緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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 2008年1月10日。

 オレ達武偵高3年生の学生生活も残りわずかとなった今日この日。

 実に5度目となる修学旅行が現在進行形で行われていた。

 5度目となる修学旅行Ⅴの行き先は、欧州ヨーロッパ。

 世界初の武偵高、ローマ武偵高のあるイタリア。

 武偵の原点となった名探偵シャーロック・ホームズがいたイギリスなど、武偵としては一見の価値のある国々が連なる今回の修学旅行は、行く前から愛菜さん達もテンションが高かったのが印象に残っている。

 そんな是が非でも行きたいと思える修学旅行Ⅴに、オレは行けていなかった。

 理由は単純明快。幸姉が欠席したためである。

 こういった行事でオレに決定権がないのは、もう周知の事実なので、日本を発つ前に愛菜さんに泣かれてしまったが、こればっかりは仕方ない。

 例によってまだ日本から出られない眞弓さんも欠席していたが、これから数日は家の仕事を手伝うようなことを言っていたため、オレ達に構ってる余裕はないみたいだった。

 年末や元日は愛菜さん達と一緒にいたおかげで非常に賑やかな日々を過ごしていただけに、幸姉と2人になるとその落差は凄まじい。

 あの騒がしさに慣れると、静かなのが落ち着かないというのも不思議な話だが、元々オレはマイペースな方なので、これが普通なんだよなと言い聞かせながらにまったりと時間を使っていた。

 

「ふんふんふーんっ」

 

 使っていたのだが、今日は幸姉の両親も使用人さんも、挙げ句は幸帆と誠夜も家にいなくて朝から幸姉と2人きりとなっていた。

 本当に珍しい出来事が起きたため、幸姉を1人にしないために朝から幸姉の家の居間に2人で入り浸っていたら、そこからずっと幸姉が異常なほど上機嫌でオレを膝枕するのだ。

 普段は幸帆や使用人さんの目があるので、こういったことは絶対にやらないのだが、何故か今日に限っては有無を言わせない強行でオレを甘えさせている。

 別にオレが望んで膝枕をさせてもらってるわけではないのだが、どうにも愛菜さんのオレへの接し方を見て、以前からやりたかった願望らしいので、泣いて頼まれる前に渋々折れたわけだ。

 まぁ、正直なところ嬉しくないわけではないので、この状況に甘んじてるのはあるかもしれない。

 

「小さい頃はよくこうやってしてあげたんだけど、この歳になると気恥ずかしいからねぇ。誰かに見られたら恥ずかしさで死んじゃうかも」

 

「小さい頃って、小学校に上がる前とかだろ? 見られたらってのには同感だけど」

 

 オレの頭を優しく撫でながらにそんな話をする幸姉に合わせて会話に応じてみれば、幸姉は何か昔を思い出すように少し沈黙すると、依然としてオレの頭を撫でながらに口を開く。

 

「じゃあその頃に『大きくなったら私のお婿さんになる』って言ってたのは覚えてる?」

 

「いや、覚えてない」

 

「…………酷い! その頃に京夜が描いた私とのツーショットの絵、まだ部屋に飾ってるのに!」

 

「そうやって堂々と偽りの過去を語るのはどうかと思うよ」

 

 何故か嬉しそうに話してきた幸姉だが、実際、今の話で合ってるところはほとんどない。

 かろうじて絵を描いたのは合ってるだろうが、ツーショットの絵はおそらく描いてないだろう。

 オレのそんな指摘に「バレたか」などと言って反省する様子も見せない幸姉だったが、こんな何気ない会話を2人きりでするというのもここ最近はなかった気がする。

 もちろん登下校中に会話したりはするが、それとはまた違う。

 

「でも、その頃に言ってくれた『どんなことがあってもずっとそばにいる』って言葉。すっごく嬉しかったんだよ」

 

 これは……嘘ではない。

 まだ幼いながらに猿飛のお役目を聞かされていたオレが、初めて幸姉に対して言った『誓いの言葉』だ。

 そんな言葉をオレが忘れるわけがない。

 

「京夜は昔から私に優しくて頼りになって支えてくれて、私がおんぶにだっこだったよねぇ。あ、今もかな。ダメだね私。これじゃ胸を張ってお父様の仕事できないかもね」

 

「そんなことないよ。幸姉は頑張ってる。誰が何を言おうと、ずっとそばで見てきたオレが幸姉の頑張りを認めてる。それじゃ自信にならないかもだけど」

 

「ううん、そんなことないよ。ありがとう京夜。あー! もうすぐ私も真田を継ぐんだなって考えたら、ナイーブになっちゃって嫌だねぇ。きっと誰かにそう言ってもらいたかったんだろうなぁ。柄じゃないよねぇ、昔話なんて」

 

 ちょうど珍しい話するなぁと思い始めた辺りで、オレの頭を撫でるのをやめた幸姉は、膝枕したまま体を後ろに反らして天井へとその視線を向ける。

 あと3ヶ月。

 それが過ぎれば幸姉も真田の家の仕事を本格的に手伝っていくことになる。

 それを思えばナイーブになっても仕方のないことなのかもな。

 オレは何かが変わるわけではないから、その気持ちに共感はしづらいんだが。

 

「んー! ずっと膝枕してたから足が痺れちゃったな。丁度お昼だし、何か作ろっか」

 

 それからポンポンとオレの頭を軽く叩いて起きる許可を出した幸姉は、オレが起き上がったのを追うように、本当に痺れていたらしい足で「ぬおー!」とか「ひやー!」とか言いながら、生まれたての小鹿のようなガクガクな足取りで立ち上がると、オレの介助を受けて台所へと移動。

 完全に持ち直してから、一緒に簡単な料理を作って昼食にしていったのだった。

 よくよく考えてみると、こんなことを家でするのも初めてな気がするな。

 幸姉と一緒に料理というのも不思議な感覚だった。

 昼食を食べ終えてからは、何故か今度はオレが幸姉を膝枕するということになって、強制命令を行使されたオレは無理矢理膝の上に寝てきた幸姉を流れで受け入れてしまい、異常なほどズルくて可愛い上目遣いで「なでなでして」と頼まれればもう断れない。

 そうして甘え上手な幸姉の頭を優しく撫でれば、何故か艶のある声で気持ち良さそうにするので、それにドキリとしながらも、喜んでくれてるならいいかと開き直って続けていたら、唐突に家の玄関の扉が開く音が聞こえてきたため、どうやったのかわからない無動作でシュバッ! と姿勢を崩さずに起き上がった幸姉は、何事もなかったようにオレの隣で涼しい顔をしていた。

 さ、さすがだ……いや、感心するところじゃないか。

 

「「ただいま戻りました」」

 

 帰ってきたのは、生徒会役員の仕事で通っている中学校へと行っていた幸帆と誠夜。

 2人はオレと幸姉に一言それだけを述べて一礼してから、1度自分達の部屋へと戻るために居間をあとにしていき、それを笑顔で見送ったオレと幸姉は、2人の姿が完全に見えなくなってから互いに顔を見合ってついつい笑ってしまった。

 

「幸姉慌てすぎ」

 

「京夜だってビクッてしたよね」

 

 プッ。クックックッ。

 お互い様な反応をしたことでお互いを笑う形になっていたが、ずいぶん久しくこんな風に自然と笑ったことがなかった気がするオレは、目の前で無邪気に笑い続ける幸姉にさらに笑みがこぼれた。

 そうだ。この人の隣はいつも暖かい。

 だからこそオレは、この人を一生守っていくと決めたんだ。

 この笑顔を絶やさないために、これからもずっと……

 それから着替えてきた幸帆と誠夜も交えて、珍しくみんなで何かしようと言い出した幸姉の勢いに押されて、プチカラオケ大会が開催。

 後から所用で出ていた使用人さん達も帰ってきたので、使用人さん達まで引き入れたカラオケ大会になり、幸姉達とデュエットなどしてそれなりに盛り上がっていったが、幸姉の父親、当主様が帰ってきたのを察すると、みんな血相変えて言葉なき華麗な連携で居間を片付けて撤収。

 何事もなかったようにいつもの静かな真田家の光景へと戻っていったのだった。

 厳格な現当主様のおかげと言うべきかなんというか、とにかくこういった盛り上がりからの急激な落差は見てて面白い。

 その夜。

 改めてオレの中での幸姉の存在の大きさを理解したら、なんだか色々と思うところが出てきて、そのせいで上手く寝付けず、夜の10時を過ぎていたが、おもむろに毛布を1枚持って家の屋根に登って、毛布を被って1人座り冬の夜空を眺めていた。

 ――カタンッ。

 そこへ、近くから何かを立て掛けてきたような音がして、そちらを向いてみれば長く伸ばした脚立の端がちょろっと顔を覗かせていて、それを登ってきたらしい幸姉が、ひょっこりと顔を出してから屋根へと乗り上げてきた。

 その格好はパジャマに上着を1枚着ただけの軽装。絶対に寒いだろ。

 

「外見たら京夜が見えたから、来ちゃった」

 

 白い息を吐きながらに「テヘッ」なんて言ってきた幸姉に対して、オレはどうして来たんだと言うよりも早く、その寒そうな状態を何とかするために幸姉を招き寄せて、体に巻いていた毛布にスペースを作って隣を空け、そこに幸姉を入れてあげた。

 

「エヘヘ。京夜あったかーい」

 

 毛布に入ってすぐ。

 当然のように中で腕に抱きついて体を密着させてきた幸姉は、そんなことを幸せなことのように言うので、オレもなんだか照れてしまう。

 

「今日、久しぶりに京夜の笑った顔見たからかな。なんだかそれがとっても幸せで、お姉さんちょっと興奮気味で眠れないです」

 

「なんだそりゃ。ついに幸姉も愛菜さんみたいなことを言うようになったか」

 

「失礼ね。私は愛菜より前からこんな感じでした。愛菜のキャラが濃すぎるのよ。学校ではいつも食われてるの」

 

「そこは威張ったりするところじゃないって……」

 

 どうやら幸姉も寝付けなかったらしいのだが、その理由については理解に苦しむところで困る。

 オレの笑った顔がレアなのは認めるが、それで寝られなくなるってなんだ……

 

「…………ねぇ京夜。もしもの話してもいい?」

 

「するだけならどうぞ」

 

「もしも京夜が私のお付きとしての役目をやらなくていいってなったら、どんなことがしたい?」

 

「……そんなこと考えたこともないな。というか、正直あんまり選択肢はないと思うよ。身に付けた技術も普通の世の中には必要とはされないものばっかだし、たぶん、そうなっても今みたいに武偵を続けるしかないんじゃないか?」

 

「じゃあ、そうなっても武偵として生きる道を後悔したりとかはしないかな?」

 

 ……なんなんだよこの質問。本当に意味がないな。

 真田と猿飛は運命共同体も同然。

 そんなことは天変地異でも起きない限りはあり得ないのに。

 そう思いつつも「たぶん」と答えたオレに対して、幸姉はオレではなく冬の星が輝く夜空を見ながら「そっか」とポツリ呟いてから、トン。オレの肩に頭を乗せてくる。

 

「…………もう京夜も15歳なんだね。時が経つのは早いねぇ」

 

「幸姉だってもう18だ。武偵高に入学した頃と比べたら見違えたよ」

 

「それはこっちの台詞。京夜ったらどんどん大きくなるから、お姉さんちょっと嫉妬してるんだぞ。愛菜みたいにおっぱいがもう少し大きくなれば、京夜を悩殺できたのに……」

 

 胸の大きさなんて関係なく、幸姉のことは好きだよ。

 とは本人を目の前にして死んでも言えなかったので、「幸姉には幸姉の良いところがある」と言ってそれとなくフォローしておく。

 

「うん、ありがと京夜。よし! 良い感じでクールダウンしたかも。これなら眠れそうかな」

 

 そこまで話してから幸姉は、突然毛布を脱ぎ捨てて勢い良く立ち上がると、クルッと軽いステップを踏んでオレの正面に回ると、その身を屈めて何の溜めもなしにいきなりキスをしてきた。

 あまりに予想外な行動だったため、キスされたことを自覚した頃には、もう幸姉は登ってきた脚立のそばまで移動していて、そこでもう1度オレに向き直って、輝く満月をバックに衝撃的な言葉を放った。

 

「好きよ……世界で一番……」

 

 あまりに衝撃的。

 夢のようなその言葉に、オレの思考は完全に停止する。

 告白? いや、主として従者へと向ける愛情を言葉にしただけだろう。

 きっとそうだ。そうに違いない。

 じゃなければあの高嶺の花とも呼べる幸姉が、オレに対してそんなことを言うはずがない。

 そんなオレの状態を知ってか知らずか、幸姉はそのあと恥ずかしそうに「おやすみなさい」とだけ言って脚立を降りていき、家の屋根に1人残されたオレは、しばらく呆然と座っていることしかできなかった。

 当然その夜はそれ以降、部屋のベッドに戻っても寝付けるはずもなく、去り際に幸姉に言われた言葉を頭の中で延々とリピートしていたのだった。

 翌朝。

 完全に無心になってようやく眠ることができたオレが、いつも体が起きる時間に目を覚まし、いつも通りに朝練をしているであろう幸帆のいる道場へと向かおうと家を出たところで、バッタリとその幸帆と出くわすが、その幸帆の表情が何やら酷く焦っている色をしていて、目には涙が溜まり今にも溢れ出しそうになっていた。

 

「京様! 姉上が……姉上が……」

 

「……幸姉がどうした!」

 

「姉上が……いないんです……家のどこにも……どこを探しても……」

 

 この日。2008年1月11日に、オレがずっと付き従ってきた主、真田幸音は、誰にも何も告げることなく忽然とその姿を眩ませた。

 そこから丸々2日ほど、寝るのも休むのも惜しんで京都中を駆け回っていたらしいオレは、幸姉の失踪を知らされた月華美迅のみんなによって、半ば強制的にその行動を止められて身柄を拘束された。

 その間の記憶は酷く曖昧となっていて、聞いた話では涙を流しながらボロボロになって街を走り回っていたらしい。

 幸姉の部屋は、そのままにされた状態でそのほとんどが残っていて、机には長年使っていた携帯と、武偵高の退学届けがポツリと置かれていたが、そこから得られる情報だけではあの雅さんでも何かを特定できるようなものは出てこなかった。

 身柄を拘束されたあと、精神状態が非常に不安定になっていたオレを献身的に介護してくれたのは月華美迅の皆さん。

 逆にそんなオレを追い詰めてきたのは、幸姉という重大な存在を失った真田だった。

 真田は幸姉失踪からわずか3日で捜索を打ち切り、一同を介した話し合いの結果『幸姉が当主となることを放棄した』との判断を下して、ほとんど勘当に近い形で幸姉を真田から切り離した。

 さらにその従者であったオレも『主の愚行を止められなかった落ちこぼれ』として猿飛の家から勘当されてしまい、オレは精神状態が不安定な状態に加えて、帰るべき家まで失っていた。

 真田の決定は絶対。立場の弱い幸帆はもちろん、その真田に従ずる猿飛にもそれを覆すだけの力は与えられていないため、オレと幸姉の勘当はもう揺るがない。

 名家故の汚名の排除が出た結果だろう。

 

「エエ機会どす」

 

 それら全ての出来事をざっと整理して、とりあえず愛菜さんの家に厄介になっていたオレが、ようやく頭を働かせることができるようになったタイミングで月華美迅全員が集まった中、眞弓さんはいつもの調子で話を切り出してきた。

 

「京夜はんは家から勘当受けて京都におるのも息苦しい立場になりました。おまけに幸音はんの失踪で今までやってきた役割も破棄され、帰る家もない。そうなると新しい居場所を見つけなあきまへん。雅」

 

「ミッちゃんとユウたんに話は通したで。一応京都武偵高からの推薦で通せそうやて」

 

「そういうわけで京夜はんには春から東京武偵高の方に移動してもらいます。あそこなら学生寮もありますし、京都からも離れられます。おまけに稼いで食っていけるだけの実力もありますから、どうにかなりますやろ」

 

「あかんよ眞弓! それやと簡単に京ちゃんに会えなくなってまうやんか!」

 

 淡々と進む話の中で、オレの上京に異を唱えたのは愛菜さん。

 しかしその愛菜さんに鋭い視線をぶつけた眞弓さんは、怯んだ愛菜さんに扇子を向けて話を続けた。

 

「エエ機会言うたのはそれどす。ウチらはこれまで、少なからず幸音はんと京夜はんの力を借りて依頼を解決しとります。やけどこれから先、そないな甘いこともしとれまへん。依存言うたらわかりやすいどすな。特に愛菜はんは京夜はんに対する依存が酷い。病気言うてもエエどす」

 

 そんな指摘に愛菜さんは沈黙。

 千雨さんや早紀さんも何も言わずに眞弓さんの話を受け止めているようだった。

 

「遅かれ早かれどうにかしよ思てた案件でしたさかい、ここはみんなで京夜はんを送り出してあげましょ。エエどすな、愛菜はん」

 

「…………京ちゃんが東京行く直前までは、家で預かるで。それで手打ちや」

 

「エエ返事どす。京夜はんはこれからが大変どすが、まずは1人で立てるように専念してください。それができたら次は歩いてみましょ」

 

「…………はい……」

 

 それから約1ヶ月間、愛菜さんの家でお世話になったオレは、なんとか精神的に安定した状態にまで回復してから、3月の半ばに愛菜さんの家を出発して、新たな地、東京へと向かうために新幹線へと乗り込んでいった。

 出発の際、泣きながらに見送ってくれた愛菜さんや眞弓さん達には感謝してもしきれない恩を感じつつも、愛菜さんの家に自分の携帯を置いていっていた。

 それはオレなりの再起する決意の表れ。眞弓さんの言うように、オレも愛菜さん達に依存してはいけない。簡単に頼ってはいけない。

 もうオレは『真田幸音』という支えなしに立って歩かなければならないのだから。

 ――そんな決意と共にやって来た東京武偵高で、オレは新たな出逢いを果たすことになる――

 

 

 

 

「お前、本気を出したら強いんじゃないか? この試験会場にいた中で一番厄介な感じがしたよ」

 

 

 

 

「おーおー暗いぞキョーやん! さぁ! まずは理子りんを見習って笑ってみようや!」

 

 

 

 

「ランクなんて気にすんなよ。あんなの飾りだ飾り。俺なんて気が付いたら免停食らってるんだぜ?」

 

 

 

 

「猿飛君って、普通の高校とかだったら絶対にモテるよね。武偵高は実力主義なところがあるから難儀だけど」

 

 

 

 

「レキです。では私は京夜さんとお呼びします」

 

 

 

 

「や、やったよ猿飛くん! キンちゃん様が私の料理を美味しいって言ってくれたよぉ!」

 

 

 

 

「おおー! 珍しい人からの発注なのだ! 報酬を弾んでくれるなら、良い仕事するのだ!」

 

 

 

 

「猿飛殿、その身のこなし、見事にござる!」

 

 

 

 

「猿飛京夜……先輩ですか。私、武藤貴希っていいます!」

 

 

 

 

「理子お姉様から離れなさいですの! この腐れ外道が!」

 

 

 

 

「ん? 君はどこかで1度あったことがある気が……いや、気にしないでくれ。きっと私の記憶違いだろう。男など見た覚えがあるはずないのだから」

 

 

 

 

「お前さぁ、魔剣っていう超偵を誘拐する犯罪者を知ってるか? こいつを追えば、お前の探してるやつも探せるかもなぁ。なぁに、断ればお前は晴れてSランク武偵の仲間入りするだけだ」

 

 

 

 

 ――そして物語は、高校2年の始業式の日に、大きく動き始めた――

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