ある哺乳類職員の一日   作:C-K

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 風邪を引いた頭で書いた。後悔はしていない。


番外編:ある哺乳類学生の1日

 その教室は静寂に満ちていた。

 

 

 

 正確にいうのであれば、こそこそとした話し声は三人分聞こえてくる。それ以外の人間が沈黙を保っているだけだ。

 

 例えば、教室に揃っている生徒が受験や進学を控えた最上級生ならば、この沈黙も納得出来るだろう。

 

 だがこの教室を満たしている生徒は、つい今し方入学式を済ませたばかりの新入生である。

 

 世間一般的に合わせるのであれば、隣近所の席の者と挨拶を交わし、親睦を深めたりするのであろう。

 

 ……が、ここには席の大半を埋める女生徒たちの興味を一心に集める存在がいた。

 

 ――『IS(アイエス)学園』――

 

 社会に女尊男卑の風潮を広めた兵器、その取り扱いを学ぶ学園。

 

 今年度の新入生の中に混じっていたのは、前代未聞の男性適応者二名であった。

 

 

「さっきから女子の視線がもの凄いんだが……」

『この環境は危険ですね』

「そうだね」

 

 教室の中央。最後尾と前の席に陣取っている二人。女子の五感はそこに向いていた。

 

『一夏様の無意識な毒牙に掛かる獲物が大量ですね』

「ちょっ、どういう意味だよ……」

「にぶちんな一夏への正当な評価なんじゃないかなあ」

 

 そこから聞こえてくる会話は三人分。男子二名と涼やかな女性の声。それだけでも首を傾げる事態なのだが、問題は別にあった。そこへ眼鏡をかけた教師が入室する。

 

「はい皆さん、入学おめでとうございます。このクラスの副担任を勤める山田麻耶です」

 

 にこやかに、それでいて凛とした教師の態度に生徒たちは頼もしさを感じた。しかし、そんな期待とは裏腹に、教師山田麻耶の内心は嵐が吹き荒れていた。

 

 具体的に表すと、今まで写真等で姉弟の仲睦まじい姿を見せられ「まっさか~」と半信半疑だったが、眼前に広がる光景に驚愕を隠しきれない。

 

 教壇に立てばいやでも目に入る、教室中央最後尾を占める灰色の巨体。大きく左右に広がる耳に口元から伸びる白い牙。何よりも特徴的な長く伸びる鼻。どこからどうみてもゾウそのものである。

 

 さらには人語を不自由なくあやつり、謎の女性の声もそのゾウから発せられていた。彼(?)がISを起動させた二人目の男性(おす)適応者である。

 

 織斑家からすれば普通でも、その他の生徒や教員からすれば信じがたい光景であることを彼等は理解していない。

 

「え、えーと。まずは皆さんにそれぞれ自己紹介をしてもらいます。まずは織斑君、お兄さんの方ですね。お願いします」

「うえええええぇっ!?」

 

 出席番号をすっとばした突然の指名に織斑一夏は悲鳴を上げた。

 実のところいい感じにテンパっている山田教諭も、ついつい灰色の巨体に気を取られて、その前にいる男子生徒にしか視界に入っていなかったのである。

 

「わくわく」

『わくわくですね』

「なんで二人して期待の眼差しでこっち見てんだっ!?」

 

 背後の巨体からの生暖かいアイコンタクトに抗議の声を上げる一夏。同時に周囲から降り注がれる視線の数々。「うっ」と呻いた一夏は前に向き直ると咳払いを小さく一つ。

 

「何の因果かISを起動させてしまいました織斑一夏です! よろしくお願いします」

 

 背を伸ばしてビシッと言い切る姿に、続きを気になる女生徒からの好奇心が寄せられる。……しかし。

 

「──以上っ!」

 

 あまりにもあっけない終了に肩透かしを食らい、ガタタッっとずっこける一同であった。

 その直後、パカーン! という音とともに一夏の前頭部に投擲された出席簿が突き刺さる。首からグキッという音を鳴らし、吹き飛ばされかけた一夏は背後にいたゾウの鼻にやんわりと受け止められた。ちなみに出席簿はヨーヨーの如く、投擲した加害者の元へ戻っていく。

 

「自己紹介もまともにできんのかお前はっ!!」

 

 長身の凛々しい女性が紺のスーツを纏って入室してきたところだった。主役級の登場に感極まって黄色い悲鳴を上げようとした女生徒に対し、このクラスの担任を務める織斑千冬は。

 

「ああ、ここでアイドルのコンサート会場のような叫びを上げる奴がいたら、容赦無く校庭を20周ほど走ってもらおう」

 

 と、猛禽類のような視線で威嚇。

 震え上がった女子たちは行動を起こそうとした姿勢のまま恐怖で硬直した。

 

「……あのぅ、姉さん?」

「織斑先生と呼べ」

 

 挙手のつもりで鼻を上げたゾウに、ぶっきらぼうな教師の通告が重なる。ある意味恐ろしい会話が交わされ、教師1名生徒2名以外はいがらしゆみこ調驚愕の表情で固まった。

 

『今の一撃で一夏様が昏倒しています』

「叩き起こせ」

『了解』

 

 これまた事務的な女性同士のやり取りの後、眩いスパークが一夏に一瞬だけ降り注ぐ。

 

「うぶぶっ!?」

 

 痙攣しながら起き上り、正面に立つ女性教師を見た一夏は硬直した。

 

「なんで千冬ねえがここにっ!?」

「織斑先生、だ!」

 

 再び振り上げられた出席簿で凶悪な一撃を食らい、机に突っ伏す織斑一夏。腕組みをして溜息を吐いた織斑千冬は、弟の後ろで楽しそうに耳をパタつかせているゾウを促した。

 

「お前もとっとと自己紹介を済ませろ」

「はーい」

 

 床へ直に座っていた下半身を浮かせ、本来の四足歩行で立ち上がったゾウは鼻を使って恭しく頭を下げた。

 

「何の因果かISを起動させてしまったその2、織斑グレイと申します。好きなものは野菜とか果物とか。どうぞよろしくー」

 

 前の席で突っ伏す一夏を鼻で指し「これの愚弟でーす」とも付け加える。

 ついでに右側の牙を前に出し「これが僕の専用ISパンドラです」とも付け加えた。

 

『私はパンドラ。グレイ様(マスター)のパートナーで何の変哲もないISです』

 

「「「「「「「「「「「「うそをつけえええええええええええええっ!!?!」」」」」」」」」」」」

 

 今まで沈黙を保っていたクラスメイト(-4人教師含む)が我慢できずに一丸となって突っ込みを入れた瞬間であった。

 

 

 

 

 

────続かない。




オリキャラ紹介

※織斑グレイ、♂、ゾウ、織斑家末っ子
 世界で二番目にISを起動させ、兄弟でIS学園に入学した不可思議なゾウである。

※パンドラ
 束がグレイの為にお遊びで作り上げたIS。何の因果か突然変異を起こし、喋れるように変化した。ISの形態はビックモス(ビーストモードオンリー)である。 
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