アルケミはコリン覚醒させたばかりだし、エンチャッターとか魔法都市クリアする前に出て来いよ!!
前はアニエス引いたし、何でか自分は特殊なユニットに好かれるようです。
まあレダちゃん引いたし良いか、と思ってた矢先にゴールドラッシュのコンプ報酬になり白目の俺王子。
「はぁ……」
アンナは今日も届いた陳情に目を通し、溜め息を吐いた。
「お疲れでしたら、少し休まれてはいかがでしょうか」
「アイリーンさん、そうも行きません」
偶々彼女にお茶を入れに来たメイドのアイリーンに、アンナは無理に笑って見せた。
「山賊たちの素行についてですか?」
「ええ、まあ……」
王子が山賊王コンラッドに話をつけたのだが、言って聞かせて簡単に行動を改める連中ではない。
暫くしたらまた別の形でトラブルが続出し始めた。
「扱いにくい人たちですが、距離を置くわけにも行きません」
「彼らの重用しないという選択は取られないのですね」
「同じ王国軍の仲間ですから」
アンナは彼らを無碍に扱おうとは思わなかった。
彼らは無法者だが、お互いに恩義を忘れていないうちはより良い関係を維持しておきたかった。
「甘いのですね」
アイリーンはそれが損得ではなく感情で言っていることを悟っていた。
「僭越ながら、私見を述べさせてもよろしいでしょうか」
「ええ、構いませんよ」
裏社会を統べる闇ギルドのギルド長に仕えていた彼女の意見なら参考になるかもしれない。
アンナはそう思って頷いたのだが。
「略奪などを全面的に禁止させているようですが、山賊相手にそれは悪手です。
根絶させないのならば、連中は悪影響を及ぼす脅威でしかありません」
彼女はばっさりと、王国の方針を否定した。
「権力で抑えつけたとしても連中は従いません。
それに連中を従わせようなどと、荒野に種を蒔くようなものでございます」
「ではアイリーンさんなら、どうしますか?」
「私ならある程度目こぼしをして、略奪を許可します
その代わり各集団ごとに縄張りを決めさせ、一定の割合以上の略奪させないよう徹底させます。
山賊が山賊らしく振舞えば、住人たちも彼らを恐れ文句など垂れないでしょう」
「…………」
それはまさしく、裏社会らしいやり方だった。
「なるほど、しかし私達にそれは出来ませんね」
「はい、英雄である王子が取るべく選択では有りません」
山賊の跋扈を許すことは、即ち王国軍の、ひいては王子の威信に関わる問題だ。
ましてや、英雄たる王子が山賊に略奪を許すなど、有ってはならない。
「原因は二つ。山賊たちが素行を改めるつもりが無いこと。
そして、住人達がそんな山賊たちを舐めているということ」
「え……」
「でなければ、こんなくだらない内容の陳情などこないでしょう」
アンナは陳情書に目を落とす。
そこには山賊たちが臭いだの、品の無い言葉を投げかけてくるなどという内容も含まれていた。
暴力沙汰も無いではないが、そう言った重要な事は殆ど見かけない。
「この件はわたくしに任せていただけないでしょうか」
「……アイリーンさんが、ですか?」
アンナは彼女に視線を戻した。
目を伏せて僅かに俯くその口元には笑みが有った。
「やりかたなど、いくらでもあるのですよ」
それは、決して王子には見せないゾッとする笑みだった。
「……わかりました。
アイリーンさんにお任せします」
そこはかとなく嫌な予感がしつつも、アンナはそう言ってしまった。
「仰せのままに」
深々と、アイリーンは一礼する。
数日後、山賊たちが王都内で警備兵と騒乱を起こしたという報告が入り卒倒しそうになったアンナだった。
「……流石にこれはやりすぎではないですか」
先の騒乱で死傷者こそ居ない者の、怪我人は双方軽く十名を超えた。
しかし偶々、偶然、視察に訪れていた王子が事態を収めたため、死人は出なかったのだ!!
それ以来、ぱったりと住民たちから山賊たちに関する陳情は途絶えてしまった。
「住人達にも分からせる必要が有りました。
山賊は所詮山賊であり、首輪を付けられていても噛み付くケダモノである、と。
彼らは王子の威光にひれ伏してはいるものの、いつ牙を剥くか分からない無法者であるのだと」
「治安が悪くなりますよ」
「元々治安が荒れるほど、王都内に山賊を入れさせてはおりませんでしょう。
それに、彼らの締め付けは確りと。そも、手綱を握っていなければこんなことは出来ません」
何食わぬ顔で、アイリーンは嘯いた。
確かに住人達と山賊が乱闘になれば、目も当てられない惨状になっただろう。
「勿論、山賊たちの方にも最低限衛生的な生活を徹底させます。
そしてせめて街中では砂漠の国のような格好をさせるようにさせましょう」
住人達も不衛生なら不満は出るだろうが、異文化の服装の人間相手には口も噤むだろう。
遠くの国の人間に見える奴ほど面倒なものはいない。
「なるほど、これが裏のやり方ですか」
「失礼ながら、執政官殿は多少はこのような手管を知るべきでございます。
貴女の若さと立ち位置を気に入らぬ者など、いくらでもいるのですから」
「……肝に銘じておきます」
アンナは冷や汗を掻きながらも、心の中で溜め息を吐くのだった。
あくる日、アンナは訓練場に向かっていた。
来客がそこで待っているとのことであったのだ。
すると、そこはアイリーンが盗賊たちの動きを見ていた。
「なっておりません。なっておりませんとも」
と、彼女は盗賊たちにダメだしをしていた。
王国軍に参加している(雇用しているわけではない)盗賊たちは自分の腕を売りに来ている。
彼らはその手癖の悪さで敵から命すらも盗んでしまう。
とは言え、正式に訓練を積んでいる者も少ないので、彼女には個々に荒が見えるらしい。
新参者にも関わらず、護衛も出来る女官としての腕を買われた彼女は数多の戦闘技術を有する。
暗殺も、そのうちのひとつなのだろう。
彼女は何気ない動作で訓練用の木人の頭部にナイフを突き刺していた。
その鮮麗された動きに皆がぽかんとしていると、彼女がアンナに気づいて歩み寄ってきた。
「差し出がましい真似をしました。
余りにもなっていなかったもので」
「いえ、戦闘技術に関して私が言えることは何も無いので……」
専門外なのでアンナが彼女に言えることは何も無かった。
「ところで執政官殿。何ゆえにこのような場所に?」
「来客の方がこちらにいらっしゃるそうなので、出向いたのです。
海賊の方なのでこちらで射撃の練習をしながら待っているそうです」
「海賊、ですか」
何か含みを持たせた言葉に、アンナはどうしましたか、と尋ねた。
「いえ、王子が我々のような者の為に居場所を作ってくださるのは個人的にもとても喜ばしいのです。
しかし、それだけに彼らのような者たちがいるために王子の道が阻まれるようなことがあってはならない、と」
そう言った彼女の目は、何かを決意したようにも見えた。
ダァァン、と銃声が轟く。
それとほぼ同時に遥か遠くにある円形の的の中心部に穴が穿たれる。
通常の銃の射程を超えて標的に弾丸を命中させるその技術は彼の腕を物語っていた。
「また命中!! さすがアニキだぜ!!」
彼の傍らに立って沸き立つのは子分である海賊マウロだった。
「ジョヴァンニさん。相変わらずすごい腕ですね」
そこにやってきたアンナがその見事な射撃の腕を賞賛した。
「これぐらいたいしたことねぇよ」
褒められた当人は鼻を擦って照れ隠しをした。
彼ら二人は定期報告の為にわざわざ陸へ上がって来たのだ。
「海の様子はどうですか?」
「最近は魔物より同じ海賊の相手をする方が多いぜ。
南方諸国は海に面している場所が多いからよ、水運の方が効率的で儲かる。
魔物を見なくなったのを契機に商船を襲う輩が増えて来やがった」
忌々しそうにジョヴァンニは吐き捨てた。
彼らは誇り高い海賊だ。
抵抗しなければ命を奪ったりしないし、破産させるほど奪いはしない。
縄張りの間くらいは護衛をする気概を見せる。場合によっては交易すらするだろう。
だが、海賊の流儀を知らない連中は積荷を根こそぎ奪う。
そうなると商人たちは武装し、海賊と戦えると思ってしまう。
その結果、双方に犠牲を出すと言う悪循環が生まれるのだ。
そう言った連中の存在は彼らにとっても喜ばしくはない。
今まではその手の連中はのさばらなかったのだが、南方諸国の海軍は魔物たちの策略によって紅の海賊ことベアトリカたちと前面衝突し、双方に互いの損害を出したという事件があった。
今思えば、南方諸国の海軍は大陸でも屈指の存在であった。
魔物たちはそれを邪魔に思ったのだろう。お陰でまともに機能する水軍や海軍は殆ど無い。
だからこそ、海賊に助力を求めるような事態に王国軍はなっていたのだが。
「リーンベル提督との連携は上手くやれていないそうですね」
「ああ、俺達はああいう手合いとは上手くやれねぇよ」
ジョヴァンニは渋面になって答えた。
「俺達のやり方にいちいち口を出してきやがる。
やれ略奪はするな、やれ統率が取れてないだの……。
ミネルバの姐さんは静観してるが、ベアトリカの姉御はそのうちぶちギレるぜ」
そうなると誰かが血を見なければ収まらない、と彼は目で語っていた。
「わかりました。王子にはそう伝えておきます」
どの道、予定している演習の後は王子に骨を折ってもらう予定だ。
どのような水軍を目指しているか、それは王子にしかわからない。
彼女達と顔を突き合わせてどんな折衷案を出すか、彼が決めることだ。
そうして情報交換と報告を終えると。
「そうだ、もう暫くここで撃っててもかまわねぇか?
ここ最近は皆ぴりぴりしやがって海の上じゃ銃の一発も撃てねぇ」
「ええ、構いませんよ」
このままじゃ腕がさび付いちまう、と笑うジョヴァンニにアンナは快諾した。
早速銃を的に向けて発砲。
小指ほどの大きさに見える的に見事命中した。
アンナがその腕のよさに感心していると。
「失礼ですが、少しよろしいでしょうか」
ふと、いままで静かに侍っていたアイリーンが口を開いた。
「差し出がましいとは思うのですが、その銃の発砲音に少しばかり違和感を覚えました。
少し見せてもらってもよろしいでしょうか」
「えっ」
アンナには彼女が何を言っているのか分からなかった。
「銃は種類や使用する弾丸ごとに発砲音が異なるのです。
見た所年季が入っているご様子。手入れだけでは限界がありましょう。
差し支えなければ、ですが。多少の整備の心得もありますので」
「……ああ、いいぜ」
ジョヴァンニは少し考えた後、彼女に愛銃を手渡した。
「嘘だろ、アニキが銃を他人に触らせるなんて……」
それを見ていたマウロが目を剥いて驚いていた。
「よく手入れが行き届いているようですが、一部のパーツにガタが着ておりますね」
どこからか工具を取り出し、手際よく銃を分解していくアイリーン。
ひとつの銃が何十というパーツにばらされているのを眺めていると。
「いくつかの銃工房との伝が有りますので、よろしければパーツを取り寄せましょうか?
旧式の銃なので最新のパーツなどもご所望であれば精度を上げることができると思いますが」
「いや、今までもままでいい。
だがやっぱりガタがきてやがったか。的の中心に中らないから変だと思ったぜ。
……頼めるか?」
「はい」
細かい部品などを布で拭き終えると、アイリーンは最初と同じように銃を組み立て直した。
見事な手際過ぎてアンナは開いた口が塞がらない。
「世話になったな」
と言って、ジョヴァンニたちは帰っていった。
「詳しいんですね、アイリーンさん」
「メイドのたしなみでございます故」
メイドって何だろう、アンナはそう思った。
「うーん、どうしましょう」
あくる日、アンナは資金繰りに悩んでいた。
戦費に当てられる予算は限られている。
足りない分は節約したりしてどうにか賄うのもアンナの仕事のうちである。
王子は魔物が現われれば自ら陣頭指揮をとって敵と相対する。
英雄としての姿勢はすばらしい物なのだが、流石に彼一人で行かせるわけもいかず、軍を動かすことになる。
となると金が掛かる。やたらと掛かる。
王子の近衛となる一騎当千の猛者たちは十数名で千の妖怪たちをも撃退した最精鋭だが、当然彼らだけでは軍隊とは成り立たない。
例えば、騎兵で町を制圧することは出来ない。
更に言えば兵がいなければ拠点を維持できず、拠点が無ければ軍は立ち行かない。
十数人で魔物の軍勢を撃退できても、結局人々を安心させるのは常住している身近な警備兵なのだ。
王子が出陣している以上、半端な数では体面の問題もあるし、何より彼が危ない。
行く先々によって連れて行く人数を細かく計算するのも、アンナの主な仕事であった。
だが、そうして最低限の人数を厳選しても、今月の予算では行軍が立ち行かぬ計算が出たのである。
財務官は今月はもうびた一文出さないという態度で、追加予算は期待できない。
「お困りのようですね、執政官殿」
「ッ!? あ、アイリーンさんですか」
余程集中していたのだろう、アンナは自分の執務室に彼女がいるのを気づけなかった。
テーブルの隅には冷め切ったお茶が置かれていた。
彼女はそれを回収して、新しくお茶を入れ直す。
「わたくしでよければ、資金調達をしてきてまいりましょうか?」
「非合法な手段はやめてくださいね」
「かしこまりました。
無論、外部に借りを作るような真似もいたしませんし、後腐れが残るようなこともございません」
そう言ってスッと立ち去っていくアイリーンの後姿を見て、アンナは早まったか、と思うのだった。
その更に数日後、アンナの元に各地の富豪や商人たちから多額の援助金の申し出が殺到した。
一体どういうカラクリなのか、問いただそうとアンナは彼女を探していると、その後姿を発見した。
「え……」
廊下を歩く彼女のポケットから、ポロリと不自然に巾着袋が落ちたのを示し合わせたかのように見覚えのある少女が拾って持ち去って行った。
アンナはその少女を追いかけ、声を掛けた。
「レダさん」
アンナの声に、ビクン、とシーフの少女は反応した。
「や、やぁ、アンナじゃん。
私なにも悪いことしていないよ。王子に誓って人様から盗んだりしてないって!!」
「本当ですか? アイリーンさんに仕事を頼まれたりしたんでしょう?」
先ほど拾った巾着を背中に隠し、ぎこちない笑みでレダは後ずさる。
「ホントホント、あたしらの情報網には隠し財産とか持ってる金持ちとかの話が幾つもあってさ。
その中から確かだけど手が出しにくいところの情報を売っただけだって!!」
彼女は腕を売りに来た盗賊と違い、専業の泥棒なので実力ではなく情報を王国軍に卸しに来たりしている。
有益な物もあるので、王子は今までのことは目を瞑るらしい。
「……わかりました。
これからも各地の情報をお願いします」
「うん!! じゃんじゃん仕入れておくから、待っててね!!」
そう言ってレダはそそくさと立ち去って行った。
途中で我慢できずに巾着の中を確認したのか、うひひ、と笑い声まで聞こえた。
「頼もしいのは確かなんですが、頼もしすぎてなんというか……」
アンナは気を取り直して、次の遠征の予定を組むべく踵を返した。
その日の午後に、アイリーンから忍者たちを警護に使うだけなのは勿体無いと進言されるのだが、そんなことはしるよしもないアンナだった。
個人的に、アイリーンという裏社会に精通する人材を得たのはすごく大きな影響だと思うのです。
為政者が無法者たちに手を焼かずにすむというのはかなりプラスですから。
ちなみに、作者は彼女見たいなメイドが大好きです。