緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Reload18

 

 季節が秋へと変わり始めた10月の初めの頃。

 オレと幸姉はチーム『月華美迅』と一緒に早紀さんが運転する車に揺られて、夕方に差し掛かるであろう時間に兵庫県が神戸市。

 日本の5大貿易港に数えられる神戸港へとやって来ていた。

 

「神戸ぇ神戸ぇ。神戸に来たら肉ぅ」

 

「肉もエエですけど、まずはやることやってからどす」

 

 停車した車から降りて、全員が伸びなどをしつつ、代表するように歌っぽくそう言ったのは雅さん。

 その雅さんに眞弓さんが冷静にツッコみつつ、全員に言葉をかける。

 今回オレ達がここへ来た理由。

 それは幸姉の父親である現真田家当主からの直々の依頼によるところ。

 真田は現在、海外貿易を取り仕切る役割を担っていて、主にアジア諸国との貿易を担当としている。

 真田家は元々武家の家だが、戦国の時代を終えてからは、その代々の生業を敷居の高い料亭にし、それなりに有名だったと聞く。

 しかし明治を境にそれも栄華となり、その生業が今の対外交渉のものへと変わった。

 変わらざるを得なかった理由は、時代の影響を受けたというのが大雑把なところだろう。

 ガラリと変わった生業でありながら、しかし今日まで真田が衰退していないのは、それだけ真田が優秀だという証明。

 だからこそ、猿飛もこれまでずっと支え守ってきた。

 戦国の時代が終わり、1度は自由に生きる道を示され散り散りとなった十勇士の中で、それに抗ってみせた唯一の一族。その一族をオレは誇りに思う。

 そんな真田からの依頼の内容は『密輸取り引きの阻止』。

 先日、中国からの輸入ルートから銃器類の密輸があったらしく、調査を進めたところでもっと多くの密輸物がある可能性と、それの取り引きが近日中に行われる事がわかり、密輸物が持ち運ばれる可能性のある日本の5大貿易港――千葉港、横浜港、名古屋港、神戸港、北九州港の5つ――に武偵チームを送り込んだというわけだ。

 この件で警察を使わないのは、単にコストダウンとかなんとか。

 それが大きいだろうが、こういった密輸現場の取り押さえには迅速な対応力と連携が重要になるため、大勢で動けばいいというものでもないこともある。

 それで声がかかった月華美迅が担当することになったのが、ここ神戸港というわけで、オレと幸姉は将来の仕事の『勉強』として同伴を命じられた形である。

 しかし、リーダーである眞弓さんは割と効率主義なため、骨折り損になるかもしれない今回の依頼は他の武偵チームに回すと思っていたのだが、依頼交渉の場において雅さんと少し相談した後に引き受けると言い出したことには驚いた。

 しかし眞弓さんが引き受けたからには、そこには必ず意味がある。

 それがわかってるオレ達も、行く先で何か起きることを予想しつつ現地へと赴いていた。

 

「中国からの輸入船受け入れは明日の明け方。まずは各々割り当てられた役割と持ち場の確認。輸入品のリストは移動中に頭に入れましたやろし、しっかりと万全に準備しますえ」

 

 その眞弓さんからの指示で車から降りたオレ達は短い返事を返しつつ方々へと散っていった。

 オレと幸姉は今回、余剰戦力として不測の事態への対応を任されていたので、港を一望できる位置の確認と逃走に使いそうなルートの下調べをして終了。

 眞弓さん達は港の作業員に紛れるために、服装の準備や担当の確認に時間をとられてるようだった。

 確認作業を終えて全員が早紀さんの車へ戻ってきた頃には、陽もほぼ沈みきって辺りが暗くなっていて、待ちわびていた雅さんが「肉ー!」と叫ぶのを合図に車は発進。

 目的地は雅さんの要望通りの肉がメインのレストラン。

 

「肉厚ぅ、濃厚ぅ、ついでにジューシー!」

 

「雅さん……何ですその歌?」

 

「肉を美味しく食べられる魔法の呪文やねんで。心理的にも聞いて空腹を感じやすい単語を織り交ぜることで食の促進を促すんや。現に京くんも食べたなったやろ?」

 

「まぁ否定はしませんけどね」

 

 レストランに着いて注文を取ってから、それを待つ間に雅さんがハミングを交えながら不思議な肉の歌を歌っていたので、何気なくその歌の意味を聞けば、なんかちゃんとした心理的働きがあったらしい。

 

「てゆーか、こないな時間に店に駆け込んで迷惑に思われとるんとちゃうの?」

 

「せやな。ぶっちゃけあと15分で店閉まる時間やし、のんびり食べとる場合やないわ」

 

「やから全員同じ料理注文したんやないの。あーあ、違う料理頼んで京ちゃんと食べさせ合いっこしたかったのにー!」

 

 そんな楽しそうな雅さんとは裏腹に、ガランとした店内の様子を見ながらに早紀さん、千雨さん、愛菜さんと順に口を開いて余裕が欲しかったと嘆く。

 現に今の時刻は午後8時45分。この店の閉店時間が9時ジャストとあって、お店の方々へ最小限の迷惑で済ますためには、あと5分以内に料理が来ても10分で胃に流し込まなければならない。

 それなのに雅さんが肉を食べたいとねだるので、頼んだのが一人前500グラムもあるステーキセット。拷問に近い。

 なのでオレと幸姉は2人で一人前。眞弓さんと早紀さんで一人前を食べることにしていたが、残りの3人は1人で完食するらしい。

 そして届いたブロック肉のステーキに軽く戦慄を覚えつつ、着くや否やナイフを動かし始めた一人前1人で完食組に続いてオレ達も化け物のようなステーキと戦い始めた。

 

「いやぁ、満腹満腹!」

 

「あぁ、やってもうたぁ……絶対太ってるわぁ……千雨みたいに無い乳なら脂肪ウェルカムなんやけど……」

 

「おうこらデカ乳。喧嘩売っとんのやったら京都帰ってから買ったるでああん!」

 

「やかましおす。無い乳もデカ乳も喧嘩するなら車降りてください」

 

 強敵、極大ステーキを本当に10分ほどで倒したオレ達は、満腹感を残したまま早紀さんの車へと戻って、現在は港付近に車を停めて仮眠の準備に入っていた。

 実際に動くのが明け方となるので、休める時に休むという眞弓さんの決定で毛布を引っ張り出して寝る体勢を整えていたのだが、この人達はこれから寝るテンションではない。

 しかしいざ寝始めると驚くほどすぐに全員が寝静まったので、ここら辺でも有能さというのが出るのかもしれないと思いつつ、オレも意識を沈めていった。

 全員が十分な仮眠を取って目覚めた時間は、朝の3時30分。

 およそ3、40分後には中国からの輸入船が港へと到着するだろうその時間に眞弓さんの指示を受けて動き出したオレ達は、それぞれの持ち場へと移動を完了させてから、事前に渡された無線の調子などを確かめながら今回の作戦の段取りを確認する。

 今回の作戦は電撃戦。

 まずは積み込まれた輸入品の入ったコンテナをクレーン操作担当の早紀さんが運び、特殊なスキャナーのような物で雅さんが運ばれたコンテナの中身を影から調べる。

 それで密輸物である銃器類が発見できたら、そのコンテナの中身の行き先と取き引き先をマーク。

 中身と密輸物が無関係なことも考えられるため、現場での取り引きを注意しながら運び出す業者もマーク。実際に取り引きが行われたところを押さえる。

 眞弓さん、愛菜さん、千雨さんは港の作業員の格好で周囲を警戒しながらの連携。

 オレと幸姉はもしも逃走された時の対処のため、迅速に動けるようにオレが現場付近で待機。

 先月から車輌科を履修し運転免許を持った幸姉は乗ってきた車にて待機となってた。

 実際のところは密輸取り引きが行われるのはここじゃないかもしれないのだが、眞弓さんと雅さんの話では2日後に兵庫県で実銃を用いた展覧会があるらしく、その物品を中国から持ち運ぶのだとか。

 その物品に紛れ込ませて密輸が行われる可能性があるというのが眞弓さんと雅さんの読み。

 確かに物品に紛れさせて密輸用のコンテナを1つくらい不自然を感じさせずに混入させることはできるかもしれないのだ。

 そんな予測もありつつ、予めのチェックを入れて待ち構えていたオレ達は、まだ辺りが暗いままの時間に港へと入ってきた1隻の大型船を見ながら、無線で逐一確認を取り始めた。

 港へと到着した輸入船に合わせて、作業員が慌ただしく動き始めて、リアカーやクレーンも動き出し早紀さんも熟練者のごとくクレーンを操作して作戦通りコンテナを港へと降ろしていき、雅さんがコソコソとその中身を調べていく。

 

『おーい眞弓ぃ。なんや輸入物リストと数の合わん銃器の入ったコンテナがあったで』

 

 そうして積み荷の8割ほどを降ろし終えた頃に、無線から雅さんのそんな声が聞こえてくる。

 どうやら展覧会の輸入品以上の銃器が持ち込まれていたらしく、眞弓さん達の予想は見事に当たったことになるわけだ。流石すぎる。

 

『ほなら予定通りそこをマークしましょか。雅は車に戻って待機。愛菜はん、千雨はんはウチと一緒に包囲を。早紀はんは作業終わらせて撤収。幸音はんと役割交代してください。幸音はんは「あっち」どす。京夜はんも目を離さんでください』

 

 雅さんの報告を聞いてそれぞれに指示をした眞弓さん。

 それにみんなが応対した後、オレも指示通り遠くから港全体を満遍なく見ていた。

 

『んー……京夜はん。ちょっと1人マークして欲しい人間がおります』

 

 それからわずか数分後に、急に眞弓さんがオレにそんな指示の変更をしてきて、リーダーの指示とあってすぐにそれに了解と返す。

 

『暗がりで見えにくいかもしれまへんが、エライ背ぇの低いツインテールのガキどす。今は輸入船のすぐ近くで船頭と話をしとりますが、確認できますか?』

 

 言われて輸入船の近くに目を凝らしてみると、確かにこの場にはいるのが不自然な黒髪のツインテールをした小柄な少女が、1人の男と何やら話をしているようで、服装を見れば中国の民族衣装のようなものを着ていた。

 140センチあるかどうかといったその身長から、小学校中、高学年の辺りと予測がつく。

 

「船頭の娘さん、とかではないでしょうかね」

 

『それならそれでエエんどす。とにかく事が済むまでは見といてください』

 

 とりあえず可能性の1つを述べてみると、眞弓さんはそれでも気になることは見逃さないといった感じでオレにそう言ってまた沈黙。

 流石に気にしすぎじゃないかと思いつつも、男との話を終えて移動を始めた少女を見失わないように、その姿を常に捉えて監視をしていった。

 そこからさらに数十分後。

 予想通り展覧会の輸入品が入ったコンテナと、密輸品とおぼしきコンテナとが運搬業者によって分けられたため、そちらの方を眞弓さん達が追跡し大型トラックに積まれるところでストップをかけて移動を阻止。

 そのまま取り調べへと移っていったのだが、案の定密輸がバレたとあって即座に逃走に切り替えていたが、まぁ眞弓さん達からは逃げられないだろうな。

 そう思いつつも、オレはその様子を横目に眞弓さんの気にしていた少女を見ていたのだが、その少女。

 偶然かなんなのか、取り押さえられた密輸業者達の様子を遠目に見ていて、眞弓さん達が登場したところでその身を翻して輸入船へと戻るのを確認。

 その一瞬で表情をわずかに見たら、何やら苦虫を噛み潰したような悔しい顔をしたのだ。なんだ?

 

『京夜はん。輸入船の乗組員全員グルどした。こっちはウチと雅達でやりますさかい、愛菜はん達と一緒にそっちの対処に当たってください』

 

 それとほぼ同時。

 眞弓さんからの急いだ感じでそんな報告と指示が飛んできて、マジかと思いつつ輸入船に目を向けると、その輸入船がそれを察したように動き出す準備を始めていて、マークしていた少女もその輸入船へと走り始めていた。

 つまりあの少女も関係者。そういうことかよ。

 眞弓さんからの指示を受けて隠れていた場所から飛び出したオレは、今まさに輸入船へと乗り込もうとする少女を追うように輸入船へと乗り込んだが、それを最後に船は港から離れ始めて、こちらへ来るはずの愛菜さん達が乗り込めずに置いてきぼりを……

 そう思って港を見れば、信じられない光景がオレの視界に飛び込んできた。

 港から離れるこの船めがけて、まっすぐに突っ込んでくるサイドカー付きのバイクが。

 見れば運転席には幸姉。後ろに愛菜さんが乗り、サイドカーには千雨さんが。

 そしてバイクはお膳立てされたようにそびえた鉄製の坂――船と港の高さを合わせて段差を無くすためのバリアフリーみたいなもの――を一気に登ってそのまま海へと飛び出して、離れていたこの船の甲板へと着地。ブレーキを掛けてオレの目の前へと到達した。

 

「へいおまち!」

 

「出前じゃないだろ幸姉……」

 

 そんな幸姉の第一声にテンション低めでツッコミつつ、バイクから降りた幸姉達と一緒にすぐに行動開始。

 幸姉は操舵室へ。愛菜さんと千雨さんは乗組員の身柄確保へ。オレはこの船に乗り込んだ少女を捕まえるために動き出した。

 船に乗り込む直前。

 少女がオレの存在に気付いていた節があったため、この船が停止させられる可能性があると気付いているだろうと予想し、船内は探すことをしなかったオレは、まずは外周に備えてある緊急用のボートが降ろされていないかを見ながら外周を回る。

 しかし降ろされているボートはなく、その間誰かが脱出した様子もないため、甲板へと戻ってきてから改めて他の脱出法を考える。

 ――ざわ……

 と、思考を巡らせる直前で、急に体が何か良からぬ気配を感じ取り全身に鳥肌が立つと、甲板より上の場所からガシャンという銃器音がして、オレはその音に振り向くより先に回避へと移っていた。

 ――ダダダダダダダダダッ!!

 オレが移動したのとほぼ同時に、オレの足跡を追うようにして放たれたのは、圧倒的な連射音を撒き散らすガトリングガンの弾。

 それをどうにかこうにか物陰まで移動してやり過ごしたオレは、放たれたであろう場所を顔を覗かせて様子をうかがうと、そこにはオレが追っていた少女が、嬉々とした表情でこちらに腰だめに構えたガトリングガンの銃口を向けていた。

 

「日本の武偵、少しナメてたヨ。今回の『ビジネス』、それなりに大きかたネ。おかげでココ達大損」

 

 銃口を向けたままに、少女はそうやってオレへと愚痴を漏らしてきたが、どうにも訛りのある日本語と口振りを聞くに、中国人みたいだな。

 

「ココってのは、お前の名前か?」

 

「キヒッ! それ答える義理ないネ」

 

 情報を引き出すためにとりあえず口を開いてはみたが、やはり向こうも簡単には口を割らない。

 笑い方も少し独特でくせ者な感じがする。

 会話による情報の引き出しができないと判断したオレは、それなら捕まえればいいとすぐに切り替えて、右手のクナイを取り出して、それを上へと投げ放つ。

 あちらの様子をうかがった時に、向こうとの大体の距離を掴んでいたので、投げたクナイはおそらく相手の頭上に落下するはず。

 それを見越して投げたクナイが落下点に到達する前に一気に物陰から飛び出したオレは、再び始まったガトリングガンによる連射を全力で避けながらクナイを相手めがけてまっすぐに投げる。

 だが、そのクナイは首を傾けるだけで簡単に躱されてしまう。

 しかし、その時にちょうど上へと放っていたクナイが少女のところへと落下して、偶然にも民族衣装の帯を綺麗に切り裂き、正面から少女の可愛らしいブラもしていない小さな小さな胸がハラリと顔を覗かせた。決してこれは狙っていない。

 それには反射的に女の子らしく「アイヤッ!」などと叫んでガトリングを手放して前を隠した少女。

 これを好機と一気に接近を試みるが、すぐに恥を忍んで再起した少女があられもない姿で再びガトリングガンを手に取ってしまうが、

 ――ガウンッ!

 それを阻止するように1発の銃弾が少女の手元へと放たれ、反射的に手を離した。

 そのあと間髪入れずに少女の頭上から千雨さんが強襲したが、横っ飛びでそれを躱した少女は、そのままその場から飛び降りて甲板へと着地すると、足元から煙幕を取り出して煙に紛れてしまうが、オレはそれに惑わされずに逃げる少女の足元へとクナイを投げ放ち、踏み出した足の下に滑り込ませて転倒させる。

 見事に煙の中ですっ転んだのを確認するより早く距離を詰めに行ったオレだったが、それを阻むように突如として小型のミサイルが少女とオレの間の甲板に突き刺さって爆発する。

 それに怯んだ隙に立ち上がった少女が再び逃走を図るので、千雨さんも、オレのピンチを救ってくれた愛菜さんも追走しようとしていたが、こちらもどこからか放たれ始めたガトリングガンの弾幕によって足止めを食らっていた。

 そして甲板の端まで移動した少女は、はだけた服を右手で押さえながらオレ達――オレだけかもしれないが――に向けて左手の人差し指をビシッと指して声をあげた。

 

「名前名乗るネ! 覚えておくヨ!」

 

「なんやこら! 生意気なガキが!」

 

「月華美迅ナメんなや!」

 

「お前達違うネ!」

 

「……京夜だ」

 

「キョーヤ……覚えたネ! 一生忘れないヨ! 再見!」

 

 そうしてオレの名前を覚えたらしい少女は、甲板から飛び降りてしまうが、いつの間にか接近していたヘリからぶら下がる縄の梯子にしがみついて逃走していった。

 どうやらあのヘリから援護があったらしいな。してやられた。

 どんどん遠ざかっていくヘリを見ながら、とりあえず眞弓さんに報告をしてみたが、おそらく跡は追えないだろうな。

 ここまで見越して逃走の手口を整えていたのだから、尻尾は掴ませない気がする。

 

「アカン……これは戻ったら眞弓にグチグチ言われんで……鬱やわ……」

 

「愛菜、そない落ち込まんでも、とりあえず依頼自体は密輸取り引きの阻止やったからええんとちゃう?」

 

『全部聞こえとりますえ?』

 

 ギャー!

 完全にヘリが見えなくなってから、明らかに鬱に入った愛菜さんも、ポジティブに考えていた千雨さんも無線の眞弓さんの声に揃って悲鳴をあげる。

 

『まぁ、ウチもそこまで用意周到やったとは予測できまへんでしたし、今回はお咎めなしとしましょ。船をこっちに戻して警察に任せたら帰りましょか』

 

 しかし意外にも眞弓さんは取り逃がしたオレ達へのお咎めをなしとして撤収の指示を出すので、それにホッとしつつ操舵室を制圧していた幸姉が、船を港へと戻していった。

 それから案の定足跡を全く掴ませずに姿を眩ませたあの少女。

 とりあえずはココという呼称にしてはいるが、今まで1人として犯人の逃走を許したことのない月華美迅とオレ達が、初めて逃走を許してしまった人物として今後忘れはしないだろう。

 それに、再見とは『また会おう』という意味もある「さようなら」の中国語だ。

 そこに意味があるなら、また会うことが、あるのかもしれない。少なくとも、オレの敵としてなのは間違いない。

 次に会った時には逃がさないぞ、ココ。

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