それからレキはオレ以外の誰にも悟られることなく姿を眩まし、アリアが慌てていたが、オレにはどこへ行ったのかわかっていた。
これからレキがどうするのかはさすがに予測できないが、今までのレキよりこれからのレキの方が素敵になっていることを信じている。
その後、自衛隊の爆発物処理班や警視庁のお偉いさん、武偵高の蘭豹、綴、高天原といった先生や事後処理班の武偵高生が何人かやってきてせっせと動き始め、捕まえたココ3姉妹は車輌科の先輩が護送。
オレやキンジ達は東京駅を出てその出入り口に停まっていた何台かの黒塗りの武偵車に分乗した。
オレ、理子、キンジで乗り込んだ車では、先ほどのレキの不発弾について話を始めた。
「レキの不発弾、あれはどうやったんだ?」
「これだよ京夜」
唐突な質問だったが、理子が言いながら空の薬莢を取り出してオレに渡してくる。これは、レキの撃ったやつか?
思いながらそれを受け取り何気なく見てみると、どうにも不可思議なナイフの跡がうっすら見えた。
「ナイフの跡?」
「銃弾の薬莢には雷管っていう点火装置があるんだ。それが無ければ弾は発射されない。キンジはその雷管をあらかじめ抜いていたんだよ。そして不発弾と思わせて雷管を戻し、次は正常に発射されたってこと」
「レキが自害用に1発残すことを知ってたってことか?」
「それらしいことを比叡山でされかけたし、ジャンヌからもその可能性を忠告されていたからな。一応の措置をしておいたってだけだ」
「ちょっとレキのことを甘く見てたからな。助かったよ」
何はともあれ、キンジの事前の対策で事なきを得たのは事実。感謝感激雨あられってな。
――ピリリリリッ!
そこで一段落すると、突然オレの携帯が鳴り、電話の相手を見ると、いつの間にか登録されていた愛菜さんの名前が。
なんとなく第一声が予測できたオレは、携帯を隣の理子に渡して出るように促す。
不思議に思いながら理子がその電話に出ると、
『京ちゃん!! 大丈夫やった? 怪我とかしてへん!?』
耳に直接当ててないのに聞こえたその大音量は、理子の鼓膜を破らんばかりの威力で、被害を受けた理子は耳鳴りが起きたようだ。
「だ、誰ですかあなた?」
『ん? そっちこそ誰やねん。かわエエ声やけど、それ京ちゃんの携帯やよね?』
「理子りんはキョーやんの『彼女』ですけど、キョーやんに何かご用ですか?」
『……ほほぅ。おもろいこと言う子やね。京ちゃんに替わってくれるか?』
……うわぁ、替わりたくねぇ。
にっこり笑顔で携帯を渡してくる理子も理子でなんか怖いし、替わらなきゃ替わらないで京都に帰れなくなる。
どちらにしろ選択肢は出るしかないので、恐る恐る携帯を受け取り通話に出る。
「もしもし?」
『ああ京夜? 愛菜なら今みんなでなだめてるから大丈夫よ。それより理子がいるのね。ちょっと意外』
しかし電話の相手はいつの間にか幸姉に替わっていて、なんだか電話の向こうでふがふが聞こえるのはとりあえず聞かなかったことにして話をする。
「一緒に乗り合わせてたみたいだ。事件は無事解決。オレとキンジはちょっと出血あったけど、もう止まってる」
『ニュースでもいま東京駅に着いて爆発はしなかったって。一応事後報告ってことでそっちからの連絡待ったんだけど、愛菜が待ちきれないって』
「ああそっか。たぶん事件の方はあんまり話せないと思う。この後色々とやるみたいだし」
『みんな無事ならいいのよそれで。よく頑張ったわね、京夜』
「……頑張れたかな、オレ」
『もっと胸を張れ、猿飛京夜。あなたはちゃんと守ったんでしょ? 大事な仲間を』
そう、だといいな。
思いつつ横の理子とキンジを見ると、幸姉の言葉が聞こえたわけではないのだろうが、2人とも少しだけ笑顔を見せてくれた。
「京都の方には明日にでも戻って美麗を迎えに行くから、風雪ちゃんにも言っておいてくれ」
『りょうかーい』
それで電話を切ろうとしたのだが、オレの肩をチョンチョン叩く理子が替わってと訴えるので、仕方なく幸姉に替わることを伝えて携帯を理子に渡した。
「ゆきゆき! キョーやんをフッたの? どうなの? くふっ」
ぶはっ! こいつこんなこと聞くために替わったのか! 死ね!
幸姉が答える前に速攻で携帯をブン取り通話を切ったオレは、それから武偵高に着くまで執拗に理子の問い詰めにあった。
当然黙秘を決め込んだがな。
すっかり日の暮れた夜に武偵高に着いたオレ達は、すぐさま学科ごとに分けて調書を取られ、今回のココ達の犯行は、日本政府を脅迫して金をせしめようとしていたせい。ということと、一般市民を守ったとして、新幹線を真っ二つにしたことその他は責任問題にはならなかった。
しかし今回のココ達の本当の目的が、キンジやアリアだったことは伏せると言うことらしい。
もちろん途中乗車のオレもココ達に狙われていたので、これも口外しないこととされた。
詳しくはわからないが、貴族のアリアが日本で狙われたとあっては、外交問題になるとかなんとかと、後からアリア本人から聞いた。
それが終わってくたくたになって帰宅してみれば、部屋には誰もいなく、珍しく静かな部屋になっていた。
小鳥はどうした? と一瞬考えたが、小鳥も小鳥で依頼とか何かをこなしに行ってるのだろうと結論付けた。
おそらくオレが予定通り帰宅してたら、小鳥もそれまでには帰宅できる内容だから、オレに連絡がなかったのか。
ならこちらから連絡する必要もないか。過保護も良くないし。
そうしてオレはさっさとシャワーを浴びて、本当に久しぶりの静かな部屋で一夜を過ごした。
ちょっと寂しいとか思ったら負けだな。
翌日。
昼過ぎ頃に京都へと到着する新幹線に乗ったオレは、その道中でジャンヌに連絡を入れていた。
理由は単純明快。オレが武偵として東京武偵高に残るから、保留にしていたチーム申請の了承を取るためである。
ついでに昨日の事件のことも少し話しておき、早速話を本題に移す。
『そうか、わかった。チームの方は私がリーダーということになっているから、申請はこちらで行う』
「…………ん? リーダーということになっている?」
『そうだ。何かおかしいのか?』
「いやいやいやいや、おかしいよ? だってオレ、ジャンヌと『2人のチーム』だと思ってますもん。だったらその言い回しは明らかにオレ以外のメンバーがいるよね?」
『ん、私はお前と2人のチームなどと一言でも言ったか? いや、言わなければわからなかったのか。日本語とは難しいな。そうだな、改めて言おう。猿飛京夜。お前を私がリーダーの通信系チーム「
あ、そうですか……それは素早い手回しですこと。
しかし自分で組もうと言っておいて今さら「2人じゃないとやだ」と駄々をこねるのは、いただけない。まして時間的にも今日が修学旅行Ⅰの実質的最終日だ。
チーム登録が1週間後の9月23日までとはいえ、今からジャンヌのチームを蹴って自分の理想のチームを作れるかと言えば、無理だ。
理子もなんだかんだでアリアが引き抜くと言う話だし、というかアリアのチームのメンバーは昨日教えてもらったから、理子は予約が入った状態。
それを何故知ってるかと言われれば、ダメ元ながらアリアがオレをチームに誘ってきたから。
つまりオレが組みたいと思った2人はすでに他にメンバーがいる状態。
それでも組んでくれると言ってくれているジャンヌの申し出は非常にありがたいというわけだ。
「……コンステラシオンって、名前の意味は?」
『うむ、フランスの単語なのだが、日本語に訳すと「星座」だな。それで答えは?』
「オッケーだ。通信系のチームにオレが噛み合うかは知らないが、オレを入れても問題ないってリーダーの判断なら、喜んで入らせてもらうよ」
『そこは私個人の戦力として扱うから問題はない。メンバーのリストなどはメールする』
個人の戦力って……それはメンバーと言えるのか?
そんな疑問も沸いたが、携帯越しのジャンヌの声が少し嬉しそうにも聞こえたので、アリアで言うドレイと同じようなものかと勝手に納得して通話を切った。
その後に届いたジャンヌからのメールを確認すると、話の通りチームメンバーの名前と簡単なチームでの役割などが書かれていた。
島
あとは……中空知がいるのか。実物はまだ拝めてないから、登録の時の楽しみができたな。
それから自分の席へと戻って京都までのほほんとしてようと思っていたら、オレの席に誰か座っていて、後ろから近付いたのだが、その金髪の頭に見覚えがある。我が悪友だ。
「なにしてんのお前?」
「甘いよキョーやん! 理子の前で京都に行くこと喋るとか甘すぎー。そんなの知ったら一緒に行くに決まってるじゃーん」
ああ、そういや昨日幸姉との会話でそんなこと言ったな。理子の隣で。
それでこいつ、わざわざオレの乗る時間を調べて乗り合わせてきたわけか。あっちで待ち伏せでもすればいいだろ。
「ほらほら、そんなとこ立ってたら邪魔になるから、こっちに座りんさいな」
そう言う理子は席を1つ横にズレて窓際に座ると、オレの席を空ける。
そこがお前の席か。どこまで仕込んでんだよ。
「京都に着くまでキョーやんとラブラブしようと思ってぇ、頑張りました!」
「じゃあ京都に着いたら解散な。どうぞ観光を楽しんできてください」
「京都と言ったら生八つ橋! 京風お好み焼き! それからそれからぁ……」
聞いてねぇ。絶対ついてくる気満々だぞ。
そんなハイテンション理子と終始くだらない話をしていたら、あっという間に京都に着いてしまい、どこぞの日本文化大好きフランス人と乗った時と同じような結果になってしまった。
まぁ、暇しなくて悪いわけではなかったけどな。
そして京都に着いたら着いたでまた問題発生。
昨夜の段階でオレがこの時間に京都に着くことは幸姉達に告げてあったので、そこで待っていた愛菜さんが、一緒にいた理子を見てフリーズ。
理子も理子で腕に抱き付いていたから面倒だ。
「幸音に特徴聞いといて正解やったわ。あれやろ? 昨日の電話に出とった理子言う子やろ?」
「こっちもちょっと調べちゃいましたー。まさか天下の月華美迅の愛菜・マッケンジーさんが、キョーやんと知り合いだったなんてビックリですぅ。くふっ」
「知り合いやなんてもんやないけどなぁ。そっちはワガママ通して抱き付いとるようにしか見えへんわぁ」
「くふっ、ご冗談を。キョーやんは理子りんとこうしてるのが嬉しいんですよ」
フフ、フフフ。
そんな不気味な笑いを互いに漏らしながらの睨み合いは、心臓に悪すぎる。誰か助けてー!
「そ、そういえば愛菜さん。今日はお仕事ないんですか?」
「今日と明日はお休みもろたから問題あらへんよ。その代わりしばらく休みなしなんやけど……」
「とりあえず理子は離れろ。険悪になられても困る。愛菜さんもお暇なら一緒に行きますよね」
「そのために出迎えとんのやから当然やね」
「はいはーい! 理子りんまずはお昼食べたーい! キョーやんと2人きりで」
「ワガママ多い子は京ちゃん嫌いやから気ぃつけなあかんで?」
「とりあえず美麗を迎えに行ってからにしよう」
そうしてバチバチ視線で戦う2人にため息が出つつ、まずは置いてきぼりにしてきた美麗を迎えに星伽神社へと足を運んでいったのだが、その道中の2人の一触即発の空気がたまらなく怖くて、割って入ることすらできなかった。
星伽神社に着いてみれば、事前に連絡が行っていたのか、入り口付近で巫女装束の風雪ちゃんと美麗が待っていて、オレ達の姿を確認すると風雪ちゃんは軽くお辞儀をして、美麗はオレに走り寄って顔を擦り付けてきた。
あれ? 風雪ちゃん学校とか大丈夫なのか?
思いながら風雪ちゃんへと近付いて改めて挨拶を交わして話をする。
「昨日は白雪お姉様を救っていただき、ありがとうございました。星伽を代表してお礼を申し上げます」
「いいよいいよ。助けたのはオレじゃないし、新幹線ぶった切ったのも白雪だしな。それよりハイマキは?」
「それが、先ほどこちらでお待ちしている間にフラッとどこかへと行ってしまって。ですがこちらの美麗が探さなくてもいいと訴えてきたのでそのまま……申し訳ありません」
「いや、大丈夫だろ。たぶん飼い主が近くに来たのを察して動いたんだろうしな」
やっぱり京都に来てたか、レキ。
あれから連絡がつかないってアリア達が騒いでたが、オレの予想は当たってたな。
まぁ、このまま東京武偵高に戻ってこないってこともないだろうし、ゆっくりさせてやるか。気持ちの整理も必要だろ。
「それより風雪ちゃん、学校とか大丈夫なのか? 平日の真っ昼間だけど……」
「はい、都合の方は融通が効きますので。今日は問題ありません」
「じゃあじゃあ! 理子りん達と一緒にお昼食べよ? ゆきちゃんの妹なら大歓迎だよー! もちろんキョーやんの奢りだし!」
おい、勝手に決めるな。しかもオレの奢りかよ。
しかし愛菜さんと理子の仲が険悪な今、オレ以外の人間がいるのはありがたい。
「……残念ながら星伽は規則が厳しいのでご一緒するのは叶いません。申し訳ありません」
あ、そうだった。白雪も箱入りだったから、風雪ちゃんもそうだよな。
くそ、星伽の規則め。オレを1人で死地に追い込むのか。
などと八つ当たりしたところで風雪ちゃんと別れて街へと戻り、愛菜さんの薦めでお好み焼き屋へと入ったオレ達は、4人用テーブル席について各々自由に注文。
美麗も愛菜さんの計らいで店内オッケーとなり、オレの足下で伏せていた。
「あー! ちゃうちゃう! 焼く時はどばーっと一気に鉄板に広げんねん。ひっくり返すんは下が完全に焼けてから!」
「おおー! 本場の焼き講座! キョーやんは教えてくれなかったからねぇ」
「お好み焼きなんて一緒に焼いたことないだろ」
「京ちゃん焼くんメッチャ上手いんやで? 私らでお好み焼きパーティーした時はずっと焼き担当しとったくらいや」
「愛菜さん達がおしゃべりに没頭して焦がすからでしょ。タコ焼きだってタコ入れ忘れたりとかひどかったですし」
注文した生地を焼きながら、2人とも勝手なことを言うのでやんわりツッコむと、2人ともそうだっけ? という顔をする。この2人、なんか似てるなぁ。
などと思いながら、さっきまでオレの隣の席を争っていた2人――結局2人が隣同士――が、いつの間にか仲良く話をしながら焼けたお好み焼きを食べているので、その光景に苦笑しつつ美麗に食べられるように作ったお好み焼きを床に置いてやる。女ってわからん。
それからすっかり意気投合した愛菜さんと理子は、オレと美麗そっちのけで食後のデザートと称して和菓子やら何やらを買って食べ歩き、本来なら夜にでも東京へ出戻りしようとしていたのに、そのまま勢いに任せた2人のせいで愛菜さんの家に1泊することになってしまった。
そしてオレの意思は当然のごとく無視された。
それで愛菜さん案内でやって来たのは、京都駅から南下した烏丸通りと九条通りの交差点近くの割と新築臭がある6階建てのマンション。その1階に愛菜さんは住んでいるらしい。
実家は京都市北部の上賀茂にあるのだが、京都武偵高卒業と同時に1人暮らしにしたとか。
玄関を通って、すぐに部屋に通されるのかと思いきや、104と書かれた部屋の扉の前で「ちょう待っとってや」と言われてしまい、愛菜さんは理子と一緒に部屋に入っていき、オレはその間部屋の外の廊下で待ちぼうけ。
扉の横のマッケンジーと書かれた表札から奥の105号室の扉を見て、沖田の表札を確認し、その向かいの110の進藤の表札、愛菜さんの部屋の向かいの109の宮下の表札を見て、オレは笑うしかなかった。
眞弓さん以外の月華美迅みんな住んでんのかよ!!
しかもよく考えたら眞弓さんの実家もすぐ近くだった気がするし!
それでこの前早紀さんが10分以内に全員集めて京都駅に来れた謎がわかったところで、愛菜さんからオッケーサインをもらって室内へとお邪魔した。
部屋は1LDKの1人で暮らすには少し広く感じる洋式の造りで、カーテンやカーペットなんかは愛菜さん好みのピンクや白で統一されていた。
そしてオレを最初入れなかった理由はおそらく、部屋が散らかっていたからだろう。
女性はそういうの気にするって言うからな。
「愛菜さん。このマンションに千雨さん達も住んでますよね」
「あ、気付いてもうた? なんや眞弓が集合かけやすいようにってまとめて用意してくれてん」
「えー! なになに? もしかして月華美迅の他の人達も同じマンションなの? 理子会いたーい!」
「夜になったらみんな帰ってくるさかい、呼んどいたる」
「やたー! きゃふー!」
そう話して携帯で連絡を始めた愛菜さんに、ウキウキの理子。
でもそうか。ここが月華美迅の今の拠点ってことになるのか。1人1部屋じゃなくて2人1部屋でも十分なスペースの気がするけど、そこはプライベートとか色々あるのかね。
そんな予測をしつつ、愛菜さんがお茶菓子を出して、理子が棚に並べてあったDVDから、洋物のスパイ映画を取り出して勝手に観始めた。相変わらず自由だ。
それから愛菜さんと理子は仲良く話しながらDVDを何本か観て時間を使い、オレは時々振られる話にうんうんテキトーに相づちを打ちつつ、傍ですやすや寝てる美麗とまったりしていた。
夜になると仕事から帰ってきた千雨さん達が色々なデリバリーと一緒にやって来て、またも宴会モードに突入し、理子も理子で速攻で千雨さん達と仲良くなり一緒になって騒ぐ。
眞弓さんは今回いなかったが、それでも賑やかな人達だよな。
賑やかなメンバーはそのまま愛菜さんの部屋で騒ぎ続けて、明日の昼前には京都を発つ予定のオレが眠たそうにしていると、気を利かせてくれた早紀さんが自分の部屋に移って寝るように言ってくれて、その厚意に甘えて美麗と一緒に逃げるように早紀さんの部屋に移り、渡された毛布を被ってリビングのソファーで一夜を過ごした。
翌朝、徹夜したらしい愛菜さんと理子が寝ているオレにイタズラしに来ていたが、そんな危険をいち早く察知した美麗に起こされてそれを回避し、うっすら目の下に隈ができてる2人に寝るように促してから、部屋を提供してくれた早紀さんにお礼を言いつつ部屋を出て、もう1泊するらしい理子を置いて東京へと戻ったのだった。
それから戻る最中に教務科からのチーム登録に関する確認の電話がかかってきて、それに『承認』。
これであとはチーム全員で写真撮影をすれば『登録』となる。
写真撮影は必ず『防弾制服・黒』でする決まりなので、オレは東京武偵高へと帰ってからすぐに借り物の防弾制服・黒に着替えて撮影場所に行くと、すでにジャンヌ達は集合していて、オレを待っていたようだった。
「悪い。ちょっと予定通りに帰ってこれなくてな」
「理子から聞いている。遅れたことには猿飛に非はないから許してやってほしいと言ってきたぞ」
理子が? アイツも気を遣えるようになったのか。
いや、ずっと前から気を遣えるやつだったかもな。単にそれを面に見せないだけか。
「おい! 全員揃ったなら早よ撮れや!」
そこで撮影係の蘭豹が急かしてきたので、話も区切りカメラの前に立つ。
武偵の写真撮影は、真正面を向かず、正体を微妙にぼかすのが習わし。
ジャンヌがリーダーとする5人構成のチーム『コンステラシオン』は、中央にジャンヌが腕組みの状態で体を少し正面からずらして顔も右半分が写らないようにする。
他の島と京極はオレも顔くらいは知っていて、各々ジャンヌの左右に散ってぼかすポーズを取る。
そしてこの中で唯一見たことのなかった人物が中空知であるのだが、撮影前にジャンヌに「中空知の視界に入るな」と言われてしまったので、ジャンヌの右横に物凄く遠慮しつつ写ろうとするその中空知の少し後ろ。
ジャンヌの左横に来る位置で、先日の狙撃によるこめかみの傷を隠すように顔を傾けて、ネクタイを直すような仕草で写った。
「9月17日13時42分、チーム・コンステラシオン――登録!」
蘭豹が時計を見ながらシャッターを切り、それでオレ達のチーム登録は終了した。
これからオレは、1人の武偵として歩んでいくんだな。
そんなことを実感しつつ、これからお世話になるチームメンバーを後ろから見て静かに誰にも見られることなく微笑んだのだった。