終業式の翌日。
2日後には理子の誕生日が控えた今日は、昨夜にビックリするような人物から連絡があってその人物とお出かけ。
人目を忍びたいという本人の希望で学園島の外の台場には出てきて待ち合わせをしたが、ちゃんと来るんだろうな。
そうして半信半疑になるような人物をアクアシティお台場の出入り口で待っていると、人の行き来する中に影から影へと移動する影があり、それはオレの近くまで来て一旦はオレの影に入ってから、人目を忍ぶようにオレの背後から這い上がって姿を現す。高潔なる竜悴公姫、ヒルダ様のご登場だ。
「ちょっとサルトビ。こんな朝早くに待ち合わせるなんて、酷いのではなくて?」
「頼んできたのはお前だろ。ならお前の都合じゃなくてオレの都合に合わせる譲歩くらいはして然るべきだろ」
「それはそうなのでしょうけど、ここに来るだけでも労したのだから愚痴の1つでも言わせなさい。度量の小さい男」
「じゃあ学園島でも良かったんですがね」
人目を忍びたいと仰られたくせに、いつも通りの漆黒のゴスロリ服を身に纏うヒルダは、日の光が嫌いだから文句タラタラ。
それでもこうして来たということは、それだけヒルダにとって重要な案件だということなのだが、正直なところオレでなくても適任はいる。
「さぁサルトビ。さっそく必要なものを集めるわよ」
「経費はヒルダ持ちだろうな?」
「お前に支払い能力など求めてないわ。お前はただ私に知恵を貸せばそれでいいのよ」
「そりゃありがたいことで」
しかしこの竜悴公姫様は残念なことにお友達が少ないので、人に頼るという行為自体できる相手が指折りで数えられる程度しかいない。
特に理子が絡むことになるとその優先度がオレに寄るのは、その仲を取り持つのを協力するとかつて言ってしまったからに他ならない。
だから今回のも当然ながら理子の絡む案件であり、ヒルダにしてはちょっと頑張って『誕生日ケーキ』の製作に挑むというのだ。
キッチンに立つことさえ億劫だろうヒルダが自ら言い出したことに驚きはしたが、かつての虐待を猛反省して理子との関係を築くヒルダは好感を持てるのでオレも最善は尽くしてやる。
「ケーキって言っても色々あるが、どんなものにするかのイメージはあるよな」
「当然でしょう。ベースは苺のショートケーキ。そこに理子の好きなものを散りばめて味にバリエーションを加えるのよ」
最善は尽くすが、いざ買い物を始めると買い物カゴはオレが持ち、ヒルダは前を胸を張って歩いてオレにあれこれと指示をして材料を取らせるという始末。殴りたい、そのお顔。
しかしこれはある種の依頼という体をしているから、依頼主に手をあげるのは武偵として底辺以下。それをグッと堪えてヒルダの要求に心を無にして応じていった。
1時間ほどじっくりと材料を選んで両手にギリギリ持てるくらいの量を買い込んだヒルダの容赦のなさにオレも支払いはしてもらっても運ぶ労力を考えたら文句は言いたくなったので、詰め終わったそれを持つ前にヒルダを見る。
が、このヒルダ様。できた2つの袋を自分の影に入れるように指示して、それに従えば普通に影の中に入ってそれで持ち運び完了。そういやアメリカでもこれ使ったっけ……超能力ズルい……
そう思わざるを得ないヒルダの行動を予測してなかったオレが文句を言いそびれたのを表情に出したからか、それを見たヒルダが「どうしたのサルトビ? まさか何の考えもなしに買い込んだとでも思っていて? ほほっ」とかなんとか煽るもんだから、ついつい視線を誘導して目を離した隙にアクアシティお台場を去るという凶行に及んでしまった。大人げなかったな。フフッ。
「次やったらその首をはねてやるわ!」
「果たしてその次があるのだろうか」
まぁさすがにオレも本気じゃなかったので出入り口で待っていたら、ちょっとだけ涙ぐんだヒルダがヒールを鳴らして追いついてきて死刑宣告をしてくるが、即時でやってこなかった辺りは丸くなったもんだ。
一応はそれについて謝りつつ、許してくれたヒルダはオレの影に入って影絵で「早く戻りなさい」と外を指差してみせて、機嫌を損ねたばかりで沸点も低いだろうヒルダに素直に従って学園島の男子寮へと直帰。
材料は豊富だったので、まずはヒルダのイメージするケーキをオレが作ることになり、手順やら工程やらを教えながらにパパッとスポンジを焼き上げて、そこまでをめっちゃ真剣にメモしたヒルダも現物を目にしてよりイメージがしやすくなったのか、スポンジがまさかの6層構造という贅沢な仕様にされる。
スポンジの1層が薄くなり、層ごとに苺やら何やらと生クリームが盛られるので、全体の厚さが1.5倍にはなってどうすんだよ状態のケーキがとりあえずは完成。
「断面を見るのが怖いんだが……」
「いいから切り分けなさい」
ヒルダにとっては渾身の出来のようだったが、指示通りに作った身としては明確なイメージが出来てるだけに実際にホールを切り分けて見る断面が怖い。
見た目には無駄に大きいホールケーキで済んでるから、このままにしておきたい衝動がありつつもヒルダ様の指示で8等分サイズで1切れを取り出し皿に移してその断面を2人で見る。
「…………食欲湧かねぇ……」
「そう? 人間の感性はよくわからないわ」
別に不味い食材を使ったわけではないので、実際に口にすれば全然食べられるものなのだろうが、見た目も重視する人間様の感性だとそこで食欲を刺激しない。
下から1層目は普通にスライスした苺と生クリームで普通。
2層目は缶詰のみかんと生クリームでまぁ大丈夫。
3層目からチョコバナナと生クリームで色合いが怪しくなる。
4層目では黄桃と白桃のミックスに生クリームで「おい」となる。
5層目には種なしぶどうを皮ごとドーン。
最後の6層目はメロンがバーン!
「味の大洪水だよバカ野郎……」
それらの層が全てまとめて口に放り込まれるのを想像すれば、何をどう味わえばいいのかわからないのは明白で、味の化学反応さえなければ吐き出すものでもないのがまた嫌だ。
「早く食べなさいサルトビ」
「……あとでリサに手を加えてもらおう……そしてキンジに押し付けよう」
これを会心の出来と思ってるヒルダの押しが煩わしいが、食わないと片付きもしないし考えを改めもしないとわかってるので、残ってる分の処理も考えつつ1切れを意を決して食す!
……予想通りというかなんというか、味がありすぎて上手い具合に混ざらない単独主張が多く、ケーキを食べてる感覚はかなり薄い。ミックスジュース食べてるのオレ?
美味くはないが不味くもない。そんな感想しかないケーキを1切れ食べ切ってから、感想を待つヒルダに目をかっ開いて人間様の感性を叩きつける。
「これをそのまま出したら理子は層ごとに分けて上から食べるという暴挙に出るだろう」
「なッ!?」
「貴様は理子が好きなものを詰め込めば美味しいだろうという妄想でしか作らないからこうなるのだ。自分に置き換えて物事を考えろ。貴様の好きなものは何だ?」
「ひ、人の生き血とか……イモリの黒焼きかしら?」
「…………」
生物としてこうも違うと頭を抱えたくなるが、オレの言葉で好物を他にも思い浮かべたっぽいヒルダがそれをひとまとめにして口に入れた想像でもしたのか、ちょっと青ざめて現実を見たようなので、わかってはもらえたかと話を進める。
「何でもかんでも詰め込めばいいってもんじゃないのがわかったところで、引き算をしていくぞ。とりあえずヒルダの残したい食材は何だ? そこに合わせてオレもアドバイスしてやる」
「もちろん苺は残すわよ。それから最近はやたらと桃を食べていたから、桃も残したいところね」
「苺と桃ね。それなら問題なく作れるな。あんまり手本で作っても処理が大変だから、オレが教えてヒルダが作れ」
「ま、待ちなさいサルトビ。私は完成品がないと上手くやれる自信がないわ!」
「失敗するなら今しろ。本番でそこはまず失敗しなくなる。人間は失敗から学ぶ生き物だ。吸血鬼だって人間の変異みたいなもんなんだし、失敗から学べない愚かな種族でもないだろ」
ある意味ですでに失敗はしてるので、今さらオドオドしても仕方ないだろと思いつつ、とにかく作ってみようと促してやる。
そんな挑発も含めたオレの言葉で竜悴公姫のプライドが働いたのか、ちょっと戸惑いつつも「よしっ」と意気込んだヒルダは、影の中からフリッフリのエプロンを取り出してゴスロリ服の上から装備。理子の趣味に寄りすぎだろ。
「ああそれからやる気になったヒルダに助言」
「言うなら早くなさい。始めたら戯れ言に耳を傾ける余裕はなくてよ」
「食べ物はその相手が美味しそうに食べてくれるのを想像しながら愛情を込めて作るのがいいらしいぞ」
「あ、愛!?」
「大事なのは気持ちってことだよ。味がついてくればそれに越したことはないが、自分のためにって作ってくれたものを喜ばない人間はそういないってこと。だから理子のために愛情を込めてやれ」
「愛を、込める……」
綺麗系が可愛い系の格好をする光景にどういう反応をしたものかと少し迷ったが、とりあえずスルーして動き出す前に最後の人間の感性というやつを教えてやり、愛だのに疎そうなヒルダでも理子を想う気持ちに嘘はないからかその表情に真剣さを増して三角巾までご丁寧につけてオレの指示を仰ぐ。
そこからのヒルダはぎこちない手つきながらも超能力も使わずに自分の力だけでケーキを作り、ちょっと生クリームを混ぜすぎて固い仕上がりにはなったものの、2層構造の苺と桃のケーキが完成。
スポンジの上のトッピングはスライスした苺と桃で花びらをイメージした綺麗な感じで中央にはデカい苺をドンと置いてインパクトもある。
「んじゃ味見」
「ま、待ちなさいサルトビ! い、一応は私の初作品なのだから、写真のひとつでも収めておくのがいいのではなくて?」
「そんなの当日に理子がやってくれる。今日のはノーカンってことにしとけ。どうしてもって言うなら撮ってやるが」
「そうかしら? ならそうさせてもらうから、さっさと味の感想を言いなさい」
工程を見ていたので不味いわけはないことはわかっているが、やはり自力で作ったから思い入れが出来たのか記念撮影をしようとするヒルダだったが、どうせ撮るなら理子にちゃんと撮ってもらった方がいいと言えば素直。
忙しいヒルダはドキドキの顔でオレの感想を待ち、オレも1切れ取って断面も問題ないことを確認してから実食。
「生クリームの舌触りが微妙だが、普通に美味いよ」
「ホホッ。高潔なる竜悴公姫である私が作ったのだから当然でしょう。当日は絶対に理子に美味しいと言わせてみせるわ」
「調子に乗るのはいいが、当日の面倒は見てやらないから、失敗したところはちゃんと確認しとけー」
誉めると調子に乗るだろうなと思ったが、自信を持たせてもおかないとまた作り始めるかもしれないので、今回で微妙だったところをメモして自分でも1切れ食べ始めたヒルダに渡してやる。
そうしたら本当に当日は手伝ってくれないことを理解してちょっと弱気になったものの、言葉の力である『愛』でごり押すと自らに暗示術をかけたように自信を取り戻して1切れを食べきると、後片付けをオレに任せて帰宅。
当日はここで作ってから理子のところに向かうと笑いながら言っていたので、材料なども置いていったが、後片付けをするまでが料理ですよヒルダさん。
しかしまぁ余った食材は今後の食料として足しにはなるので感謝しつつ、寝室の上下扉を通って下のキンジの部屋にお邪魔する。
リビングでのんびりしているようで落ち着いてないキンジは何やらアリアにディナーの招待をされたとかで、かなえさんも交えてのそれに色んな感情があるみたいだ。
それはそれとしてこっちも用があるのはリサなので、早速ヒルダ作のごちゃ混ぜケーキを提供してアレンジに賭けると、笑顔を崩さないリサはこれをどうにかするようなことを言って引き取ってくれて感謝感激。
そのあとは昼も夜も果物フィーバーで腹を満たして過ごすのだった。
「さて、そろそろだろうな」
翌日の30日。
この日は事前に予定が入っていたので、朝から心構えだけはしておいてリビングでくつろいでいると、昼になる少し前に部屋のチャイムが鳴り響き、それに応じて玄関を開ける。
「きょーうちゃーん!」
「ぐむっ!?」
開けた瞬間に抱きつかれて、その豊満な胸に顔を埋める形になったオレは、久しぶりだから力の加減を忘れたのか万力のように抱き締める相手、愛菜さんの背中をタップして危険を知らせると、愛菜さんも我に返ってオレを解放してくれる。胸の中で窒息死とか恥ずかしいよね……
「堪忍や京ちゃん。年越し以来やから嬉しなってしもて」
「……いえ。立ち話もなんですし中にどうぞ」
「お邪魔しまーす」
テンションの高い愛菜さんを落ち着けるようにとりあえずリビングに通しつつ、持ってきた荷物を運んであげるが、多いな。
そしてこうしてわざわざ京都から1人で来てくれた愛菜さんの今回の目的。それは少し早いがオレの誕生日を祝うためである。
愛菜さんの、というよりも月華美迅の都合上、今日から明日にかけてしか人員を割けないらしくて、本当は電話とかビデオレターとかその辺で片付けるつもりだったのだが、愛菜さんがごり押しで来てくれることになったのだ。
それならそれでと京都居残り組は愛菜さんにプレゼントを押しつけて送り出し、1泊して帰る愛菜さんも数少ないチャンスにそわそわしっぱなし。
別にオレを襲おうとかそんな怖い話ではないが、オレの誕生日ということもあっていつも以上にお姉さん気質が面に出てきている感じ。
昔からオレの誕生日は幸姉よりも愛菜さんの方が気合いが入っていたが、今年はどんなことになるのやら。
「そういえば理子ちゃんも明日が誕生日なんやろ? せっかくやしここに呼んだらどうや?」
「いいんですか? あれがいるとオレの独占権が剥奪されますけど」
「あー、それは喧嘩になるかもしれんなぁ……ほなら明日の朝に会うてから帰ることにしよか」
「それが賢明ですね」
移動で窮屈な思いをしたのか、リビングのソファーでのびのびしながらの愛菜さんを見つつ、昨日ヒルダが作ったケーキを出して話をする。
一応ケーキとかは買わないように言ってあったので、愛菜さんも食べ物はチキンとかその辺にしてくれたのをテーブルに広げてくれて、あとはジュースやらを揃えてプチ誕生日パーティーが開始。
「あ、京ちゃんそのまま立っとってや」
「はい?」
準備が整ったので座ろうとしたところで、何故かそれを止めて愛菜さんがデジカメを取り出しタイマー機能を使ってオレと並んで写真撮影。
写真は普段なら拒否するが、愛菜さんは特別なところがあるので素直に受け入れるも、愛菜さんもオレも特にピースとかしない撮影でちょっとした違和感があった。
「エエねぇ。バッチリやん」
「何がバッチリなんですか?」
しかし愛菜さんはその写真でも文句はないらしく、性格的にほっぺにチューくらいの写真は撮りそうな人にしては大人しいなと疑問を投げかけると、優しい笑顔を見せた愛菜さんはデジカメの画面をオレにも見えるようにと隣に移動してくる。
「これがいま撮ったやつで……こっちが、ほれ」
「…………ああ」
そうして見せられたのは、いま撮ったツーショット写真と、もう1枚スライドさせて見せられたのは、オレが14歳になった時に愛菜さんと同じような構図で撮った写真だった。
まだオレも愛菜さんも京都武偵高の制服を着てて幼さがあるし、何よりオレが小さい。愛菜さんとほとんど変わらないぞ。
「寸尺もこの時と同じにしたから、こうやれば成長が見てとれるやんな。あーん! 京ちゃん昔は私とほとんど変わらんタッパやったのに、こない大きなってカッコええなぁ」
「愛菜さんはあまり伸びてないですね。綺麗にはなってますけど」
今となっては愛菜さんよりも15センチ近くも大きくなって、写真を見比べれば一目瞭然だが、オレのそんな成長を見比べて悶える愛菜さんは本当にオレの姉のように喜んでくれる。
「うーん。おっぱいはカップが1つ大きなったんやけどね。成長はもうこの時でほとんど止まってしもた感じ。今は化粧してるから綺麗に見えるだけやで?」
「いえ、それ抜きでも綺麗ですよ。愛菜さんはいつだってオレの自慢のお姉さんですから」
「もーう! あんまりお姉さんを褒めるとギューってしてまうでぇ!」
そんな愛菜さんだからこそオレもこうして出向いてまで誕生日を祝ってくれるのは素直に嬉しいし、幸姉とはまた違うお姉さんポジションで特別な存在なのだ。
だがあまり正直に褒めすぎると案の定だが喜びながらの抱きしめにも力が入って頬擦りまでされて押し倒されてなんかイケない感じで密着されたが、引き剥がすことはできずに満足するまで付き合ってあげた。ムッチムチ……
「ほい、これが眞弓からで、こっちが雅。そんでこれが早紀んで、これが千雨のや」
「ぐっ……これがプレゼントという名の課題か……」
「みんな京ちゃんにはもっと頼もしくなってほしいって利かんくてな。その代わりに私はちゃんとしたプレゼントやさかい、安心してや」
愛菜さんの気が済んだところで誕生日パーティーを始めて、すぐに持ってきたプレゼントを広げて順番に渡してくれたのだが、月華美迅からはひとまとめに『コンピュータ関連』の本やUSBや教材がプレゼントされてしまう。
眞弓さん達が普通のプレゼントをくれたらくれたで何かしら怪しさは感じただろうからある意味で安心するプレゼントだったが、やはり苦手の克服はやる気も湧いてこない。でも使わないとネチネチ精神攻撃されるしなぁ……
と考えながら手はつけようと弱い決心をしたところで、満を持して愛菜さんのプレゼントが取り出されて、ちゃんと包装されていたそれを開けると、こっちもこっちで似たようなものだなぁと思ってしまった。
「京ちゃんに頭を使う仕事はさせへんでもエエねんな。やからこっちが正解や」
「愛菜さんと同じやつですよね、これ」
愛菜さんからのプレゼントは、愛菜さん自身が愛用している拳銃、ブローニング・ハイパワーで、ご丁寧にガンホルダーもセットだ。
「別に強要するつもりはあらへんよ。京ちゃんが反動を嫌ってるのもわかっとるし、私も嫌がらせしとうてチョイスしたわけやあらへん。ちゃんと改造して私のより半分くらい反動を軽減できるようにしとるから、京ちゃんが思うよりもずっと使いやすいと思うねんな」
「オレにこれから先、必要になると思ってですか?」
「あの時にこれがあればって場面がいつかあるかもしれんし、一生ないかもしれん。でもないよりはあった方がエエかなって」
「それを言っちゃうと眞弓さん達のプレゼントも愛菜さんと同等ですよね」
「そんなことないやん! 私の方が京ちゃんのためを思ってプレゼントしとるんや! これは絶対の絶対!」
「ははっ。ありがとうございます、愛菜さん」
どのみち、武偵として歩み出したオレのためにと考えてくれた眞弓さん達も愛菜さんもやっぱり全員が弟分の成長を願ってくれているのだ。
ならオレもその期待に応えたいし、背中ばかり見てきたこの人達にいつかオレが背中を見せてやると心に誓い、さっそくプレゼントされたブローニング・ハイパワーをガンホルダーと一緒に装備してみせ、その様を見て激写する愛菜さんから逃げる羽目になるのだった。