執政官アンナの溜め息   作:やーなん

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ふと、アイギスの二次創作探してみたら、全然無いじゃん!!
じゃあ俺が書いてやるよ!! と言うことで、短編集みたいな感じになりますが、手を出してみた次第です。
限られた情報から話を膨らませることがありますので、ご注意ください。

※当然ながら、作者は微課金のため、持っていないキャラが多数登場します。ご了承ください。
作者は小説版を持っていません。ご了承ください。





アンナの溜め息

 千年戦争と呼ばれる戦いから幾星霜。

 その戦いで英雄とされた存在の末裔とされる王子の王国が魔物に攻め込まれ、王都を追われて早二年。

 

 そして女神の加護と仲間達の尽力により王都を奪還したことをアンナは昨日のように思い出せる。

 あの日まで、こんなことになるとは夢にまでも思わなかった。

 

 王から信任厚い執政官だった父親の後を継ぐべく仕事を手伝いながら、漸く見習いという文字が彼女の頭から取れた矢先のことであった。

 

 不謹慎なことでは有るが、王都を取り返すべく戦った日々が一番充実していて、熱意に満ちていた。

 王都陥落以降、文官と言う文官が命を落とし、武官と言う武官が命を散らした。

 

 奪還当時、この国を治めている高級執政官は、皮肉なことに二十にも満たない小娘一人だけとなってしまったのだ。

 現状では何とか各地に逃げ延びた下級文官などを集めたり、新たに雇用したりして国内の政治は一先ずの安定を得た。

 

 アンナはそれが全て自分の手腕だとは思っていなかった。

 今は未曾有の戦時である。戦時だからこそ、飲み込める不満もある。だから一見表層は穏やかに見える。

 

 そして現在、この国を治める王子の威光による所も大きかった。

 王都奪還以来、彼が率いる手勢は次々と魔物の軍勢を相手取り、打ち勝ってきた。

 

 その実績と、英雄の末裔と言う希望が皆の口を塞いでいる。

 

 

 戦いが魔物対国家の戦争から、魔物対人類種の生存競争へと移行しつつある現在。

 人々は輝ける太陽のような英雄を欲しているのだ。

 

 

「失礼します、王子。

先日の采配による各軍の経過報告に参りました」

 執務室の扉を叩き、アンナは促されるままに中へと入った。

 

 彼女が室内に入ると、書類仕事をしていた王子は手を止め、彼女へと視線を注ぐ。

 

 

「まず、急務であった水軍の編成についてですが、やはり不満に思う者が多かったそうです。

各軍師たちとの協議の結果、演習を行い不満を解消するべきだと結論を頂きました。

つきましては、こちらが想定される予算と日程の概要になります。よろしいでしょうか」

 アンナはそう言って、書類の束を差し出す。

 王子はそれに目を通すと、ゆっくりと頷いた。

 

 魔物の軍勢により危機に陥る国は後を絶えない。

 砂漠の国や東国などの海を越えた遠征の経験から、強力な水軍の必要性を再認識したのだ。

 また、今後同じように他国から救援を願われる事もありうる。精強な水軍の編成は急務だった。

 

 先日王国に落ち延びてきたリーンベル提督の下、水軍は形になりつつあった。

 だが、それを面白く思わない者たちもいた。

 

 元々王国軍の傘下として治めていた海賊たちである。

 王国軍は彼らを水軍代わりとして使っていたのである。

 先の国々の遠征の成功は、彼らの存在なくしては語れない。

 

 

 だが極めて論理的で洗練された用兵を行う元軍人のリーンベル提督と、伝説の海賊と謳われるミネルバを頭目とした海賊たちとは気質がまるで違ったのだ。

 

 両者の決定的な不和になる前に、不安の種を取り除かなければならないだろう。

 協議の結果、演習でもしてお互いの力量を測りあえばおのずと決着が付くだろうというものだった。

 

 それに納得した王子は頷いて次を促す。

 

 

「続いて、新設した天馬騎士団についてです。

団長に推薦したエスタさんは団員達を取りまとめ、上手く統率しているようです。

特に問題らしい問題は発生しておりません」

資料をめくり、アンナは次の案件へと移る。

 

「この調子ならば、すぐにでも実戦投入も可能とのことです。

まずは小規模な戦闘で投入し、経験を積ませてから前線で活用しようと言う運びとなりました」

 新設したばかりの天馬騎士団は具体的なノウハウに欠けていて、個人単位でならともかく、集団での運用は不安があった。

 その辺りは新団長のエスタが王国軍に志願するまで実戦経験の皆無の素人だったことも拍車を掛けた。

 

 ところが、彼女は王国軍の中でめきめきと頭角を現した。

 ついこの間までお淑やかな貴族の令嬢であったことなど嘘のように、その実力を発揮したのだ。

 その才能は他者への指導や指揮にまで及び、将来的には高い殲滅力を誇る主力部隊になることを予見させた。

 

 

 ほかにもいくつかの定期報告を伝えて、各軍の報告を終えた。

 このように、王都の復興や内政を他の経験のある者や若手に任せ、王子の軍務の補佐や周囲との調整がアンナの主な仕事であった。

 

 

 

「続いて、緊急性の高い陳情に付いて述べさせて頂きます。

我が軍の指揮下にある山賊さんお部隊のいくつかがトラブルを起こし、民から苦情が来ています」

 その報告に、王子は顔を顰めた。

 

 今の王国軍と山賊たちとは、斬っても切れない関係があった。

 魔物の侵攻によって王都から落ち延びた際、彼らを味方に付けられなければ自分達が野山で骸を晒していたのは想像に難くないからだ。

 

 こうして王都を奪還した現在、親交を深めた彼らには略奪をやめる代わりに仕事を与えていた。

 有事の際の徴兵、魔物たちからの行商人の護衛や周辺の警戒などである。

 

 

 しかし、生粋の山賊である彼らは、街中でも粗野でみすぼらしい格好を止めないのだという。

 もうこっちの格好じゃなきゃ落ちつかねぇぜ、とは彼らの談である。

 

「このままでは風評や軍内の風紀に関わるとのことですが」

 と、アンナは述べたが、彼女には王子がどのように答えるか分かりきっていた。

 

 

 コンラッドに話をつけよう、彼はそう言った。

 

「了解しました。

日取りの調整はこちらでやっておきます」

 王子は山賊たちに理解を示していた。

 それはアンナも同じだった。伊達に同じ釜の飯を食べていない。

 

 彼らは生粋の山賊たちだ。

 例え世の中が平和になって、争いが無くなったとしても彼らは山賊の道を選ぶだろう。

 

 彼らはそれ以外の生き方を出来ない、生来のはみ出し者たちなのだ。

 そんな彼らを取りまとめる人間に話を付けるのが一番だと彼は結論を出した。

 

 山賊王の称号を持つ山賊の中の山賊、コンラッド。

 山賊の中から三十年に一度選ばれると言う山賊の覇者だった。

 往年のカリスマを誇った彼が任期を終えて求心力を失った際の騒動はアンナにして溜め息が禁じえない騒動だったと記憶している。

 

 とは言え、将官待遇で彼を味方にしているので、こういうときに働いてもらわねば困る。

 

「報告は以上になります」

 後の細かい問題は書面で渡し、アンナは退室を促され、一礼の後に部屋からでた。

 

 

 

「はぁ……」

 思わず溜め息が漏れる。

 最近、彼女は彼とこのような事務的な会話ばかりしか交わしていなかった。

 

 王国軍は勝利を重ねるうちに協力者を増やしていき、その人材の幅は贅沢なことに幅広すぎている。

 アンナも気づかぬうちに肥大化していた王国軍の人材を、彼女は使いこなしているとは言えなかった。

 

「あ、アンナだ」

 王城の廊下を歩いていると、曲がり角から見知った顔が姿を現した。

 

「ねぇ、王子は今空いている?」

 彼女はクロエ。堕天使だ。

 黒く染まった翼と頭上の輪に幼い見た目で扇情的な格好でリンゴをかじりながら宙に浮いて移動していた。

 

 彼女が王城内で遊んでいる。

 これだけで城内の混沌さを表しているようだった。

 

「クロエさん、王子はいま執務中でして……」

「えー……じゃあもういいや」

 アンナはそれだけ答えると、気まぐれな彼女はあっさりと向こうへと行ってしまった。

 

「はぁ……」

 彼女は王子に請われればいつだって戦場に赴くが、平時はあの通りだ。

 彼女のような優れた人材を王城内で遊ばせていることに、アンナは己の未熟さが嫌になる。

 

 とは言え、気まぐれな彼女をどのように活用すればいいのか……。

 

 

「失礼、アンナ殿。王子は執務室でしょうか?」

 そんなことに頭を悩ませていると、衛兵の一人が駆けて来た。

 

「はい、どうかしましたか?」

「魔物に攻め込まれているという国の方の使者が面会を希望しているのです」

「わかりました。私が案内します。来賓室にお通しください」

「了解です」

 衛兵は敬礼して去って行った。

 

 

 

「……また遠征費について財務官に説明しなければ」

 最近部屋に入るだけでしかめっ面をしてくる財務官の表情を浮かべながら、アンナはもう一度ため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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