緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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 眞弓さんの依頼で有馬鳩雄に探りを入れにアニエス学院に潜入し、乙葉まりあと名乗る有馬と接触までして話をすることに成功したのはいいが、有馬も有馬で鋭い指摘で嘘を見抜きオレがアニエス学院に来た本当の理由を探りにきて、話の主導権を握られかけてしまう。

 有馬としては自分がこの学院にいる理由を探られたくないからオレの目的が気になるといったところなのだろうし、偶然バッティングしたなんて甘い考えでもないだろうな。

 下手な嘘を重ねてさらに綻びを生じさせて疑われるのは悪手。だからといってのらりくらりと躱せるほどSランク武偵は甘くないのが現実。

 

「…………で? それを聞いてどうするんだ?」

 

 確かに眞弓さんほどの凄さを感じない有馬に警戒が緩くなっていたのはある。が、追い詰められるのは悲しいことに慣れつつあるオレは、武偵の顔をして怪しく笑みを浮かべて探りを入れてくる有馬に対して至って冷静に、いや、冷徹といった態度にシフトして質問を質問で返す。

 別に苦し紛れではない。最初からバイトだなんて信じられないだろうなと思って、そこを突かれた際の言い分を考えていたんだよ。

 バイトというのは9割ほどが真実だから疑われるのは不本意ではあるが、残りの1割の真実を見抜かれては困るのでこのバイト自体を嘘にしてしまう。

 

「そら京夜がウチの障害になるんやったら色々と対応せなあかんし、そうやって苦し紛れな質問返しはますます……ッ!」

 

「ますます、なんだよ?」

 

 強気な有馬の態度に反発したようなオレの反応が有馬にしては思惑通りといったところだったはずなところに、反撃としていきなりオレが有馬にしか発しないプレッシャーを放出。

 その変化にいち早く気づいてオレの射程からすぐに離れて一息で先制できない距離感になった有馬の対応は流石。

 

「それを聞くなら、お前がここにいる理由も話すのが対等ってもんだよな。いつからいるのかは知らんが、関西の武偵がわざわざ鎌倉に出向いてなんて、こっちも探ろうと思えばいくらでもメスは入れられるぞ」

 

 武偵には秘匿義務があるから、たとえ同業と現場でバッティングしようと、その依頼の内容を公にするには色々な条件や理由が必要になる。

 それなしでぐいぐいときた有馬が不用意だったとして脅すオレに、ようやく冷や汗の1つをかいた有馬が、周りの目もあるから変に身構えたりはせずに溜め息を1つ吐く。

 要は今、オレはバイトというのは嘘で別の目的のためにこの場にいると言ったに等しく、そこを探るならお前にも探りを入れるぞと脅したわけだ。

 それがわかった有馬も女に甘そうなオレの口を開かせる方法は通用しないと判断したか、戦闘は避けるべく詰め方を変えてくる。

 

「ほなら何系の依頼かだけにしよか? 捜索? 調査? それとも……」

 

「まだ自分が優位に立てると思ってるのか。わざわざ生徒として潜入してるなら、お前はその素性を偽ったりして通ってるよな。乙葉まりあも偽名の可能性があるし、今ここで小さくても騒ぎが起こるのは都合が悪いだろ」

 

「……それは京夜かて同じやろ? 立場上はか弱い女の子。それもこのお嬢様学校の生徒を襲ったとなったら、たちまち逮捕や」

 

「理由なんていくらでもでっち上げるさ。武偵として名乗っておけば問答無用で連行はないし、お前を拘束してから部屋の荷物検査なんかすれば出てくるだろ? 武偵手帳とか武装の類いなんかがよ。別にオレはそうなっても痛くも痒くもないんだわ。生憎と隠密性は望まれてただけで必須なわけじゃない。だがお前はどうだろうな?」

 

 もちろんハッタリなわけで、マジで問題が起きると有馬の任務が続行不可能になったりは困ってしまう。

 自分の首を絞めるようなことを言ってることには肝が冷えるが、ここまでしないと話の主導権は握らせてもらえないなら通すしかない。

 あまりにもキツい当たり方に有馬も面食らって言葉を失ってしまったものの、オレが冗談で言ってるとは思わなかったのか少しだけ悔しそうな表情をしてから力の入っていた全身を脱力させてうなだれてしまった。勝ったな。

 

「降参や。京夜が女の子をいじめて楽しむ趣味があったなんて知らんかったわぁ……てっきりジェントルマンなんやと思てたのに……」

 

「別にそんな趣味はない。依頼中はともかく普段は紳士的だ。それより脅しておいてあれだが、オレの仕事はお前とほぼバッティングしてないと言い切れるから、そっちの事情次第じゃ話さないこともない。ただし」

 

「こっちのお仕事も少しはってことやろ? ええよ。ウチも京夜を敵に回したいわけやあらへんし、人脈も増やしときたいやん。京夜もウチと仲良しになれたら嬉しいやろ?」

 

「実力のほどもわからんのに嬉しいもクソもあるかよ。そう思わせたいなら自分の有能さを見せることだな」

 

「んー、そうなるとウチの専門はこういうことやけどぉ?」

 

 観念して話の主導権をオレに渡した有馬を1度は脅した形にはなったものの、あくまでそれは『そうなってもいい』と強調したに過ぎないため、有馬が黙秘権を行使するかどうかを探る意味で反転して譲歩をする。

 しかしここからオレが勝手に依頼内容を話せば「勝手に喋っただけやん」と切り返されるので有馬の合意を取りに行くと、合意と取れる返事と共に自らの得意分野なのか、またオレにスルリと近寄って腕に抱きついて上目遣い。あー、そういう系の武偵なのね……悪魔かよ。

 男が男を殺す武偵ってのは想像するに気分が悪いが、有馬のこの見た目なら余程の事がなきゃ男とはバレないだろうし、実際に結果も伴ってのことだろう。オレには通用しないが。

 そんな意味も込めて抱きついてきた有馬を軽く振りほどいて馴れ合いを拒否。

 寂しそうな表情をする有馬に何を思うこともなく、もぎ取った主導権を行使する。

 

「それで乙葉。お前の依頼は何だ?」

 

「大雑把に言えば捜索系やね。何をってとこまでは守秘義務もあるし内緒やけど」

 

「……オレは護衛だ。それだけで武偵ならわかるだろ」

 

「護衛ってことは……あー、アイドルも大変やからねぇ。脅迫状とかストーカー被害があったんやね。御愁傷様」

 

「何事もなきゃそれでいいが、今日のお前みたいな奴がいるとこっちも別の意味で緊張するんだよ。だから明日からはウロウロするな。それか……」

 

「それとなくお手伝いするかしろってことやろ? そのくらいやったらお安いご用や。その代わり、役に立ったら……」

 

「お安いご用なのに見返りを求めるのか? だったら静観してくれるとありがたいね」

 

「んもぅ、冗談やんっ」

 

 捜索系、ね。素直になった有馬が本当のことを言っているかはわからない。

 実際、オレもオレで平然と嘘をでっち上げているからだが、諜報系の武偵同士で本音の探り合いはわずかなほころびが破綻を招く。

 それを知ってるからオレも有馬も捜索系とか護衛とか言葉足らずながらも言及がしにくい単語と理由で相手に予測させることで深入りさせなかった。

 しかしこっちは明確に護衛対象が見えている分で信憑性が増しているのは幸いで、理由についてもアイドルという立場上で色々と想像しやすいのはシンプルにありがたい。

 この結果、情報の開示という意味ではオレの方が幾分か開示したことにはなるし、主導権を握っていたオレがそんな感じだからプライドもありそうな有馬の方もあと1つくらいは有益そうな情報を自発的に出す、はず。

 なのだが、それを今の段階でこっちが求めるのは少々がっつきすぎ。怪しまれて当然だから今は我慢だ。まだチャンスはあるんだからな。

 ここから先は如何にオレが有馬に興味がなく、依頼に集中しているかを見せて有馬の疑いを晴らし、何の裏もない単なるバッティングだったと思わせられるかが勝負。成功すれば本当の情報の1つくらいはポロリしてくれると信じよう。信じないとやってられん。

 その後、有馬は協力的な態度は見せつつ、特別なにかをするとも明言はしないまま普通の女子生徒を演じながら学生寮の方に戻っていってしまい、オレもオレで撤収作業が終わったスタッフの乗るバスに乗り込み潜入1日目を終了。

 初日から有馬に接触できたのは幸か不幸かまだ判断が難しいところだが、失敗すると眞弓さんが怖いし絶対に乗り切ろう。

 何の成果も得られませんでしたは怒りの鉄槌を食らいかねないしな……ってか食らうだろうな確実に……それだけで済めば御の字レベル……やべっ、体が震えてきた……まだ夏は始まったばかりだというのに……

 

 撮影2日目。

 昨日は天気がすこぶる良かったから外中心の撮影でずいぶんと日差しにダメージを負わされたが、今日は天候としては晴れながら少々雲が多く風も強めなことから撮影のほぼ全てが室内でのものとなった。

 そのおかげで生徒による野次馬もかなり制御しやすく護衛もしやすいってなもんで、偽装も楽できた。

 その代わり、昨日に発見して釘を刺したことで変な動きはしなくなった有馬が、何を考えてなのかオレが普段なら注意して観察する場所に的確にいるもんだから逆に気になって仕方ない。視界に入るな!

 有馬なりに不審者がもしも入るならここ、って場所を監視しやすい位置にいてくれてるのかもしれないが、お前みたいなピンク髪がチラチラ見えるこっちの身にもなれ……

 しかもオレがそうやって視線を時々でも有馬に固定したりしたもんだから、謎の宣言以降オレにアピールしてきていた結城ミクも有馬に気づいてアイドルのプライドか何かなのか武偵にしかわからないくらいの不機嫌な表情の変化を見せてキロッと睨まれる。

 気づいてないとか思ってるかもだがバッチリわかっちゃったよ。うえーん、面倒臭いよぉ……

 

「へぇー、あなたはあーゆー子がタイプなんですねぇ。へぇー」

 

 案の定、撮影の合間の小休憩時にニッコニコな笑顔で手招きされて応じて近づいてみれば、彼氏の目移りにチクチクしてくる彼女みたいなノリでお小言されてしまい、武偵であることも有馬のことも話せないオレは「嫌でも目立つので」とありそうな理由で乗り切ろうとする。

 その理由には納得など1mmもしてなさそうな「ふーん」で返した結城ミクが本当に厄介な彼女っぽくて、ついヘコヘコと尻に敷かれる彼氏ムーブをかましてしまうが、別に結城ミクが勝手にしてることにオレが媚びへつらう必要って……

 と考えたらバカらしくなって結城ミクへの当たりがキツくなりかねないとギリギリのところで自覚して引っ込める。

 危ない危ない。今は大事なキャスト様だからな。文句は全てが終わってからにしよう。

 その全てを終えた後のことを考えることで結城ミクのアレコレを聞き流すことに成功し、まだ自分に注目してくれないのかと落胆気味になって愚痴も出てこなくなった結城ミクからも解放。途中からなに言ってたか覚えてない。ボケたかな?

 それでこの日は結城ミクと有馬に変な意味で絡まれただけで撮影は無事に終了。

 オレの心労の方が増える一方で何の前進もしていない気がしないでもないが、明日で撮影は最後だし、心労を理由にボロは出せん。油断せずにいこう。

 

 そして3日目の撮影最終日。

 今日は前日までに撮り終えた必要なカットの中から、監督と結城ミクが納得していないカットをもう1度撮り直すのがメインで、いわゆる調整が撮影の大部分になるらしい。

 だからスタッフもカットへの理解とノウハウがあって動きが全体的にスムーズに進行。

 野次馬の方も流石に3日目ともなれば減るだろうと勘繰っていたが、オレが思うよりも結城ミクというアイドルは人気があるようで、劇的に増えはしないまでも減った様子はないのが凄い。

 みんな何をそんな熱心に見ているんだろうと、アイドルの貴重さとかにいまいち理解が及ばないオレが黙々と作業をしながら観察していると、前2日で全く見なかった野次馬の生徒を発見。

 別にその条件に合致する生徒はもう何人かはいるだろうが、目に入った生徒は良くも悪くも特徴があったもんで、否が応でも反応せざるを得なかった。

 今時の女子高生が持っていること自体が……というか世間一般の人でさえ所持者はほぼいないだろうバズーカ砲みたいなレンズを着けた一眼レフカメラを構えている生徒が、わざわざ離れた位置から──おそらく注意されることを見越している──撮影しやすいように脚立にまで乗っているんだからそりゃ注目もする。

 熱狂的なファンって客観的に見るとちょっと怖い。と感じる程度の些細なことで片付けられると思っていたが、そうは問屋が卸さない。

 数々の人間観察をこなされてきた諜報武偵としては、あの生徒は見過ごせない。見過ごしてもいいけど、前例って1度許すとあれなものだしね……

 正直あまり乗り気ではないものの、見てしまったのと有馬に対する有言実行というかも可能になったと考え直して、カット撮影のチェック中に持ち場を離れて野次馬から離れているカメラ生徒に接近。

 

「すみません。一応の対応として、撮影したものの確認をさせてもらえますか? 何かいかがわしい角度や物が撮られていたりすると困るので」

 

 こっちはほぼ確信を得ていたが、至近距離まで来れば100%だ。

 とにかくまずはもっともらしい理由で脚立から降りてもらうが、これに対して生徒は言葉ではなく行動だけで示して黙って脚立を降りカメラを差し出してきた。

 無駄な疑いは出したくないよな。そうだよなぁ。でももう無理。それが証拠。

 そうして差し出されたカメラを受け取る動作から素早くカメラを取り上げて地面に置きつつ、生徒の腕を捻って体勢を崩して組み伏せてしまう。あー、素人で良かった。

 この時、何かの意地なのか声を出すのは我慢したが抵抗は弱く、オレがあと1つ何かを言えば観念しそうなものだが……

 

「ちょっと! あなた!」

 

 と思っていたら、オレの早業を目撃でもしたのか想像よりも早く他からの反応があり、同じ学校の生徒とあって怒り気味の声で怒鳴られる。

 怒鳴った生徒は純粋な日本人の血筋ではないと思わせる白い肌に長い輝くような金髪と葡萄色の瞳の超美人。

 胸も大きいがその辺はどうでもよく、オレに対して敵対心むき出しな表情で組み伏せた生徒を気遣うような素振りを見せてから抗議をしてくる。

 

「し、失礼ですがこちらの方がこうした扱いを受けるような行為をしていたとは思えませんでしたが、どのような理由でこのような蛮行に及んだのでしょうか」

 

「理由? ええ、撮影自体に問題はありませんでしたよ。ですがこの場合は『不法侵入』の罪には問えますので」

 

「ふ、不法……侵入……?」

 

 彼女からすればまぁ当然の抗議だろうなと素直に聞き入れてあげてから、オレがこうした本当の理由についてを説明。

 この時点で組み伏せた生徒は観念して抵抗もなくなったが、とどめにその頭に被っていた女性もののカツラを剥ぎ取ってあげれば、あら不思議。中性的な短髪男子の登場ですわ。

 お嬢様学校なのに化粧っ気が最初からなかったのもあれだし、よくよく見ればここの制服に見えるものも急ごしらえした感じの荒い縫いとかが見え隠れしている。いや、逆によく2日で準備したなと誉めたいよ。

 場所の特定に関してはおそらく初日辺りにここの生徒がネットに撮った写真を発信して、少ない情報──制服や記事の内容などだな──から突き止めて大急ぎで準備してってところか。ネットって怖い。

 ということで生徒の正体が明かされて美人生徒もビックリ仰天な表情から言葉を失い、納得がされたところでオレは警察に通報。

 駆けつけた警官に連行されていった熱狂的なファンを見送りつつ、嘘から出た実になってしまった現実には少々喜べないが、有馬はこれでオレの任務が嘘じゃなかったかも、くらいには思ってくれたはず。

 

「あ、あの」

 

 とか考えながら必然的に中断せざるを得なくなっていた撮影に戻ろうとしたら、先ほどオレに勇敢に噛みついてきた美人生徒さんがオレの前で綺麗なお辞儀をしてくる。

 

「先ほどは感情のままに怒鳴りつけてしまい申し訳ありませんでした。あの時あの場にいた私と同じ考えだった生徒を代表してお詫びいたしますわ」

 

「あー、良いですよ別に。こういう仕事は嫌われるのが日常なんで気にもしてないです」

 

「で、ですが……」

 

「申し訳ないと思えるその心を大事にしてください。撮影に戻りますので失礼します」

 

 これ以上関わられてもこっちが困るので、少し強引でも謝る生徒を引き離してこの話は終わりにする。

 それに納得するはずもないとわかっていても、オレが素っ気ない態度を貫けばあっちも折れるしかなくなるし、自分の行為が相手に迷惑になってるとわかればそれで終わる。優しくて賢そうだから尚更、な。

 

 予想通り、それ以降は微妙な表情こそすれど接触の機会をうかがう様子もなく大人しくなって、そちらへの意識は撮影の途中で打ち切り、残った厄介な2人へ意識を集中しながら仕事を全う。

 

「なーんだー。ならあなたは先輩だったんですねぇー」

 

 しかしまぁ、厄介な1人の結城ミクに関しては、先ほどの騒動の件もあってオレが東京武偵高の3年であることを正直に話せば、諸々の理由にも納得してあっさりと引き下がってくれる。

 撮影も終わって撤収するのみの段階にまでなってからそんな話をしたからか、ムキになっていた自分に脱力した様子だったものの、結局は最後までアイドルとしての魅力をオレに伝えられなかったことは悔しかったのか、マネージャーに呼ばれて行ってしまう直前に「次に機会があったら今度こそメロメロにしちゃいますよぉー」とかなんとか投げキッスしながら言い放っていった。

 さすがはCVR教師の妹。最後までアイドルを演じたか。いや、演技じゃなくて本心。プライドかもしれないがな。

 結城ミクが思うよりもオレは高い評価をしていたわけだが、それは棚に置きつつ、残る1人である有馬が動きやすいように機材の回収し忘れがないかの確認のために校内を歩き回る雑用を受け持つ。

 そうすればすぐに食いついた有馬は、人の目がほとんどない場所とタイミングを狙って接近し、先ほどの騒動の解決を小さな拍手で労ってくる。

 

「いやー、素人相手とはいえ見事なお手前で」

 

「所持品にスタンガンでも持ってたらと警戒もしたが、ただの暴走したファンで良かったよ」

 

「結城ミクにも素性を隠しとったんやね。てっきり結城ミクからの依頼やと思っとったけど」

 

「余計な心配をかけまいとする事務所の計らいだ。何も起きなきゃそれでよし。何か起きてもオレがって話だ。事前にこっちが知ってたかを結城ミクが把握してなきゃ突発的な問題で済ませられるしな」

 

「それで京夜は報酬が貰えて、撮影も成功。WinWinってやつやね」

 

 武偵の仕事は元々がそういう仕組みだろ。

 という真っ当なツッコミは話が逸れるから引っ込めておきつつ、わざわざ撤収間際に接触してきたなら用があるんだろと素っ気ない空気を醸し出す。

 それを察してくれて本当にこちら側からは有馬にもう興味がないと示すことには成功し、そこに思惑通り隙を見せた有馬は最後の最後でボロを出す。そのプライドゆえに。

 

「お仕事に熱心な京夜に悪いから、ウチも1個だけホンマのこと言いたかってん。ウチの任務、捜索系っちゅーのは嘘。ホンマは──」

 

 手強い相手だったが、海外じゃあまり良い思いが出来なかった分、こっちで運が向いてくれたのかもな。

 こうして眞弓さんからの依頼は無事に完遂。あとは報告を残すのみだが……あー、怒られるなこれ……眞弓さんからじゃなくて……あの……

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