緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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 メヌエットとの対面3日目。

 当初の目的にしていた色金関連のことを聞き出せて、メヌエットの方もオレへの興味を大体だが抑えて明日以降にでも帰ることになりそうだというところで、オレは唐突にメヌエットと友達になろうと思ってしまった。

 いや、正確にはメヌエットといるうちにそうしたいと思い始めていて、別れが近づいて口から出てしまった。

 

「冗談では、ないようですね」

 

「冗談でこんなことを言う男じゃないのはもうわかってるだろ」

 

「忘れてるようですから言って差し上げますが、私は貴族で、京夜は平民。その違いは埋めようがない現実です」

 

「そんな立場をオレは考えてない。オレはメヌエットの本心に聞いてるんだ。答えは2つに1つ。どっちでもオレは受け入れる覚悟はしてる」

 

 おそらくはメヌエットにとっても初めて言われたことなのだろうから、珍しく無表情の中に確かな揺らぎを見せ、立場なんて今は不要なものを持ち出してオレを反射的に突き放そうとした。

 それでもオレが踏み込んでくるから、メヌエットもグッ、と噛み締めてから観念したように緩んだ口で言葉を紡ぐ。

 

「私は……今はまだヘコませる程度の言葉で済んでいますが、その……友達、になってから傷つけることをたくさん言ってしまう可能性を否定できません。気に食わないことがあれば絶縁を言い渡すことだって十分にあり得ます。それでも私と友達、に、なりたいの、ですか?」

 

「んー、そう言われるとちょっと嫌だな」

 

 そうして紡いだ言葉にオレは割と軽い感じで即答して、本心を語ったメヌエットはうるっとその瞳を潤ませる。うおい、泣くなよ?

 

「でもさ、きっとそうはならないって確信に近いものをオレは感じてる」

 

「どうしてですか?」

 

「ん、その理由について小舞曲のステップの如く順を追って説明するなら、メヌエットがオレを『傷つけることを心配してくれた』んだろ? そんなの会った日には考えられなかったメヌエットの優しさだ。そんな優しさを持ってる子だから、オレは友達になりたいって言えたんだ」

 

 泣かせるつもりもなかったのですぐにフォローに入って、その理由についてを尋ねられたのでメヌエットの口上を借りて説明しながらそのすぐそばまで行くと、目の前で膝をついてその華奢な手を取って少し見上げる位置にあったメヌエットの顔を見る。

 

「それからオレは多少のことではヘコまないタフな男だ。メヌエットの吐く毒くらい平気で飲んでやる」

 

「…………生意気な京夜は嫌いです」

 

 ぐにっ。

 ちょっとキザだったかなと自覚しつつもまっすぐに見てくるオレに流れ落ちそうだった涙を拭っていつものムスッとした顔になると、ちょうど良い位置にあったオレの両頬を引っ張ってつねるというコンボ。痛いんですけどね……

 

「ですが京夜がどうしてもと懇願するなら、仕方なくではありますが、友達のいない寂しい京夜の初めての友達になって差し上げますが?」

 

「どうしてもだ。お願いだ、メヌエット」

 

「……この展開は完全に推理できませんでした。私の完敗ですわね。今後は私の推理の邪魔だけはしないでください」

 

「それは保証できないな。何故ならオレにも何がメヌエットの推理の邪魔をしてるのかわからん」

 

 それでも届く思いはあって、完全に上からの物言いだがそれがメヌエットなりの言葉なのはもうわかってるので甘んじて受け入れると、この友達になろうの流れを推理できずに悔しそうにしたメヌエットと一緒にそんなやり取りをして笑い合うのだった。

 

「さて、晴れて友達になれたところで、これからはメヌエットを愛称で呼ぶ。アリアにはなんて呼ばれてるんだ?」

 

「お姉様からは縮めてメヌ、と。ですが京夜にその呼び方を許すつもりはありません。これはお姉様にだけ許す愛称であって……」

 

「よし! 愛称も決まったし日本に帰る前に記念写真を撮ろうか。オレが写真に写るなんて超珍しいことをするんだから喜べよ、メ・ヌ」

 

「くっ。今からもう絶縁を申し入れます! 金輪際、私の家に足を踏み入れることも禁じます!」

 

「サシェ、エンドラ。カメラないか? これからメヌと写真を撮るから持ってきてくれ」

 

「こ、のぉ! 私の話を聞かないバカを殺します! 今すぐに!」

 

 そうと決まったらオレももうメヌエットには遠慮なしで、アリアにだけ許してると言う愛称も使って記念写真を撮ることも勝手に決め、ギャーギャー言うメヌエットをスルーしていたら、ずっと気にはなっていた壁に立て掛けてあった空気銃と思われるそれを持ってオレに発砲。

 1発目は近くの本棚に突き刺さって本が吹っ飛ぶが、どうやら気圧を変えて殺傷力を高めているっぽい――しかも改造で――ので、当たりどころによって死ぬかもしれん。

 パンッパンッパンッパンッ。

 そこからの連射はオレもさすがに避けるが、余裕のなさそうなメヌエットの必死な顔はやはり姉妹。その行動と相まってそっくりである。まるでアリアとキンジのようだ。

 装填していた圧縮空気をあらかた出して撃てなくなった頃にタイミングを見計らっていたのかサシェとエンドラがおずおずと応接室に入ってきて、イライラしてるメヌエットを見て顔が青ざめる。

 しかし全弾を避け切ってケロッとしてるオレがメヌエットに近寄って銃を取り上げてやり、三脚と照明器具まで持ってきた2人にさっそく撮ってくれるように指示。

 

「ほらメヌ。仏頂面のままだと変な写真が出来るぞ?」

 

「私は撮るなどと言った覚えはありません。サシェもエンドラもなぜ私ではなく京夜の言うことを聞くのですか」

 

「オレの言うことがメヌの言うことと食い違わないからだろ。はいもう撮ります。貴族様は当然ながら写真映りは気にするよな」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい。まだカメラに収まる心構えが……」

 

「はーい、チーズっ」

 

 それでも撮らないとは言わなかったメヌエットのアワアワした雰囲気が面白かったので、そのままオレはメヌエットの後ろに立って有無を言わせる前にその両頬をムニッと押してアヒル口にしてやると、タイミング良く照明を当てたエンドラとカメラを持つサシェがシャッターを押してくれてバッチリな写真が出来上がる。

 が、当然ながら取り直しを要求したメヌエットがオレの手首を合気道で極めてくれやがったので、改めて今度はメヌエットのタイミングで写真を撮った。

 しかし勿体ないので撮り終わってからサシェには先に撮った方をオレにだけこっそり渡すように言っておいた。こっちの方が可愛いしな。

 

「なんだかんだで良いリフレッシュになったんだよな……」

 

 メヌエットと友達になってから2日後。

 日本に帰る飛行機の中で快適とも言い切れないエコノミーの席で窓からの景色を見ながら、オレはロンドンを起つ前にサシェからもらった写真を懐から取り出して笑顔と一緒につい言葉が漏れる。

 写真は不意打ちで撮った時のふざけたやつの方だが、こんなことをやっても殺されなかった事実はメヌエットとの関係が特別なものに変わった証拠。

 あのあとメヌエットのパソコンのアドレスを交換してメールならいつでも出来るようにしたが、メヌエットからメールしてくることがあるのか不明。オレからもすることがあるのだろうか。

 奇妙な友人関係には違いない。だがそれで良いのだ。

 オレもメヌエットも一般人から見れば普通じゃないし、普通じゃない同士なら普通じゃない方が意外と噛み合ったりもする。

 

「まぁ、普通ってのがそもそもの定義を持ってないんだがな……」

 

 とは思うものの、結局のところ普通というあやふやな定義は考えるだけ無駄なことに辿り着き苦笑。

 良いじゃないか。人が十人十色であるように、友人関係も十人十色だ。周りがどう思おうと、オレとメヌエットは互いに認め合った友達。その事実があれば十分だ。

 何はともあれ、オレの欧州遠征はこれにて終了。

 奇妙な出会いや再会など色々とあったが、五体満足で日本に帰れているのは総合的に運が良かったな。

 現地じゃ運が悪いだなんだと騒いだが、終わってみればそんな感想が出てくるのだから人生は不思議なものである。

 

「あとは色金の問題、か」

 

 終わったことが大きかった欧州遠征だが、気が抜けない問題が残ってることにも思考がいく。

 アリアの緋緋色金の殻金も鬼のハビが持つ1つだけとなったものの、ジャンヌから聞いた停戦交渉の中で鬼達だけが眷属と物別れになって行方がわからなくなったという話だ。

 それから色金のことについても確認したいことがあるし、日本に帰ってからもやることはそれなりにありそうだ。

 それらのことを考えればメヌエットに言ったホームシックも嘘になってしまうが、避けられないならやるしかない。

 そんな決意を密かにしつつ、12時間後に着く日本との時差ボケを出さないために、一旦すべての思考を切ってしばらくの眠りに就くのだった。

 

「うんどりゃああああっしゃああああ!!」

 

 帰国後。

 その日に登校できる早朝に学園島に戻ってきて、登校前に荷解きしてしまおうと寮に戻って扉を開けたら、そんな意味不明な雄叫びと一緒にバカが拳を突き出してタックルをお見舞いしてくるので、警戒心が皆無だったオレはそれを腹に受けて一緒に廊下に飛び出し倒れる。

 

「ごふっ……死ぬ……」

 

「おっそいんだよキョーやん! あまりに遅いから理子りんラブゲージが愛から憎に反転しちゃったんだぞ! ぷんぷんがおー!」

 

 完全に押し倒されて馬乗りまでされて戦意喪失なオレに、上に乗る理子は手で頭に角を作ってご立腹の感情を示してきた。

 その後ろでは玄関までやって来た小鳥が心配そうにこちらを見るが……お前がチクったのか。

 

「お前には帰ることを黙ってたはずだが」

 

「ふんだっ。キーくんが帰ってきてから毎日ここにいたんだもんねー。そんでことりんに帰国予定のメールが来たから待ってたんだもんっ」

 

「す、すみません京夜先輩。理子先輩の張り込みがハンパなくて……」

 

 帰国のことは小鳥にしか言ってないから、情報が漏れたなら小鳥しかないんだが、どうやらオレが小鳥にはそういうメールをするとわかってた理子にマークされてたみたいだな。

 

「ならオレが軽率だったか……今後は黙って移動しよう」

 

「バカちんがぁ! 理子にだけ教えてくれれば素敵なお迎えしちゃうんだぞ?」

 

「それがイコール、オレにとっての素敵になるかは別問題だろ。いいから退け」

 

 それが読まれてたならオレの責任なので、小鳥を責めるのも変な話と諦めてとりあえず理子を上から退かし、手を貸してくれたのを取って立ち上がる。

 

「まぁとりあえずは、ただいまか」

 

「おう。おかえりだ」

 

「おかえりなさい、京夜先輩」

 

 手荒い歓迎だったものの、オレの帰りを待ってたというのは少なからず嬉しいので、開幕グーパンは見逃すことにして部屋に改めて入り、小鳥の作った朝食を3人で食べながら近況報告。

 

「んで、オレのいない間に何かあったか?」

 

「そうだよキョーやん。帰りが遅いって言ったのは単に理子りんのラブゲージ問題だけじゃなくて、一昨日にアリアが入院しちゃったんだよぉ」

 

「……怪我か?」

 

「そういうんじゃないっぽいけど、面会謝絶でヤバ気な人達の監視も付いてでマジ囚われのお姫様って感じ。だから何で入院したかってのもよくわかんないけど、キーくん達の話じゃ突然倒れたってさ」

 

 武偵なので仕事やプライベート関連の報告は聞かないが、こういったことは情報として仕入れておくのが習慣。

 だがアリアが入院とはな。このタイミングでそんな厳重な守られ方は不自然さが目立つ。

 

「まぁそっちはキンジにでも詳しく聞く。それより白雪とレキはいま学園島にいるか?」

 

「あー、そうやって他の女の話するんだー。しかもキーくんラブの2人だし」

 

「別に狙ってるとかそんなんじゃねーし。いるのかいないのか」

 

「レキュはいるけど、ゆきちゃんは帰省中っぽいねぇ」

 

 アリアのことは気になるが、オレ以上に動くやつがすでに動いてそうなので、そっちはそっちで手伝えたら程度にしておき、オレもオレでフワフワしてる疑問を片付けたいので、その疑問の答えを持ってる可能性のある2人にコンタクトを取ることにする。

 が、白雪がいないのか。しかも星伽の実家って青森だっけ? 欧州のせいで距離感がおかしくなってるが、割と遠い。

 となるとレキからだな。

 

「まずはレキから……いや、違うな」

 

「どしたの?」

 

 1度はそう考えたのだが、凄く冷静になって考えたら、目の前にも無関係ではない人物がいたのでアホな面してモキュモキュとたくあんを食べる理子を見て、それに頬を赤らめるのでジト目でふざけるなと言いつつ口を開きかける。

 しかし今ここには小鳥がいるので、あまり突っ込んだことは聞けないと判断し、理子が喜ぶから嫌だが2人で登校しながら話すことにして小鳥に先に行くように言ったら、なんか不満そうに後片付けをして寮を出ていってしまった。

 なんだろう、この覚えのある怖い感じ。地雷踏んだかもしれない。

 

「おほぉ、ことりんも露骨になってきたねぇ」

 

「後輩の不機嫌を楽しそうに見るな」

 

「いいのいいの。あれは誰もが通過することだからねぇ。キョーやんの知らないところで戦いは常に起こっているのだよ」

 

 そんな小鳥を見送ってから理子が意味ありげなことを言いながら登校準備をするので、オレも準備をしながら会話するが、女子の察する能力高いなぁ。

 

「そんで、話ってなーに?」

 

 小鳥が登校して十分な時間を開けてから、一緒に徒歩での登校を開始して早々。

 オレが話すタイミングを計ったのを小鳥の前ではできないからと察した理子はルンルンなステップでオレを見上げてくるが、そんなルンルンでする話ではない。

 

「理子のそのロザリオ。確か緋緋色金とは違う色金金属が含有してるんだよな」

 

 そうやって歩きながら上から胸元に見える青いロザリオを見て確認をしたのだが、角度的にエロかったので理子が1度「もうエッチッ」とか言いながら胸元を隠してからロザリオを普通に見えるように取り出してくれる。

 

「そだよ。これって昔にお父さまとお母さまが、2人の仲間と盗みに入った時に手に入れた金属を加工したものなの」

 

「それって、どこに盗みに入ったんだよ」

 

「詳しいことはわかんないけど、めっちゃ警戒厳重でお母さま達が燃えたところなのは間違いないかなぁ」

 

 まぁわかってはいたが、やはり生まれる前の両親の盗みの入手経路については知らないか。

 理子も当時は怪盗とか漠然としたものに理解はなかっただろうし、難しいことを言っても理解できないから両親もその英雄譚を端折ったりしたはずだし。

 だがその話からでも、理子の持つ色金が人の管理の下にあることはほぼ間違いない。所有物としてか、保護対象としてか、或いは危険物としてか。

 

「でも何でそんなこと聞くの? ひょっとしてアリアの色金と関係あったり?」

 

「あるようなないような……今はオレもわからん。だから情報を集めてるとこ」

 

「そんで普段は接点がないレキュとゆきちゃんが絡んでくるわけか。理子さ、今は藍幇に目をつけられてて自粛中だから、あんま派手なことできないけど、最悪でも蘭ちんに頼めばなんとかなるだろうし、どうしてもの時は頼ってね?」

 

「藍幇に? 勧誘とかならしつこそうだしな、あそこ」

 

「ホントだよ。蘭ちんにはこの前ぷんぷんがおーしておいたけど、あれは反省してない顔だったね」

 

 ロザリオを胸元にしまいつつ、オレの真意についてを尋ねてくる理子の鋭さはさすがだが、どうにも藍幇から勧誘されてて動きに制限がかかってるらしく、あんまり大々的に使ってはやれないみたいだ。

 それでもどうしてもの時は頼ってと言ってくれるのはありがたい。

 

「んじゃ、どうしてもの時は頼らせてもらう。ありがとな、理子」

 

 だから普通にそんな感謝を述べたのだが、隣を歩いてた理子が何故かキョトンとした顔をしてからすぐに頬を赤く染めて俯いてしまう。

 

「あ、あれー? おかしいなぁ。こういう時のキョーやんは『そんなことにならないようにする』って言うところだったのに」

 

「……そうだな。そうだったかもな。オレもちょっとずつ変わってるってことか」

 

 言われて気づいたが、確かに前のオレならそんなことを言って理子を……人を頼ることを極力だが避けてきた気がする。

 だが欧州での出来事でオレは自分の出来ること、出来ないことをかなり明確にできた気がするし、だからこそ人に頼ることの大切さを知ることができた。

 それが今の言葉に反映されていたんだ。自分の自覚しないうちに。

 

「今のオレは日和ったと思うか?」

 

「うーん。微妙なとこだけど、キョーやんは人に頼ることも覚えてほしいなぁって思ってもいたし、理子としては素直に嬉しいかも」

 

「その代わり、お前が頼ってきたらちゃんと仕事しろって言いたいんだろ」

 

「おおっ? 理子の言いたいこともわかってきたねぇ。これは結婚も秒読みですなぁ。ぬっはっはっ」

 

「変な笑い方すんな」

 

 だけど簡単に人に頼ってはダメなこともわかってる。

 その辺のバランスは正直まだわからないが、今のオレが悪いかと理子に尋ねればそうでもないらしく、持ちつ持たれずな武偵業から理子の狙いを察するとズバリだったのか、変な笑いで変なことまで言う始末。ブレねぇな。

 

「うんうん。キョーやんのコマンドに『理子召喚』が常に加わったのは大きな前進だねぇ。この調子で『理子添い寝』とか『理子膝枕』とか加えていけば……グヘヘ」

 

「そんなバカみたいなコマンドを加える計画を練るくらいなら、1つでも人様の役に立つことをしろ。善行を重ねればお前も少しは物欲とか抑えられるだろうしな」

 

「物欲にまみれてるくらいが理子にはちょうど良いのですよ。仏みたいな悟り開いた理子とかキョーやんだって見たくないでしょ?」

 

「それはそれで怖いもの見たさはあるが……確かに気持ち悪いな」

 

 そこから理子のバカさ丸出しの計画が漏れ聞こえるが、発展した会話で互いに笑い合って終了。

 なんだかんだ言ってこうやってアホなことを言い合える理子は一緒にいて楽しい。

 途中から気づいてはいたが理子の影に潜んでたヒルダもセットで楽しそうにしてたので、周りから見てもオレ達は楽しそうに見えていたのかもしれない。

 

「……あっ。あややのところにも行かないとだった……」

 

「そいえばあややも交換留学で3年になったらいなくなっちゃうから、在庫処分セールやってたっけ。それ目的?」

 

「いや、新調したミズチをまだもらってないから、その受け取りに行かなきゃだ。そして留学の話も在庫処分セールの話も初耳。こりゃ次に壊したら発注が大変だな」

 

「そこは壊さないように頑張ろうよ」

 

「ちっ、正論で言い返せない……」

 

「舌打ちとかサイテー。これは理子りんほっぺにチューの罰ぅ」

 

「ご褒美の間違いじゃないか?」

 

「えっ……キョーやんにとって罰に、な、ならないの?」

 

「普通にならないと思うぞ」

 

「あわ……あぅ……」

 

 話も一段落して他愛ない会話でもと思ったら、すっかり忘れてたミズチのことを思い出して、あややの話から変な方向に発展。

 罰でほっぺにキスは罰にならないという普通の意見に、顔を真っ赤にした理子は「じゃ、じゃあ、はいっ」とか言って顔を近づけてきたものの、本当にやるとなると照れるのでダッシュ。逃走は慣れっこだ。

 そうして理子に追っかけられて一般教科の校舎に突入したのはいいが、結局クラスが同じなので意味がなかったことに気づいたのは、教室に入ってすぐのことだった。

 ……勘弁してくれ……

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