ある哺乳類職員の一日   作:C-K

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ある哺乳類職員の3日目

 

 私はパンドラ。

 

 竹馬の友である“比類無きゾウ”で在らせられるマスター・グレイに仕える、従順な執事長であります。

 

 マスターは素晴らしさと御優しさとドウシヨウモ無いのんびりさを併せ持つ至高のお方です。

 

 400字積め原稿用紙に厚さ60cmくらいで賛辞の言葉を送りたいのですが、とりあえず自重致しまして。

 

 

 事の起こりはある日の早朝。

 

 毎日の日課である、新人達の後ろを20kmも追って行く訓練を終えたマスターが。

 

 朝食のキャベツ8玉と人参60本に舌鼓を打っている時でした。

 

 

「パ~パッ、海鳴行こうっ!」

 

 誘拐事件の当事者になれそうな、可愛らしいおめかしをしたヴィヴィオ様がやってこられたのです。

 

 私服姿の疲れた顔をした高町なのは様を引き連れて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★  ある哺乳類職員の1日  Ver.3 ★★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 わお~ん

 

 ぱおお~ん

 

 くぅ~ん

 

 ぱおぱお

 

 わおわぅ

 

 ぱおぱお~ん

 

 わんわんっ

 

 キシャアアアアアアアアッ

 

「何を意味不明な会話をしてんのよアンタわっ!!!」

 

 すっぱ────ん

 

「せっかく久し振りの邂逅の喜びを分かち合っていたのに、酷いよアリサ」

 

 バニングス家の飼い犬達に囲まれたマスターは、引っ叩いたハリセンを持つアリサ様に抗議します。

 

「出掛けるから9時半までに準備しなさいって、言ってあったでしょう!」

 

「だって玄関前で待っていたんだよ。でもねー……」

 

 マスターの視線がデバイスである私に注がれます。

 

『只今の時刻は0947となっておりますよ。アリサ様』

 

 一瞬面食らった様に呆けたアリサ様の顔が羞恥に真っ赤になり、ハリセンが振り上げられ。

 

「──っ、一言言いに来るとかあるでしょう!!」

 

 すぱぱぱぱ──ん

 

『何故私が叩かれなければならないのでしょう?』

 

「自分で考えなさいっ!」

 

「『ごめんなさい……」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、結局なのはちゃんを四次会まで付き合わせたんだねー」

 

「なんかずっとシャマルさんの愚痴ばっかり言ってたわよ」

 

 昨夜は三人でお楽しみでしたね。

 

 ぐでんぐでんに酔っ払って帰ってきましたアリサ様の言えることではないと思いますが。

 

 「ひょうはほほええ(きょうはここでねる)ぅー」と言ってマスターの鼻から離れようとしなかったのに、翌日はケロリと平常運転という人体の神秘ですね。

 

 

「なのはちゃんは主治医のシャマルさんからドクターストップ掛かったからー」

 

『仕事が生きがいですからね、高町様』

 

「一度記憶喪失になって9歳に退行すればいいのよ、なのはってば」

 

 

 さてアリサ様と小声で会話をしながら街中を移動していますが、すずか様と 高町様との待ち合わせは人通り多い繁華街です。

 

 そろそろ私とマスターは念話主体に移行しなければなりません。

 

 さすがにバニングス家でゾウを飼っているのは海鳴では周知の事実ですが、繁華街には海鳴以外から来る人も居ますから、ゾウが喋ったら大騒ぎになってしまいます。

 

「こればっかりは用心しなさいよ」

 

(『承知しております』)

 

(ぱおぱお)

 

「合点承知!」

 

 すっぱ──ん!

 

「逆じゃないのよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううぅう~う~~」

 

(いや、ヴィヴィオ。 そんなに警戒しなくても)

 

 特に遅れもなくすずか様、高町様、ヴィヴィオ様と合流し。

 

 ヴィヴィオ様の服を見繕うという目的で移動を始めたのですが。

 

 

 途中マスターが、

 

 階段で飛行魔法を使おうとしたり、

 

 落し物を拾って落とし主に声を掛けたり、

 

 ナンパを追い払おうとしつこい男を握りつぶそうとしたり、

 

 迷子を見つけ、「お母さんいっらしゃいませんかー?」とぶら下げたり、

 

 車に轢かれそうな子猫を助けるために逆に車がスクラップになりかけたり、

 

 幾多の試練を越え、やっとデパートまでたどり着きました。

 

 

 その間、アリサ様にマスターが幾度と無くハリセンで叩かれたので、ヴィヴィオ様がディフェーンス、ディフェーンスと警戒するようになってしまいました。

 

「なのはー、アンタ自分の子くらいなんとかしなさいよー」

 

「にゃはは、無理」

 

「丸投げっ!?」

 

 余程睨みつけられているのに辟易してきたのでしょう。

 

(別に痛くないんだけどなー)

 

「グレイ君、昔からアリサちゃんにあれで殴られてたもんねー」

 

(愛の鞭がボクに人の常識を思い知らしめたんだよ)

 

「学習してないでしょうがあアンタはぁっ!!」

 

 すっぱ────ん!!

 

 恭也様のような鋭い一撃がヴィヴィオ様のディフェンスを抜けマスターに突き刺さりました。

 

 まあ、面の皮の厚いマスターの事。

 

 この程度は唯のじゃれあい程度に過ぎません。

 

 

 ── しかし、

 

 

「パパをいじめちゃダメェッ!!」

 

 街の一角にヴィヴィオ様の声が響き渡り、周囲が静寂につつまれました。

 

 

「……え”? な、なによこの空気…………」(← 金髪(・・)女性のアリサ様)

 

「ア……アリサちゃん……」(← 紫髪女性のすずか様)

 

「あっちゃ──」(← 茶髪女性のなのは様)

 

「むむうぅう~ぅ」(← ゾウを背中に庇いアリサ様を睨む、金髪(・・)少女のヴィヴィオ様)

 

「?」(← よく分かっていないマスター。つまりゾウ)

 

『…………』(← すでにフォローのし様が無いので沈黙した自分)

 

 

 

 ── 衆人観衆の白い視線が一斉にアリサ・バニングス様に集中致しました。

 

 

 

 

 

 

 すずか様からの情報によると我々がミッドチルダへ帰った後も、自室に閉じ篭ったまま姿を見せるまでに数日を要したそうであります。

 

 

 どっとはらい

 




しつこいようですが実際これを書いたのは3年ほど前でございます。
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