藍幇との決戦に挑んだオレ達は、そこで待ち受けていたココ姉妹、孫を倒すために動いていたが、上海藍幇の補強戦力にして孫に次ぐ戦闘力を持つ趙煬の到着で一気に劣勢に。
先に行かせたキンジ達を守るために足止めを買って出たオレと理子、ヒルダではあったが、炮娘を上手く無力化できたものの、趙煬には主武器である頑丈な槍を装備されて緊張感が一気に増す。
人間、得物を得るとここまで変わるのかと感じるほどのプレッシャーに、オレも理子も交戦距離を無視して体が強張る。
「さて、どうあれを攻略するよ」
「無理ゲー感が凄いんだけど、まずはセオリー通りに……」
隙のない趙煬を見ながら理子と小声で話してみるが、やはり理子も勝てそうにない弱気発言をして、それでも黙っていられる状況ではないのでワルサーを股のホルスターにしまいつつ髪で持っていた2本のナイフを手持ちに変更。
銃が通用しないからではない。
2対1でかつ、オレが近接戦闘を主にするから、誤ってオレを撃たないために自分も近接戦闘に切り替えたのだ。
それを見るや否やオレ達の行動に見切りをつけた趙煬は槍先をオレ達に向けて突貫。
そのリーチを生かした射程による突きは、先ほどの簡易式の槍とは違って唸りを上げてオレに迫り、その動きを見るのと同時に横に逃げた理子は後ろへと回り込む動きをスムーズに行い、槍を半身で外側へと躱したオレはそこから異常なほど戻りの早かった槍に驚愕。
リアクションなどする暇もなく若干接近し両手持ちでの多連突きを放ってきた趙煬に回避が追い付かず、4連撃のところで腹に重い一撃をもらってしまう。
これも制服を貫いてくることはなかったが、衝撃まで無くす性能は持ち合わせていないので後ろへと流れかけるが、それを食い止めるために咄嗟に槍先を手で握って槍の戻りも封じてみせた。
これは狙ってやったわけではないが、良い動きはした気がす……
そう思って後ろへと回り込んでいた理子が好機と見てナイフで斬りかかるのを確認したのも一瞬。
趙煬は槍を持つオレを何とも思ってないかのように1度右へ軽く振り、勢いよく左へと振り回してオレを投げ飛ばすと、石突きで迫る理子の鳩尾を鋭く突いて昏倒させ、決死のガードの上からではあるが壮絶な回し蹴りで理子をオレと反対方向へと吹き飛ばしてしまった。
圧倒的。
わずかな攻撃でオレも理子もすぐに持ち直せないダメージを負わされてしまって、床に倒れる理子はナイフも手離して腹を庇うように丸くなって立てずにいるところを見ると回復も遅いだろう。
オレもオレで累積ダメージが効いてきて足腰にキテる。
それで立たないオレと理子を一瞥した趙煬は、次に階段下にいたヒルダへと視線を向けてその足を進め出した。
いくらヒルダでも得意の電撃を自前ではほとんど使えないし、オレ達よりも劣る接近戦を強いられては勝てない。行か、せるかよ……
意地でも立ち上がろうと手をつき膝をつきと重い体を起こしにかかったオレだが、なかなか思うようにいかず手間取っていたら、藍幇城の外から唐突に銅鑼の音がゆっくり3度打ち鳴らされ、そこに意味は当然あるため趙煬も1度その足を止めていたが、銅鑼がそれで止むと短いため息を吐いて再び前進しようとした。
こっちに都合の良いことは起きてなさそうだなこれ。
しかしそのわずかな時間がオレを立ち上がらせるための時間を稼いでくれて、踏み出そうとした趙煬もオレに気づいて振り返ると、まだやるかといった雰囲気の中で再び槍を構えてオレを狙う。
そうだ。お前の相手はオレだろ。
未だ何ひとつ有効打を与えられずにボロボロにされていたオレだが、焦ったところで仕方ないと諦め半分の落ち着きを取り戻していた。
そこに趙煬は猛烈な突貫でその槍を突き出してくる。
だからオレはその槍に対して自ら顔を軌道上に持っていって無理矢理に死の回避を発動。
もう自力での反応ではギリギリの回避はできないと踏んでの行動だったが、死の回避はそれをわかってるようにオレの体を強引に右に傾けて頭のすぐ横を槍が通り抜ける。
そしてこの好機に左手で槍の柄を掴んで止めて、右肘を趙煬の胸の中心めがけて突き出すカウンターをお見舞い。
完璧なカウンターだったが、趙煬は瞬時に固定された槍の石突きを回り込むように体をクルリと軸回転させて槍の左側から右側へ移動。持ち手を逆にして回避をしやがる。ジャッキー・チェンかお前は。
完璧だと思ったカウンターを回避されて虚を突かれる形で流れるような左足の蹴りが正面から放たれて、どうしようもないそれをあえて右足を上げて膝で防御。
普通なら相手にダメージを与える攻勢防御という人体の固い部位による防御方法なのだが、すねで捉えた趙煬は全く痛がる素振りも見せずにオレの膝を力押しで弾いてきて、後退せざるを得ない体勢にさせられるも、離れ際に懐から単分子振動刀を抜いて趙煬の槍を中心辺りでバッサリと斬り裂いて真っ二つにして使い物にならなくする。追撃防止にはなっただろうか。
「
そう思っていたら、ある程度の安全な距離を取ったところで棒立ちで真っ二つにされた槍を見ながらそう呟いた趙煬は、その石突きがある方の片方を横に投げて、先ほど投棄して壁に刺さっていた簡易式の槍に当てて壁から外すと、もう片方も投擲して落ちていく槍の中心に当てて壁にバウンドさせて自分の近くまで滑らせてから、オレから目を離すことなくそれを拾い上げて構えた。
もう何でもありだなお前……流石に呆れるレベルで、アクション映画観てる感じ。
そんな曲芸を見ながら両手にクナイを装備したオレは、今ので単分子振動刀をお披露目してしまったことで警戒されてるだろうことを予想して慎重になってくれるかと思ったが、全くそんなことはなく、むしろ抜く暇も与えないような猛攻の気配を察する。
だから趙煬が仕掛けてくるタイミング。その足を踏み出してきた1歩目を狙って右手のクナイを投げ込んでみる。
だがたとえそのタイミングで回避不能にしたところで、その手にある槍がひと振りされれば対処されてしまうわけで、事実、難なくクナイを槍で弾いた趙煬の歩みは止まらない。
が、その槍で弾いたタイミングまで読んでオレが投げた2投目は、正確に趙煬の左手首に迫った。
これは、当たる。それで握力が落ちればさらに良し!
如何に超人でも不可避の一撃。
そんな確信があったクナイは、わずかに速く接地した踏み出しの足を軸に半時計回りで回転。
飛来するクナイと速度を合わせる形で趙煬の手はなぞるように躱し、クナイは後ろへと流れて階段すぐの床に突き刺さり、近くにいたヒルダがガミガミ言ってきたが、いやいや、避けられるなんて考えてなかったし……
もはやオレの超人設定の上をいく趙煬にどうすればいいのかわからなかったオレは、回転からほとんど速度を落とさずに迫った趙煬に反応が遅れて思わず下がってしまったが、悪手。
速度の関係で下がりながら趙煬を捌かなければならなくなって、脳裏に一瞬で倒されるイメージが浮かぶ。
「無視すんなクソが!」
ガゥウウウン!!
その最悪なイメージを払拭するように横から叫びを上げた理子が、オレと趙煬の間にワルサーで割り込んで趙煬の進撃を止める。
それによりオレもすぐに立ち止まって改めて構えられたが、撃った理子はまだ腹を押さえながら立ち上がれもしない状態で右手に持ったワルサーを趙煬に向けていた。
「あたしは……お前に無視されるほど……弱くねぇんだよ……」
趙煬が日本語を理解してないことはわかってるのだろうが、言わずにはいられなかった怒りをぶつけた理子は、自分が倒れた程度で無視されたのが気に食わなかったらしく、それはおそらく、やるなら半端なことはしない理子の考え故。
現に今、理子はワルサーを撃つ余力を残していた。趙煬はその芽を摘む行動をしなかったのは事実。
そんな理子に対して、お前がそれを望むなら。
そうした雰囲気を出した趙煬が理子へと意識を向けていくので、完全なる虚勢の理子が倒されるのを見たくなかったオレは、理子のプライドを無視して趙煬へと接近。
当然、迫る脅威の方が優先順位は高いので趙煬も槍をこちらに向けて迎撃に来る。
とにかく槍が厄介なので分銅付きのワイヤーを取り出して突き出された槍を先ほど同様に死の回避を意図的に使って躱し、その際に槍にワイヤーを巻きつけてその自由を多少奪うと、槍を持ちながらの近接戦へと移行し、壮絶な蹴りと拳打を加速がつく前に自ら当たりに行ってダメージを抑えるが、少しでも槍の拘束が緩もうものなら振り払ってきそうな趙煬に圧されながら必死に攻撃に耐えていき、反撃のタイミングを探る。頼む、勝機をオレに……
「…………来た」
そうして耐える中で、視界の先である動きを捉えたオレは、それを見た途端に槍の拘束を緩めてワイヤーを手放し大きく逃げるようにバックステップ。
如何にも堪らずに下がったように見せ、片膝までついて肩で息をする。
そんなオレにやっと力尽きたかと構えを緩めて槍のワイヤーを取ろうとした趙煬。
しかし、その違和感に流石にすぐに気付いた様子の趙煬は、ハッとしてそのワイヤーの端が『自分の後方へと伸びている』のを視線を追いかけることで理解し、その先にいたヒルダを視界に捉えた瞬間、先ほど投げたクナイを拾い上げていたヒルダはバヂンッ!! と電光を煌めかせてクナイに取り付けられていたワイヤーに電流を流し、その先に繋がる趙煬の槍へと到達。
趙煬の手元でもバヂンッ!! と音が鳴り、少しでも感電を阻止するように槍を投げるように手放した趙煬だが、幾分かは電撃の影響を受けたようで腕の筋肉が強張ってしまっているのが見て取れた。あれなら握力もなくなってるはず。
別にこうなることを予期していたわけでは決してない。
だがこの世に絶対がないことを散々思い知らされてきたオレが、確信を持ってもその先を見据えないということをしなかっただけ。
クナイがヒルダの近くに行ったのも避けられることを万に一つでも考えていたから。
そのクナイにワイヤーを付けて、若干暗くなった中でオレの意図に気づいてもらえたのも偶然に近い。
あの趙煬ですら直前までワイヤーの存在に気づかなかったくらいだしな。
そんな奇跡とも呼べる好機を逃すほどバカではないオレは、趙煬が槍を手放した瞬間に片膝立ちからクラウチングスタートのように走り出して趙煬へと迫ると、理子も同時にワルサーで趙煬の足を狙って発砲。
ここで初めて体勢を崩すように焦った感じで回避に動いた趙煬は、次に繋がる動きを全くせずに理子の銃弾をしかし驚異的な反応で躱すが、そこに間髪入れずに踏み込んできたオレに対して、痺れた腕も防御に動くことはなくほとんど加減せずに全力の右拳をノーガードの顔面へと叩き込んで床に倒してやった。
窮鼠猫を噛む。追い詰められた鼠も、瀬戸際になれば天敵である猫にも牙を立てるってことだ。
「…………
床に倒れて少し呆然としていた趙煬は、オレにしか聞こえないくらいの声量でそんな呟きをしたかと思えば、マウントポジションを取ろうとしていたオレも思わず飛び退くほどのコマ回転による起き上がりにカポエイラからの立ち上がりで繋げると、もう復活した腕……
いや、微妙に痙攣してるからそれを強引に動かして下がったオレを追撃するように距離を詰めての肩から入る体当たりと、顎を撃ち抜く掌底を同時に放って吹き飛ばしてきて、ほとんど防御のできなかったオレは脳震盪まで起こされて一瞬で意識が飛ぶ。
今までと威力が全然違うじゃねーかよ……
そうしたことすらまともに考える暇もなく床に倒れたオレは、あまりに強い衝撃を受けたせいで痛みによってすぐに意識が戻り、背中から落ちたはずがうつ伏せで倒れている自分を認識するよりも、グラつく意識の視界の先で趙煬がオレから理子へと狙いを変えたのを捉えて、背筋に最悪の悪寒が訪れる。
やめろ。理子に手を、出すな……
そんな思いとは裏腹に動いてくれない体にイラつく中で、趙煬が理子へと踏み出したのを見ていることしかできない自分にさらにイラつく。
あんな攻撃を今の理子が受けたら最悪ショック死する可能性だってある。
死……理子が……死ぬ……?
『京夜は私1人だけを守るなんて『小さな器』に収まる存在じゃないのよ。あなたはもっと大きなもの、たくさんの人達を守れるわ』
理子の死がよぎる中でふと頭に浮かんだのは、オレが武偵として歩むことを決めた時に幸姉が言ってくれた言葉。
たくさんの人達? おい猿飛京夜。お前は今、1人の女も守れていないぞ。
一刻の猶予もない状況でオレは幸姉からもらった言葉を嘘にしないために動かぬ体をその意志だけで動かす。
全ては守るために。この力は、大切なものを守るために身につけたんだ。それができなくてどうするんだよ!
無理矢理の挙動に体から警告するような軋みがあらゆるところから発生するが、これがオレの死に繋がるなんてことはない。
たとえこのあと動けなくなっても、オレは今、理子を守るんだ。
その意志は確実に力となって、趙煬が理子の近くへと到達するより速くその間に割って入ったオレは、理子が向けていたワルサーを右手で下げつつ、左手で趙煬の右足の蹴りを殴って押し返す。
さらに左足からの蹴りを頭突きで止めて、軸足となってた右足を払う蹴りをお見舞いしたが、これを跳んで躱した趙煬は流れるように左足を振り上げて下ろすかかと落とし。
これを腕のクロスガードで受けて止めれば、着地と同時に1歩下がって本気の左足の蹴りが再度横から迫ってきて、ここまでの防御がすでに捨て身だったため、もう踏ん張れないことは確実だったので後ろの理子を庇うようにその体を抱き寄せて蹴りに対して背中を向けた。
――グァーーーーーーンーーーー!
その時、また藍幇城の外から大きな銅鑼が打ち鳴らされ、それを聞いた趙煬はオレの背中に蹴りが当たる直前でピタッ! と寸止めしてみせると、そのまま足を戻してスゥっとその闘志を消し、痺れた腕の調子を確かめながらオレが殴って流れていた口の血を拭う。
「
突然の終結に理解が追い付かないオレと理子は、皮肉のように言った趙煬の言葉に反応することもなく互いに目をパチクリさせて顔を見合ってしまう。
「
極限で限界の戦闘後で全く頭が働かないので、バカっぽいが趙煬にそうして尋ねる形で今の銅鑼が何なのが聞けば、バカを見る目で見てきた趙煬は、イラッとするため息を吐いてからそれに答えた。
「
これも嫌味なのかめっちゃ早口でペラペラ話すので翻訳に支障が出るが、どうやら『オレ達が勝ったからもう戦う必要はない』といった感じの意味はわかり、それはつまり上に行ったキンジ達が勝利したということ。
それを遅れて理解したオレと理子は、ようやくそこで体の力が抜けてホッとするが、次には目の前の理子がキリッとその目を鋭くしてパーン! オレの頬をひっぱたいてくる。な、何だ!?
「ふざけんなよ京夜。あたしはそんな風に守ってもらっても嬉しくもなんともないんだよ。何だ最後のは。あたしを庇って相手に背中を向けて。バカじゃないのか」
「………背中は防御力が高いんだぞ。あれはあれで合理的な防御であって……」
「うっさい! 口答えすんなバカ京夜!」
どうやらオレが自己犠牲の姿勢だったのが気に食わなかったようで、そんなことを言うつもりではなかったが、つい反論してしまったオレをまたビンタ。
あの、意識は混濁してて、頭も頭突きで揺れて血も流れてて、そこにビンタは結構ヤバイんですが……
そう思っていたら、急に顔を下げてオレに寄りかかってきた理子は、胸に顔を埋めるような形で小さく口を開く。
「……ありがと、京夜」
それでも守れた。
それを実感する言葉につい気が緩んだオレは、ついに力尽きて理子の寄りかかりにも耐えられずに後ろに倒れてしまい、仰向けで大の字になる。もうなーんにも考えられん。
「あらあら、ずいぶんこっぴどくやられたみたいね」
さすがにオレの状態がヤバイと思ったのか優しく起こそうとしてくれていた理子だったが、呑気な調子で聞こえてきた声に噛みつくような表情に変わって声のした方を向くので、オレもそちらを向けば、なんとも他人事みたいな調子で近付いてくる幸姉が笑いながらに目の前まで来て、倒れるオレの前で屈むと、
「まっ、ボロボロになっても仲間を守った功績は称えましょう」
そんなこの戦闘を見ていたような称賛を贈ってからオレを抱き寄せて超能力での治療を開始。
幸姉の治療は自己治癒力を高める補助的な超能力のため、即回復といった感じにはならないのだが、表面上の傷は塞がって止血作用やらは高く、中の方が時間がかかるため安静にはしてなきゃならない。
しかし段階的に痛みが引いていくのがよくわかって、何よりも治療中は温かいのだ。
まるで幸姉に包み込まれてるかのようで……って、抱き寄せられてはいるんだけど。
そうして少しの間、幸姉の治療を受けて応急措置くらいまでが終わったところで幸姉はオレを離して今度はムスッとしてた理子をふざけ気味に抱き寄せてオレ同様に治療を開始。
幸姉のおかげで体を動かせるくらいには回復したオレは、体を起こしながらここでまた階段の方からやって来た白雪と劉蘭と猛妹を視界に捉え、見た目ボロボロのオレを見た劉蘭が駆け寄ってきてコケるというお決まりを披露して和むが、オレを見て顔にちょっとした殴られた痕のある趙煬を見ての劉蘭は、あらまぁみたいなリアクションをしてみせて笑みがこぼれる。
「まさかとは思いますが、趙煬が攻撃を受けたのですか?」
「3人がかりでやっとってレベルだがな」
何故か嬉しそうな劉蘭に対して、幸姉に抱かれながら悶える理子と、それを咎めながら役目を終えて近寄ってきていたヒルダを見つつ返せば、それでも趙煬は圧倒的だと思ってたらしく、素直に驚いているようだった。
「ここ1年ほど、趙煬は強すぎる故に少々自信過剰になっていましたから、良い薬となったでしょう」
「自信過剰でもいいよあいつは……それより幸姉が来てるのは、やっぱりこっちに来るとか言ってた先方ってのが……」
「はい。幸音様です。この戦いが終わるまでは藍幇城の近くで待機してもらっていましたが、式? というのですか? そちらの方でご様子はうかがっていたようでして」
式……式神だな。
確か幸姉のは言霊符の応用で直接の戦闘力は皆無だけど、カメラみたいな役割をこなせたはず。それでオレ達の様子がわかってる感じだったのか。
というか幸姉が趙煬の迎えを拒否しなきゃ、もう少し軽傷で済んだかもしれないんだが、その怒りをぶつけるのももしもの話でしかないしやめとこう。治療もしてもらったしな。
そんな風に幸姉を見ていたら、理子の治療もとりあえず終わったようで呑気にヒルダと漫才をやり始めて、劉蘭も趙煬の殴られた頬をツンツンしてからかったかと思えば、ここで足踏みもしてられないとその手を1度叩いて皆の注目を集める。
「では皆様、臥龍鳳雛がいらっしゃる屋上まで参りましょう。そこで改めて我々の今後を決定いたします」