緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet54

 羽鳥が目を覚ました夜から一夜明け、今回の後継者問題で生じた事件の真相がわかったと豪語した羽鳥に促されるまま、朝の早い時間に燐歌を起こして会社へと向かう前に事件解決のため羽鳥と合流を図る。

 そしてその場所は、昨日行ったばかりで羽鳥が入院している病院。

 昨夜に事件の犯人だけ聞かされたオレは、未だ半信半疑のまま燐歌、桜ちゃん、貴希と一緒に病院へと辿り着き、とある病室の前の廊下で壁に背を預けて、いつもの武偵高制服に身を包んだ羽鳥と合流。

 今は必要がないと判断したので、羽鳥が女であることは桜ちゃん達には黙っているが、こうして改めて女だとわかって見ても、羽鳥のその動作や仕草に女らしさを感じないのは凄いことだ。

 

「……来たね。さぁ、解決編といこうか。そしてお初にお目にかかりますね、燐歌嬢。私は羽鳥・フローレンスと申します。これからこのたび起きた事件の真相を暴きますが、どんな真実であっても気持ちを強くお持ちください」

 

「えっ? それってどういう……」

 

 合流して早々、羽鳥は英国紳士らしく燐歌に丁寧なお辞儀で挨拶をしつつ、意味深なことを述べてからオレ達にアイコンタクト。

 言われた燐歌はこれから起こることに動揺が生じていたが、羽鳥はそれを一旦無視してオレ達へ背を向けると、そのタイミングで近くの病室の扉が静かに開き、そこから仕事に向かうためのスーツに身を包んだ沙月さんが出てくるが、すぐにオレ達の存在に気付いて動きを止める。

 

「本庄沙月さん。仕事熱心な姿勢は好感を持てますが、1度病室へお戻りください。お話ししたいことがありますので」

 

「なんですか突然……燐歌様までいらっしゃって……」

 

 出会って早々、羽鳥は言いながらこの事態に思考が追い付いていない沙月さんを出てきた病室へと押し戻して、オレ達もそのあとに続いて中へと入り病室のベッドに座らされた沙月さんに対面する形で立つと、羽鳥が事前に用意して欲しいと言って持ってきていた幸帆が事件の詳細をまとめた資料を手に取って話を始めた。

 

「まず始めに私は今回、彼女らが燐歌嬢の護衛についた日から別行動を取り、影ながらに動いていた者です。その最もな目的は燐歌嬢の2人の姉を殺害した犯人を特定し捕まえること。そうすることで燐歌嬢に迫るであろう脅威を取り除け、我々もその時点で撤収できます。武偵憲章8条にも『任務は、その裏の裏まで完遂すべし』とありますから、行きすぎた行動でもありません。事実、燐歌嬢と沙月さん両名とも、このタイミングまで私が彼女らの協力者であることがわからなかったはずです」

 

 彼女らの括りに入れられるのはこの上なく違和感があったが、ちゃんとオレを女性として扱ってる辺りは配慮がされている。

 こいつが男であるという認識はどうなのかというと、燐歌も今はそこまで意識が向いていないらしい。女性限定とはなんだったのか。

 そんなことはさておき、そこまでの話に首を縦に振ったりして、2人ともが肯定を示す仕草をし、それを確認した羽鳥も「そうでしょうね」と漏らす。

 

「しかし先日。燐歌嬢が襲撃を受けた日に、ほぼ同じ時間に私も襲撃を受けて、執拗な追撃によってあと少しで命を落とすところまで追い詰められました。襲撃の際の詳細を京奈から確認したところ、私を襲った犯人と燐歌嬢を襲った犯人は、その手口からして同一犯であることは間違いないことがわかりました」

 

 それもオレ達は情報を集めてわかっていたし、別段驚くところではないが、だからこそこいつの推理は納得がいかない。

 そこを今から説明してくれるのだろうが。

 

「それを踏まえた上でお話ししますと、私は襲撃されるそれより前に京奈達ととある可能性を考慮して沙月さん、あなたをマークしていました。今回の事件の容疑者として、ね」

 

「じゃあ、沙月はもう犯人じゃないわよね。だってあの襲われた日に私達と一緒にいて、怪我までしたんだから」

 

 羽鳥の説明に割り込む形で燐歌はすかさずそう言ってその可能性を否定し沙月さんを庇う。

 そう。あの時点で沙月さんが容疑者である可能性は無くなった。それがオレ達の判断。

 

「ええ。沙月さんが犯人であるならば、あの襲撃は予測して対処できて当然。タイミングだって選べたでしょう。しかし実際は襲撃の際に京奈が見た沙月さんは本当に襲撃など予測してなかった表情をし、どう対応していいのかわかっていなかったと聞いています。京奈が見間違える可能性が低いと判断するならば、これが演技でないことは十中八九間違いなく、この時点で沙月さんは犯人ではない。誰もがそう思うでしょう。しかし、私はこの事件の容疑者からまだあなたを外せずにいる。むしろ容疑者としてますます怪しくなった」

 

 これだ。こいつは何を疑ってそんなことを考えているのか。

 オレ含めて全員が未だ疑問に思い、聞いていない推理。

 どんな推理を披露してくれる。羽鳥・フローレンス。

 

「まず今回の事件における犠牲者。燐歌嬢の2人の姉の死因について考えましょうか。2人はいずれも薬物による毒殺。方法こそ違いはありますが、特定の人物を狙った『ピンポイントの殺害』です。これができるのは間違いなく会社内部の人間。それも彼女達が『近付かれても警戒しない人物』が最も犯行に及びやすい。それに当てはまる人物は会社内では家族と、幼い頃からの世話役としても面倒を見ていた沙月さん含む創設メンバー3人くらいです。沙月さん以外の2人にはすでに面識がありますが、心理学もかじっている私から見た両名とも、2人がお亡くなりになって本当に悲しまれていました。あの精神状態になる人間は犯人にはなり得ない。野心があれば尚のことです。そして此度の襲撃。沙月さんが犯人であるならば、どうしても不可能なことが1つ。私の存在を知らないはずのあなたが、私を見つけて襲撃することなど出来るわけがない。さらに燐歌嬢を襲った犯人は、これまでのピンポイントな殺害とは違い、『周囲を巻き込む殺害方法』に及んでいる。つまりは強引な強襲。余計な被害を出さないようにしていた2つの犯行とは明らかに手口が違う。この2つを無理に結びつけようとすれば、沙月さんの容疑は晴れますが、だからこそ考えたのです。2つの犯行と襲撃は『別の実行犯である』と」

 

 羽鳥の推理に我ながら少し納得してしまった。

 確かに先の2人の殺害と、今回の襲撃ではその手口に明らかな違いがある。しかも襲撃の際の超能力は現場に証拠となる物を残さないほど高性能。

 これなら始めから使っても何ら問題はないはずなのに、証拠が残るかもしれないリスクを背負う毒殺を選んでいるところを考えれば、実行犯が違うこともあり得る。いや、そうとしか考えられなくなる。

 だが、それでもまだ沙月さんが容疑者として疑われ続ける大きな理由には至っていない。

 そこまでの話に表情1つ変えない沙月さんだが、オレと同じような疑問があるのか、話の続きを促すようにただ黙って羽鳥の話に耳を傾ける。

 

「ではこの実行犯が違うケースに当てはめて推理してみましょう。先日の襲撃犯と沙月さん、あなたが協力関係にあるならば、やはり襲撃はあらかじめ知っていて然るべきだ。何故なら協力関係にあるのだから。しかし実際あなたは襲撃を予測することもできずに挙げ句、怪我をし入院する羽目にまでなっている」

 

「ですからそれが真実なのではないですか。私が燐歌様の2人の姉を殺していなく、犯人は別の誰かであると。これで何をまだ疑って……」

 

「ごく稀に、ですがね。自分を容疑者から外すために『犯行現場に居合わせて潔白を晴らす手段』が用いられることがあります。自分は犯行現場にいたから、この事件とは関係ないと証明して見せることで、アリバイを立証する方法ですね。今回はそれが『あなた』の狙いになった。過去形なのは結果としてそうなったからで、あなたがそうしようとしてできた結果ではないから。本来、あなたは警察にもほとんど疑われていなかった立場。疑いを持って動いていたのは、あなたと燐歌嬢にそれを伝えていなかった私達だけ。こんな小さな武偵の集まりが動いていただけにも関わらず、あなたが感知できてもいなかった動きに対して、しかし襲撃は行われた。つまりこれはあなたが企てた計画ではなく、『協力者』の都合で勝手に行なわれたことなのでしょうね。おそらくこのまま私達が動くことで、元々安全圏にいた協力者の存在が見えてしまう可能性があった。それを防ぐ意味と、あなたを容疑者から外すための手段として私と燐歌嬢を襲撃した。向こうは私達を殺すつもりだったのでしょうが、それが叶わなかったことで私達は協力者の存在を確信し、こうして今この場にあなたはいる。協力者はどうやら相当の人物のようですね。自分に容疑がかけられる行為であるにも関わらず、捕まらないと言ってるようなものなのですから。事実、その存在は確信していながら、あなた以外に手がかり1つないわけですが」

 

「あの、羽鳥さん。協力者の存在と行動についての推理には納得できますが、沙月さんが犯人であるという確信を私はまだ得られないのですが……毒殺に関しても親しい仲でなければできないということもありませんし……」

 

 そこまでの話を黙って聞いていたオレ達の中で、遠慮しつつも的確なことを尋ねた桜ちゃん。

 決め手に欠ける。それはオレも思っていたし、それもなしに沙月さんを犯人だと断定もしないだろう羽鳥の性格もわかってる。

 まだ何かあるのだろう。これ以上何が出るのか。

 

「タイミング。これが重要なのさ。私達……いや、具体的には私がだが、沙月さんを疑い始めたのが襲撃の日の2日前。それも夜のことで、実際に行動に移したのが翌日からだから、実質前日のみだ。そうして私達が動き出したのを協力者は敏感に察知し、私の存在まで見つけ出し対策を打ってきた。物理的排除という形でね。この際手段はどうでもいいんだけど、要は……」

 

「『私達が沙月さんのことを疑ったことで、アリバイ工作とミスリードを狙いつつ障害の排除をしようとした』。この行動が沙月さんを犯人だと示してしまった」

 

「その通り。さすがは京奈。なんにしてもタイミング。この対応の早さが仇になり裏付けになったというわけさ」

 

 恐れ入った。

 オレ達は完全に襲撃の後は犯人は外部の人間だとミスリードされ、襲撃の目的さえも燐歌の殺害だと思い深く考えなかった。

 

「……では私がこの度の事件の犯人だとして、その目的は? 私がそんなことをするメリットがあるとは思えないのですが」

 

「メリット? そんなもの最初からあなたは考えていないでしょう。目的はただ1つだ。ここにいる燐歌嬢が『社長になるに相応しい人物であることを証明するため』」

 

 羽鳥の推理に対して、未だに表情を変えなかった沙月さんだったが、そんな質問をして返ってきた言葉に対して、初めてその表情を変えた。無表情から、驚きの表情へと。

 羽鳥の報告にあったが、沙月さんと燐歌の姉についていた2人のビジネスパートナーは、社長の癌が発覚する前に次期社長は誰が相応しいかを議論していた。

 その時の沙月さんの熱の入り様は凄かったと他の2人に言わせるほどに熱く。

 

「…………その口ぶりから察するに、あの2人から聞いたのでしょうね。燐歌様が社長になって、お1人でも立って歩けるまでになった時に、警察に自首して全てを明かすつもりでした……」

 

 その言葉が決め手になったのか、沙月さんは観念したように独白をして、オレの隣に立っていた燐歌へとその視線を向ける。

 

「燐歌様、申し訳ありませんでした。私は燐歌様こそが社長になるに相応しいと思っていましたが、それを決める時期がこんなにも早く訪れてしまい、年齢的にもまだ幼い燐歌様では必然として後継者から外されてしまう。それが私は納得がいかなかった」

 

「だから姉様達を? そんなことのために沙月さんは……」

 

「燐歌様が社長になることは、私の夢であり、一番の喜びだったんです。それさえ叶うならば、私はどんな罪も背負い、罰を受ける覚悟はありました。だって燐歌様は……燐歌は私にとって、娘に等しい存在だから……」

 

 そうして語った沙月さんの目からは、次第に大粒の涙がこぼれ始め、沙月さんの言葉に燐歌も涙を流す。

 が、2人が流す涙の理由はきっと、違うものだろう。

 燐歌はそうまでして自分を想ってくれていた沙月さんへの喜びと犯してしまった罪に対する深い悲しみ。

 沙月さんは、燐歌に真実を知られてしまったことへの謝罪と、犯した罪を悔いる後悔。

 深すぎる愛ゆえに起こった今回の事件は、いくつかの偶然が重なってしまったことで起きたもの。

 もしも沙月さんが次期社長の議論をしていなければ。

 社長が癌による余命宣告を受けていなければ。

 あるいは起こらなかったかもしれない。

 そんな悲しい事件だった。

 

「……まだ終わりじゃない」

 

 しかしこの事件はまだ終わっていない。

 そう思ってオレが口を開けば、羽鳥もそうだと言わんばかりに涙を拭った沙月さんに視線を向けて口を開く。

 

「あなたの犯行に荷担・協力した者の名前を教えてもらえますか?」

 

「それは……つちみ……んぐっ!?」

 

 この事件にはまだ、姿なき協力者がいる。

 そいつを暴こうと羽鳥が沙月さんに問いかけ、沙月さんがその名前を口にしようとした瞬間、いきなり沙月さんの口元に何かの文字が書かれた包帯のような紙が巻き付いて沙月さんの口と鼻を覆ってしまい、それで呼吸ができなくなった沙月さんはそれを剥ぎ取ろうともがくが、紙のはずのそれはガッチリと沙月さんに巻き付いて取れる気配がなかった。

 このままじゃ沙月さんは窒息死してしまう!

 

「口封じか!」

 

 それを見て羽鳥はすかさず毒づきながら沙月さんから紙を剥ぎ取ろうとしていたが、力ではどうにもならないようで、あの羽鳥が初めて本気で焦ってる表情を浮かべた。

 この状況に燐歌は沙月さんの名前を叫ぶだけで、桜ちゃんも貴希も完全に対応策を練れずに立ち往生。

 オレもこれが超能力によるものなのは理解してるが、どうすればいいのか判断がつかない。

 あれは何だ? 口封じ……殺すための超能力……遠隔……呪い?

 

『その宝玉に退魔の紋様が刻まれてるの。効力は強くないけど、呪いなんかの類は寄せ付けないよ』

 

 あれはいつだったか。

 確か幸姉が武偵高に姿を現して、七夕祭りの後。久しぶりに会った白雪がそんなことを言っていたんだ。

 何を見て? そんなの決まってる。これだっての!

 あの夏以降、もはやただのお守りと化していた幸姉から貰ったペンダント。

 首から提げることはなかったが、お守りと言われてずっと持ち歩いていたそれを懐から取り出したオレは、それをぶつけるようにして沙月さんに巻き付く紙へと触れさせると、バヂンッ!!

 凄まじい火花のようなものが発生したと思えば、ペンダントは木っ端微塵に弾け飛び、同時に沙月さんに巻き付いていた紙の文字も消え失せたかと思うと、絞めつける力を無くした紙は口許から離れて塵も残さずに一瞬で燃え尽きてしまった。

 

呪詛返し(バウンス)か。どうやったかは知らないが、助かったよ」

 

 それを見た羽鳥が落ち着きを取り戻しながら、言って床に崩れて咳込んでいた沙月さんを診て、燐歌も慌てて沙月さんのそばに寄って心配していた。

 何がどうなったかはわからないが、幸姉のおかげで事なきを得たようだ。

 お守り壊しちゃったのは、後で怒られるか泣かれるのは覚悟して報告しよう……

 その後、それほど間もなく到着した警察に沙月さんの身柄は引き渡され、今回の後継者問題において発生した事件は一応は解決。

 協力者の存在は発覚しつつも、唯一繋がりのある沙月さんでさえ何も手がかりを持っていなかった。

 と言うのも、沙月さんに接触してきた協力者は、その姿も見せることなく、声も明らかに変えた人物で、男か女かも、どんな人物かも一切わからなかったのだ。

 おまけに名前を喋ろうとしたところで口封じをしてきたことから、その名前を知ることを危険視した羽鳥は、警察にもそのことを自白させないように念を押して、自分1人がその名前を聞き出したようだった。

 それから桜ちゃんと貴希には撤収の手伝いをさせるために1度帰宅させて、オレと羽鳥は病院に残っていたのだが、燐歌は沙月さんが犯人だったことに相当なショックを受けて、病院のロビーで静かに泣き続けていた。

 何よりも、これで燐歌は1人になってしまったのだ。

 その辛さは想像するに容易い。再び立ち上がれるかも怪しいところだった。

 そんな燐歌のそばにいることしかできなかったオレだったが、沙月さんが連れていかれた後にフラフラとどこかへ行っていた羽鳥が、俯く燐歌の前で膝をついてその顔を上げさせると、小声で何かをささやいたかと思えば、それを聞いた燐歌は途端、泣くのをやめて立ち上がり一直線に走り出して病院内を行ってしまった。

 

「何を言ったんだ?」

 

「世の中不運ばかりが続くわけではないさ。彼女のような素敵な女性にはそれに相応しい幸運が訪れるものと、昔から決まっている」

 

「幸運?」

 

「実はね。この件を片付ける『もう1つの方法』を解決したんだよ。こちらは望み薄だったが、お声をかけた医者が素晴らしかったようだ。これは私以上の『外科医』だと認めざるを得ないね」

 

 相変わらず回りくどい言い方でイラッとしたが、そこまで言われればオレでもなんとなくわかってしまう。

 燐歌があんなにも急いで会おうとする、この病院内にいる人物など、1人しかいない。

 

「余命宣告を受けていたはずだがな」

 

「だから望み薄だと言った。少なくとも、カルテを見た私は匙を投げる進行具合だったし、依頼した即日でこっちに来て執刀するなど私も予想外だったよ」

 

 そう話しながらわおっ!

 と大袈裟なリアクションをしてみせた羽鳥は本当に驚いているようで、オレもそれほどのことをしてのけた外科医というのが気になりつつも、燐歌のあとを追って母親がいる病室へと向かう。

 そこには手術後でまだ寝たままの母親に泣きつく燐歌の姿があり、その横には執刀したのであろう白衣を着た医者が病室を出ようとしたところだった。

 その医者と相対する形になってふとそのネームプレートを視界に入れたので見れば、そこには『薬師寺』の苗字。

 ……ん? 薬師寺?

 

「あの……いきなりで失礼ですが、京都の出身で、今年で20歳になる眞弓という娘さんがいらっしゃいませんか?」

 

「ん? なんやよう知っとりますな。確かにそうですよ。あんた、眞弓の知り合いですか?」

 

「マジかよ……あの、私は京都武偵高にいた頃に眞弓さんとは同級生でした猿飛きょ……」

 

 そこまで言ってこの場に燐歌がいたことを思い出し本名を名乗るのをためらったオレだったが、猿飛と言ってはもう手遅れ。

 それで向こうもオレが誰かに気付いたようで、眞弓さんと同じ細い目をさらに細めて口を開いた。

 

「猿飛……ああ! 眞弓の言うとった年下の凄い子やの。やけど、眞弓の話では猿飛『京夜』君は『男』や言う話でしたが、聞き間違いですかね?」

 

 がっくし。

 ものの見事に本名と性別を言われたオレは、恐る恐る視線だけ眞弓さんのお父さんから後ろの燐歌に向けると、その燐歌は聞いてはいけなかったことを聞いたように泣くのもやめてオレを凝視。

 あー……もうダメだこれ……

 

「へ……へ……へんたぁぁああああい!!」

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