはまだ早いぞ」

 

『だ、だからそれが困ったことだと言うのだ。せっかちなやつめ。それで話を戻すと、当日にシンガポールに来れたのが私だけだったのだ。中空知も島も京極も、誰1人として空港に姿を見せなかった。なのでどうすることもできなく私も翌日に戻って今に至るわけだが……』

 

「だから現地集合は色々不安があるって言ったろ。どうせ中空知は荷物をなくしたとか、島は飛行機見てたら乗り遅れたとか、京極なんて自宅から出られなかったとかだろ」

 

『京夜、お前は超能力者だったのか。まるで見てきたような推理だな』

 

 心したのだが、なんだかアホ臭い話で緊張感もどっかにいってしまい、修学旅行Ⅱの直前に現地集合を通達したジャンヌは自立行動を促したようだったが、あのメンバーを1人にさせたらどうなるかくらい容易に想像がつく。

 

「……それはまぁ、戻ってから改めて話そう。今はこっちも状況が緊迫してる」

 

『ん? まさかお前、アリア達と合流したのか? 理子とは話はしたんだろうな?』

 

「それは今夜ゆっくりする。それよりさっきからそっちが騒がしい気がするんだが、誰かいるのか?」

 

『ああ、今日はクリスマスイヴだからな。集まれるメンバーでパーティーをするのだ。今は幸帆と小鳥とかなめが中空知と一緒に準備をしてくれている。あと玉藻もいる。本当ならお前と一緒にいたかもしれない日だったが、理子と思い出作りができて良かったな』

 

「思い出作りねぇ……そうなればいいが……」

 

 と、割と緊急でもなかった話を切り上げて別の話をしていたら、1人のメイドを引き摺りながら食堂に入っていく猛妹が見えたので言葉を切る。

 おっと、どうやらゆっくり話をするのが難しくなりそうだぞ。

 

「すまん。連絡は改めてこっちからする。緊急案件が入ったからな」

 

 なのでジャンヌとの話はここまでにして、返事も待たないまま通話を切ったオレは、猛妹に遅れて食堂に入ると、中では何やら巻物を広げてキンジ達に見せる猛妹が話をしていたので、とりあえず人質っぽいメイドを後ろからスルッと奪って肩に担ぎ、それに対してキーキー喚く猛妹を無視してキンジ達の方に行き、口に巻かれていた布を解いてキンジに渡す。

 

「んで、何の話?」

 

「上海藍幇からの辞令なんだって。これからあそこに書かれてる内容を説明してくれるみたいね」

 

 とりあえずまだ何かが始まった様子もなかったので猛妹に向き直ってアリアの示す猛妹が広げる巻物に目を向けると、無視されたからかちょっと不機嫌な猛妹はオレにムキーッという顔をしてからいつもの嫌な笑みを浮かべて口を開いた。

 

「キョーヤ関係ないから無視ネ。『遠山金次には上海藍幇より武大校の位、終身契約前払いで3000万人民元の給金を与える。狙姐除く曹操姉妹は全てその正妻側室とする。遠山が中国語を覚えるまで女性教師を付ける』と、書いてあるネ。あと『神崎・H・アリアは武中校、星伽白雪・峰理子・レキは武小校とし、何れも遠山金次配下とする。以上の条件を以て、バスカービルは藍幇に降る事』ネ」

 

 ない胸を張りながらそこから破格の待遇だと補足説明を加える猛妹だが、要約すると藍幇で良い地位やるから投降しろってことだな。

 武大校だと10指に入るらしい劉蘭よりは低いが、それでも藍幇側も最大限の待遇を用意したと判断していいな。

 

「その決定に劉蘭は関わってないな?」

 

「その通りヨ。劉蘭関わると相手の気持ちが大事とかなんとか言って交渉長引くネ。諸葛もノロノロしてて劉蘭の息かかってる。それに峰理子、猴に会ったわかってるアル。お前のひん曲がった性格知ってるココ達、お前いるわかった時点で上海にこの辞令出させるよう動いたアル。それからこの条件で断ったら極東戦役のルールで決闘してしまえ、そのお許しももらたヨ」

 

 そんな話に劉蘭と姿が見えない諸葛含めて関与してなさそうな予感がしたので問いかけてみれば、案の定でさらに断れば決闘が始まるとか付け足してもきた。

 それを聞いた上で諸葛はどこにいるかとキンジが聞けば、面倒だから先に捕らえてあるとかなんとかで、もうココ達は諸葛の上に立ってる気分らしい。

 それらを踏まえて猛妹は改めてキンジの答えを聞くために交渉を飲むかどうか尋ねる。

 しかし政略結婚だなんだと不穏な言葉によって鬼のような顔になってるアリアや白雪に見つめられながら、キンジはハッキリとその条件を……

 

「これは上海のミスだな。人選をしくじった。――諸葛なら良かったんだけどな。ココ、お前じゃダメだ」

 

 蹴った、のか?

 直前の政略結婚うんぬんのせいでどういう意味なのか解釈が分かれるぞこれ。

 もうそういう意味で全員が捉えてそうな顔をしてるし、終わったなキンジ。

 とか思いながらキンジから若干距離を置いたアリア達に合わせてオレもキンジから離れてみると、同性愛のうんたらかんたらを語り出す一同に言葉の意味をちゃんと叫んだキンジは、襟を正すようにその手にベレッタを抜いてその明確な意味表示をして、金や地位だけで人が動かないぞと猛妹に言い放つ。

 それを聞いた猛妹は始め、その考えが理解できないようなキョトンとした表情を浮かべたが、交渉決裂となった事実は理解して闘争を受け入れた目の色に変わる。

 

没法子(しょうがない)。没法子。あい分かったネ。要するにキンチはココを、藍幇をフッたってことネ。フラれた腹いせ、してやるヨ」

 

 怪しく笑いながら、半分くらいはこうなることを予測していたとかなんとか付け足して持っていた巻物をビリッと破いた猛妹は、食堂の壁に飾られていた様々な武器類を眺めながらどれにしようかと選別を始め、それに珍しく自分から喧嘩を売ったキンジも負けじと『この決闘の中で負けたやつは藍幇に降る』的ないらん条件で発破をかけたのだが、それを聞いた猛妹はこれまでにない怪しい笑みを浮かべてオレ達を見た。

 

「ああ、言い忘れてたヨ。まずキョーヤ、狙姐から伝言ネ。『もし戦うことなって、ココ達藍幇が勝ったら、キョーヤを藍幇に招いて狙姐を妻とする。これ、狙姐なりの答え』だそうアル」

 

「…………余計なアドバイスしたか……」

 

 どうやら本当に交渉が決裂することは読んでいた猛妹は、そうしてすでにどこかに配置されているのだろう狙姐からの伝言をオレに伝えてきたが、その瞬間に近くの理子からグサッとくる視線を受けてそっちを向けなかったが、朝にしたアドバイスがこんなところでらしく返ってくるとは思わなかったな。因果応報だわ。

 

「それでキンチ、今の言葉に嘘ないアルか?」

 

「ああ。俺達が負けなきゃそれでいいわけだしな」

 

 伝言は伝えるだけで終わった猛妹が次にキンジの言葉に二言はないかとあえて確認をしてきて、それになんか嫌な予感を感じてキンジに言葉の取り消しを要求しようとしたが、なんか即答しちゃったよ。

 と思ったら、その直後に食堂の扉が開けられて、そこから外に出ていた劉蘭が血相変えて現れてちょっと乱れた呼吸のままにオレ達に話しかけてきた。

 

「ああ……すでに交渉は済んでしまいましたか……」

 

「劉蘭、少し遅かったヨ。もう決闘は決まったネ。つまり……」

 

「バスカービルの皆様! 京夜様! 急ぎ決着を着けてください! 今は要人のお迎えに向かわせて時間を稼ぎましたが、この決闘に趙煬が駆り出されました! 趙煬が来る前に事を済ませてください!」

 

 どうやら劉蘭にも話は行っていたようで、その慌てた様子からただ事ではないことは察していたオレ達だったが、予想外の藍幇の援軍にオレは血の気が引く。キンジ達も全員、さっきまでのやる気がちょっと萎えてしまった様子。

 無理もない。あの孫とほぼ互角の近接戦闘をやってのけた趙煬だ。

 それを実際に見たからこそ、おそらくは誰が戦っても勝負にならないとわかる。HSSのキンジでも怪しいな。

 

「おい、言葉を訂正するのが賢明じゃないか?」

 

「い、いや、だがな……」

 

「つべこべ言ってる場合じゃないわ。劉蘭が言う通りさっさと終わらせればいいだけでしょ。ココ、どうしたらこの決闘は終わりなわけ?」

 

 嫌な空気を察してオレが言葉の訂正を進言すると、白雪や理子もうんうん頷くが、渋るキンジを押し退けてアリアが勇ましい言葉で強引に話を進め、猛妹に決闘の方法を尋ねる。

 それはそうなんだが、もう少し後先をだな……

 

「藍幇城、3階層ネ。各階にココ達1人ずつと、数は伏せるアルが、藍幇城守るための女傭隊(メイズ)配置してるヨ。そして屋上に孫悟空と最後のココいる。そこに辿り着いて孫を倒せたらキンチ達勝ちヨ。『死亡遊戯』聞いたことアルか? それやるネ」

 

 アリアの問いにそうしてこちらの勝利条件を述べた猛妹は、バツ字に掛けてあった曲刀を手に取って武器を決定。

 白雪も孫が屋上にいることを感じたらしく裏も取れたが、死亡遊戯って確かブルース・リーの遺作になった映画タイトルだったか。その中の戦闘シーンにそういうのがあったからってことか。

 ともかくこちらの勝利条件もわかったので早速動こうとすると、猛妹もやる気になって近くにあった酒棚からボトルの酒を一気飲みしてフラフラしながらの臨戦態勢に入る。

 酔拳ってやつだろうが、実際に使うやつもいるんだな。蘭豹も酔ったら強くなるとかならないとか聞いたことがあるけど。

 そして猛妹は修学旅行Ⅰの時に新幹線をぶった切って人質を逃がされた恨みとかで白雪を指名してオレ達は先に行ってもいいと示して、白雪もそれに応じる形を取ると、「開戰(開戦)!」の叫びを上げてみせる。

 すると外の方。玄関の辺りから大きな銅鑼の音が響いてきて、次いでいつの間にか藍幇城の周囲を取り囲んでいたたくさんの船舶から人の声が木霊す。

 完全なるアウェーの空気に白雪がちょっとすくんでしまうものの、始まった以上は腹を括るしかない。

 とにかく劉蘭が稼いでくれたとはいえ、時間に余裕はないので早速アリアがあやや特製の飛行ユニットであるホバースカートをまさかのリモコン操作で分裂させて食堂に隠していたパーツ類を呼び込み合体という男心をくすぐる事をしたのだが、やはりそこはあやや印。

 不具合に定評があったので完全に合体することなく、あろうことか不完全な状態で飛んでコントロールができないままキンジに突っ込んでいき、そのままもみくちゃになって倒れれば、なんとも恥ずかしいアリアが股間を仰向けのキンジの顔に押し付けるような崩れた正座の体勢になっていた。

 それには全員ちょっとなんか言葉を失い、猛妹すら呆れて飲み直していたものの、アリアを退かしたキンジはやはりというかHSSになっていたので結果としては良かったかと思いつつ、ご指名を受けた白雪以外は猛妹の横を抜けて食堂を出て階段を目指し、その時にオレは一応、劉蘭と話をしておいた。

 

「危ないから、劉蘭は安全なところにいろよ」

 

「はい。京夜様もお気をつけて。私は『皆様を信じています』から」

 

「それは……なんか……」

 

「おい京夜、時間がないって!」

 

 上海藍幇のお偉いさんだから身の安全は保証されてるに等しいが、一応それだけは言ったら、これまでの劉蘭を見てきたオレは返ってきた言葉に何か深い意味があるような気がして聞き返そうとしたら、先に行っていた理子が怒り気味で来るように促してきたので、それを聞かないまま劉蘭と別れてしまった。なんだろうな、この引っ掛かりは……

 何はともあれ始まってしまった藍幇との決闘を終わらせるために、趙煬という時限爆弾を抱えながらのオレ達は屋上目指して走り出したのだった。

 本当なら今頃シンガポールにいるはずだったのに、とはもう思わないようにしよう。

 人生山あり谷ありだからな。谷が続いてる気がするけど……

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