緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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※この話はLandingの後の話です
Bullet101以降の話とは繋がらないのでそういうものと思って読んでください


Succession

 

「おーおー来おったか! こりゃまたずいぶんと懐かしい顔見たわ。なぁ綴ぃ!」

 

 まずは挨拶にと入った教務科でやたらと強そうなポニーテールの女教師は、そうやって昔を思い出したのか笑いながらに近くの席にいた綴と呼ぶ教師に声をかけたが、その綴、先生はラリってるのかメチャクチャ据わった目でタバコをくわえながらオレ達を見てニヤリと笑う。なんか怖い……

 

「あー、そいつらが今日来るって話だったあいつらの……でも色々と惜しい感じィ?」

 

「確かにな。お前らところどころで『逆』や。んで、どっちが『ひねくれもん』や?」

 

 ニタニタ笑う綴先生の言うことに共感する目の前の女教師、蘭豹先生は、オレと隣のもう1人を見ながらにそんなことを言いつつ、次いで机にあったオレ達のプロフィールを見せて問いかけてくる。

 

「「それは間違いなくこっちです」」

 

 だから至極当然のことを隣の双子のファザコン妹を指しながら断言してやったのだが、隣も隣で同じことをして言いやがったのでガンつける。ひねくれ者はテメーだファザコン。

 

「言っておきますが蘭豹先生。あたしは正式なファミリーネームをそこに記載しておりますので、わざわざ『旧姓』を名乗ってるこっちのマザコン野郎が間違ってやがります」

 

「間違ってねーし。実際こっちの姓で母さんと仕事してたし問題ないね。そっちは仕事上目をつけられるから名乗るなって親父も非推奨だったろ。今からでも遅くないからこっちを名乗れ愚妹よ」

 

「生まれたのが数十分早かったくらいで兄貴顔すんなし。二卵性で本当に良かったわ。こんな兄貴に顔まで似たら今頃自殺ものよ。それに比べてパパのカッコ良さは天井知らず……はぁん、パパぁ」

 

 人によってコロコロ性格の変わる愚妹はオレに対しての毒が半端ないが、自分自身のイライラを解消するように懐から取り出したスマホの親父の待受を見てふやけきったバカ面を晒す。

 しかしオレ達の口喧嘩を目の前で聞いてイラついたのは蘭豹先生もで、その後揃って拳骨をもらって退室を促されてしまい、教務科の校舎から出たオレ達はこれ以上一緒にいても喧嘩しそうなのでとりあえず分かれてそれぞれの寮へと荷解きに向かう。

 オレと妹が今日来たばかりのここ、東京武偵高はレインボーブリッジの南北に浮かぶ東西500メートル、南北2キロの2つの人工浮き島の上に存在する、日本では最大の武偵高だ。

 昔、親父と母さんも通っていた時代には南の浮き島だけが開拓されて『学園島』などと呼ばれ、北の浮き島は何もない『空き地島』などと呼ばれていたようだが、今は規模を拡張して浮き島間で地下トンネルを開通し台場との交通ラインも整い開拓も済んで様々な学科の建物が建設されている。

 この背景にはどうやら全国的に武偵高を都市部に集中させて生徒数の少ない武偵高を取り壊し、その分が都市部の武偵高に流れたことにあるらしい。

 だから今の日本には武偵高は4校――札幌・東京・大阪・福岡――しかないとかだが、別段興味はない。

 ちょっとしたゴタゴタもあってオレと妹は入学式から1日遅れて武偵高へとやって来たのだが、今は放課後に当たる時間で下校中の生徒達もいたりで結構賑やかだ。

 そんな学園島をこれからホームにするわけなので一応は地形やら何やらを確認がてら歩いて男子寮まで辿り着き、指定された部屋に行ってみるが、寮も増設されたり改修されたりで親父達の時代にあった4人部屋というのはないが、それでもコミュニティーとして2人部屋が固定である。

 当然オレもその2人部屋だが、電子ロックの扉を開けて中に入ってみるがやはり時間的にルームメイトはいなかった。しかしすでに生活感はあるためいるにはいるのだろう。

 このままルームメイトを待って自己紹介が自然の流れだろうが、生憎とやることもいっぱいだ。

 とりあえず部屋に届いていたオレの荷物が2つある個室の1つに入れられていたので荷解きをしつつ間取りなどをチェック。

 2032年にもなると学生寮とはいえ便利な機器が色々と初期搭載されていて生活には全く困りそうにない。

 セキュリティーも電子管理が大体だ。今の時代で機械音痴は致命的だからな。

 親父のように前時代的に苦手だなんだと言ってられない。使えないと生きられないのだから。

 とにもかくにも割と最先端な寮の設備に感心しつつ、荷解きもあらかた終わったので次は現地調達できる生活用品の買い出しに出掛けることにする。

 母さんも学園島とその周辺の確認は買い物しながらが一番楽だと言ってたし、何事も同時にこなす効率重視な行動は武偵に必要なスキル。

 今や買い物と言えばネット販売が4割を占めるが、オレや母さん、親父や妹も現物を見て判断する性格からネット購入はあまりしない。特に自分の命を預けるものに関しては慎重さが増す。

 まぁ今回は生活用品だけだし慎重になる必要はないが、ついでのついででウェポンショップでも見て品揃えを確認してくるか。

 それらを考えながら台場に行くモノレールの駅まで行くと、なんともタイミング悪く改札で分かれた妹と遭遇。

 行動目的からして行き先は同じっぽいからこの際、鉢合わせたのは仕方ないと諦めるが、双子の兄妹とわかると面倒だし、すでに友達らしき女子2人を連れて話をしているところに割り込むKYでもない。向こうも向こうでオレなど存在しないかのごとく無視してるから対応は間違ってないだろう。

 そんな妹と一緒のモノレールに乗って移動するオレだったが、やはり視界に入ると気になるので怪しまれないレベルで妹の様子を見ていると、まぁ猫被ってキャッキャウフフと会話をお楽しみ中。

 あれは相手の様子をうかがう時の妹の習性だが、周囲に溶け込むのが早く上手い。これは悔しいが母さん譲りで才能だ。オレにはできない。

 代わりにオレは風景に溶け込むのが上手いわけだが、こっちは親父譲りで好きじゃないし、妹はそっちに向いてない。諜報科を専攻してるくせにだ。

 その最な理由は……あまり自慢したくないが、ああして友達と並んでも妹は頭ひとつ抜けて可愛い。

 認めたくないがおそらくは男子の3人に1人は好きになるタイプのガッチリ可愛い系の妹は、両親のを足したような黒ずんだ金髪のオレとは違い、ツーサイドアップの長い黒髪が綺麗で親父にも褒められた過去から手入れは異常なほど。身長も可愛いの範疇の150センチ前半だし、胸も最近Dになったとかで何故か母さんが喜んでたな。

 しかしながら残念なことに当の本人はこっちが引くレベルのファザコンで男にほとんど興味がない。モテるのに男性経験なし。

 今も『世界的犯罪者』を逮捕した過去のある自慢の親父の話を情報を極力伏せながら話していて、その顔が素になってふやけている。

 このファザコンを治すためにわざわざ親元を離れたのに効果ない気がして頭が痛い。

 オレもオレでマザコンとか言われてるが、妹ほど重症じゃないのに道連れにされたわけだ。

 暇潰しの妹観察をしていたら、どうやら気配が漏れた瞬間があるらしく妹の友達2人がこっちをチラッと見てからヒソヒソと妹に小言しているのが見えてマズイと思う。いっけね、これじゃ探偵科でE評価貰いかねない失態だ。

 初歩的なミスを反省しつつも同じ武偵高生徒だからか警戒するというよりは誰が見られていたのかの話のようだが、その話に妹はこちらにわかるようにあからさまな口の動きで『あんな人知らない』ときたもんだ。

 あっちが完全に他人のフリをするので、モノレールが台場で停車し妹達が降りていくのを見て台場で買い物をと思っていたが、急遽予定を変更して台場から港区の方へと方向転換。バスに乗り継いでレインボーブリッジを渡って手頃なデパートを目指して移動した。

 1時間程度かけて思いつく限りで必要な日用品を買ったオレは日も傾いてきた頃に再びバスに乗り学園島へと戻るためレインボーブリッジを移動しようとしたのだが、なんかレインボーブリッジに交通規制がかかって渡れなくなっている。規制というか、緊急事態でレインボーブリッジを渡れない感じだ。

 それを敏感に察したオレはバスを降りて走ってレインボーブリッジの端の方まで行ってみると、ちょうど真ん中の辺りで黒煙が上がっていて車が何台か横転しているのが見える。

 事故かと一瞬思ったが、次には聞き慣れた拳銃の発砲音が響きただの事故じゃないことを理解しスマホを取り出す。

 すると速報の方で護送車が襲撃され犯罪者が武器を持って抵抗中とあり、よくもまぁ天下の武偵高がすぐ下にある中で暴れたもんだと呆れる。

 事件発生からまだ10分とかかってないっぽいので武偵の姿はほとんどないが、こうした事件は学校の通知メールで報告はあると思うので制圧隊が到着するのもすぐだとは思うが、速報には嫌なことに騒ぎに巻き込まれた人質がいるとかあるので強襲だけでは危険だ。

 そこでオレはまだ台場にいるだろう妹に連絡。しようとしたら向こうからかかってきたのですぐに電話に出れば、向こうも向こうで反対側の端に来ているみたいで指示する手間が省けた。

 

「わかってると思うが、まずは状況確認」

 

『誰に物を言ってるつもり? こっちは丁度Sランクが1人近くにいたからそっちとも連携するけど、そっちはアンタだけ? 頼りなっ』

 

「黙れ愚妹。不安要素はお前の方が大きいだろうが」

 

 生意気な妹の覇気のある声にはらしさがあったが、向こう側にはどうやらSランク武偵がいるようで強襲に乗り出るような雰囲気を察した。

 とにかく向こう側との挟撃ができるとわかったので橋へと1歩乗り出してみると、同じように前へと出てきた武偵高生がいて、これも同様にスマホを片手に誰かと通話中らしくほぼ同時に顔を横に向けてご対面。

 その瞬間、オレは持っていたスマホを落としそうになってしまうが、ギリギリでそれを防いで武偵高のセーラー服を着た雰囲気上級生の超絶美人を凝視する。

 もうあれだ。妹などガキにしか見えないレベルの美人。すれ違う男が全員振り返るであろう絶世の美女武偵は、長い黒髪を三つ編みにして黒のストッキングを履いていた。

 

「あなた1年生? 緊急事態にも臆さずに前へ出るなんて度胸があるのか、それともただのおバカさんかしら?」

 

 呆然とするオレに対して非常に落ち着いた口調でそう問いかけてきた先輩らしい美女武偵は、オレの答えを待っているのか顔を見て首を傾げるので、なんとか思考を取り戻したオレは気を引き締め直してその問いに答える。

 

「この程度の事件なら欧州で何度も解決してましたので」

 

「あら、あなた留学生? その言葉が真実なら、頼りにしちゃおうかな。いちおう私は3年の先輩でSランクだから、指示とかしちゃうけどいいよね?」

 

「こっちにもSランクが来たか……」

 

『ちょっと兄貴! Sランクがどうしたって?』

 

 ずいぶん余裕あるなとは思ったが、この美女武偵もSランクみたいなので思わず声に出てしまうが、スマホ越しの妹がうるさいのでそちらに黙ってるように言っておく。

 

「私はカナ。いま向こう側に従弟もいるのだけど、あの子喧嘩っ早いからもうすぐ突っ込んじゃうと思うの。だから私達もすぐに行きましょうか。えっと……」

 

「あっ、(さく)です。探偵科ですが強襲もそこそこ。ご指示の方よろしくお願いします、カナ先輩」

 

 状況は緊迫しているのに何故かこの人、カナさんがいると本当に緊迫しているのか微妙な感じになるが、スマホを仕舞ったカナさんは向こうにいるとかいう喧嘩好きな従弟が動くからと言って自己紹介の後はまっすぐに橋の真ん中へと走り出していったので、オレもそれに続いて懐からワルサーP99を抜いておいた。セーフティーは、状況次第だな。

 現場には横転・炎上した車がいくつかあり、護送車を運転していたと思われる警察2人も車を盾にして踏み留まっていたが、何ぶん犯罪者側の人数が8人に全員が武装とあって手が出ないようだ。それに加えて一般人の人質が1人。腕を極められる形で拘束されている。

 

「咲、あなたは人質の救出(セーブ)をお願い。周りの無力化は私達でやるから」

 

 その様子を見て臆する様子も見せないカナさんは銃を抜きすらせずにオレに指示を出すのだが、主武器(メインウェポン)は何なんだ?

 その疑問を解決する前に確認の問いかけをしてきたカナさんに慌てて了解すると、近付いてきたオレ達に気付いた犯罪者達が一斉にオレ達を見て手に持つアサルトライフルを向けてくるが、まだギリギリ有効射程外。撃たれてもどうにでもなる。

 

「一応言っておくのだけど、無駄な抵抗はやめて降伏しなさい。これはあなた達のために言っています」

 

 その有効射程外で立ち止まったカナさんは、最後通告のように犯罪者達に説得を試みるが、一斉に笑った犯罪者達はバカバカしいとばかりに態度を変えなかった。

 まぁこっちは見て2人しかいないし強がってるようにしか見えないんだろう。

 だがカナさんのこの問いかけもここに留まった理由もオレはすぐに気付いた。

 そうしてオレ達に注意を向けている隙に、後方から接近する妹と従弟さんを強襲させるため。

 だからオレも2人の影が思わぬところから接近してるのに気付きつつ人質との距離と救出ルートを決定する。まぁ6秒あれば問題なさそうだ。

 レインボーブリッジの両サイドにある主塔。塔高は最大126メートルにもなるその主塔にかかるワイヤーを両サイドから弾丸のごとく駆け上がる影は、主塔へと到達すると勢いを殺すことなく今度はこちら側へと飛び降りてきて、その手にはワイヤーが持たれていて主塔へと伸びる太いワイヤーへ引っかけてターザンのように強襲。

 カナさんの視線の引きつけと予想外のところからの奇襲によって犯罪者達はその2人の接近に気付くことなく、後ろからワルサーP99を抜いた妹が正確無比な射撃で犯罪者達の持つアサルトライフルを撃ち抜き弾くと、同じようにターザンしてきたカナさんの従弟らしい男子生徒と近くの奴にダイブキックをかまして着地。

 その蹴りで2人を吹き飛ばし、さらに巻き込む形で2人を押し倒すと、

 

「ははッ! 俺に合わせられる女で良かったぜ!」

 

「そっちもね!」

 

 何やら直前に挑発でもし合っていたのか互いに声がけしていたが、今の強襲で犯罪者達の注意はあの2人へと向いたので、その隙を見逃さずに飛び出したオレは最短距離で人質の元へと迫って拘束する犯人のアサルトライフルを持つ手をワルサーのグリップで叩き落として、その手の肘を振り上げて顎を一閃。

 一瞬で意識を奪うと持っていたワルサーを投げて人質をお姫様抱っこし離脱。

 投げたワルサーは空中で妹がしっかりキャッチし母さんの面影を感じる2丁拳銃で犯人達の太ももを容赦なく撃ち抜いていく。

 相変わらずの隠密行動の下手さだが、これで親父をリスペクトしてるのだから全くもって向いてない。

 妹の現場での目立ち様は今さらなのでもう慣れたが、カナさんの従弟とかいうのもかなりのやり手だ。

 近接戦オンリーだがその動きは一種の嵐と呼べるほど荒々しく凶暴。殴った犯人が数メートルほど吹き飛んでいるのが怖い。

 その2人を見ながらカナさんのところまで撤退したオレは、近くの警官のところへ人質を運んで安全を確保し隠すとカナさんのところへ戻る。

 

「手際がずいぶん良かったけど、探偵科の技じゃないわね。どっちかと言うと……」

 

「…………オレ、『手癖が悪い』んですよね。両親がそうだったんで自然と」

 

 と、呑気に会話をしたところで制圧中の妹達を他所にこちらにアサルトライフルを向けた犯人の1人がいたのでちょっと焦ったが、カナさんは「あらあら」とか言ってマイペース。

 直後、犯人がオレ達に発砲。一瞬で数え切れない銃弾をばら蒔いてきた、はずなのだが、オレ達と犯人の間でキキキキキキキキキンッ!! と連続した金属同士の衝突する音が響き渡ったかと思えば、オレ達まで届く銃弾は1つとしてなく犯人もオレも唖然。ただ1人この状況にノーリアクションのカナさんは、

 

「曲芸なんて言われちゃうけど、お父さんも叔父さんも出来ちゃうのよねこれ」

 

 今のは自分がやったと言ってため息を吐いていた。

 な、何したんだ……アサルトライフルとは違う銃声はしたんだが、抜いてなかったし……謎だ。

 この現象に仰天した犯人も放心気味だったので、先に回復したオレはまた撃たれる前に近付いてパパッと無力化。

 見れば残りの犯人もあと2人でそれも妹と従弟君によって鎮圧終了。強襲からまだ1分と経っていないが迅速性の求められる強襲としてはまあまあといったところ。人数を考慮すれば早いとは思うがな。

 と、鎮圧した現場に気を抜きかけたオレは、自分のワルサーを腿のホルスターに仕舞った妹の背後でうごめく犯人の1人を発見。

 まだ意識があったそいつは腰に挿していた拳銃を抜いて妹を背後から撃とうと構える。

 

(あき)っ!」

 

 それに気付いていない妹に叫びながらオレは一気に妹の元へと駆けて妹を押し飛ばし場所を入れ替わると、同時に犯人の凶弾がオレへと迫る。

 ――クンッ!

 確実に当たって死ぬという軌道で迫った銃弾だったが、オレはその銃弾を無意識で躱すようにその首を曲げて頬を銃弾がかすって通過。

 何が起きたといった顔の犯人を見てオレも驚く反面、散々親父に仕込まれた技術がいま使われたのを理解すると、横からカナさんが「お痛が過ぎたわね」とか言いながら犯人の持つ拳銃を無手の状態からどうやってか撃って弾き、従弟君が容赦なく蹴って気絶させてしまった。

 今度こそ完全に沈黙した現場で一息ついたオレはその場で座り込んでしまったが、次いで吹き飛ばした妹のことを思い出してそちらを見ると、ヤバイ。車の窓ガラスを突き破って頭から突っ込まれてらっしゃる……

 

「さぁぁぁぁああくぅぅううう……」

 

 それを見て逃げ出そうとしたオレに対して、恐ろしいほどの殺気を放つ妹が車から出てきて瞳のハイライトを消しオレを見ると、ワササッ、ゾワワッ、と比喩ではなく現実に髪を逆立ててメドゥーサのように広げ化け物状態になる。

 

「おいこら! 強襲でも使わなかった『それ』をオレに使おうとするな!」

 

「黙れクソ兄貴……パパに褒められた髪に傷が付いたじゃないのよ。これは万死に値する重罪よ……」

 

 マジギレしている妹はオレの言葉など聞く耳持たない様子で15歳の誕生日に親父からプレゼントされた純瑠瑠色金製のロザリオの力を発揮。

 髪を器用に動かし懐から10本のクナイを取り出し持つと、仕舞ったはずのワルサーまで抜いて両手も2丁拳銃に。

 こ、怖い怖い! というか瑠瑠神さん、こんな妹に手を貸さないで!

 今にも暴れ出しそうな妹にどうすることもできないと悟ったオレが本気の逃走を試みようとしたところで、珍しいものでも見るかのように近寄ったカナさんが突然よしよしと妹の頭を撫でる。

 

「このくらいなら洗えば大丈夫よ。それよりもあの子を血祭りにする方があとが大変。血ってなかなか取れないからね」

 

 言ってることはわかるのだが、そのなだめ方は色々とぶっ飛んでる気がしないでもない。

 しかしそれを聞いた妹は目の前の美人に驚いたのか髪の操作もやめて我に返ると、確かにとか言いながら武器を収めてくれるが、オレを見て鬼の形相で睨んできた。

 そうこうしていたら警察の方もやって来て、カナさんと派手なフェイスペインティングしていた従弟君――カナさんが金吾(きんご)と呼んでいた――がそちらの対応をしてくれたので、あとはSランク武偵――どちらも遠山というらしい――に任せてオレと妹は顔を見合って静かにこの場をあとにする。

 その理由は1つ。我が家の家訓にこうあるからだ。

 ――みだりに名乗るべからず。

 警察の事情聴取などを受けると必ず武偵手帳を見せて名乗らねばならないし、顔と名が知れるということは後々に敵を増やすことにも繋がるから。

 

「クソ兄貴」

 

「何だよ」

 

「……ありがと」

 

「……後先考えなくて悪かったな」

 

「それは許したつもりはない」

 

 レインボーブリッジを台場方面に走りながら、そんな会話をしたオレ、峰・咲・リュパン5世と猿飛玲は沈みかけた夕陽を背にガミガミと口喧嘩をしながら、これからお世話になる学園島を目指していったのだった。

 あ、買ってきた物をバスに置いたままだった……また買い物に行かないとか……

 

 

In The Next Generation!!

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