緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet5

 バスジャック事件の翌日。

 オレは右手に花束、左手にバスケットに入った果物セットを持って、武偵病院に来ていた。

 昨日頭を撃たれてここに運ばれ入院したアリアの見舞いをするためだが、怪我自体は額への外傷だけで済んだらしい。

 運が良かったとしか言えないがな。

 アリアの病室はVIP用の個室で……ってそうか。アリアはイギリスの『H』家の貴族だったな。

 などとアリアが転入してきた頃に興味本位で不知火から聞いた情報を引っ張り出していた。

 アリアの病室に入るためノックしようとしたのだが、中から話し声が聞こえてきたため、あまり感心できないとは思いつつもドアに聞き耳を立てた。

 

「あたしはあんたに、期待してたのに……現場に連れて行けば、また、あの時みたいに、実力を見せてくれると思ったのに!」

 

「……お前が勝手に期待したんだろ! 俺にそんな実力は無い! それにもう……俺は、武偵なんかやめるって決めたんだ! お前はなんでそんなに勝手なんだよ!」

 

 話をしてるのはアリアとキンジ。

 どうやら今回の反省会って言えるほど、おだやかな内容じゃないらしい。

 

「勝手にもなるわよ! あたしにはもう時間が無い!」

 

「なんだよそれ! 意味がわかんねーよ!」

 

「武偵なら自分で調べれば!? あたしに……あたしに比べれば、あんたが武偵をやめる事情なんて、大したことじゃないに決まってるんだから!」

 

 時間が無い?

 確かにそれは気になるな。

 皆目見当もつかないが、近いうちに調べてみるか。また理子頼みにならない程度にな。

 しかしこれは険悪ムードがプンプンするな。

 何事もなけりゃいいが……まぁ、いざとなったら割って入るくらいのことはしてやるか。

 

「とにかく……俺は武偵なんてもう辞めるんだ。学校も、来年からは一般の高校に移る」

 

「……」

 

「聞いてるのか」

 

「分かった……分かったわよ……あたしが、探してた人は……」

 

 キンジ。アリアにその先を言わせる気か? それならオレはお前を殴るかもしれない。

 今のお前は『逃げてる』だけだ。

 武偵をやめるのも、アリアの期待に応えられないのも、自分の『力』と向き合えないのも全部。

 

「あんたじゃ、なかったんだわ」

 

 キンジの実力に落胆したアリアの哀しそうなその声は、決して大きな声ではなかったが、ドア越しのオレにもハッキリと聞こえてきた。

 その後すぐにキンジが病室から出て来ようとしたので、オレは鉢合わせにならないように廊下の角に隠れて見送った後、再びアリアの病室の前に立った。

 今キンジと顔を合わせたら、オレはたぶん止まれなかったから。

 それに、キンジにも色々と思うところがあるんだろうし、深く事情を知らないオレが割って入ってこじれると面倒だ。

 だからオレは、この2人のわずかに繋がった『糸』が完全に切れないようにしてやる。

 オレはドアをノックして、アリアの了承を得てから、先程までの話を聞いていなかったような明るい顔でドアを開けて中に入った。

 

「京夜……」

 

「おう。元気そうだな」

 

「こんなかすり傷程度で、医者は大げさなのよ」

 

 アリアは言いながら包帯が巻かれた頭に手を当ててみせた。

 

「じゃあ、見舞いの品は必要なしだな。気に食わなきゃ捨ててくれ」

 

「京夜は意外と気が利くのね。せっかく持ってきてくれたんだから、ありがたくもらっておくわ」

 

 言われてオレは、アリアのベッドの横にあったテーブルに花束と果物セットを置いて、備えてあった椅子に座った。

 ん? ゴミ箱になんか……ファイル?

 椅子の横に置いていたゴミ箱の中にあったファイルが気になったオレはそれを拾い上げざっと目を通した。

 

「バスジャックの調査報告とかか。犯人は狡猾な奴だから手掛かりなんて見つかってないだろうが」

 

「それ、さっきキンジが持ってきたの。でも、そんな調査結果じゃ事件の進展に繋がらない」

 

「事件ってのは『武偵殺し』か? 確か前に犯人は逮捕されたとか言われてたが、このレベルだとさすがに模倣犯とかいうレベルじゃないな」

 

 言いながら持っていたファイルを閉じて、再びゴミ箱へ……は、さすがに調べてくれた探偵科や鑑識科の連中に悪い気がするから、ゴミ箱の上にうまく乗せてみた。机にはちょっと置くスペースがな。

 

「……誤認逮捕なのよ。『武偵殺し』はまだ捕まってないわ」

 

「アリアは『武偵殺し』を捕まえたいんだな?」

 

「『武偵殺し』だけじゃないんだけどね。京夜には話せないことが多いから、深くは探らないで。知れば京夜にも危険が及ぶかもしれないから」

 

 武偵に危険はつきものだ。

 って言ったところで話してくれそうにないな。

 Sランク武偵が『危険だ』と言うなら、深追いはしないさ。

 

「でも、京夜はやっぱりあたしが見込んだだけの実力を持ってたわね。あたしとキンジがバスに降りた時に混乱が少なかったのは、京夜がうまくみんなをまとめてたからだって聞いたわ。バスに張り付いてたオープンカーを撃破したのも。ホント……役立たずなキンジとは大違い」

 

「アリアが言ったんだろ? 宝の持ちぐされは良くないって。オレはオレに出来る最大限のことをしただけだ」

 

「……ねぇ京夜。もう1度あたしとパーティーを組むの、考えてくれない? キンジは……!」

 

 言いかけたアリアに対してオレは最後まで聞かずに首を左右に振って答えた。

 考えは変わらない、と。

 

「アリアのパートナーはキンジだよ。オレはキンジ以外にアリアのパートナーはいないと思ってる」

 

「どこにそんな根拠があるっていうのよ」

 

「キンジはやる時はやる奴だ。オレは何度かそれを見てきた。そして、その時のキンジは間違いなく本気のオレよりも何倍も頼りになる。だからほんの少しでもいいから、まだあいつを……キンジを信じてやってほしい」

 

 キンジの『調子の波』とも呼べるモノ。

 オレには何が要因となってるのかはよく知らない。

 だが、やる時のキンジは本当に圧巻の一言だ。

 事実、その時のキンジは入試の実技試験でオレに『ほぼ何もさせず』に捕縛しやがった。今でも鮮明に憶えてる。

 まぁ、あの時はオレもだいぶ『あれな心理状態』で試験を受けてたから、割とあっさり諦めたのもあるが。

 それでもキンジは凄かった。

 オレのそんな言葉を聞いたアリアは、いまいち納得いかないような表情をしたが、キンジの『あの時の実力』を自分の目で見たこともあるためか、否定はしてこなかった。

 

「……京夜がそんなに言うなら……ううん。あたしのカンを信じるなら、まだちょっとだけキンジを信じてみたい。でも、キンジが実力を見せるのを待ってる時間は……あたしにはない」

 

「……ロンドン武偵局に戻るのか?」

 

「……かもね」

 

 諦め。

 おそらくアリアがここ、東京武偵高に来たのは、自分の実力に合わせられるパートナーを探すためだ。

 ここで見つけた候補キンジは昨日のあの役立たずぶりを披露し、オレもキッパリと断ってしまった。

 そうなるとアリアがここにいる理由がなくなってしまうのだろう。

 

「……アリアはきっと後悔するぞ。『あの時キンジを意地でもパートナーにしておけば良かった』ってな」

 

 オレはもう1度、アリアを引き止めるようにそう言って椅子から立ち上がり病室を出ていこうとする。

 

「京夜は……良いパートナーが見つかると良いわね」

 

「他人事じゃないだろ?」

 

 それからオレはアリアの顔を見ずに病室を出ていってしまった。

 ……大丈夫さ。

 アリアとキンジは離れたりしない。

 アリアの言うところのカンになるわけだが、これはなぜか確信に似たものを感じてる。

 だからきっと大丈夫さ。

 それから数日が経ち、週末の土曜日。

 その昼下がりの時間帯にオレは、秋葉原の駅前である人物と待ち合わせをしていた。

 服装は凄く面倒だったから武偵高の制服。

 しかしこれを着てるとアキバじゃ何げに目立つな。

 武偵高ってだけで周りからは若干距離を置かれるし、仕方ないんだが。

 

「キョーやん、おいーす!」

 

 オレが周りから少し浮く形で待つこと15分。

 やっと待ち人が到着。フリフリの改造制服を着た理子だ。

 

「さっさと終わらせるぞ。オレは好きで付き合うわけじゃないんだからな」

 

「うわぁ……キョーやんストレートに言うとか酷いー! 理子は今日すごく楽しみにしてたのにー!」

 

「オレは今日という日を1秒でも早く終わらせたいんだよ」

 

「むー! そんなこと言うキョーやんには、凄いコスプレ強制しちゃ……」

 

「さぁ行こうか理子姫! 素晴らしい1日をプレゼントしますよ」

 

 察したオレは理子の言葉を最後まで聞かずに態度を一変させ、多少強引に手を引いてさっそく歩き出す。

 強制されるのは嫌だからな。

 オレが理子とアキバに来た理由。

 それは先日の小鳥の件での調査依頼の報酬を払うためだ。

 理子はその報酬でオレとコスプレデートをしたいなどと言うから、仕方なくこうして理子が指定したアキバに足を運んでいるわけだ。

 そんなわけでまずはそのコスプレをするために専門のレンタル店にやってきたオレと理子。

 理子はまずオレに着せるコスプレ衣装をなんか息を荒くしながら選び始め……ヤバいな、危ない子に見える。

 

「むはぁ、キョーやんはぁ……これ着てみよっか!」

 

 そんな危ない子、理子が厳選して持ってきた衣装は、男物の忍者の衣装。

 しかし色は青を基調とした作りで、忍ぶ気はさらさらない。

 対して理子は赤を基調としたくのいちのミニスカ衣装を選択したらしい。

 こちらも忍ぶ気はさらさらない。

 それから数分後、まったく忍ぶ気のない忍衣裳に着替えを終えたオレは、まだ準備中の理子をレジ付近で待ちながら自分の格好を改めて見ていた。

 諜報科では潜入捜査などでよく変装をしたりするため、こういったことには多少の慣れがあるのだが、今回のは変装とは違うな。

 変装とは本来、自分が怪しまれないように……目立たないようにするためにする。

 言うなれば『木を隠すなら森の中』の理屈だ。

 しかし、今回のこれはその真逆で、あえて目立つためにしている。

 言うなれば『砂漠のど真ん中に青々とした木を植えた』みたいなモン。

 変装と仮装だからその目的が違ってくるのは自然なことだが、正直目立つのは苦手である。

 さらにこれでアキバを練り歩くのだからなおさらである。

 

「ジャジャーン! 見て見てキョーやん! 理子かっわいーでしょ?」

 

 そんなことを考えていたら、着替えを終えた理子が姿を現わしてセクシーポーズを披露する。

 ……何故だろう。意図的なのか何なのかわからんが、服のサイズが小さいのか、かなりピチピチな感じがして、胸やらお尻やらが強調されてて……ぶっちゃけエロい。

 可愛いには可愛いがな。

 

「はいはい可愛いですよ理子姫。可愛いですからさっさと行きたいとこ行きますよ」

 

「むー! キョーやんのためにせっかく1サイズ小さいの着たのにー! がおー!」

 

 やっぱり意図的だったか。

 しかし両手で角を作ってがおー! なんて言われても恐くないわ。むしろ可愛いし。

 そんなこんなで2人の忍者はアキバの街に乗り出して、道を歩くオタクや外国人観光客なんかから写真撮影やら握手やらを求められながら、喫茶店でお茶したりギャルゲーを買いに行ったりしていった。

 そんな理子姫とのデートという名の拷問を耐え抜いたオレは、夕方頃フラフラになりながら帰宅し、小鳥の手料理を食べてひと休みしたあとに『らしくないこと』を始めた。

 先日のアリアの『時間がない』と言った意味。それを調べてみたのだ。

 アリアは『武偵殺し』が誤認逮捕だと断言した。

 そこから察すると、武偵殺しの記事から何かがわかるかもしれないと思ったわけで、小鳥が自前のノートパソコンでその記事を漁ってくれていた。

 そして、見つけた記事にはアリアを突き動かすには十分な理由が存在していた。

 

「武偵殺しの容疑者は『神崎かなえ』さん。武偵殺しの他、多数の犯罪容疑にかけられ、現在の量刑が懲役864年。事実上の終身刑ですね。まだ高裁による判決ですが、最高裁まであまり猶予はないみたいです」

 

 ……アリアの親族……年齢からして母親だろうな。

 そんな人があらぬ罪で捕まってるとなれば、躍起にもなるか。

 新宿警察署に今は身柄を確保されてるのか。なら明日にでも『直接』話を聞いてみるか。

 オレは小鳥にお礼だけ言って、その日はそのまま眠りに就いていった。

 翌日。

 朝早くから神崎かなえさんが留置されている新宿警察署に来たオレは、無駄とわかりつつも面会の申し込みをしてみた。

 結果はまぁ、親族および関係者以外は面会謝絶というわけで、正規の方法ではダメらしい。

 それが予測できていたオレは、バレれば大変なことになるであろう『裏技』を使って神崎かなえさんとコンタクトを取ることにした。

 看守に変装し内部に潜入。

 言うのは簡単だが、実際かなり無謀な行動である。

 しかし別に警察に喧嘩売りたいわけでも、テロなんかするわけでもないから、穏便に実行したい所だ。

 それでオレが取った行動は、トイレに入った看守を素早く拘束し衣服を拝借してしまうというシンプルなもの。

 その際に拘束した人には心苦しいが、トイレの個室で休憩してもらうことにした。

 我ながらバカらしいことをしてると思う。

 ただ気になったから程度でやることではない。

 バレない自信はあるが、それでも普段のオレなら絶対にやらないだろう。

 そんなオレがこうも動いてしまうのは、やはりアリアのことが気になってるんだと思う。

 恋愛感情とかではなく、同じ武偵として、そして協力者として気になってしまうのだ。

 そんなわけで看守になりすましたオレは平然と内部に入り込み、神崎かなえさんが留置されている場所へと向かったわけだが、

 

「神崎かなえに面会の要請だ。一緒に来い」

 

 同じ看守の男にそう言われてオレはその男と一緒に移動を開始した。

 面会の申し込みがあった。ってことは……

 男と一緒に来た場所に神崎かなえさんはいた。

 かなえさんは、柔らかな曲線を描いた長い髪にオニキスのような瞳をしていて、パッと見だとアリアのお姉さんではないかというくらい若く見える。

 本当にお姉さんじゃないだろうな……

 オレは一緒にいた男とかなえさんを挟んで連れ出し、面会室へと移動していった。

 案の定、面会に来たのはアリアで、何故か傍らにはキンジまでいた。

 2人はどうやらオレには気付いていないらしい。

 気付かれたらオレのプライドとか色んなものが砕け散るがな。

 

「まぁ……アリア。この方、彼氏さん?」

 

「ち、違うわよママ」

 

 アクリル板越しに話す2人の親子。

 どうやらかなえさんは母親で確定らしいな。

 それでも若すぎる。正直な話、かなりタイプの女性なんだが。

 などとオレが考えてるうちに、かなえさんとアリアの話が進み、キンジの紹介やらが行われていたが、それが終わるとアリアが真剣な表情で話を始めた。

 

「ママ。面会時間が3分しかないから、手短に話すけど……このバカ面は『武偵殺し』の、3人目の被害者なのよ。先週、武偵高で自転車に爆弾を仕掛けられたの」

 

「……まぁ……」

 

「さらにもう1件、一昨日はバスジャック事件が起きてる。ヤツの活動は、急激に活発になってきてるのよ。てことは、もうすぐシッポも出すハズだわ。だからあたし、狙い通りまずは『武偵殺し』を捕まえる。ヤツの件だけでも無実を証明すれば、ママの懲役864年が一気に742年まで減刑されるわ。最高裁までの間に、他もぜったい、全部なんとかするから。そして、ママをスケープゴートにしたイ・ウーの連中を、全員ここにぶち込んでやるわ」

 

 ……イ・ウーだと!?

 おいおい……こいつはとんでもないこと聞いちまったぞ。

 知らぬが仏って言葉が初めて身に染みたな。

 オレがいま極秘で追ってる『ヤツ』もイ・ウーのメンバーだって話だし、どうやら他人事じゃなくなりそうだ。

 

「アリア。気持ちは嬉しいけど、イ・ウーに挑むのはまだ早いわ――『パートナー』は、見つかったの?」

 

「それは……どうしても見つからないの。誰も、あたしには、ついてこれなくて……」

 

「ダメよアリア。あなたの才能は、遺伝性のもの。でも、あなたには一族の良くない一面――プライドが高くて子供っぽい、その性格も遺伝してしまっているのよ。そのままでは、あなたは自分の能力を半分も発揮できないわ。あなたには、あなたを理解し、あなたと世間を繋ぐ橋渡しになれるようなパートナーが必要なの。適切なパートナーは、あなたの能力を何倍にも引き延ばしてくれる――ひいお爺さまにも、お祖母さまにも、優秀なパートナーがいらっしゃったでしょう?」

 

「……それは、ロンドンで耳にタコができるくらい聞かされたわよ。いつまでもパートナーを作れないから、欠陥品とまで言われて……でも……」

 

「人生は、ゆっくりと歩みなさい。早く走る子は、転ぶものよ」

 

 ……強い人だ。かなえさんは。

 母は強しとはこういう人を言うんだな。

 

「神崎。時間だ」

 

 そこで近くに立っていた管理官が時計を見ながら告げると、オレと一緒に来た男でかなえさんを連れ出す準備を始めた。

 

「ママ、待ってて。必ず公判までに真犯人を全部捕まえるから」

 

「焦ってはダメよアリア。わたしはあなたが心配なの。1人で先走ってはいけない」

 

「やだ! あたしはすぐにでもママを助けたいの!」

 

「アリア。わたしの最高裁は、弁護士先生が一生懸命引き延ばしてくれてるわ。だからあなたは落ち着いて、まずはパートナーをきちんと見つけ出しなさい。その額の傷は、あなたがもう自分1人では対応しきれない危険に踏み込んでいる証拠よ」

 

「やだやだやだ!」

 

「アリア……!」

 

「時間だ!」

 

 アリアを心配するかなえさんをオレは仕方なく引っ張り面会室から連れ出す。

 正直心が痛むが、ここでオレも不審な行動を取るわけにもいかない。

 

「やめろッ! ママに乱暴するな!」

 

 する気はないんだよ。許せ、アリア。

 それから神崎親子を引き離して面会室を出たオレは、その直後。

 監視カメラなどがないことを確認してから、かなえさんを取り押さえていた男と、お堅そうな管理官に少しだけ眠ってもらい、かなえさんと話をする時間を作り出した。

 

「あなたは……」

 

 かなえさんはオレの行動に驚いた顔をして見てきた。

 

「武偵高の生徒です。娘さんのアリアとはクラスメイトです。少しだけお話をしてもよろしいですか?」

 

 聞きたいことは山ほどあるが、全部聞いてる時間はない。

オレは作り出したわずかな時間で、かなえさんと話をし出したのだった。

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