「…………わかった。感謝する」
キンジとアリアがキノクニに到着しただろう165時間が経過して、準備を整えたオレ達が一応の警戒をしながらパトラの占星術の結果を逐一で待っていた頃。
ようやくそのパトラから自発的な連絡が来て、ジャンヌが応対する中で「行くぞ」とジェスチャーで示したのを見てオレ達もすぐに動き出す。
時間は午後2時を過ぎた頃だが、ここから現地に行ってどのくらいを過ごすのかわからないとなると、深夜まで及ぶ可能性も考慮しないとか。
「いよいよだね。こういうのはあまり発言すべきではないのだろうけど……」
「今さら言い淀んでどうすんだよ」
あの森林地帯で夜を過ごす可能性を考えたらゾクゾクして体が震えてきたが、旅館を出て車に乗り込むまでに羽鳥が歩きながら口を開くのでそちらに耳を傾けた。変なこと言いそう。
「いや、性分なのかもしれないが、少しワクワクしている」
「……それが空回りしないことを願う」
確かに発言としてはちょっとあれだが、陽陰を逮捕すればおそらく世界レベルの貢献になるから、表沙汰にならないまでもそれなりの報奨はどこかしらから貰えるだろうし、そんな大捕物を前に気分が
まぁこいつの場合はそういった『後のこと』ではなく、逮捕するまでの過程に対してワクワクしてるのがわかるから、油断とかとは縁遠いのは確かだが、やる気に満ちた人間ってのは得てして油断と似た状況を起こすものだ。
それが心配だから感情のコントロールはしっかりしろと言っておきつつ、全員が車に乗り込んでいよいよ出発。
「ここからしばらくは忍耐勝負にもなる。各々で対策はしているだろうが、いざという時に動ける準備だけは怠るな」
移動の道中で改めてブリーフィングをしながら携帯食料を配布するジャンヌは、いつにも増して真剣な表情で安心する一方、少し余裕がなさそうだったので、携帯食料を受け取る時にその手を取ってみると、少しだけだが震えていたので、頼りになるやらならないやらのリーダーのフォローをしておく。
「何が起きても連帯責任だ。それにこの面子でカバーできないような大ポカするほど、お前はダメリーダーなのかよ」
話の流れを切るように割り込んだオレの言葉にちょっと面食らったようなジャンヌだったが、すぐに物言わず集中するセーラ、趙煬、羽鳥を見回してから、最後にオレを見直すと、その時にはもう手の震えは止まっていた。
「メルシー。京夜。私が至らなかった時は、よろしく頼む」
「任せたまえ。ジャンヌが見惚れる華麗なフォローを約束しよう」
「お前には言っていな……いや、私情はやめよう。よろしく頼む」
「……素直に受け入れられると困るのは全て君のせいだな」
「オレを指すな」
この面子を指揮するとなって重圧が凄かっただろうジャンヌのフォローは上手くいったが、返事をしたのが羽鳥なのが気に食わないし、珍しく発言を受け入れられたのに微妙な表情をした羽鳥が運転しながらもオレをバックミラー越しに指すのですかさずツッコむ。お前の普段の行いのせいだろ。
ここに至るまでに耳にタコが出来るほどしたブリーフィングで作戦内容は完全に頭に入った状態。
体調もほぼ万全で装備も不備はない。
「では頼むぞ」
「戻ったらフランス料理のフルコース、忘れるなよ」
「フフッ。了解だ。その時は2人きりでもてなそう」
だが、いざ行くとなるとやはり嫌なものは嫌で、オレがこれから潜る森林地帯の前で降ろされて、一応は約束しているジャンヌ奢りのフルコース料理で奮い立たせる。
2人きりでというのは別にどうでもいいのだが、ちゃんと約束を守ってくれそうなジャンヌは、そうして笑顔で返してから自分達の作戦ポイントに移るために車を走らせていってしまい、独りぼっちになったオレも棒立ちしてるわけにもいかないので、意を決してこれからどんどん暮れて寒くなる森林地帯に足を踏み入れていった。鬱だ……
「我ながら無駄なサバイバル術を習得してる……」
普通なら方角すら危うくなりそうな森林地帯をコンパスもなしに以前に来たポイントまでほぼタイムロスなしで到達した自分にこの上なくアホなスキルだと自虐。
こんなスキルがあるからこんな役目になってるんだよなぁ、とか思いつつ目印にしていた点滅灯を取り外してその木に登り、簡単な自分のスペースを作り上げると、今度はオレの居場所を知らせるために渡された信号弾を真上に撃ち出す。
信号弾が鮮やかな赤い軌跡を残して天へと伸びるのをのんびり見ていたら、突如としてオレのすぐ横の木の幹にストン、と矢が突き刺さって心臓に悪すぎるが、事前に聞いていたからビックリも半分くらいで収まったかな。
その矢には紙が結ばれていて、えらく古典的だが矢文ってやつを受け取って紙を広げて読むと「巨視報で改めて視たところ、確実に深夜まで及ぶので頑張れ」とあってげんなり。
ジャンヌとセーラはオレ達3人のポイントを見渡せるポイントで待機してるので『試し射ち』も兼ねてセーラに矢文をやってもらったが、問題なさそうだな。
残念ながらオレの居る場所では携帯が役立たずになっていたので、高性能の無線――それなりにゴツい――を配布するかと考えたが、作戦では耳に仕込むインカムを使いたいし、装備を増やすと迅速性を求める移動の妨げになるので却下した。
それにセーラには長距離狙撃の役目もあるので、その精密さを確認する意味でも矢文はやるべきと羽鳥が推してきたわけだ。
とにかく、この状態であと8時間近くはいなきゃならないとあって、ニット帽と着込んできた厚手のファーコートに体を小さくして入って暖を取りつつ、ちまちまと持ってきた携帯食料と水を適度に摂取して、それでも集中を切らさないようにしながら次の知らせを待ち始めた。
「さぁ、いよいよ時間も夜の11時を回ってまいりました」
無駄なエネルギー消費やらを避けるためにほとんど動かないでいたのだが、あまりにやることがないもんだから、夜になって目が暗闇に慣れてから周辺のわずかな変化を観察して実況するという訳のわからないことをして遊んでいたのだが、3時間もやってるとさすがに飽きて時報みたいになってしまった。
そうして精神の安定をなんとか保ってひたすらに知らせを待っていたオレに、ついに動きが。
夜の闇を切り裂くように飛来した矢がオレのすぐ横に突き刺さって、それについていた矢文を読むと「作戦を開始する。空を見ておけ」とあり、撤収の知らせじゃなかったことに安堵しつつ、いよいよ来た瞬間に一瞬で切り替えて集中。
「よっと」
その準備運動も兼ねて登っていた木の頭頂付近まで登って森林地帯から顔を出したオレは、星すら見える夜空に呆然としつつも、すぐに周囲へと視線を向けてその変化を見逃さないように目を凝らす。
「星伽神社があの辺りだから、最初はあの上辺りに何かあるか」
作戦の開始はセーラの狙撃から始まる。
矢文からその通知が来たことから、陽陰は確実にこの近くに来ている。
そしてセーラの巨視報を信じるなら、緋緋神も星伽神社に来てしまったと考えていいが、その結末は星伽神社の敷地内でということになる。
陽陰がここに来たということは、その結末を見届けるために他ならないので、そのためにかなりの高性能の式神を上空に飛ばして望遠、透視、盗聴をする。
そこまでするなら、おそらくはその時は式神の視界も陽陰の視界も完全に緋緋神に向いている。
そこにセーラが奇襲を仕掛けるわけだ。
――キィィイイイイイイイン!!
その奇襲が成功した証として、羽鳥の武偵弾の1つである音響弾が炸裂。
セーラの矢に仕込んだそれが炸裂したなら、陽陰の放っていた式神は今ので射ち落とされたはず。
だがそれは陽陰にオレ達の存在を知らせることになるため、邪魔が入ったとなれば陽陰も撤退か排除の2択だが、姿を頑なに見られないようにしてきた陽陰が、そのリスクを負って何人いるかもわからないオレ達に仕掛けてくる可能性は限りなく低い。
だからオレ達はその撤退を妨害しつつ詰める。
ジャンヌ達の超能力者による分析によれば、式神で術者を乗せて飛ぶことも可能だろうということで、作戦では次の狙撃は……
そう思っていたら、次の変化が森林地帯の上で起こり、少し離れたところからまばゆい光が発生。
今度は撤退する陽陰の式神に撃墜ついでに閃光弾が射ち込まれたのだ。
その光を頼りに着弾点を見極めてオレも行動開始。瞬間記憶で方角と距離をおおよそ記憶して木を滑り降り、そこ目指して最速で森林地帯を駆け抜ける。
ファーコートが邪魔だが、どこかに放って回収する時――不法投棄になるから――に面倒なのでそのまま走り続け、今も足止めをしてくれてるだろうセーラとジャンヌの奮闘を無駄にしないように、近づきながらどんどん集中力を上げていく。
「さて、どんな顔なのか見せてもらおうか、土御門陽陰」
未だかつて誰もその存在を明確にしたことのない完全なる犯罪者、土御門陽陰の姿を捉える瞬間が近づいて、羽鳥ではないが少しワクワクしてるオレは、今までどこ知らぬところで好き勝手にやってくれた礼はしてやろうと意気込んで、記憶したポイントのすぐ近くまで到達。
そこまで行くと耳に仕込んだインカムも有効範囲になったのか、急にジャンヌや羽鳥の英語が飛び交ってきて和訳に努める。
『足止めには成功している。だが有効打の一切が通らない。どんな方法で切り抜けてくるかわからんから急げ!』
『もうすぐ着くけど、一番乗りは誰になりそうかな』
『あと2分ほどだ』
「ならオレが一番乗りだな」
どうやらまだ誰も陽陰の元には到達してないようで、5分以内には出揃いそうだがオレが一番乗りになったらしい。
なのでジャンヌや羽鳥の警戒の声を聞きつつ、まずはオレが陽陰とぶつかるため、聞こえてくる戦闘の音を頼りに急接近。ついに少し開けた空洞地帯にファーコートを脱ぎ捨てて足を踏み入れた。
「お前が、土御門陽陰だな」
「ほう。誰かと思えば、あの時の小僧か」
空洞地帯の中心で立っていた男は、目視でオレを確認して思い出したように低い声でそう返し、その言い回しは香港で喋っていた陽陰にそっくりだ。
陽陰はオレの出現にどこか苛立つような雰囲気を出しつつも、余裕の態度を崩さずにオレの専門を知ってか周囲に発光する札を投げて空洞地帯を照らし出してしまう。
その隙にセーラが狙撃で陽陰を狙ったものの、飛来した矢は陽陰に届く前に突如として発生した炎に焼かれてしまう。
「颱風の魔女と銀氷の魔女がさっきから鬱陶しいのだが、無駄なことをやめるように言っておけ」
「無駄でもないだろ」
発生した炎は言うまでもなく陽陰が何かしてるのだろうが、そうして超能力を使わせ続けているセーラとジャンヌの行動は無駄ではない。
その辺でオレに知識がないと踏んでいたのか、陽陰も軽く舌打ちするが問題はないらしく、その表情から余裕は消えない。
明るくなったことで明確になった陽陰は、アホかというくらい染め抜いた金髪にモデルでもできそうな端整な顔ながら、耳には両方ともに2つのピアスがある。
年齢は20代後半ってところで、身長は180センチ近くあり、漆黒のロングコートを着ているから体重まではわからないが、太くはない。
佇まいがどこか素人っぽく、今もコートのポケットに手を突っ込んで不測の事態に対応する体勢とは程遠い。
人前や現場に出向くことがなかっただろう陽陰の性格や性質が顕著に出てるようだが、それに油断するような段階にオレもいない。
「今日がお前の人生謳歌の最後の日だ。緋緋神なんかに釣られて日本に来たのは早計だったな」
「その口ぶりからすると、俺の動きを読んで罠を張っていたか。ロンドンにいた時に颱風の魔女が離脱したのはこちらに荷担するためか」
「それを知ってるってことは、お前もイ・ウーの原潜に潜んでいたか?」
「あれの中には特別製のネズミの式神を仕込んでいたからな。シャーロックには気づかれていたが、放置していたところを見ると、あれも貴様の動きを条理予知した上で円滑に進めたわけか。嫌な予感はしていたが、老いぼれの芝居に騙されていたとはな」
何やらオレ達にではなくシャーロックに悪態をついた陽陰だが、あのじいさんが知らんところでファインプレーをしてくれたようなので、今度会った時――会えると思ってないけど――にでも礼くらいは言っておくかと考えつつ、時おり飛来するセーラの矢が焼かれる現象を観察。
炎の壁にぶつかってる、というのが見た感じではあるのだが、陽陰に動いている様子はないので、見て防御してるわけではないだろう。
つまりは自動防御の部類と判断し、オレも陽陰への接近は慎重にならざるを得ない。これで近づいて火だるまにされたらひとたまりもない。
「だがまぁ、あの魔眼の魔女のお気に入りを消せるのであれば、僥倖とも言えよう。あとは貴様に荷担した輩を全員、排除してしまおうか。俺に噛みついた報いは死でしか受けられんと身をもって味わえ」
警戒するオレに対して坦々とした口調で死の宣告をする陽陰は、全く動く動作を見せないので仕掛けてくるにしてもタイミングが掴めない。
だがオレの死の回避はオレの理解を経由せずに反応するため、突如として大きくバックステップした体に足がもつれて転がるように後退し、何事かと前方を見ていたら、オレのいた地点にいきなり炎が弾けて轟音を轟かせる。
「ほう」
意味のわからない現象に仰天して動きが止まってしまったオレを見て感心したような声を上げた陽陰だったが、すぐに追撃の意思のようなものを見せてきたので立ち上がり思考も回復させたものの、セーラの矢がそれを防ぐように陽陰を攻撃し追撃は来ずに防御の炎が噴き上がる。
どうやら攻撃と防御を同時にはできないようだが、何の前触れもなく来られるから対処のしようがない。
「思考してるならまずは口にして行動することを勧めるよ」
そんな未知の攻撃に足踏みしていたら、陽陰の後方からとインカムからイラッとする声が聞こえてきて、それに陽陰も振り向く仕草をした瞬間、陽陰の頭上で炎が傘のように燃え広がり何かを防御したようだったが、すぐに炎は消えてしまう。
その次にすかさず銃声が響き、陽陰に向けて羽鳥が発砲したようだが、これも炎に阻まれて通じなかった。
が、銃弾は炎で燃やされたわけではなく、何か硬質な物体に阻まれたような衝突音がしたので、炎の温度は鉄を一瞬で溶かすほどではなく、炎とは別の障壁も存在することがわかった。
「燃焼を阻害する薬品は効果なしか。つまりその都度で燃焼が発生しているようだね。それに現象を起こしているのは土御門陽陰ではなく、すでにこの場に存在している『何か』であることもわかった」
銃を構えながら空洞地帯に姿を現した羽鳥は、今の攻防で考察したことを口にしてオレにも知らせてきて、オレだけでなくこの情報共有が全員に向けていることにすぐに気づく。
そうだ。今はオレが黙って考察するより、何かを試して情報を全員に伝えて推測する手があったんだ。
それを気づかせてくれた羽鳥には頭が上がらないが、礼を言うのは後にして、今は謎の現象の解明に頭をフル回転。
「闇の住人か。お前ともなかなかどうして縁がある。俺がちょっかいを出した案件にお前がしゃしゃり出てきた回数は確か……」
「6度になる。だがそれもこの7度目で終わりだ」
「図に乗るなよ、殺人鬼」
Sランク武偵だけあって、 陽陰も羽鳥の存在を知っていたようだが、少なからず因縁がある2人の会話は陽陰のその言葉で途切れ、殺人鬼と呼ばれて一瞬だが硬直した羽鳥を見てビリビリとヤバい感じが全身に伝わるが、死の予感は体を動かすまでに至らなかったことから、死の危険はないか、或いはもう……
「羽鳥! 避けろッ!!」
何事も悪い予感の方で考えるべきだと作戦前にも言われていたことから、オレのフォローが間に合わなくて動けないと判断し、咄嗟に声を張り上げて羽鳥を無理矢理に反応させ、即座に大きく横っ飛びした羽鳥のいた場所にはオレの時と同様に炎が弾けて燃え盛る。
しかしそれと同時にセーラの矢が炎の壁をすり抜けて陽陰へと迫り、ここで初めて陽陰が回避に動きステップし、セーラの矢は地面へと突き刺さるとそこからパキパキと地面を凍らせて広がるも、また炎が弾けて一瞬で溶かしてしまう。
「小賢しいな」
2度も不可視の攻撃を避けられて機嫌が悪くなった陽陰だが、追撃もことごとくセーラが封じて、しかも今度は隙を突いて攻撃を通してきたから苛立ちも一際だ。
『波状攻撃は有効のようだな。明かりのおかげで私もセーラも目視でハッキリ確認できて考察が捗る』
「頼むぞ、超能力担当2人」
『規格外過ぎて意味がわからないがな』
かなり遠くでこの現場を見てるジャンヌとセーラが解明できないならかなり厳しいが、もはや撤退も出来ない状況で弱音も吐けないため、やるしかないと奮い立たせているインカムの向こうに頑張れと念を送りつつ、死と隣り合わせの現場でオレも思考を止めない。
とにかく、オレ達が攻撃されないようにセーラも攻撃の頻度を少し上げてくれるが、用意した矢にも限界はあるから控えさせてもやりたい。
だからオレも羽鳥もセーラの攻撃に合わせて接近を試みるが、防御から防御の間隔が1秒程度で発生するので容易ではない。
「くっそ! 早すぎるぞアレ」
「銃弾は見えない何かに弾かれるし、困ったね」
『任せろ』
1歩動かすだけでも容易じゃない陽陰の謎の超能力に苦戦する中、強い声がインカムに割り込んで来たかと思えば、再三に渡るセーラの攻撃で巻き上がった炎の一瞬の視界の遮断の隙に弾丸のように接近した趙煬が、持ってきていた長槍で切り込み陽陰に鋭い突きを放つ。
だがこれも直前で羽鳥の銃弾を防いでいただろう何かに阻まれて止まるが、そこで終わる趙煬ではなく、突き刺した何かを切り裂くように上下へと振り素早くバックステップ。
すぐに趙煬のそばにも炎が弾けるが、さすがの回避に呆れるほどだ。
「いるな。見えにくいが、人型の巨人のような物体だ」
槍を構えながら確かな手応えを得た趙煬が、今の攻撃で見えたという見えない何かの正体を口にし、相変わらずオレにも見えないその巨人とやらが陽陰を守っていると、そういうことなのだと言う。
「人間は視覚に頼る生き物だからな。その点、貴様は他の感覚も鋭敏だから知覚できるか、神龍」
まだ完全にはわからない陽陰の超能力だが、良い線まで来た趙煬に称賛を贈るような陽陰は、オレ達に聞こえる笑い声を上げてから、その声色を怖いものへと変貌させる。
「貴様ら相手に苦戦するのも癪だな。折角の豪華な顔ぶれだが、遊ぶのはやめだ」
ビリッ。
陽陰の言葉に全身の細胞が警報を鳴らす。
ヤバい。逃げろ。死ぬぞ。
今すぐにでもこの場を離れろと叫ぶ体に抗うオレの意思は、少しでも臆した体をアドレナリンを分泌することで黙らせ、無理矢理にこの場へと留めてくれる。
さぁ、ここからが本番だ。