緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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 思いの外すぐに白雪と会って話ができたため、昨日の今日で学園島に戻ってきたオレは、昼下がりでまだ授業中なのもあまり気にせずに男子寮に戻り荷解き。

 

「まずは瑠瑠色金と話してみるか。緋緋色金の仕組みから考えると、たぶん理子のロザリオの瑠瑠色金でも意思はあるだろうから……」

 

 自室で整理をしながら、このあとに理子のところへ行こうかと思考したのだが、諜報科のちょっとした特性である静止画を記憶するスキルが部屋の違和感に気づく。

 感覚的なものなのでピンポイントとなると時間はかかったが、どうやら机に置いていた鞄が最後に置いた位置から微妙にズレているっぽい。留め具も外してあるし間違いない。

 

「小鳥は違うな。となると……」

 

 しかしこの感じは『あえて気づかせた』といった具合なため、犯人は侵入したことをあまり隠す気がないらしい。

 そうなると勝手に入ってこない小鳥は除外され、この部屋で自由に振る舞うやつに目星をつけてため息が漏れる。

 

「…………まずはこっちを片付けるか」

 

 隠したせいで下手に好奇心を刺激してしまったのはオレの失敗だし、不用意に放置したのも失敗だったから、物取りをしに来たわけではない犯人を怒るのは筋違い。

 だから期限がまだあるとはいえ、ウダウダと先延ばしにすることをせずに今日のうちに決めてしまおうと決断。これもこれで重要な案件だしな。

 

「となるとまずは……3つ当たるか」

 

 そうと決めたら本腰を入れて椅子に座り、携帯を取り出して時差の計算。向こうは朝だが問題ないな。

 それで3つある選択肢からまずはメールしか手段のない子にメールを送り、残った方の面倒臭そうなやつから片付けにかかる。

 

『………………何かな。私が夜型なのを知っててかけてるなら殺すよ?』

 

「やっぱり寝てたか。悪いとは思うが……そういえば何でお前って夜型なんだ?」

 

 どうせいつかけても不機嫌なことには変わりないので、大して気にせずに通話に応じた寝起きの羽鳥と会話するが、そういえば羽鳥が夜型な理由については知らなかったので、本題からは逸れるが尋ねてみる。

 

『…………君は目的の前にプライバシーを抉る趣味でもあるのか。別に大した理由じゃない。健康的な眠りはそれだけ健全な成長を促す。私はこれ以上の成長を望んでいないだけだ』

 

「成長? ああそうか。だからお前って胸がないんだな。納得だ」

 

『本当に腹が立つな。仮にも女性にそういうことを言うのは男として最低だと助言しておくよ。糞が』

 

 大した理由じゃないとか言うが、要は意図的にホルモンバランスを崩して女性ホルモンの分泌を抑えてるってことだ。

 それは自分が男として振る舞う上で必要なことだったのだろうが、今となってはそこまで必要ではないことのはず……いや、まだ本人にとっては必要なことなんだな。

 

「お前が女として堂々と1人で表を歩ける日はいつになるのかね」

 

『君が想像するよりもずっと早いさ。何故なら……私って天才だからね』

 

「その余裕をオレ以外の男にも見せてもらいたいね」

 

『それで失敗して責任を取ってくれるなら、今すぐにでもカイザー辺りのはらわたをぶちまけに行くけど?』

 

「ちっ、やめろ。リバティー・メイソンとは因縁を持ちたくない」

 

 寝起きでいまいち頭の回転が悪かった羽鳥だが、口を回すうちに調子を上げてきて、結局は話の主導権が向こうに渡ってしまう。長話は厳禁だな。

 

『それで、そんな馬鹿なことを言うために連絡してきたんじゃないだろ。私はもうひと眠りしたいから手短に頼むよ』

 

「やけに素直だな」

 

『それだけ眠いんだ。察しろ。君のように毎日を女性と遊んで過ごせるほど暇じゃな……』

 

「ああはいはい。言いますよ」

 

 本当に眠いのか疑問になるくらい好調な毒を吐く羽鳥だが、これ以上の毒を食らうのは精神衛生上よろしくないと判断してさっさと用件を済ませにかかる。

 

「お前さ、オレについてなんか書いた報告書とかリバティー・メイソンに提出してないか?」

 

『私だってあの欧州での出費の全てを賄うとなったら酷いことになるんだから、組織に負担させてやるために詳細レポートは提出したよ。そこに書いた内容がどこにどう出回るかは私の知るところではないが、そんなことを聞くと言うことは何か持ち込まれたかな』

 

「リバティー・メイソンに入らないかってのはワトソン経由で来たが、そっちじゃない。その勧誘の一環っぽい話が上手い話として持ち込まれたってことだ」

 

『残念だけど私はそれに関与してないよ。報告書にも君については役に立った程度のことしか書いてないつもりだし、あの程度でヘッドハンティングするほど安い組織でもない。何より君が嫌がることは割とやるが、好き好んで同じ組織に入れたがると思うかい? この私が』

 

「……ないな。こりゃ深読みしたな……っと、ちょうど2つ目の可能性が繋がったから切るわ。悪いな、寝てるとこにかけてよ」

 

『何やら誤解があったようで胸糞悪いが、謝罪を述べた相手を責め立てる趣味はない。だが君と私はもう欧州での関係ではないんだから、真っ先に疑うのはやめてもらいたいね。信用されないのは職業柄、嬉しくはないし』

 

「悪かったって。んじゃな」

 

 いつ聞いても説得力のある羽鳥の話には感心させられるが、ところどころでイラッとする言葉が使われて煽られるのは慣れたくない。

 しかしどうやら留学の件は羽鳥が関与してることはなさそうで納得。これ以上の会話はオレが精神的ダメージを負いかねないので、ネチネチと攻撃してくる羽鳥を払うように一方的に通話を切り、通話中に返ってきたメールに目を通す。相手は同じ英国人であるメヌエット。

 

「…………こっちだったか……」

 

 そのメールには用件だけを送ったオレのメールに対する答えだけが書かれて……いや、書かれてない。なんか悪びれもなく平然と書いた印象だ。

 メールには『ロンドン武偵高に交換留学する話が来たんだが、何かそうなる理由を知ってないか?』と書いたわけだが、その返事が『場所が違うだけで同じ武偵高なのですから、何か不都合があるのですか?』と来たもんだ。

 

「時間的にオレがデートした日にはもう動いてたなこいつ……じゃなきゃオレの帰国より先に教務科に話が行くわけないし」

 

 本当はこの線も違うことを証明して、アリアのとばっちりとして納得したかったところがあったが、こうなるとどうしたものかと悩む。怒るのも違うんだよなぁ。

 だがまぁ、考え方によってはメヌエットのこの行動も可愛くは見える。

 つまりオレを自分の目の届くところに縛りつけて割と都合のつくようにしたかったとも取れるわけで、オレとしてもメヌエットが近くにいる環境は嬉しくないわけではない。

 ただ、その条件としてロンドン武偵局への協力を任意ではあるがすることになるのは嫌だ。任意なんて言葉だけなのは目に見えてるし、アリアの代用としてならその要求も割増かもしれない。

 

「うーん……それなら向こうの方も確認しておくか」

 

 メヌエットの進言で事が起こったっぽいロンドン交換留学の全容が見えかけたところで、一旦メヌエットには同じような話がイタリアからも来てることを教えておきつつ、今度は書類にあった『バチカン』とかいう単語からイタリア交換留学がどこから湧いて出たのかを確かめるために、ただ1人だけ繋がる線からたぐり寄せる。

 

『はい。どちら様でしょうか』

 

「さて、誰でしょうか」

 

『はい? えーっと……誰でしょう?』

 

「バチカンに恨みのある影の陰ですよ」

 

『影の陰……ああ、猿飛さんでしたか。ごきげんよう』

 

 一応は欧州戦線が終わってから連絡先だけを教えてもらったメーヤさんに初めてかけたので、向こうも誰かわからなかったらしく、向こうにつけられた中二病な2つ名を言ったら通るんだから、もう嫌になる。

 

「突然で悪いんですけど、シスターローレッタと話をすることはできますか?」

 

『残念ながらローレッタ様はご多忙なのでお取り次ぎをさせてもらえても数日は要するかと』

 

「じゃあメーヤさんでいいや。実は新学期からそっちの武偵高に交換留学しないかって話が来てて……」

 

『まぁ! ということは猿飛さんと同じ学舎で学べるということですか? それは嬉しい限りです!』

 

 まだ決めてないですけどね。

 何故か喜ぶメーヤさんにはやんわりとそのことは付け足し落ち着かせてから、取り次ぎさえ時間がかかりそうなローレッタさんからの確認はもういいや。

 というかメーヤさんが知らないなら、書類にある『バチカンからの推薦』というのはローレッタさんでほぼ間違いない。

 

「でも、もしもそっちでお世話になることに決めたら、先輩は頼りにさせてもらいますのでよろしくです」

 

『こちらこそよろしくお願いいたします。猿飛さんはしっかりしてらっしゃるので、私が頼りにしてしまうかもしれませんがね』

 

 フフフ。と、これ以上に話すこともなかったので締めに入って口を開けば、笑いながらにそんなことを言われて苦笑。

 ……あれ? でもメーヤさんって聞いた話じゃ今が最上級生だから、オレが新学期から留学しても卒業してるんじゃ……いや待て。確か向こうの新年度は4月からじゃないんだっけか。

 ……うん。考えるのはやめよう。社交辞令的なアレだきっと。

 

「それでは失礼します。メーヤさんも魔女討伐はいいですけど、ちゃんと単位も取ってくださいね」

 

『フフッ。ご忠告、痛み入ります』

 

 なのでそれとなく探りを入れるような言葉で通話を切ろうとするが、どっちかわからない返事でまた苦笑しつつ通話を切る。留年は、しないよなきっと。

 だがこれでどちらの留学の話もどこの発端かは判明した。

 それを鑑みて、面倒臭そうなのはロンドン武偵局。リバティー・メイソン。バチカンだな。

 ロンドン武偵局への協力は確かに気は向かないが、選り好みして仕事をできるほど将来的に自由がある職業でもないのが武偵。時には不本意でもやらなきゃならないことも出てくる。

 リバティー・メイソンは世界中のどこにでもメンバーがいるから、ワトソン経由でどっちに行こうとどうせ知られるし大差ないが、何かと取り入ろうとあの手この手を仕掛けられるのは嫌だ。

 バチカンはあの2つ名からも相当に警戒されてて、オレを敵に回さないよう留学中に仲良くしておこうって腹だろうし、イタリアコースは割とストレスっぽいぞ。

 だからといってロンドンコースもどっこいどっこい。平穏無事に学生をやるなら留学しないのが1番のストレスフリー……かどうかはわからないな正直。

 冷静に考えたらバスカービルを中心に平穏とは無縁のやつらの巣窟だろここ。もっと冷静になったら武偵やってて平穏とか考えてるオレが異端だよなそうだよね!

 

「…………アホくさ」

 

 もう何を真剣に悩んでいたのかさえよくわからなくなったので背もたれに体を預けて天井に顔を向け思考をシャットアウト。もう1度なにを悩むべきかを考える。

すると部屋に誰かが玄関から入ってくる気配がして、一応は出していた書類を鞄にしまって確認のため自室を出てリビングに行くと、すぐに帰宅してきた小鳥がコートを脱いでいるところだった。

 

「そういやもうすぐ小鳥との徒友契約が終わるんだな……」

 

「あ、おかえりなさい京夜先輩。ずいぶん早かったんですね」

 

 そのちょっとだけ成長したかもな小鳥の背中を見て、不思議ともうすぐ満了となる徒友契約についてを思い出し、今はもう当たり前になったこの光景ももうすぐ当たり前じゃなくなることを再認識させられる。

 そうした意味のオレの呟きは幸い小鳥には聞こえなかったようで、特に驚いた様子もなく振り返って挨拶してきたことにもちょっと驚かされるが、オレの靴があるのを見て居ることはわかってたんだろうな。これも成長、なのか?

 

「青森は寒かったからな」

 

「京都はそこまで寒くないんですか?」

 

「最低でもマイナスはそういかないって感じだな。長野は雪が積もるからマイナスなんて日常だよな」

 

「ですねぇ。東京とかの冬は私からすれば肌寒いくらいで、マフラーやら手袋やらと重装備するほどでもないです。寒いは寒いですけど」

 

 小鳥には何をしに青森に行ったかは教えてないので、割と冗談で普通の話に繋がって軽く笑い合う。

 が、会話が途切れて視線が合うと何故かモジモジしてから視線を泳がせて夕飯の支度に動いていったので、その反応にどこか覚えがあるようなないようなだったものの、オレもまだ留学の件を片付けなきゃならないので自室へと戻る。

 夕飯まではとりあえず頭を抱えるかと腰を下ろしたら、携帯になんかメヌエットからの返信があって、メールに自宅の電話番号が書いてあり、かけろという命令文も一緒だったのでメールではまどろっこしいとでも思ったんだろうな。

 怒らせるとメールでさえ殺されるかもしれないので、大人しく指示通りに電話をし、1コールで出たサシェからあっという間に待機してたっぽいメヌエットに替わる。

 

『イタリアのどこの武偵高ですか。そして京夜をたぶらかした張本人の名を言いなさい』

 

「寝起きだろうに元気だねぇ」

 

『質問したことに答えなさい』

 

「答える必要があるのか? そんなのメヌなら推理できるだろうに」

 

『推理するための情報が圧倒的に不足しています。ですから推理するよりも聞いた方が早いと言っているのです』

 

 向こうは朝だから頭が回ってないのかなとも思ったが、そういや戦役のことはメヌエットは知らなかったんだよな。だからバチカンに繋がる推理もできないってことか。

 それでも頭に血が回ってきてないのはあるだろうが、ここで素直に話して先方に迷惑がかかるのは避けたいところ。ローレッタさんが死んじゃう。

 

「嘘はバレるから言わないが、イタリアのどこかは教えないし、誰が持ち出した話かも教えない。そんなことしてメヌが引っ掻き回すのを助けてやるのは友達のすることじゃない」

 

『その友達を奪おうとする悪を討とうと言うのです。こちらに正義があるのは明白。議論の余地すらありません』

 

「悪って……自分で言ってることのおかしさは理解して堂々としてるんだよな」

 

『……嫌です。京夜は私の友達です。なのにどこぞの誰とも知らない輩の勧誘が優先されるのは耐えられません。何よりも優先されるべきは友達なのですから』

 

 わがままだな相変わらず……

 理屈はおかしいのだが、メヌエットはメヌエットで友達と過ごす日々の思い出が欲しいんだろう。それを少し早めにした結果が交換留学。

 別にメヌエットなら焦らずともオレが武偵高を卒業したあとにでも、あれこれ手を打って欧州辺りに縛り付けることくらいはできると思う。

 

「要するにメヌはオレと一緒にいたいから自分の持ちかけた話以外は受けるなってことを言いたいわけだろ」

 

『断じて違います。京夜をおもちゃにしていいのは私だけですから、誰かの良いように使われるのが耐えられないと言っているのです』

 

「こらツンデレ。さっき友達がどうとか言ったのは嘘か」

 

『友達をおもちゃにしてからかうのはよくあることでしょう。私にとって京夜はそばに置いておくと面白い、おもちゃに近い感覚なのです』

 

「じゃあメヌは今、おもちゃを取り上げられて拗ねてる子供だな。可愛いやつめ」

 

『なっ!? くっ……京夜のくせに生意気な……』

 

 メヌエットが言ってることはたぶんだが全部合ってるんだろうな。

 オレを友達と思ってたり、おもちゃにしたかったり、会いたいって思ったり。

 それを言葉にしちゃうとこんな感じになっちゃうが、メヌエットがオレといることを嫌と思ってないことは確かだし、それはオレも素直に嬉しい。

 

「メヌの言いたいことはまぁわかったよ。だがこれはオレが決めることだから、メヌはその決定にとやかく言うのをやめてほしい」

 

『……即決に至らなかったということは、悩むだけのものがあるのでしょう。そう言うならば、決断した際には私に納得のいく説明を求めます。それで私を納得させるだけのものがなければ、大人しく私が持ち込んだ話に乗りなさい』

 

「メヌを納得させるだけの理由か。大学の卒論より難しそうな課題だな」

 

『それがわかっているなら、今ここでロンドンに来ると言ってしまえばよろしいのですよ?』

 

「…………いや、そんなオレじゃメヌはつまらないって言うだろ。友達を失望させたくはないし、あと数日は考えさせてもらうよ」

 

 別にロンドンに行きたくないわけではないし、ローマにも絶対行きたくない理由があるわけでもない。日本に残る理由も特にない。

 だからこそ悩んでいるのだ。

 この先、オレが自分で決めて進む道がどんな結果を出すかわからない。これが分岐点かもわからない。

 だがそんなのはみんな同じ。結果のわかってる道を進める人間なんて、全体で見れば1%にも満たないのは確かだし、結果は掴み取るもの。訪れるものでは決してないのだから。

 

「あ、でもメヌが『一緒にいないと泣いちゃうよ』ってことなら即決してあげてもいいぞ」

 

『そんな泣き落としで来られても嬉しくもなんともありません。何より京夜のために流す涙なんて、ひと滴でも勿体なくて私にとって圧倒的な損失です』

 

「ひでぇ言い様で……」

 

 こんなことになるならメヌエットに話さなきゃ良かったなとか思いつつも、これも悪運が成す日頃のあれなので諦めて話を締めにいくが、最後まで毒を吐くメヌエットは絶好調。羽鳥とこの辺で似てるのが嫌なところ。

 そうして毒を吐いてオレの反応を見てクスクスと笑う携帯越しのメヌエットの声を聞いて通話を切ってから、数秒後に届いたメールで『京夜は難しいことを考えると泥沼にハマるから、物事をシンプルに考えなさい』とのありがたいお言葉をいただき、結局は口出しするなという自分の言葉を早々に取り下げてしまうのだった。

 ――物事をシンプルに。

 将来のためだとか、損得勘定だとか、どこかの誰かの思惑だとか。そういうことではなく、自分がどうしたいのかを。

 

「……………………腹減った」

 

 なんだか進展しない悩みに何はともあれとでも言うのか、オレの腹の虫が「とりあえず頭に栄養をくれ」と訴えてきたので、要求通りに頃合いを見計らって自室を出てそのまま夕食。

 

「なぁ小鳥。日本とイギリスとイタリアなら、どれを選ぶ?」

 

「唐突ですね……何を比較してですか?」

 

 その夕食中に、何気なく小鳥に漠然としたことを聞いてみると、当然の反応をされたので「国として」と意味不明の返答をして答えさせる。

 

「凄い質問……でもそうですねぇ。私はイタリアとか良いと思います」

 

「その心は」

 

「どちらも……じゃないですね。私、本場のピザとかパスタとかを作ってみたくて、3年の修学旅行でイタリアは最有力候補なんですよ」

 

「…………へぇ。じゃあいつか本場仕込みのピザとパスタを食べさせてくれよな」

 

「えっ? えっと……はい。その時に私と京夜先輩がどういった関係になってるかはわかりませんが、ご馳走できる機会があれば必ず」

 

 割と即答でイタリアを選んだ小鳥の理由は意外にもしっかりしていて、武偵は関係なかったが、この決断力は戦妹ながらあっぱれ。見習いたいね。

 そうした意味で将来のご馳走の約束を取り付けて夕食を再開させ、それから寝るまでの間、ずっと自室にこもってうんうんと悩んでいたのだが、気付いたら朝になっていたのは言うまでもない。

 ――だが、オレの心は決まった。

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