緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Reload16

 世界に雄飛せよ。人種、国籍の別なく共闘すべし。

 武偵憲章の9条にはこういったことが書かれているように、武偵高でもそれを意識する修学旅行を冠した海外進出の機会が与えられている。

 2年時に1度。3年時には3度。チームでの団体行動で海外へと足を運んで、その見識を広げることになる。

 3年最初の海外進出、修学旅行Ⅲは夏休み中の8月中旬頃。

 進出先はアフリカ方面と決められているこの修学旅行で、3年筆頭のチーム『月華美迅』が出張っていったのはナイジェリアで、ちょうど今日の昼の便で日本を発つと言っていたか。

 この日は生憎と幸姉がヘマして装備科の1室を爆破した後始末と修繕をやらされて朝から学校に来る羽目となって見送りに行けなかったので、おそらく便は違うだろうが、その頃に空に見えた飛行機を見ながらとりあえず行ってらっしゃいを言っておく。

 

「今日も暑いどすなぁ」

 

 小さくなっていく飛行機と太陽が重なって目を細めたタイミングで、部屋の外壁の修繕をしていたオレの耳にそんな声が聞こえてくる。

 見れば近くのベンチに座りながら日傘をさして扇子を扇ぐ眞弓さんが、いつもの笑顔で日射しをガッツリ浴びるオレを見ていた。

 

「……眞弓さんは『今回も』行かないんですね」

 

「ウチは飛行機が嫌いなんどす。墜落した時の生存率がどないなもんか知っとりますか?」

 

「そりゃ逃げ場がないんですからゼロに近いでしょうね」

 

「なになに? ついに眞弓の弱点発見? 今どき飛行機が怖いとか眞弓も可愛いところあるのねぇ」

 

 つい十数分前からフラフラとやって来た眞弓さんが珍しく苦手なものを口にしたので、穴の空いた室内から顔を出してきた男勝りの幸姉はニヤニヤしながら良いことを聞いたと言うように眞弓さんを見るが、その眞弓さんは大きな大きな溜め息を1つ吐くと、面白そうにする幸姉に衝撃的な事を伝える。

 

「そないな事実は全くないわけやけど、なんや幸音はん、ウチの弱点なんか見つけてどないするつもりやったん?」

 

「と言うのがブラフで本当に飛行機が怖いっていう可能性もまだ無きにしもあらず!」

 

「……言うときますけど、ウチは中学時代まで飛行機で世界中飛び回っとりましたから、ホンマに飛行機は問題ありまへんえ」

 

「なん……だと!? 謀ったな眞弓!」

 

「勝手に会話に飛び込んできといて、よう言いますな。京夜はん、はよその穴埋めて2人きりでゆっくりお話ししましょ」

 

 どうやら本当に飛行機は問題ないらしい眞弓さんは、勝手に騒ぐ幸姉をスルーし楽しそうに鼻唄を始めてしまう。あ、天城越えだなこれ。

 そのあと壁の修繕を滞りなく終わらせたオレは、手伝えることがそれだけだったこともあり、汗だくになりながらまだ室内の修復をする幸姉の作業に危険がないことを聞いてから、昼の3時頃に眞弓さんと2人で食堂へと移動してまったりと休憩を始める。

 とはいえ夏休み中なのでスペースとして開放されてるだけになってて少し寂しいものがあるが、それはそれで静かな空間が好きな眞弓さんにとっては快適らしい。

 

「はぁ、なんやうるさいのがおらんならおらんでからかう相手が欲しなるこの矛盾。どない思います?」

 

「いや、オレからはなんとも……」

 

「家におっても基本的に誰もおりまへんから、学校に来てる言う京夜はんらに絡みに来たはエエどすが、幸音はんはからかいすぎると作業進まへんようやし、京夜はんも聞き上手はエエどすが、長持ちしまへんからなぁ」

 

 頬杖を突きながら対面にいるオレにそんな話をしてきた眞弓さんは、どこかつまらなそうな表情で右手に持っていた扇子を弄ぶ。

 

「家に誰もいないんですか?」

 

「おりまへんよ。前に言いましたやろ? ウチの家は代々医療に携わる家系やて。お父様は外科医師でお母様は医療カウンセラーどすし、お祖父様とお祖母様はまだまだ現役の医師で今も中東で活動中どす。家族がみんな揃うことが珍しいくらいの家どすからなぁ」

 

 長持ちしないとは言われつつも、事実なので特に何も思うことなく、眞弓さんの話にちょっと気になるところがあって問いかけてみると、意外にも眞弓さんはためらうこともなく答えてくれた。

 確かに以前、とはいえ2年以上前の話――4対4の時だ――になるが、医療関係の道を選んだ理由を少し話してくれた。

 しかしそれもわずかに眞弓さんの周りの環境を知れた程度で、こうして特に聞いてもいないことにも口を開いたことは1度もなかった。

 今日は機嫌が良い、というわけでもなさそうなんだが……

 

「夜とか家にいて寂しくないんですか?」

 

「そら小さい頃は寂しい思うこともありましたけど、慣れ言うんは怖いどすな。今は逆に夜だけは1人でおる方が落ち着きます。でもあー、いま思えばそのせいどすか。小学生の頃に雅も交えて見えんところで色々と悪ふざけしまくっとったの。きっと子供心に寂しさをまぎらわせとったんどすな……」

 

「それで学校のサーバーに不正アクセスさせたりとか困るレベルじゃない気もするけど……」

 

「なんや、雅から昔話でも聞かされたんどすか?」

 

 そうやって少し昔話をする眞弓さんがサラッと言った悪ふざけ。

 その1つである雅さんによるハッキングを呟いたら呟きが聞こえてしまったらしく、それに肝を冷やしたが、怒ってる様子もなかったのでひと安心。

 オレではなく、雅さんに矛先が向いたら恨まれてしまうからな。

 

「そういえば眞弓さんって雅さんだけ呼び捨てにしてますけど、何か理由があるんですか?」

 

「雅はまぁ、初めてウチが『認めた』特別な存在どすから、その名残みたいなもんどす。それ以外に理由なんてありまへんな」

 

 話を逸らすように続けて質問をしたオレに対して、これもすんなりと返してくれた眞弓さんは、そこまで話して弄んでいた扇子を止め「なんや話しすぎましたわ」と自分でも口が軽かったのを感じてからパタリと話すのをやめてしまった。

 そこからはお返しとばかりにオレの昔話を引き出そうとあれこれ聞いてきた眞弓さん。

 話さないと後が怖いので、ほどほどに恥ずかしくない話をしてなんとか質問攻めからは乗りきった。

 十数分後。

 オレの話でとりあえず満足したらしい眞弓さんは、小休憩のつもりか持っていた扇子を開いて扇ぎ始め、オレも普段はたくさん喋ることがないので、何をするでもなく思考を停止させてまったりしていたのだが、不意にとある疑問が頭に浮かんで眞弓さんに特に考えなしにそのまま質問をしてしまった。

 

「眞弓さん、さっき幸姉がいるところでは誤魔化してましたけど、よく考えたらこうしてオレ達に会いに来るくらいに手を余してるなら、何で愛菜さん達と一緒に行かなかったんですか?」

 

 ピシッ。

 そんな音が聞こえると錯覚するほどの空気の凍りつきを言った後に感じたオレは、ここまで珍しく口が軽かった眞弓さんに油断していた自分を本気で怒りたくなった。

 質問された眞弓さんは、扇いでいた扇子すらピタリと止めて、いつもの笑顔も消し、もうヤバイくらいの視線でオレを睨んでいた。し、死ぬのかオレ……

 

「……それを聞いて京夜はんはどないしますのえ?」

 

「い、いえ……ただ単に気になっただけなので、話したくないならそれでいいです……すみません」

 

 生半可な気持ちでは眞弓さんを見ることさえ恐ろしい鋭い視線に、これ以上踏み込めなかったオレがそう返事を返すと、眞弓さんは少しだけ威圧するような視線を和らげてから、開いていた扇子を閉じてペシリ。右の手の平に軽くぶつけて口を開いた。

 

「好奇心旺盛なんはよろしおすが、半端な気持ちで聞いてエエ話やないもんもありますさかい、よう考えてから口にしてください」

 

「……すみません、でした」

 

 そうやってオレに釘を刺してから、いつもの笑顔に戻った眞弓さんは、また扇子を開いて扇ぎ始め、それに心底安堵したオレは、固まっていた体を脱力させて元に戻った空気を肺に入れ直した。

 迂闊だった。

 眞弓さんは基本的に『無駄』なことはしない。

 わざわざ単位のもらえる修学旅行を欠席してまで日本に残るその行動に、眞弓さん本人の事情が絡まないわけがないのだ。

 そこには明確で他人に話すべきではない理由があり、オレはそれを察して口を閉じるのが本来すべき行動だった。

 

「まぁ、これだけやとウチが質問をねじ伏せたみたいどすから、ちょっとだけ本当の理由を話しましょ」

 

 自分の行動を反省していたオレに対して、眞弓さんは視線を合わせないながらも口を開いてそんなことを言ってくるので、申し訳なく思いながらもそれに耳を傾けた。

 

「出禁なんどす。日本国内より外へ、ウチは家から一切出ることを許されとりませんのどす」

 

「日本から……出られない?」

 

「これ以上は言えまへん。もしも聞きたいなら、ウチの旦那になるくらいの覚悟はしてもらわなあきまへんけど、それくらいには深い事情がありますさかい、理解してください。ウチの口から聞きたいなら、どすが」

 

 家から国外へ出るのを止められるというのは、一体どれほど深い事情なのか気にならないわけがない。

 しかしそれを今ここで聞こうものなら、オレは眞弓さんと婚約する覚悟を決めないとならないため、釘を刺された通りこの話にはこれ以上の追求はしないとしっかり意思表示をした。

 

「ウチも歳下の京夜はんと添い遂げる気はありまへんから、そうしてくれると助かります。さて、ゆっくりしましたし、1人で寂しく作業しとる幸音はんのところへ戻りましょか」

 

 それで話を終わらせて席を立った眞弓さんは、いつもと変わらない感じで歩き始めてしまい、遅れて跡を追ったオレもそこからはなるべくいつも通りに眞弓さんと接していった。

 無事に部屋の修繕も終えて夕方頃に帰宅したオレと幸姉は、そこから特に何かするわけでもなくそれぞれの家へと入って時間を使っていくと、自室へと戻ったオレがまず始めたのは携帯を取ってある人にメールを送ること。

 おそらくはまだ相手が飛行機の中にいるので、電話をしたところで繋がらないのはわかりきっていた。

 だからメールで用件だけを送って返信を待つ算段である。

 とりあえずこの日は一応深夜の0時頃まで返信を待ってはみたが、案の定携帯が着信を知らせることはなかったため、気を張っていたところで仕方ないので就寝。

 翌日は1日中ゴロゴロしてるという幸姉に合わせて暇なため、時間はある。

 そうしていつものように朝早くに目覚めたオレが携帯を見てみると、誰かからの着信があり、寝ぼけ気味に携帯を開いてメールの着信だとわかると、その相手の名前を見て頭が覚醒。

 すぐにメールを見ると、そこには求めていたもののヒントが書かれていた。

 

『件名:宮下雅

題名:ヒントだけ

本文:「2003年8月16日」「中東」

 

この2つから自分で調べて。私の口からは眞弓の過去については話せないから、自力で辿り着くしかない。たとえ調べられても、それはそっと胸にしまっておいて。これは眞弓の親友としてのお願い』

 

 メールの相手は現在ナイジェリアにいるだろう雅さん。

 昨日オレがメールを送った相手はまさにこの人だが、メールは標準語なんだな……

 じゃなくて、オレの送ったメール『眞弓さんが日本から出られない理由について教え欲しい』という内容に対して、直接ではないながら道は示してくれた雅さん。

 念の押し方が眞弓さんと似ていたが、元より誰かに話したりするつもりもない。

 昨日眞弓さんは『自分から聞く覚悟があるなら話す』と言ったが、それは本人から聞く場合に限る。

 それならオレが自分で調べることには何の問題もない。

 というのにも眞弓さん自身に言われて気付いたのだが、やはり気になるのだ。

 あの完全無欠の眞弓さんが家からそんな制限をつけられているという現実とその理由が。

 2003年といえば、今から4年前に当たる。

 日付に関しても何の偶然か、昨日がその8月16日であったことも、眞弓さんが少し違った様子だったことも偶然ではないような気がしてならなかった。

 とにかく、与えられたヒントを頼りに調べるしかない。ここは武偵らしくやってみようじゃないか。

 それからオレはいつも通りに朝食などのひと通りのことを済ませてから、調査を開始するため真田の家へと足を運んで行った。

 真田の家を訪れてまずは幸姉がどこにいるかと探りを入れて、居間で3つの本の山を築いて少女漫画を読んでいるのを確認。

 あれなら空腹以外では動くこともないだろうと判断して、今回の目的地へと改めて移動する。

 目的の部屋に着いてまずは扉をノックして入っていいかと声をかけてみると、途端に中でドタバタと慌てふためきながら動くのがわかり苦笑。

 何をそんなに慌ててるのか知らないが、らしいと言えばらしい。

 声をかけてから約1分ほどしてようやく中へと通されたオレは、何の非の打ち所もなく綺麗に片付けられた室内を見て、ここまでしなくてもと思いつつ適当に腰を下ろしつつ目の前に正座する部屋の主を見る。

 

「ほ、本日はお日柄も良く」

 

「ん? まぁ暑いくらいには晴れてるな」

 

「あの、その、来てくださるなら前日くらいにでも言ってくださらないと色々と準備とかがありましてですね……ああもちろん来てくださるのは嬉しいので構わないのですが、本来なら京様を招き入れられるほど片付けられなくてその恥ずかしいと言いますか……」

 

「これで片付いてないとか言うなら、世の中の部屋は全部片付いてないって。相変わらず几帳面というか真面目というか……幸帆はもう少し肩の力を抜いていいと思うよ」

 

 目の前で何故か頭を下げながらにそんなことを言う真田幸帆に、とりあえず頭を上げさせつついきなり訪ねたことへの謝罪をしつつ話を終わらせて、幸帆の部屋を訪れた本題へと入る。

 

「幸帆はパソコン使えたよな? 悪いんだが少し調べてもらいたいことがある。協力してくれないか?」

 

「協力は惜しみませんが、京様はまだ電子機器の扱いが苦手なんですね……」

 

「アナログな人間だって自覚はある……」

 

 特に具体的なことは言ってないが、即答に近い形で協力を了承してくれた幸帆は、早速机にあったノートパソコンへと向かって椅子へと座り、起動の最中に未だまともに電子機器の扱いができないオレを笑う。

 本来ならばこんなこと1人でできておかしくはないのだが、どうにも昔から機械の類いだけは苦手分野で上達の兆しを見せない。

 そんなオレがどうして幸姉ではなく幸帆に頼ったのかは、特に説明の必要はないか。情報の漏洩は可能な限り避けるべきだからな。

 そうしてパソコンの前に座る幸帆の隣に移動して画面を覗ける位置を陣取ると、気を利かせた幸帆が足の短いテーブルを出して床に座る形のスタイルに変えてくれたので、ご厚意に甘えて幸帆の隣に座って改めて画面を見れるくらいに幸帆に顔を近付ける。

 その際に「うひゃあ」というよくわからない声を幸帆が出したが、まぁ気にしないでおく。

 

「そ、それでどういったことを調べればいいのでしょうか」

 

「とりあえず2003年の8月16日。中東の国で日本人が関わった記事や出来事がないかを調べてくれ」

 

「ネットでの検索は素人ですけど、できる限りでやらせていただきます」

 

 そうしてキーボードとマウスを操作し始めた幸帆は、オレが言ったワードを呟きながら画面に表示される文字列を目で追いかけていき、オレも見てるだけもあれだから同じように拾える情報を拾っていく。

 数分ほど互いに会話もなしにパソコンとにらめっこをしていたオレ達。

 チカチカするパソコンの画面に慣れてないオレが少し目を離して休もうとした瞬間。

 オレの目が文字列の中からよく知るワードを捉えて幸帆にそれを表示するように指示を出して、そこに載っていた記事を幸帆が朗読し始めた。

 

「えーと、『8月14日より某国内の紛争地域に訪れていた薬師寺富男(62)が率いる特別医療兵団《差別なき病院》は、人種・国境・貧富の差別なく医療を行なうその活動方針の下、1週間の滞在期間の間で実に500人を越える命を助けた。今回の活動においての注目は、世界でも例を見ないわずか13歳という史上最年少で医師免許を取得した薬師寺眞弓(14)が兵団に加わり現地にて活動したことである――』って、眞弓さん?」

 

 記事の途中まで読んだ幸帆は、今年の始め頃に初めて顔を合わせた眞弓さんの名前が出てきて、思わずオレの顔を見てきたが、オレも正直驚いている。

 まさか眞弓さんがそんな偉大な記録を持っていようとは思わなかった。

 通常、医師免許というのは医学部のような学校をちゃんと卒業して初めて取得できるものだ。

 その過程をぶっ飛ばしての医師免許取得など予想もできなくて当然なのだが、なんとなく今までの眞弓さんを見てきた後だと、そのくらいはあって当然なのかと思えてくるから怖い。

 驚く幸帆に対して、苦笑で返しつつまだ先のある記事を読んでくれと言うと、色々と聞きたそうな気持ちを押さえてまた画面に視線を戻した幸帆は、記事の続きを読み始めた。

 

「『――他のメンバーと遜色ない活動を見せていた薬師寺眞弓ではあったが、8月16日。治療を施していた現地の兵士の1人を射殺。両者の間で何らかのトラブルが発生したようではあるが、現場を目撃した人間が誰もいなく、薬師寺眞弓本人も精神状態が非常に不安定になってしまったことから、その詳細についてははっきりしておらず、事件か事故かの断定もされていない。この件で薬師寺眞弓は現地での活動は不可能と判断され、その活動中に強制帰国。兵団はこの件に関して薬師寺眞弓だけに問題があったわけではないと擁護し、現在も裁決にて争っていて、罪状については決定されていない。2003年9月10日記載』」

 

 …………こういうことか……

 これなら眞弓さん本人も雅さんも揃って口を閉ざす理由も理解できる。

 記事だけでは事実やら何やらは全く見えてこない。

 しかし信じたくないが、はっきりしていることは眞弓さんが『人を殺めた』という偽りのない事実。

 そして雅さんがヒントを与えてくれたことから、この件が尾を引いて眞弓さんは今も国外へと足を運べないということ。

 

「あの……京様?」

 

 そうして驚愕の事実に絶句していると、幸帆が心配そうにオレを見てきたので、なんとか気持ちを整理しつつ口を開いた。

 

「ここで知ったことは他言無用だ。幸姉にも誰にも話すな。約束できるな?」

 

「はい。約束します」

 

 必要ないとは思いつつも幸帆に釘を刺して、それに良い返事を返してくれたので頭を軽く撫でてあげると、恥ずかしそうに俯いてしまい、それに少し笑みがこぼれつつ話を終わらせると、オレは幸帆の部屋を出てまっすぐ自分の部屋へと戻ったのだった。

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