緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet136

 

 メヌエットの誕生日祝いを無事に終えて羽鳥のアパートへと戻ってきたものの、時間はまだ昼下がりで体は起きまくってる。

 荷物の関係で1度は戻ってきたが、このあとは幸姉への贈り物を買って送るまではやれそうだな。

 そう考えながら部屋の扉を開けようとしたが、鍵が開いてやがる。

 

「…………どっちかね」

 

 扉には強引に開けたような跡はないので盗っ人の線は薄いが、捨てきれない可能性ではあるため、一応は警戒して音もなく部屋に入る。

 元々が物のない部屋だから盗る物すら皆無で、無くなったものはほぼわかると思うが、リビングに人の気配があるからそちらに一直線。

 細い廊下を抜けてリビングに入った直後、横から誰かの腕がぬっと現れてオレの喉へと持っていたメスを突き刺しに来た。

 普通なら反応が追い付かないレベルの鋭い刺突だったが、あらかじめ警戒はしていたので物理的にメスの届かない位置に退いて腕が壁に阻まれてオレの目の前で止まる。あっぶねぇ。

 

「……3月のお帰りじゃなかったのか?」

 

「おや、腕を怪我して最前線からは遠ざかっていたと聞いていたが、なかなかの反応じゃないか」

 

「ジーサード経由だな。あいつも個人情報ガバガバにするから困る」

 

 いきなりのご挨拶をかましてきたくせに、何の悪びれるようなこともなくメスを引っ込めて姿を現した家主、羽鳥は、何が楽しいのか手に持つメスをクルクルと弄びながらオレをリビングへと招き入れ、冷蔵庫から水を取り出してくる。

 

「約束通りに部屋の片付けはやってくれたようだが、あまり君の生活臭を出さないでくれたまえ。入った時に思わず吐きそうになった」

 

「目に見える私物は寝室にまとめてあるが、お前の言う生活臭とやらはどの基準なんだよ」

 

「君がいるという痕跡があった段階でアウトだ」

 

「それは遠回りに死ねと言ってるも同義だ。その理屈だと片付けをした時点でオレはもうアウトだろうが糞が」

 

「ああそうなるのか。じゃあ譲歩して私物が見えたらにしておいてあげよう。感謝したまえ」

 

 とりあえず荷物を置きつつ会話をして、こいつが帰ってきたのが1時間ほど前なのを把握。まだ荷ほどきもしてないし、冷凍庫に入れていた刺身のタコが良い感じで解凍されてつままれているからな。

 しかしいつ会っても人をイラつかせる天才の羽鳥はオレが同じ空間にいるだけで不快なようで、毒舌というか独裁者みたいな振る舞いに拍車がかかってる。つまりは調子が良い。

 

「……んで、帰りが早かった理由は?」

 

「愚問だね。そんなの私が『優秀』だからに決まっているだろう」

 

「…………オレがいるのにわざわざ戻ってきた理由は?」

 

「それこそ愚問だろう。本来なら次の仕事に経由なしで向かうところだったが、君が私を呼んだのではないか」

 

「断じて呼んでないね」

 

 そんな羽鳥に合わせてやり取りしてたらストレスがハンパないので、スルーできそうな部分は右から左に流して話を強引に進めるが、何故かオレのせいで羽鳥が戻ってきたっぽいことを言うので困る。オレが何をした。

 

「先日にもらったメールの内容。あんなものを読まされて私が片手間に仕事をやると思うのかい? 君はそれほど馬鹿げたことをやろうとしてることを自覚すべきだ」

 

「問題点をメールすれば済む話だろう」

 

「なぜ私が君のために長々と1万字を越える内容のメールを作成しなければならない。それだけに留まらず討論になることは必至だから、こうしてインターバルで来てやったんだ。これこそ感謝してもらいたいね」

 

 どうやらオレが先日に送ったメールが原因で戻ってきたらしいことをガミガミと言ってきた羽鳥だったが、その割には行動が伴う分、余計に手間がかかってる気がするので矛盾が生じてるようにも思え首をかしげる。

 その引っかかりにオレが気づいたのを察した羽鳥は、ここまでは前置きだみたいな雰囲気でソファーに座ってつまんでいたタコを食べて落ち着く。

 

「本来であれば私も関心はあっても手は出さない案件だったが、なかなかどうして君もタイムリーな男だよ」

 

「タイムリー?」

 

「私がベルリンにいたのは、そちらで調査をしていたからだが、その現場にはカツェとシスターメーヤも同行していた」

 

「またいるだけで喧嘩しそうな面子ですこと」

 

「だから私が仲裁として割り当てられた。それだけが理由ではないが、これも師団と眷属の停戦協定の一環だと考えてくれたまえ」

 

「…………んで、何がタイムリーなんだよ」

 

「私達もまた、君の話に繋がることを調べていた。そんな話だよ」

 

 なかなか本題に入らない羽鳥の言い回しは今に始まったことではないが、自分で時間が惜しそうなことを言っておいてのこれはアホなだけなので、もう羽鳥ペースでやらせてやる。これなら文句は言えんからな。

 そうした前置きの前置きを終えてようやく話を進めた羽鳥は、さっきまでベルリンで何をしていたのかをバカに説明するがごとく懇切丁寧に話してくださり、その全てを聞き終わってから1発だけ殴ろうとしたが、あえなく回避されてしまった。

 

「ちっ。話はイラつくレベルで理解できたが、聞く限りだと成果は芳しくなかったんだろ」

 

「だからこそだろう。もしも君の話が確率論で言って高い可能性を秘めているなら、私としても解決への近道。あれの影に怯える日々も終わって一石二鳥だ」

 

「前は引き止めてた側のくせにな」

 

「以前と今とで状況が違うということだよ。君だって以前のあれこれがあったから今回の話に至っているわけだろ。それは人が学ぶ生き物だという何よりの証さ。バカなりにだがね」

 

「ひとこと多いんだよ」

 

 そうした話を終えて羽鳥の考えは理解したものの、カツェも貧乏くじを引いたな。あの子は別に関係ないだろうに、中途半端に割り込まれたから魔女連隊の代表として駆り出されたんだろうし。

 とまぁ、今回のカツェの役回りには同情しつつで仕事の延長としてこっちに来た羽鳥の事情を考えて、オレの話はしっかりと練らなきゃ恨みを買う。

 そんな恨みは御免被りたいので、オレも毒吐きの生意気な表情から真剣な表情へと変わっていた羽鳥に合わせて、いま出せるだけの情報から話を作戦へのシフトさせていった。

 

「はっ? 幸姉と会った?」

 

「正確にはテレビ電話で会話しただけだが、それがカウントになるなら会ったことになる」

 

 話も一段落して、今日中に実家へ送り返したい物があると呟いたら、息抜きも兼ねて羽鳥がササッと要求の品のある店に案内してくれて助かったが、その帰りに先ほどの話でカツェ経由ながらも幸姉と会ったことを右隣を歩きながら何気なく話すもんだからちょっと驚いてしまう。

 そういやこいつ、幸姉とは入れ違いで学園島に来たから直接の面識はないんだよな。

 

「助言ってことだろうが、あのカツェが幸姉との繋がりを持ってたことに驚きを隠せない」

 

「在学時代に勝手にアドレスを交換されたらしくてね。カツェが消しても定期的にメールが来るし、それで機種変更やアドレスを変えたら負けだとか変なプライドで今まで放置してたのを利用させてもらった」

 

「…………まぁタバコを吸ってることを気にかけてたし、世話好きの頃にでもブラックリスト入りしたんだろうが、安いプライドだこと」

 

 テレビ電話だと聞いて、このウザいのが幸姉に直接の迷惑はかけてないことに安堵しつつ、今後も関わらないでくれと一応は注意しておく。

 こんなのと幸姉が組み合わさったらどんな化学反応が起こるかわかったもんじゃない。

 

「それと君の今日の行動から色々と推理をしてみたのだが」

 

「なんだよ」

 

「貧困生活を余儀なくされて叩き売りされていたデビルフィッシュを小分けにして食べていた、にしてはあのたこ焼き器は手間だね。つまりここ英国において食文化として普及の微妙なたこ焼きを誰かに振る舞った。それから私の調べでは確か今日はメヌエット・ホームズの誕生日。さらに前回、君はそのメヌエットにお呼ばれして面識がある」

 

「オレがメヌエットと仲良く誕生日パーティーをやってたらどうなるんだ?」

 

「こうなる」

 

 オレとの沈黙を嫌ってるのか、やけに口を開く羽鳥が今度はオレの直近での生活から何をしていたかを推理してきたのだが、恐ろしいまでに当たってて引く。

 今さらシラを切っても仕方ないからこいつには肯定で通しておくと、自分が仲良くできないことを現実的に理解しているからか、その腹いせにオレへと八つ当たりの裏拳が炸裂。

 当然ながらテレフォンパンチだったのでしゃがんで避けたのだが、追撃に逆の手のブローが腹に迫りバックステップでギリギリ躱す。危ねぇな! 左手に紅茶と酒を抱えてんだぞ!

 

「あ、そうそう。戻ったらすぐに話を詰めるからね。今夜の最終便で私もまたバチカンに向かわなきゃならないから、ねっ!」

 

「おうおう行けさっさと行けクソが。メーヤさんとローレッタさんによろしく、なっ!」

 

 2度も避けられて諦めたように会話を繋げた羽鳥だったが、 改めて近づいたオレに回し蹴りを見舞ってきやがったので、リーチの限界で躱してカウンターの回し蹴りをお見舞いしてやるが、これも空振り。

 そんな物騒なやり取りを道端でやってるもんだから、人の怪訝な目が痛くて、注目されるのが苦手なオレに対するこいつの精神攻撃だったことに遅まきで気づいてしまう。マジで腹立つ。

 

「さて、君への嫌がらせもこの辺にして」

 

「一生やるな」

 

「『右腕』。咄嗟に使わないように意識しすぎだ。もう大丈夫だと慢心してまた怪我するのは治す側として困るが、まだ治ってないという小心も困る。自分の体だからわかるだろうけど、頭で考えて使わないうちは役立たずもいいところだよ」

 

 そんなオレをちょっと笑ってから、今度こそ嫌がらせをやめたはいいが、八つ当たりに見えた今のがちゃんと意味があったことを告げてきてギクリとする。

 言われて気づいたが、羽鳥の攻撃は全てオレの右側からしか来なかったので、やろうと思えば回避ではなく右腕でどうにでもできたかもしれなかった。

 オレの右腕はもうほとんど違和感もなく使えるのは、この頃の経過から感覚的わかっていたが、羽鳥の言うように咄嗟に使うことは意識的に避けていた。

 

「……感謝はしないぞ」

 

「あまり私を失望させないでくれたまえよ。じゃなければ私はまた君を『壊そうとする』かもしれないからね」

 

「それは本当に勘弁、だ」

 

 そうした警告をした羽鳥の意図はきっと、不甲斐ないオレの姿を見たくない。とか可愛い理由ではなく、羽鳥にとっての最後のストッパーがちゃんと機能してくれないと困るから。

 まぁ言い方はいくらでも変えられるが、少なからずオレへの信頼があるから会話もするし関わりを切ろうともしない。ワトソンもそれを不思議に思うくらいにはな。

 そんなオレの言葉を確認するように、また唐突に拳を突き出してきた羽鳥だったが、今度はオレもその拳を右手で受け止めて微動だにしない。

 

「女の拳を止めたくらいで得意気にならないでほしいね」

 

「……そういやお前って女だったな」

 

「またそういうことを言って……私だって傷ついちゃうんだからね」

 

「お前が女の武器を身に付けるには経験が足りなすぎる」

 

「じゃあ君が経験値を分けたまえ。私に負けないくらい女と遊んできただろう?」

 

「酷い誤解で非常に不快だ」

 

 これくらいビシッと決めなきゃと思ったものの、羽鳥はどうしても非力な女なのを言われて思い出し、ちょっとカッコがつかなかったが、わざとらしい女の涙を使う羽鳥の安い芝居は見るに耐えない。普段はキレッキレの演技派のくせに、何で女らしくすると安くなるのか。

 ……どうでもいいからか……

 

「ハハッ。君の不快は私にとっての愉快だよ。これからも私に不満そうな顔を存分に披露してくれ」

 

「はいはい、その性格を改善する気なしのお前に今更なにを言ったところで変わらんし、せいぜい人の不幸を笑って不幸になれ」

 

「失敬な。私は人の不幸を笑うほど人間的にクズではない。ただ少しだけ高くなってる鼻が折れる瞬間が好きなだけだ」

 

「それも大概だアホ」

 

 どこまでもブレない羽鳥を見てると、自分の生き方に自信を持つことの難しさをつい忘れそうになる。

 羽鳥の性格は見習うところがないが、その在り方はオレよりもきっと人生を精一杯で生きようという意思があって嫌いではない。

 だからオレは、人間として嫌悪すら覚えるようなやつなのに、心の底からこいつを嫌いにはなれないんだろうな。

 血の呪いとやらと向き合ったこいつは、どこか清々しいほど心が自由で……自由すぎて殴りたくなるな……

 そうしてやっぱり嫌いなことには変わりないことを再確認して、拳をわなわなさせたオレをまた愉快そうに笑う羽鳥に怒りの飛び蹴りをかましてやるのだった。避けんなこらぁ!!

 

「…………まぁこんなものだね。あとは日本にいるジャンヌに動いてもらって真偽のほどを確かめてもらって」

 

「妥協した感じが否めないんだが」

 

「君の草案レベルをここまでにしたんだから文句を言うな」

 

 アパートに戻ってから本当に時間を惜しむように話をまとめ始めた羽鳥は、いま考えられる最善をひと通り出し切って、これからやるべきことも優先順位を決めて解決に向かわせる。

 それから荷物を作り直して完全に出立の準備を完了させた羽鳥は、いつもの漆黒のコートを羽織って最後の毒を吐いてくる。

 

「あとは君がメヌエットからの協力を得られるかが重要になってくるが、セクハラで訴えられたりしないでくれよ」

 

「オレが何をすると思ってるんだ。お前こそ、いざって時に仕事だとか言ったら殴るからな」

 

「酷い。こんなか弱い女の子を殴るだなんて……」

 

「さっさと行けよ、うぜぇ」

 

「ハハッ。今度はどこで会うことになるか、今から考えるだけで反吐が出る」

 

 笑いながらに胸糞悪いことを言って部屋を出ていった羽鳥には姿が見えなくなってから中指を立てておき、やっと1人になって心の底から落ち着いてソファーに座ると、本日最後のお仕事としてさっきまでまとめていた内容と頼み事をジャンヌにメールで送って終了。

 明日はキンジとメヌエットの対面があることも頭の片隅に置きつつ、明日も明日でやっておきたいことがあるため、早めの就寝。

 翌日。

 キンジ経由で間宮からアリアの所在を聞き出してから、面倒なこともなくバッキンガム宮殿にいるっぽいアリアの周囲を偵察。

 今回の目的は侵入とかではないので警備などは無視して、ひたすらにバッキンガム宮殿の周辺を観察。

 日本人特有のやたらと写真を撮りたがる風の観光してる感じで1時間ほどは見てみたが、オレが求める成果は得られなかった。やっぱり難しいな。

 キンジがメヌエットと会うのは夕方頃と聞いていたので、昼下がりになる今からは緊迫の数時間だな。

 

「バカと天才は紙一重とは言うが、生粋の天才とバカと天才のハイブリッドは果たして合うのか……」

 

 これから対面する2人をそんな風に評価しながら、先日の件のお礼にと今夜はワトソンが夕食を奢ってくれると言うので、その合流のために移動。食費が浮くので本当に助かる。

 助かるついでに合流してすぐワトソンに付き合ってもらって、とある場所に行ってもらい、今後に関わることをある程度で決めたわけだが、この時のワトソンの嫌な笑顔は忘れないでおこう。お前がニヤけることでは断じてないからな。

 

「まあ! 猿飛様、お久しぶりでございます」

 

「本当にヘルプで呼んだのか」

 

「君はもう少しトオヤマと情報共有をしたらどうだい?」

 

 それを終えてから、丁度いい頃合いになったのでメヌエットとの面会をしに行ったキンジが押し付けた最強メイド、リサを拾いに来たのだが、相変わらずの美人でお行儀の良いリサにキンジを殴りたくなる。

 とはいえキンジから話だけで聞いていたので、ロンドンで会うのはこれが初。改造したセーラーメイド服を着こなしたニコニコ笑顔のリサを見ると、ニタニタと嫌な笑みを浮かべてばかりだった羽鳥との落差で涙が出そうに……

 

「ど、どうなされました!? リサが何かいたしましたでしょうか?」

 

「いや……リサがあまりに眩しくて目をやられただけだ。これからもリサはリサのままでいてくれ……」

 

「は、はい……よくわかりませんが、猿飛様のご期待に添えるよう努力いたします」

 

 実際に少しだけ泣いちゃったら、心配したリサがハンカチを渡しながら言葉をかけてくれ、ドン引きしたワトソンには脇腹を手刀で刺す。

 そんな3人で改めて移動をして、ワトソンの行き着けとか言うレストランで今夜はディナーにありつき、武偵高の制服でフルコースメニューを食べるという奇妙な絵面を完成させたが、ブルジョアなワトソンが店を貸し切っての食事だったので気にしなくても良かった。奢ってもらってあれだが、なんか悔しい。

 そうした格差社会を実感する夕食の最中に、キンジからワトソンにメールが届き、明日にでもリサを寄越すようにと指示があった。

 

「トオヤマは上手くやってるのだろうか」

 

「ご主人様はしっかりとご自分の役目を果たされる方です」

 

「リサを呼びつけたってことは、明日以降も一応はメヌエットのところにいられるわけだ。キンジにしては頑張ってるんじゃないか?」

 

 メールに指示から不安そうなワトソンと自信満々のリサとでリアクションが極端だが、あのメヌエットに門前払いを食らわなかったならキンジもそれなりに頑張ってるはず。

 それを経験からわかるオレの言葉には、ワトソンもリサも謎の説得力を持つからか首をかしげたが、ポジティブな意見ならいいかと納得したようだった。

 夕食を終えてアパートに送ってもらう途中、リサが突然「今夜は猿飛様のところで厄介になってもよろしいでしょうか」と言い出し、キンジから預かった身のワトソンも「明日にはメヌエットのところに行かせるし、1泊くらい面倒を見てやってくれ」と割とすんなり許可するから困ってしまう。

 このリサの言動についてはなんとなく理由がわかるから、浮気とかそういう感じのやましい気持ちが一切ないのは救いなんだが、オレも健全な男子高校生である。

 

「オレはソファーで寝る。リサはベッドで寝ろ。以上、解散」

 

「お、お待ちください猿飛様っ!」

 

 そうしてリサを押し付けられたオレは、戻った部屋で速攻でそんな指示をして寝ようとしたが、やはりリサも狙いがあるから食い下がる。やめてくれー。

 

「猿飛様はとても心地よい匂いがして、リサは猿飛様のお側でならご主人様といる時と同じくらい心安らかに寝ることができそうなのです。ですからどうか今晩だけお添い寝を……」

 

「…………オレも一応は男なんですよ。隣にリサみたいな子がいたらオレがジェヴォーダンの獣になっちゃったりするんだからな?」

 

「リサは猿飛様がとても紳士であることを存じ上げておりますよ」

 

 ぐはっ! 眩しいっ! 眩しすぎるっ!

 リサも忘れがちになるが、純粋な人間ではなく、玉藻様のような化生に近い人間。だからオレの匂いが同様に本能を刺激するから、部屋に入ってからはなんか目もトロンと微睡んでいる。

 だがリサもこれが例外だからと凄く強く言って懇願するし、なんか謎の信頼もするので、そうなるともうオレも泣きそうなリサを1人で寝させられなくなる。ズルいよこの子!

 しかしまぁ、実際にベッドで一緒に寝てからは会話も少しですぐに寝たリサは、なんか気の緩みからなのか獣の耳とモフモフの尻尾を出してしまい、それを見たらなんかオレも気が紛れて、ほどなくして眠りに就くことができたのだった。

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