緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet57

 ――オレがこいつと同類?

 不敵な笑みで見るヒルダに突然言われた言葉で、つい思考が働いてしまったオレは、ヒルダに動く隙を与えてしまうが、すぐに思考を切って体に力を入れ直す。

 しかしその体は何故か金縛りにあったように動かなくなる。くそっ、何かされた……

 

素晴らしいわ(フィー・ブッコロス)。あなた、私を見てるようで全然見てなかったから、暗示術(メスメリズム)をかけられなかったのだけど、動揺してくれたおかげでほら、この通り」

 

 オレが動けなくなったことで、髪を掴む手を振り払ったヒルダは、オレの頬に手を添えてクスクスと笑って顔を覗き見てくる。

 メスメリズム……金縛りの類いだろうな。

 確か小さい頃に家にあった書物で流し読んだ中にそんなのあったな……どうやれば解除できるんだったか……

 

「体は動かせないでしょうけど、口は動くでしょう? さっきは激情に任せて殺してやるなんて言ったけど、これからのあなた次第ではそれを取り消してあげる」

 

「……同類ってのはどういう意味だ」

 

「言葉通りの意味よ。あなたの本質は私達と同じ。他の命を尊ぶことなく傷付け、蹂躙し、奪い、支配する。私を傷付けていた時のあなたの目、最高にイッていたわ。この私が人間にこれほどゾクゾクしたのは初めてかもね。ああ、恐怖したのではなくてよ。あなたが無性に『欲しくなった』の」

 

 オレの頬を擦りながらまっすぐな目で見つめてくるヒルダの表情は、とても嬉しそう。

 うっとりしていて頬もほんのり赤いが、別にオレに惚れたとかでは全くない。

 こいつにとって人間は下等生物。その数いる下等生物の中で『面白い玩具』でも見つけたような、そんな喜びを表情に出している。

 

「理子もあなたを気に入っているようだし、あなたが私に忠誠を誓うなら、理子ももう迷ったりしないでしょう? 今はジャンヌの騎士(ナイト)のようだけど、あんなのより私の方が仕えるに値するわ」

 

 さっきまでの殺意はどこへやら。

 一転してオレを下僕にしようと言葉を連ねるヒルダは、テンションが上がると口数が増えるのか、えらく饒舌。

 

「あなたは理子と違って恐怖で屈服するような人種ではないでしょうから、このイヤリングも無意味ね。つけた瞬間に自殺でもされては笑えないわ。でも、力には抗えない。私という絶対的強者に従うことは自然の摂理。家畜が人間に抗えないのと同じよ。だからあなたの命は私が上手に使ってあげる」

 

「……確かにお前にとってオレ達人間は弱いんだろう。けどな、そんな中でも強いやつってのは確かにいるんだよ。別に強いのは力だけじゃない。そこにいるキンジやアリアのように『戦う強さ』を持つやつもいれば、理子のように『心の強さ』を持つやつもいる。今までお前とブラドに縛られて生きてきた理子が、執拗ないじめにあって、きっと何度も死のうと思ったはずの理子が、今もこうして生きている。それが強さでなくてなんて言うんだ。お前らが死なないように加減してたんじゃない。理子が本当に強いから今日まで生きてきたし、その絶望を経てなお見せてくれるあいつの笑顔が、どれ程オレを勇気づけてくれてると思う! そんな理子の笑顔を、オレがどれだけ好きかお前にはわからないだろうけどな、その笑顔を奪うお前を、オレは絶対に許さない!」

 

 どんな言葉でオレを引き入れようとしても、それがオレの答えだ。

 たとえオレがヒルダと本質的に同じだとしても、それで仲間意識が芽生えるわけではないし、同類だからと同じ生き方をすることもない。

 なにより、理子を泣かせた罪は重い。

 

「あら……あなたはてっきり人間のくせに超常の魔眼を持ったあの女のことを好きなのだとばかり思っていたけど、違ったのかしら。まぁでも、私のものにならないなら、理子への見せしめとして前言通り塵も残さないで消してあげる」

 

 オレの答えを聞いたヒルダは、本当に残念そうな表情をしてオレから手を離すが、そこに悲しみはない。

 それは例えるなら商店街の福引きでポケットティッシュが当たったようなそんな程度のもの。

 そしてオレから離れたヒルダは、足に絡まるワイヤーを取ってから再生した翼を使っての跳躍で後退。

 草花で飾り付けられた大きな柩の上に着地をすると、バチ……バチ……と、その身に小さな雷を纏い始めた。

 

「『雷球(ディアラ)』――サルトビ、お前には見せたことはないけど、100%のこれを受けて生きられる人間はいないわ。それをお前には特別に120%でお見舞いしてあげる」

 

 言ったあと、ヒルダの体に纏っていた雷が一点に集まり出し、胸の前に小さな雷球が出現。

 見る見るうちに大きくなるそれは、肥大化する速度が落ちてヒルダの身長と同じくらいになったところで一旦停止。

 

「これで100%! さぁ、もっと行くわよ!」

 

 またテンションが上がってきたのか、雷球の奥に霞んで見えるヒルダの声は嬉々としていて、それに感応するように雷球もまた少しずつ大きくなる。

 さて、ヒルダは見せてないとか言ってたが、あれほどのではなかったものの、オレは確かにあの雷球を見たことがある。

 忘れもしないあの夏のこと。イ・ウーの原潜に乗り込んだ先にいた教授、シャーロックから、オレは『予習』と称してあれをこの身に受けている。

 この状況すら条理予知とやらで見えていたのだとしたら驚愕だが、理子と関わる先でヒルダと巡り会うことくらいは推理していたのだろう。

 そしてそこから得られる情報は、あれをまともに受けたら確実に死ぬってことだ。

 だが今、オレはやつの術で体が動かせない。

 だからといってこの状況を切り抜けられないわけではない。

 しかしそれを行うのは現実的に不可能。何しろやったことがない。

 メスメリズムは確か催眠術の分野だったはずだから、1度『意識を失えば』その効力も断ち切れるはず。

 だが自分から意識を失うなんてのはほぼ無理。それでもやるしかないと思って喋り終えてから呼吸を止めてみてるが、やはり意識を失うより早く本能が酸素を求めてしまう。

 たとえ意識を落とせたとしても、すぐに復活できるなんてこともまずないしな。

 残るは脳の命令を無視する『死の回避』を信じて体の力を抜いておくことくらいか。

 こっちの方がまだ可能性としては高い。過信はしたくないんだが、やるしかないよな。

 それでオレはもう直径2メートルに達している雷球を見ながらにその瞬間を黙って待つ。

 恐怖はヒルダの感情を昂らせる。だから表情は決して絶望に染めない。

 

「科学が発展するように、魔術(マッギ)も日々発展してきた。自分の身体から消費するだけでは、精神力(ATP)はすぐ底をついてしまうわ。だから、体外から力を得る方法が編み出されてきたの。砂礫の魔女(パトラ)が星から力を得るように、サナダが自然の循環を利用するように、私は――人間の使う電力をいただく。近年の分類で言えば、Ⅱ種超能力者の1人よ。ただし、人間には到達し得ない高レベルのね……さぁ、これで120%……あぁん、壊れちゃいそ。やっぱり少し、制御が難しいわね」

 

 そうやって自分の超能力のネタばらしをするヒルダはとても楽しそうだったが、オレがほとんど表情を変えないことに気付くと、途端シラけたような顔をする。

 

「この状況でその顔、気に入らないわ。これから死ぬのだから、もっと良い表情をしてもいいと思うのだけど、最後まで私に抗ってみせるのね。不愉快極まりなくってよ」

 

 やはりオレの表情が気に食わなかったヒルダの言葉にふんっ、と鼻で笑ってやると、それが引き金になったのか、ヒルダがキリッと目を鋭くしたので、オレはそれに目をつむって自分の死の回避を信じてその時を待った。

 ――ドウウウッッッッ!!

 だが、ヒルダの雷球が放たれるより先に、第2展望台を揺るがす爆発が起こり、それに目を開けたオレが見たのは、ヒルダが立っていた柩が何かによって爆発を受けて彩られた草花が舞っているところ。

 その草花に隠されていたらしい太い電線が断ち切られているのを発見すると、ヒルダが作り出した雷球が電源を抜かれたように消えてしまった。

 

「――4世……!」

 

 牙を剥いたヒルダがこちらを見ながらにそう言うので、オレは動かない顔で視線だけを横に向けると、そこには震える身体を必死に堪えて立つ理子の姿があった。

 

「京夜、ありがとう」

 

 オレの横で一言そう言った理子の身体は、次第に震えが収まっていき、その顔にも何か決意した色が見えた。

 

「あーっ、そうだそうだ! 理子忘れてた! 忘れちゃってたぁ! キーくんとアリアは元々、理子の獲物(ターゲット)でしたぁー! キョーやんも理子のコイビトなのに、どこの誰かなぁー? 勝手なNTRルート開拓しようとしてる空気読めない女はー!? くふっ、くふふふふっ!」

 

 次にはいつもの調子になってその場でクルクル回ってみせて、その動きをピタリと止めた後は素の理子が面へ出てくる。

 

「――変圧器(トランス)だったんだろ、その柩。お前は電気を使う。でも、その能力はジムナーカス・アロワナから遺伝子をコピーして身につけたものだ。あの魚はそんなに長く、大量の電力を放つことができない。せいぜい1度か2度――使ってしまえば、しばらく休息が必要になる」

 

「4世……どこでそれを……ッ」

 

「なぁーにビックリしてんのぉー? こんぐらいググれば1発で出てくるよぉー。だからお前は通常、自分の体から放電しないようにして……外から盗んだ電気を使う。でも、発生させられる電圧が低い割に、お前は超高電圧の電気しか体に取り入れられない。だから大型の変圧器が必要だったんだ」

 

 言いながらオレの視界の奥に移動してしまった理子を、ヒルダは悔しそうに黙って見てることしかできない。

 

「ヒルダ。お前はもう電気をどこからも取れない。肉体からも、もう放てない。アリアとあたしに、さっき自力で電流を放ったからな。素粒子を操るための大電力もない。だから、影になって動き回ることもできない」

 

 どうやら以前見せた影の中に潜む能力は、実際に影の中に潜んでいたわけではなかったらしいな。

 その仕組みについては今はどうでもいいが、ヒルダが超能力を使えなくなったっぽいのは状況として理解できた。

 それからオレの後ろの方でまたも爆発音がして理子が何かを壊したようだが、ヒルダの表情を見る限り、壊されては困るものだったのだろう。

 

「やーっぱり。そっちはバッテリーだったかぁ。ヒルダ。あたしにそう言われたからって『まだあるぞ』って目で棺桶見ちゃダメじゃーん。理子はドロボーなんだよー? 誰かが何かを隠してるのを見つけるの、大得意なんだからぁ。まぁ、理子でもまだ『見つけられないもの』はあるけど、それは今関係ないし」

 

「迂闊だったわ。お前が……そんな爆薬を隠し持ってたとはね……ッ!」

 

「ご存知の通り、『武偵殺し(ワタクシ)』は爆弾使いですから」

 

 ――バチッ!

 理子のその言葉の後、後ろでそんな小さな何かが弾けたような音がしたかと思っていると、再びオレの視界に入ってきた理子は、ロザリオの力で髪を操ってアリアの2本の小太刀を持ち、両手にはキンジのベレッタといつかシャーロックから猫ババしたスクラマ・サクスを持っていた。

 変則双剣双銃ってところか。

 だが、先ほどまでイヤリングがつけられていた右耳からは赤い血が流れ落ちていて、さっきの弾けた音がイヤリングの弾けた音だとわかり思わず歯ぎしりしてしまう。

 夾竹桃の話によると、ヒルダは毒蛇の腺液を使うらしく、それを何かに仕込んでいると聞いていたため、それが理子のつけていたイヤリングなのだとわかったのだ。

 おそらくはイヤリングは遠隔で破壊できたりするのだろうが、その際に傷口から毒が入るようになっていて、毒が体に回って死ぬまでは約10分ほどとか。

 つまり今、理子はその毒に侵されながらヒルダと敵対した。おそらく死ぬ覚悟で。

 

「理……子ぉぉおおおお!?」

 

 それを思って理子に言葉をかけようとしたら、いきなりその理子がオレの額にためらいなく小太刀を振るってきたので、いきなり死の回避が発動。

 尻餅をつく形で倒れることでそれを避けると、そこから体の自由が戻ったのですぐに立ち上がり理子の隣に移動。

 

「やり方が乱暴だアホ」

 

「こうでもしないと動けなかったろ。それにあたしは怒ってるんだ。あんなケバい女に骨抜きにされやがって」

 

「されてない。それを言うならお前も子犬みたいに震えてたろ」

 

「あたしはか弱い女の子だから仕方ないんだよ」

 

「あーそうかよ。か弱い女の子なら引っ込んでろ。あとはオレがやってやる」

 

「引っ込んでるのはお前だ京夜。中途半端ないたぶり方しかできないならやめとけ。それにこれは京夜の領分じゃない」

 

「お前の領分でもないだろ。お前にやらせるくらいならオレがやる」

 

「…………本当に、優しいんだから……」

 

 何故か怒り気味の理子についムキになったが、こうしてる間にも理子の体に毒が回っているし、ヒルダを無力化しないとどうにも進展しないので、口喧嘩もそのくらいで1度理子の頭をわしゃっと触ってから、いつの間にかその手に三叉槍(トライデント)を持ったヒルダと2人で対峙した。

 壊れた柩から下りて三叉槍を構えたヒルダと向き合ったタイミングで、雲行きの怪しかった空からポツポツと大粒の雨が降り出す。

 その雨を切り裂くようにして改めて身構えたオレと理子。

 

「ヒルダ。今、ずっとやりたかったことをやってやる……お前への恨みを、晴らすッ!」

 

「いいわ、戦ってあげる。お前達ごとき電気が無くても敵ではないわ。光栄に思いなさい。竜悴公の一族と2度も戦った人間は――歴史上、お前達が初めてよ。でも4世、サルトビ、忘れたのかしら? 吸血鬼には、いかなる傷をも瞬時に治す魔臓が4つある。その位置は個体によってバラバラで――私の魔臓の位置を、お前達は知らない。知っているのは、さっき刺してくれた両腿の2つだけでしょう?」

 

 オレと理子を前にして自信満々のヒルダだが、単に魔臓の位置がわからないというだけにしては自信に満ちすぎている気がして違和感を持つ。

 オレも甘かったが、猛攻を仕掛けた時にやつの服を破ってでも魔臓の位置を知ることはできた。

 理子もおそらくこれからやろうとするだろうが、それをさせないというだけの話なのか。

 オレがそんな思考をしている横で、キンジのベレッタを示すようにした理子が口を開く。

 

法化銀弾(ホーリー)――これの傷は治らないだろ? ヒルダ」

 

「……すぐには治らないというだけの事よ。当たらなければどうという事はないわ。さぁ、お父様のカタキ共――自分達のために祈りなさい。お前達4人は、今夜、死……」

 

 戦う前からベラベラ喋るのは面倒だし、相手の話を最後まで聞いてやる義理もないので、ほとんど無動作で先手必勝のクナイを額に突き刺して戦闘開始。あいつは本当に隙が多いな。

 クナイに怯んだ隙に一気に間合いを詰めた理子に続きオレも前へと出て、接近に対してクナイを引き抜いて突き出した槍を理子が髪で持つ2刀をクロスさせて受け止め、髪だからこそできる風車のような動きでヒルダの手から槍を奪おうとするが、ヒルダも背中の翼を使ってその場で螺旋に回り再び着地。

 

「ヒルダ! お前は――魔臓に頼って生きてきた!」

 

 そのタイミングでベレッタを発砲した理子は、ヒルダの右の翼の付け根に当て、それを受けた翼は酸でも受けたように銃創が広がり、すぐに回復する気配はなかった。

 法化銀弾を受けたヒルダは小さく呻くが、そこで手を緩めるわけもない。

 

「だから体の捌きが甘いんだ! ケガをしたって平気だと、高をくくってきたからな!」

 

 そんな理子の言葉が気に触れたのか、今度は槍を横凪ぎで振るって理子の首を狙うが、笑いながら足を前後に開いて体を沈め下へ躱した理子。

 その理子の上を槍が振り抜かれた後に跳躍してヒルダの頭上を取ったオレは、不用意に上を向いたヒルダの両目にクナイを打ち込んで後ろへと回り、そのヒルダの足を理子がすかさず払って転倒させると、体が倒れる方向からオレが蹴りをお見舞いし、また逆へと体を振り、そこにまた理子がベレッタで右の翼を撃ち抜いて、ボロボロになった翼をスクラマ・サクスで切断。

 

「――ヒルダ! お前はヘタなんだよ! 格闘戦がな! 京夜1人に圧倒されたのに、あたしまで加わったら手も足も出ないってのがわかんなかったのかよ!」

 

 その光景に楽しそうに笑いながら理子が口を開くと、悔しげにオレと理子から距離を取るように後退するが、そこを理子の銀弾が残った左の翼を連打し追撃。その翼膜をズタズタにする。

 

「あははっ! ヒルダ! ヒルダ! どーしたのぉー!?」

 

 そこからさらに変則双剣双銃でどんどんヒルダを押していき、壊された柩に背をつけるところまで追い詰めると、くるんっ、と前宙してスクラマ・サクスを振るい、弾痕を繋げるようにして左の翼も一閃。

 しかし翼を犠牲にしながらも理子からスクラマ・サクスをもぎ取ったヒルダは、それを第2展望台の端まで放る。

 

「……このッ……ネズミの分際で!」

 

「ネズミ? それは自分でしょー? 羽をもがれたコウモリさんは、あーらら、とっても不思議! ネズミにそっくりだ! あははッ!」

 

 だが、機動力を失ったヒルダは、容赦なく斬りかかってくる理子に槍も防御的に構えることしかできなくなっていき、ドレスもズタズタに引き裂かれていく。

 

「あははははっ! ほらヒルダ! あたしを踏んだり蹴ったりしてみろよ! 昔みたいにさァ! ほらほらァ!」

 

 ああしてドレスを体ごと裂くことで魔臓の位置を示す目玉模様を探している理子だが、改めて見る理子の本質にちょっと立ち尽くしてしまう。

 オレも大概だったと自覚があるが、笑いながらにそれを行う理子はどこか楽しんでる節があって、今まで見てきた理子が霞んでしまいそうだったが、あれも理子のプライドが高い故。

 自分を貶めてきたヒルダに対する怒りが爆発しているのだ。

 

「やッ……やめ……やめなさいッ……やめろっ……!」

 

「お前が! いっぺんでも! そう言ったあたしを! 蹴るのをやめた事があったか!?」

 

 いよいよヒルダから弱音が出始めるが、それを意に介さないで槍すら手放してしまったヒルダの庇うように動かす手もメッタ刺し。

 そこに一切のためらいもない。

 そうしてドレスなど完全に引き裂かれて下着姿にまでされたヒルダは、その体に電気を纏うように放電するので、それより早く理子の背中にミズチのアンカーボールをくっつけてオレの手元に理子を引っ張りヒルダから引き離すと、それとほぼ同時にヒルダが放電。

 引き寄せられた理子はオレに抱き止められると、足がふらつくのかそのまま寄りかかってきて、一旦倒れるキンジとアリアの元へと後退すると言うのでその通りにして体を支えて移動。

 

「……4世ィ……許さない、許さないわよ……」

 

 対してあられもない下着姿のヒルダは、放電したまま憎々しげにこちらを見ながら、槍を抱えて傷を再生させていくが、今はそれが精一杯なのかその場から動かない。

 さらにいつかの影に潜む能力を使おうとしたようだが、上手くできないようで、完全に弱っている。

 

「全部見つけたよ、目玉模様――白い肌だから、見つけ難かったけど」

 

 そうみんなに話す理子は、もうオレの支えなしでは立てないようで、思ったより毒の回りが早いようだ。

 そりゃあれだけ動けば毒が回るのも早くなるだろうが、これ以上は戦わせられない。

 そんな理子に負けまいとようやく立ち上がったキンジとアリアは、ここからどうすべきかを一緒に話し始めたのだった。

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