羽鳥の自室で2人きりになって話を始めたオレだったが、ジーサード達について知ってることを聞き出そうとしての質問に対して羽鳥が予想外の返答をしてきて困惑。
切り返しを上手くできなくされてしまった。
「お前が師団の一員じゃない、だと?」
「そうさ。私は君に、というよりエル達ほかの師団主要メンバーにもそう明言はしているが、それが真実だという保証はどこにもないのではないかな?」
余裕綽々。
開口一番でこそオレが話の主導権を握っていたが、それもたった1度の切り返しだけで逆転。
この辺は本当に人心掌握が得意な尋問科が1枚上手で厄介だ。
しかも言っていることがまた妙にリアルで、昼にオレが小鳥と幸帆に忠告したことをそのまま返された気がして面食らう。
「例えばだ。私が師団であるのが真実であるとしよう。だが同時に、それ以前から『ジーサード達の仲間』であった場合、君には私がどちらの側にいるように見える?」
「……スパイの可能性があるってことか」
「
羽鳥が言葉を連ねていく毎に、部屋の空気がどんどん重く張り詰めたものへと変貌。
挙げ句、今になって気付いたが微かに芳香剤とは明らかに違う独特な甘い匂いが部屋に漂っていた。
これが何か身体に良からぬ効果でもあればもう手遅れかもしれない。
「……と、君に良い刺激を与えたところで話を戻そうか。ちなみに正真正銘、私は師団だしジーサード達の仲間でもない。信じるかどうかは別としても、その上でここから話をしたい。それと部屋に満ちてる匂いはただの自作調合のアロマキャンドルさ。毒性は全くないから安心したまえ」
「…………もう何が嘘かもよくわからん……」
手遅れかもしれないとわかりつつ部屋のドアノブに手をかけて撤退しようとしたところで、今まで放っていた緊張感を一切無くして飄々とそんなことを言ってのけた羽鳥。本気でやめてほしい。
こいつが苦手どころの騒ぎじゃなくなりそうだが、そんな顔をしてやれば何が嬉しいのか声に出して笑ってくる。してやったりとでも思ってるんだろどうせ。
「これは近いうちにエル辺りが調べ上げるだろうけど、ジーサードに関してはそれほど調べるのは難しくないよ。なにせ彼は世界指折りの武偵だったからね」
「やっぱり武偵だったのか、あいつ。しかも世界指折りの、だと?」
「そうさ。世界にわずか7人しかいないSの上のランク……Rランク武偵の1人があのジーサードだ」
なんだかずいぶん軽い感じになって淡々と話をする羽鳥だが、至って真面目な雰囲気だけは伝わってきて不思議な感覚を覚えるが、Rランクなんてものを知らないオレはSより上と聞いても漠然としてピンと来ない。
「Rというのは、その人物達をたいてい各国の首脳や王族が専属武偵にしてしまうために『Royal』の頭文字を取ってそう呼ばれている。評価としてはSランクが特殊部隊1個中隊を相手にできるというのに対して、Rランクは1個大隊と戦えるということになってる。簡単に言えばまぁ『人間兵器』ってところかな」
「……そんなやつにこの程度で済んだのが改めて凄いことなんだなってのはわかった」
イメージがつかないオレに極端に人間やめましたみたいな例えで説明した羽鳥だが、それでなんとなくわかってしまうのだから説明上手かもしれない。
しかしそれを黙っていたことには疑問がある。それならワトソンが調べに行くこともなかったはずだしな。
「だがその情報を出し渋った理由は何だ? ワトソンが調べられることなら、なおさら隠しておく必要はないだろ」
「聞かれなかったから。なんて言ったら私がひねくれ者みたいで良い気分ではないが、実際のところ私はそれ以上にサードのことを話せない。リバティー・メイソンでは私は新人も新人だから、引き出せる資料も限られているしね。中途半端な情報を出すくらいなら、エルがよりまとまった情報を引き出してきた方が効果的だと思ったんだよ。だからフォース……今はかなめだったか。彼女が転校してきたタイミングでエルにはヒントを与えておいた。資料を取り寄せる関係で時間はかかるかもしれないが、近日中にそちらはどうにかなるはずだよ」
どこか納得しがたい部分はあるものの、羽鳥なりに考えがあってそうしていたのは今の話で理解できる。
確かにジーサードがRランク武偵だったことだけわかっても、元から危険な人物だとわかってる上に対応もそう変わらない。
リバティー・メイソンで権限が上のワトソンがそれ以上の情報を引き出せて、そのヒントも与えたというなら、オレがとやかく言う必要もないか。
「じゃあ、かなめや他の仲間についてもワトソンの方で調べられるわけだな?」
「そこはどうだろうね。サードに関しては過去に調べたが、言ったようにその程度しかわからなかったし、仲間なんて先日会うまで見たことがなかったから、サードのことがわかっても仲間まで調べられるかは私も自信はない。だがその辺は君の仕事ではないかな? 期待には応えるべきだと思うよ」
結局大した情報は得られずってところか。
正直、こいつがまだ何かを隠していそうなことは勘づいているが、嘘も言っていないことはわかってちょっと踏み込み過ぎるのをためらう。
嘘を言わないのと、本当のことを言わないのはイコールではないから、これ以上の疑惑はかえって混乱を招くかもしれないからだ。
だからこいつからは自分なりにもう1度調べて改めて情報を引き出す。それが前進するための今の最良。
「とりあえずはかなめの目的についてをはっきりさせることが先決か。仲間ともそのうち接触するかもしれないし、それまで目立たずにいければいいが……」
「それは大丈夫じゃないか。君はかなめの眼中にないし」
「何で知ってんだよ」
「サードがそんなことを言っていたからね。『フォースはやつ以外の男に興味がねェ』って。事実そうみたいだし、君に限らずではあるけど。あと、君が気絶してる時にサードが銃で2回ほど頭を撃ち抜こうとしたんだけど、君の体はおかしいね。クイックイッ避けてサードが面白がってたよ」
はははっ。
会話もお開きといった雰囲気で今後のことを話してみれば、楽観論からのこいつなりの声援が贈られるが、最後の最後でいらんことを言って椅子から立ち上がりオレの肩をポンポン叩いてから部屋を出て、ちょうど夕食の支度ができたと知らせに来た小鳥と鉢合わせてそのまま夕食に。
ジーサードのやつ、オレが寝てる時になんてことしてくれてんだ。というか見てたなら止めろよあいつも!
翌日。
金曜日となる今日は自分の目でかなめの学校生活を見てみようと、朝の登校時からそれとなく観察を開始。
甘えるようにキンジの腕に抱きついて楽しそうに話をしながら登校する姿は、本当に無邪気な普通の子に見えなくもない。
事前に危険人物だということを知らなければ、いま疑いなく仲良くしている生徒等を不思議に思いもしなかったかもしれない。小鳥と幸帆に忠告しておいてなんだが、実に上手い猫被りだ。
そんな見た目仲良し兄妹は2人の時間を長くしたいのか男子寮を出てから徒歩で最後まで登校し、ギリギリ視界に入る際どい距離での尾行をそれとなくやっていたオレだが、その間にもかなめに気付いた女子が一目散に近付いて挨拶していたりを目撃してその人気を確認。
女子ばかりなのがずいぶんな偏りだったが、男嫌いも本当らしい。
そうして特に何か起きることもなく一般教科の校舎へと辿り着き、階段の分かれ道で名残惜しそうに自分の教室へと行ってしまったかなめをとりあえずは放置して教室に向かい、いつものように授業を受けていったが、1時間目の授業が終わった頃に小鳥からメールで追加情報が届きそれを見れば、どうやら昨日報告しなかった――それほど重要じゃないと思っていたのだとか――かなめが自分に課しているルールがあるらしい。
1つ目が『他人への暴力を禁止』していること。
2つ目が『自分より強い者には絶対に逆らわない』こと。
2つ目に関しては境遇などが関係していそうだが、生き残る上では非常に合理的なものだ。
長いものに巻かれろなやり方は見た目はどうあれ悪い方向へは進みにくい。
そういった意味では実力さえあれば組み伏せることが可能だが、あのアリア達をまとめて倒せてしまうような相手にそれも現実的ではない。
そして1つ目のルールはその高い戦闘力を振るわないでくれると言っている。
何故かはわからないが、これはこちらとしてはありがたいの一言。何か面倒事が起きても強行策には出てこないということだ。
まぁ、2つ目のルールが適用されるなら、ジーサード辺りに命令されたら覆りそうではあるが、この相反するルールは少なからずかなめの力を削いでくれてるはず。
小鳥からのメールはとりあえず感謝とメールを削除する旨を一緒に返信してから、オレもメールを削除。
そこから椅子の背もたれに体重を預けて脱力した座り方をしながら、今の情報を考えた上での今のかなめの行動を分析する。
何かを企んでいることは大前提として、自分に課したルールを守る中で自分の存在を強く周りに印象付けている。
味方も着々と増えてるようだし、頭の悪い考え方をすれば武偵高の女子生徒を抱き込んで絶対的な地位を確立できたりができるかもしれないが、そんなことをしてどうするのか見当がつかない。
最も有力そうなのはこちらへの牽制。自分に何かしようものなら周りがそれを許さないという状況を完成させること。
すでに完成されつつある気がするが、ここはアリア達の報復を抑止するには結構な威力になるかもしれない。
オレとしてはアリア達の動くタイミングを遅延できるならその状況も悪くないとは思う。
度が過ぎる抑止が働くとオレにも悪影響が出かねない危険はあるが、そこら辺の対策は情報を集めた上で参謀達――ジャンヌや玉藻様――が上手くやってくれるだろう。
なんにしてもオレが正確な情報を集めなければ進展すらしない。
病み上がりでこんなに面倒なことを何でオレがやってるのかと現実逃避しそうになるが、逃げたところで後が怖すぎて退路もないのだ。やるしかない。
昼休み。
かなめのいる教室を外から覗ける場所にわざわざ移動して観察してみるが、教室で数人の女子と仲良さそうに話をしながら昼食を食べているだけで、これといった行動はしていなかった。
というか見れば見るほど呆れるくらいに普通の子を演じているので、オレですらひょっとしたらあっちが素なのではとわずかな疑問が頭をよぎりそうになる。
そんなことアリアにでも言えば「そんなわけないでしょ! バカなの!?」とか言われそうだ。
放課後。
キンジと一緒に帰るのがデフォだと思ったがそういうわけでもないようで、キンジはさっさと帰宅していき、かなめは昼休みに話していたクラスメートに加えて、別のクラスの女子と一緒にファミレスにでも行くのかゾロゾロと校舎を出てバスへと乗り込んでいき、尾行だとバレないように先にバスの最前列の席に座って、最後列でキャッキャとやってるかなめ達を窓ガラスの反射を利用してそれとなく見ておく。
昨日の様子だとキンジの食事をかなめが作ってそうだから長々と寄り道はしないはずなので、かなめ達がバスを降りてもオレはそのまま乗り続けて察知される前に離脱。
感覚的には気付かれていないが、距離感は徐々に掴んでいかないとな。今日はこんなもんだ。
そうして出発したバスの外にかなめ達が見えなくなってちょっと。
少しずつかなめの取り巻きが増えてきていることに危険な匂いを感じつつ流れていく景色に目を向けていると、歩道をトボトボと歩く桜ちゃんの姿を発見。
その姿がなんとなく気になったオレは次のバス停で降りて、桜ちゃんがこちらへとやって来るのを待ってみると、どうにも考え事をしている様子の桜ちゃんは周りをよく見ていないようで、オレが近くまで来てから声をかけるまで全く気付かず、こっちがビックリするほどビックリした顔でオレを見た。
「さ、猿飛先輩!? どうしたんですか?」
「武偵は常在戦場だぞ。こんなに接近されてたら簡単にやられる」
「す、すみませんでした……」
一応、先輩としての忠告だけはして挨拶は終わらせ、とりあえず歩きながら話をと思って桜ちゃんに歩幅を合わせておく。
「何か悩み事? 桜が気を張ってないなんて珍しいことだろうし」
「…………実は……」
と、話しやすいようにオレから話題振りをしてあげると、少しの沈黙のあとに口を開きかけた桜ちゃんだったが、何か葛藤があったのかその口を止めてその顔を俯けてしまう。
「…………人に話してどうこうなる悩みじゃないなら話すことないよ。オレも面倒なことは御免だし、聞いたからって解決策を出してあげられるとも限らない。ただ、武偵なら悩むよりまず考えて行動しなきゃダメだろ。時間が解決してくれるなんて甘いこと、そうないんだからな」
きっと桜ちゃんなりに先輩に迷惑じゃないかとか考えちゃってるのかと思って、もう話を聞くことはやめてこんなところでウダウダやってるなとちょっとした渇を入れてあげる。
どうしても女の子に甘くなってしまうから言葉がやんわりしてるのは仕方ないが、言われた桜ちゃんはハッとしたように顔を上げてオレを見ると、何か吹っ切れたのか「ありがとうございました!」と綺麗なお辞儀をしてから走って帰っていってしまった。
あんな言葉でも桜ちゃんの役に立てたなら、良かったかな。
どこからしくなかった桜ちゃんの少し元気になった後ろ姿を見送ってからまっすぐに帰宅したオレは、明日が土曜日ということでかなめを1日泳がせてみることにしてその日は終了。
体を休めるのも今は必要不可欠なので、可能な限りは休息に当てておきたいのだ。
そして翌日。
朝から寮の屋上に登って日光浴しながらかなめの外出を見張っていると、陽も良い感じに登りきりそうな頃にかなめが1人で寮から出てきてどこかへと移動を開始。
徒歩のようなのでかなめの姿がギリギリ見えなくなったタイミングで屋上からミズチを使って直接下まで降り尾行を始める。
道中、チラッと見えるかなめの顔にはゴツいサングラスのようなヴァイザーがつけられていて、耳の両側からはピョコンと猫耳のようなアンテナが伸び、時々ピコンピコン動くのが見えたが、情報では科学兵器を扱うとかあったのでその類いの物だと判断。
さらに好物なのかミルクキャラメルらしき物をすでに2つほど口に放り込んでその都度、美味しそうに食べていた。
誰も見ていないにも関わらずどこか子供のような雰囲気を持つのと、アリア達を倒したという凶暴性がイメージとしていまいち一致しないかなめに分析もちょっと捗らないが、一昨日オレに見せた顔が本性だと自分に言い聞かせて尾行を続けていくと、かなめはとある建物の近くで立ち止まり物陰へと移動。その場所は第3女子寮。
こんなところで何をする気かと用心して離れた位置からクナイの光の反射を利用しそこに映るかなめを観察。
するとかなめの制服の中からスルリとリボンのような白い布が意思を持ったように出てきて空中へと浮く。
あれも科学兵器の一種なのだろうが、どんな原理で動いているのかさっぱりわからん。
その白い布はヒラヒラと舞うようにかなめの元から離れると、女子寮の壁を登っていきどこかの部屋の窓を覗くようにしてその先端だけをちょこっとだけ出して止まった。
あれに意味があるのなら、あの白い布にはカメラか何かの映像機能がある可能性がある。じゃなきゃあの行動の意味がわからん。
そんなかなめの謎行動をうかがうこと十数分。
時刻にして正午になろうかという頃に、唐突に浮かせていた白い布がフワリと移動を開始し、すぐに女子寮の角へと到達。
壁の向こう、出入り口方面へとその先端だけ少し出して向けるので、オレも目視で女子寮の出入り口へと目を向ける。
するとその出入り口から見たことのある人物が走って出てきて、そのままオレとかなめのいる逆方向へと行ってしまうと、その姿を確認した白い布はスルスルとかなめの元へと戻って制服の中へと隠れ、ヴァイザーも外したかなめはまた1つキャラメルを口に放り込んでどこかへと歩き出していった。
いま女子寮から出てきたのは理子の元戦妹の麒麟。今は1年の火野の戦妹だったか。
その麒麟が女子寮から出てきた時に遠目ではあったが『泣いていた』のを確認したが、麒麟を確認して去ったところを見るにかなめの目的が麒麟だったことは明らか。
泣いていたことへのリアクションもなかったことから、それもある程度予測済みの可能性があるな。
麒麟との接点など皆目見当もつかないわけだが、麒麟をピンポイントで監視していたのには何かありそうなので、そちらの方に探りを入れることにして一旦かなめは放置。
というか考えてるうちに撒かれたのは内緒だ。走るのも体に悪いし。
そんな言い訳を自分にしつつ、走っていった麒麟の方を捜索し始めるが、こっちも走っていったのでどのみち同じじゃなかろうか。
そんなことを思いつつも接点のある理子経由でコンタクトを取ろうと携帯を取り出したところでいきなりその携帯に着信が入り、誰だよバカ野郎と思いながら相手を見て速攻で通話に応じる。
『今どこ?』
「第3女子寮の近く」
『……何? あなた覗き趣味でもあったの? 理子で満足できないなんて贅沢なご身分ね』
「いた場所が女子寮の近くだったくらいでオレを変態みたいに言うな。んで、ご用件は?」
『5分。第2女子寮まで来なさい』
挨拶もなし。用件すら言わずに下らないことを挟んでそんな指示をして通話を切っていった夾竹桃に、文句を言えない自分の立場を呪いながら、一見数字が並んでるから近いように感じるが実際はちょっと距離のある第2女子寮へと走らされるのだった。
結局走る羽目になる辺り、キンジの不幸スキルを彷彿とさせて嫌になるな。
それでおそらく5分以内に辿り着いた第2女子寮の前には、それを指示した夾竹桃がキセル片手に待ちわびていて、そこからさらに理子が普段使っている1011号室へと移動しそこにリビングのソファーに座ってようやく話が始まった。
「少々面倒なことになったわ」
「オレもちょっと面倒なことしてるんだが……」
「あなたの都合なんてどうでも良いのよ。要約するけど、さっきある子からメールで『嵌められた』って来てね。その原因が私にも少しだけありそうで後味悪いし、解決に協力しなさい」
「拒否権ないんだろオレには。具体的には何をすればいい?」
「聞き分けが良すぎて気持ち悪いわね。でもまぁ、従順なのは気分的に上々。メールをしてきたのは島麒麟。一昨日の夜に少し会ってあることを忠告したのだけど、その時に事故があってあの子と危ないツーショットになったのよ。その瞬間をあの女に撮られてたみたいで、それをさっきあの子の戦姉に送信されて仲違いさせられたみたい」
おっと。関係ないと思ったら意外にも繋がったな。
呼び出された時はふざけんなと思ったが、これも普段のオレの行いの良さが……言ってて虚しいからやめとくか。
しかしこれで先ほどの流れを理解できた。かなめが最初に覗いていた窓はおそらく火野の部屋で、様子をうかがい麒麟がやって来るタイミングでその危ないツーショットを送り喧嘩させた。
「どんな危ないツーショットかは聞かないでおくが、火野が麒麟を突き放すくらいに衝撃映像だったとして、問題なのはあの2人を狙ったのがかなめだってことだろ? オレには目的が見えない」
「『本丸』が違うのよ。そこを落とすにはまず周りから。あれのやることは狡猾で残酷なものよ。気付いた時には孤立しているでしょうね」
周り?
そう言われて夾竹桃の言う本丸とやらを考えてみると、ふと昨日、放課後に会った元気のない桜ちゃんの姿が浮かび、そことも不思議と結びつき本丸に辿り着いた。
「…………間宮あかり、か」