緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Slash9

 謎の組織から追跡され、オレの住むマンションに隠れ住んでいた大精霊、バンシーと話はできたものの、シルキーが引っ越してきたことでバンシーがこの建物内を自由に移動できなくなってしまう新たな問題が発生。

 あまり超能力的な力を使うと追跡者に悟られるとあって、普段使ってる不可視化も使えず、しかしシルキーを追い出すわけにもいかなかったため、バンシーが苦肉の策として出してきたのは、まさかのオレの部屋での人としての生活だった。

 

「ああ心配するなガキ。俺はお前ら人間のように食事によるエネルギー補給も、排泄なんてものも、呼吸なんてものも必要ない。だからお前の生活を圧迫するようなことはないぞ」

 

「ですけど、バンシー様だって何らかのエネルギー補給は必要なのでは?」

 

「それはそうだが、別にお前が気にするほどのことじゃないってことだよ。今のところ何の問題もないんだからな」

 

 迷惑をかけたのはオレとシルキーの責任ではあるから断ることはできないが、補足するように生活費が増えるようなことにはならないと言ってはくれて少しだけだが安心する。

 エネルギー補給の件も今のところは問題ないと言うならそうなんだろうが、その辺は詳しく話したくないといった雰囲気がなんとなくわかって、気にはなるが今は聞かずにそうなのかと口を閉ざす。

 

「だが人間に認識できる姿をするとなると、今のままは少々マズいか。これでは見たヤツに奴隷でも買ったと思われかねんな」

 

「奴隷制度はもうとっくに廃れてますが、確かにその格好とかで部屋をウロウロされるのは困りますね」

 

「年齢相応に見せるのであれば、身だしなみもそれらしく繕う必要がありますね。お洋服も必要になりますでしょうし、材料さえあればわたくしが暇を見つけてお作りしますが……」

 

「材料でいいならオレが明日にでも買ってくるよ。今夜のうちに材料のリストを作っておいてくれ。あとは髪も……」

 

 もうバンシーが住むことは決定事項として話は進め、生活費の負担が少ないと言っても、やはり今のままのバンシーを部屋に匿うのは人目につく場合に問題が出てくる。

 その自覚はあるかバンシーも自分の着ているボロ布を摘まんで苦笑いし、服も必要だろうとシルキーが目測でバンシーの色々なサイズを測る。

 オレも生活させる以上はボロ布1枚でウロウロされたくないので、完成品を買うよりもずっと安上がりにできそうなシルキーの自作の話に乗って、それとは別に無造作でボサボサなバンシーの白髪をどうするかと考える。

 

「髪か。これならば俺はどうにでもなるぞ。せっかくだからガキの好みにしてやる。どんなのがいい?」

 

「そんな自由が利くんですか……じゃあシンプルにストレートロングでお願いします」

 

「ハハッ、飾らない女が好きなのか」

 

 しかしその髪はバンシーの自由意思で変幻自在らしく、せっかくだからとオレの要望を聞き入れてくれるようで、リボンとかゴムとかそういうのが必要ないものでいいかとストレートロングにしたら、また茶化されてニヤニヤされるが、ここは我慢。

 その要望通りに両手を頭にかざしたバンシーは、ボサボサだった髪を1度ぐわんっ! と逆立てて伸ばすと、癖っ毛のようだった髪がピンとストレートになって艶まで現れ、ふわっと重力にしたがって落ちれば、それでもう要望通りのストレートロングになり、床についてしまった分と20cmくらいの長さを取り除いて膝ほどの長さのストレートロングが完成する。

 

「まあ! 見違えましたよ、バンシー様!」

 

「ハハッ、本来であれば容姿も自在だが、どの時代も人を油断させるのは子供の姿だからな。ガキもちんちくりんで我慢しろよ」

 

「その姿の方が色々と助かりますよ……他の住人に見つかった時に彼女だなんだと言われると面倒ですし」

 

 元々の容姿はかなり優れていたので、髪ひとつでも整えると様変わりしたように可愛くなったバンシーは、微風でもなびくであろうサラサラな髪を触りつつドヤ顔。

 体型もいじれるようなこともポロリするが、それでオレと同じとか歳上の女性の姿になられる方が困るので勘弁してくれと顔に出す。

 実際、人に見られた際に言い訳が利きやすいのは『依頼で子供を預かってる』とか『知り合いの子供』とかが詮索もされにくい。彼女とかだと話を発展させる要素が多すぎるのだ。

 

「ハハッ、それもそうか。じゃあこれからしばらくは一緒に過ごす仲になるわけだから、親睦を深めるために風呂でも入るか。確か日本には『裸の付き合い』とやらがあるんだろう?」

 

「バンシー様は体を清潔にする必要が?」

 

「うん、ない! だが意味のないことに興味はある!」

 

「…………今から湯を張るのはあれなんで、今日のところはシャワーだけでお願いします」

 

「じゃあ風呂は明日だ。さぁ行くぞガキ」

 

 そんな理由付けに笑いながら納得したバンシーは、さっきまで喧嘩みたいなことをしていたオレとも友好関係を築くべきと思ったか、唐突な一緒にお風呂を提案してくる。

 何故に日本文化を知ってるのかは知らないが、男と女でそれは適応されにくいものだとは強くも言えず、ここで拒めばまたロリコンだのと弄られかねないので、渋々で了承。

 そうなったらバンシーの行動は早くて、浴室に向かう最中にボロ布を脱ぎ捨てて全裸で消えていき、マジでやんちゃな子供が家に来たような感覚に戸惑いつつ、バンシーの分の着替えも持ってオレも浴室へと向かったのだった。

 人の生活などしたことがないだろうから、ほとんどが新鮮な経験らしいバンシーは、オレが浴室に入るまでにシャワーを豪快に使って遊んでいたが、水だったので自分にかけられるのを防ぎつつバンシーを力技で落ち着かせる。

 

「体を洗うんだろう? これをつけるのか? それともこっちか?」

 

「男物なんですけど、そういうの気にしないようなので使い方を見ててください」

 

「ハハッ、これから一緒に住むんだ。堅苦しい言葉遣いはしなくていいぞ。俺もお前以外の人間には普通の子供を演じてやる。名前は何て言ったか」

 

「……猿飛京夜。京夜でいい。でもそれならオレもバンシーのことを外でどう呼ぶか決めないとな」

 

 好奇心が強すぎて座らせたところでうるさいが、やり方を真似ろと言えばオレを楽しそうに見るので、体を洗いながら外行きの設定とかを決めていく。

 

「俺のことはそうだなぁ……ああ、あれだ。エメル。そう名乗ろう」

 

「エメル、ね。ここにいる間は……オレの親戚の子供ってことにしておこう。細かい設定は寝ながら考えるとして、とりあえずいつまでかわからないがよろしくな、エメル」

 

「ハハッ、これ以上の迷惑は御免だからな、京夜。それにしてもお前、ガキと思っていたがなかなか……」

 

 その上でオレは疎いがシルキー以上に有名っぽいバンシーをそのまま呼ぶのはあれかと偽名について尋ねると、何か気に入った名前なのかエメルと呼べと言うバンシー。

 そういうのは気になるのであとで調べてみようと思いつつ、簡単な設定を決めてバンシーも了承したところで改めて挨拶。

 バンシーも出会いこそあれだったが、協力する理由があれば素直なもので少し偉そうではあるものの笑顔で返してくる。

 しかしそれが終わって早々にオレを真似て体を手洗いしていたバンシーは、その目がなんかエロ親父みたいなものに変わってオレの体をまじまじと見る。

 特に見てきたのが下半身の股間部分だったから、やっぱり見た目が幼いだけで5000歳のババアなことを再認識させられたところで、触り始めたりする前にツッコミとして頭に軽いチョップを食らわせてやって、洗い終わった体にシャワーをかけて流し、オレに背を向けさせる。

 

「髪を洗ってやる。必要ないんだろうが、髪が長いと勝手も違うからな」

 

「奉仕というやつだな。苦しゅうない」

 

「本当は日本に行ったことあるんじゃないのか……」

 

 さっき整えたばかりだから洗う必要なんて微塵もない髪だが、これからずっと一緒に風呂に入るわけでもない──そもそも興味本意だからこれ以降に湯船以外に入るのかは不明だが──ので、教えておくべきことは今のうちにと後ろから髪を洗ってやる。

 鏡に反射したオレを見て話すバンシーがまたなんか日本人っぽい言い回しをどこで覚えたか日本語でやるもんだから、ついついツッコんでしまうが、それが面白いのかケラケラ笑う。

 だが動けばシャンプーがあらぬ方向に流れるので、それが不幸にも目の中に突入したか、笑いから悲鳴に変わったバンシーを助けるようにシャワーで顔面を攻撃。悪気はない。少ししかない。

 思わぬダブルパンチでダメージを受けたバンシーではあったが、リカバリーするように丁寧に髪を洗いつつ、頭のマッサージもやってやったら機嫌は一瞬で直り、それが終わったらオレの頭を洗ってやると言い出し、怖いが任せて背後に回らせる。

 体が完全に幼女なので非力なのは仕方ないが、いざやらせると少し物足りない強さ。

 ただ一生懸命にオレの頭を洗うバンシーの姿は鏡越しでもなんか愛らしくて和んだので、今日のところはこれでいいかとそのままシャワーは終了。

 上がってから体を拭き、バンシーに合うサイズの服など今はないので、仕方なくオレのTシャツを着せてみたのだが、見事なまでのミスマッチ。Tシャツだけでバンシーの体がほぼ全て隠れてしまった。

 それでもボロ布よりも隠れる面積は広いので今夜はこれで我慢して、便利なことに髪もすぐに乾いたバンシーはベッドへ直行。

 リビングに戻るとすでにバンシーがベッドの上で大の字になって寝転がっていたが、今は無視してオレの部屋の掃除を始めていたシルキーに声をかける。

 

「今夜はもういいよシルキー。ありがとな」

 

「いえいえ。わたくしこそたくさんご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。今夜はゆっくりお休みになってくださいませ」

 

 睡眠という休息が必要じゃないらしいシルキーは夜通しで掃除とかしそうな勢いだったが、オレはちょっと気配に敏感なためそれはやめてくれと暗に言うと、察したシルキーはそれだけ言ってお辞儀してから、すぅっとその姿を消してオレの部屋からも気配が消える。

 本当に有能なメイドさんだと感心しながら、オレもようやく寝られるとベッドに移動し、バンシーにスペースを空けてもらおうとしたら、睡眠など必要ないはずのバンシーが静かに寝息を立てて寝てしまっていた。

 もしかしたら可視化した状態を維持するとこういうことになるのか、そもそも睡眠を必要とする生き物なのかと思考するも、やはり眠気が襲ってきて深くは考えられなく、それは明日にでも本人に聞くことにしてバンシーを抱き上げて寝かせ直してオレもその隣で就寝。

 黙っていればただの子供でしかないバンシーを見ていると、小さい頃に幸姉(ゆきねえ)幸帆(ゆきほ)、弟の誠夜(せいや)と4人で雑魚寝したりした頃の記憶が甦って心が温かくなる。

 それを思い出したら腹を出して寝ていた幸姉や幸帆に布団をかけ直したりした記憶も甦ってきて、ついついバンシーにもその気遣いが出てしまったか、布団をかけてから寝相でどかせないようにオレの腕を布団の上から乗せて、そのままオレも浅くも深くもない眠りへと誘われていった。

 

 翌朝。

 特に何か不穏な気配を察知したということもなく一夜を過ごして起きてみると、隣で寝ていたバンシーが寝転んでオレの方に寄り、本当の子供のように体を丸めて寝続ける姿がまず視界に入った。

 シルキーの例もあるので必要ないとはいえ、起きてから何か食べると言い出すことも予測して、自分の分と少量の朝食を追加して作り、食べないなら弁当にでもしようと考えていたら、隣の部屋から隣人の武偵の何やら驚く声が響いてくる。

 早速シルキーが挨拶回りでも始めたのかとリアクションもそこそこで作業を続けていると、その声で起きたかバンシーも目を擦りながら顔を見せてきた。

 

「んん……可視化したまま寝たのは久々だったから、妙な感覚が残ってるな……」

 

「顔を洗えば人間みたいにスッキリするかもな。あとご飯も作ってるんだが食べるか?」

 

「んん……いや、ものの味を覚えると麻薬に似た症状になることもあるから、食べ物に関しては興味はあるが、いらん」

 

 寝ぼけながらに今の状態を伝えてきたバンシーは、やはり普段から睡眠は取ってるらしいことがわかる発言をする。

 5000年も生きてるとずっと起きてることが苦痛になることもあるんだろうな。

 それからすぐに洗面室の方に顔を洗いに行ったのを横目に料理をしていると、朝もまだ早い7時前なのに部屋のチャイムが鳴らされる。

 こんな早くに誰だよと思いながら玄関に行き扉を開けてみると、そこには綺麗なセミロングの黒髪を後ろでまとめただけの黒コートを始めにほぼ全身が黒コーディネートな美男子が立っていて、オレの顔を見るなりニコリと営業スマイルを向けてくる。

 

「相変わらず辛気臭い顔で安心したよ。これ以上見ていたら反吐が出そうだ」

 

「だったら今すぐ回れ右して帰れバカが」

 

 日本人の血も濃く引いてる影響か、肌の色やらはオレに近いものの、瞳の色は澄んだ蒼色と外人の血を思わせる。

 その男……いや、男に見えるようにしている女はオレを見るなり挨拶代わりの毒舌を披露するが、そんなのにいちいちイラついていたらこっちがおかしくなるので適当に返す。

 羽鳥・フローレンス。正式な名前は服部(はっとり)(ジュリウス)・フローレンスは、ロンドン武偵局に配属されているSランク武偵。

 極一部の人間しか知らないが、服部半蔵(はんぞう)とジャック・ザ・リッパーの子孫というハイブリッドみたいな血筋を持つこいつは、昨日に勧誘してきたヴィッキーと同じリバティー・メイソンの一員でもある。

 その羽鳥が何故ここに来たのかはなんとなく察しがつくものの、本当に顔を合わせる度にオレに拒絶反応を示すのが面倒臭すぎるからお帰り願おうと扉を閉めるが、足を割り込ませて笑顔で阻止しながら強引に押し入ってくる。くっそ!

 

「いやぁ、反吐は出そうだが、君のおかげでずっと口説いてきたヴィッキーとデートができるのだから、そのお礼くらいはしておこうと思ってね」

 

「ああ、賭けってそういう……っていうか、お礼とか用事の1割くらいだろうが。残りの9割は何だ?」

 

「ロンドン警視庁から聞いたよ。3日前のチェルシー・エンバンクメントでの事件。あれ、記事に載った死んだ武偵ってのが君なんだって? それなのに何で生きてるのかな? そのまま死ねば良かったのに」

 

「口が軽いんだよロンドン警視庁……」

 

 部屋に上がりつつ何かを観察する鋭い眼光の羽鳥は、いつものオレいじりをしながら目は合わせようとしないので、用事はおそらくシルキー辺りか。

 こいつの仕組んだ依頼がこうした結末になったことをちゃんと確認しに来たといったところが濃厚だが、話していたら今度は反対の隣の部屋から悲鳴が上がり、挨拶回りも順調そうなシルキーに苦笑。

 

「……どうやら無事に居着いてくれたようだね。君のことを毛嫌いして消えてしまったなんてことを心配したが」

 

「そんな心配すること自体がナンセンスだ。あとオレの朝飯を食べるな」

 

 その悲鳴で羽鳥と勘づいたか、シルキーが健在なことを確信して安堵しつつ、作りかけの朝食をつまみ食いしやがる。

 その行為を止めつつ1秒でも早く部屋から追い出したかったオレが「早く帰れクソが!」と顔に出していたら、オレの不快な顔が大好物な羽鳥はあえてテーブルの席に着いて腰を落ち着かせる。か・え・れ!

 

「なんだ騒々しい」

 

 そうやって長居しようとする羽鳥に苦戦していると、顔を洗ってきたバンシーが戻ってきてしまい、羽鳥とバッチリ目が合ってしまう。

 そこでバンシーはまずどうすべきかを高速で考えて、その結果、子供のようにオレの後ろに隠れて顔だけを羽鳥に見せる、顔見知りスタイルで対応。

 

「おや、これは麗しいレディーがいたものだ。まさかとは思うが、誰との子だい?」

 

「んなことあってたまるか。この子は依頼で一時的に預かってる子だ。昨日、空港から戻る最中にロンドン武偵高の生徒ってことで頼られた。名前はエメル。まだ5歳で人見知りもする」

 

 ちょっと直前に偉そうな言葉遣いがあったからあれだが、口を閉ざしたバンシーが女の子なこともあって羽鳥も雰囲気は優しい。

 しかしだ。このおと……女は気持ち悪いくらいめざといので、何か疑問があれば誘導尋問でポロリを狙ってきやがるから、オレもそれらしい理由を平静を装って言ってみせる。

 この辺、羽鳥を前提にしてなかっただけに設定の穴が大きすぎるが、ごり押す!

 

「へぇ。ご両親はとてもネーミングセンスがいいね。『エメルへの求婚』は私も好きな話だが、それは子供を大事に思うゆえのものなのだろう」

 

「……何の話だ?」

 

「日本で言えばそうだね……竹取物語みたいなものだよ。かぐや姫に求婚しに来た男達が求められたものを取りに行く試練に挑むってやつさ。厳密には違うが、互いが困難を乗り越えて結ばれようとする話ってことだよ」

 

「要は娘を嫁に出すなら、それに相応しい男を見定めるってことか」

 

 ポロリにだけは気をつけて羽鳥の言動に注意はしておくが、意外にも名前に食いついた羽鳥が名前の由来について勝手に推測しだし、オレにもわかるように噛み砕いて説明する。

 それを知って名乗ったのかと後ろのバンシーにチラッと視線を移すと、目が合ったバンシーはただニコリと笑うだけ。そうらしいな。

 

「まぁベビーシッターは君に似合わない気もするが、依頼主が素敵な女性だったのなら納得できるかもね。ではエメルが空腹で泣いてしまわないうちに朝食にしようじゃないか」

 

「お前の分はないからな」

 

 よ、良かったぁ……バンシーの分も料理していたのが羽鳥の目を誤魔化す材料になってくれたよ。マジ冴えてるオレ!

 女には異常に優しい羽鳥がそうやって席を立ってくれたおかげで、入れ替わるようにバンシーをそこに座らせたオレは、いらないとは言っていたが状況的に食べないと怪しまれると踏んで、バンシーも子供っぽい手つきでフォークを持って出された目玉焼きやらウィンナーやらを食べ始める。

 その様子をリビングにあった大太刀の単分子振動刀をいじりながらに見ていた羽鳥がまだ何か疑ってる雰囲気があったので、こっちも防戦一方ではないと攻勢に出る。

 

「あんまりジロジロ見てやるなよ。それともお前はこんなちっちゃい子供も守備範囲なのか?」

 

「いや、さすがの私も線引きはちゃんとしている。12歳未満の女性は皆、等しく私の庇護下にあるので、君がエメルに何か犯罪的なことをしないか不安でね。ああ安心したまえ。その際には私が責任を持って君を殺してあげよう。殺しは得意だ」

 

「イギリスの武偵も武偵法9条の適応内だったと思うがな」

 

 疑いの目を逸らすのが目的だったとはいえ、その逸れた先がオレになることがわかりきっていただけに、その毒も切れ味が違う。

 その証拠に話しながら持っていた単分子振動刀を鞘から抜いて狂気の目でオレを見て殺してやると言う羽鳥は凄く楽しそう。

 ジャック・ザ・リッパーの血は呪いとして時に羽鳥を蝕んで破壊衝動を起こさせるのだが、たとえこれが冗談だとわかっていても、かつてその凶刃を向けられて殺されかけた身としては鳥肌ものだ。

 とにかくそうなるのは嫌なので予防として殺人を禁止する武偵法がイギリスでも採用されてることを挙げておくが、それもわかっててやってる羽鳥は、オレの表情のあからさまな変化を楽しんでから、笑顔で単分子振動刀を鞘に納めて立てかけ、ようやく帰ってくれそうな足取りで玄関へと向かってくれる。

 

「さてと、じゃあ私も午前中は仕事があるから失礼するが、詮索されたくないのなら、もう少し子供らしくすべきだよ、エメル。いや、エメルを名乗る誰かさん、かな」

 

 それにホッとする直前で、姿が消える前に立ち止まり、何をどうやって観察していたか不明なくらいの推理でバンシーをただの子供ではないと見抜いた羽鳥が、ビックリしてフォークを落としたバンシーを優しい笑顔で見るが、その笑顔の奥には底知れない恐怖があった。

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