前回カツ丼さんがでるところまでいきたいと言いましたが、結局行きませんでした。
ていうことで始まります
「もういっこ、カン! ツモ。嶺上開花 断么九 対々和 三暗刻 三槓子。16000」
「ギャー!」
オーラス。南二局に引き続き、優希の捨てた牌から大明槓からの嶺上開花で優希に直撃させる。そして、長いようで短った半荘が終わりを告げる。
因みに最終結果は、
宮永 59100
染谷 32500
須賀 12400
片岡 0
私が優希に数えを放銃した後、優希はタコスの力が無かったことに加え、更に崩れていった。南三局で立直した後に染谷先輩の満貫が直撃し、オーラスでは再び立直をかけるも、その牌で私が大明槓からの倍満を当て、南場が始まる時点で50000点以上あった点が0にまでなくなった。放心状態となった優希は卓に突っ伏しており、その目には光がなかった。
なんかすみません。でも、悲しいけど、これが麻雀なのよね。
「珍しく本気だったのぉ」
「5万点近く離されていたのでつい……」
「強すぎだろ、お前ら。ていうか、夜も嶺上開花が得意だったんだな」
「いや、これは唯のコピーだよ」
『こ、コピーだって⁉︎』
京太郎の問いに応えた言葉に、染谷先輩を除く全員が驚く。更に、さっきまで突っ伏していた優希も復活し、同じく驚愕の顔をしていた。
「夜は毎回そうなんじゃ。打つごとに打ち方を変えてくる。しかも、それが全部コピーなんじゃよ。わしも初めて聞いた時は驚いたの」
「確か1回だけ染谷先輩の真似をしましたね」
「そうだったの。あの時はまるで自分を相手にしとるような感じで気持ち悪かったわい」
「ちょ、ちょっと! 妹をだからできたのだと思ったのだけど、誰でもコピー可能なの⁉︎」
驚いている人そっちのけで話していたけど、さらりとおかしなことを言ったら、部長が今日1番の驚きをしながら聞いてくる。
「ええ、可能ですよ。流石に初見では無理ですけど、4局打てば劣化版なら出来ますね。完全コピーするには一つ“条件”が必要ですが」
そう、コピーは出来る。だけど、ある条件を満たさないと完全には出来ない。4局打てばコピー出来るという早さがあるけど、どうしても本家よりも弱くなる。いわば劣化版になってしまうのだ。
染谷先輩のコピーをした時も、劣化版だった。その為、染谷先輩よりも状況把握が出来なかったし、テンパイ速度も追いつかなかった。まぁその分自分の技術でカバーしたけど。
「何だ、じゃあさっきのも咲よりかは弱いのね」
完璧に出来ないと聞いた部長は少し落ち着きを取り戻し、咲のコピーも条件をクリアしていないものだと思ったらしい。けど……
「あれは完全コピーですよ?」
『はぁ⁉︎』
座っていたメンバーは全員勢い良く立ち上がる。いきなり全員が同時に立ち上がったので、少し身を竦めてしまった。
「という事は、夜の言う条件を満たしているってことなの?」
「えぇ、そういうことになります。まぁ条件については詳しく言えませんが」
なんか興味津々だった様に部長が尋ねてので、付け加えていっておくと、「そう」と言って引き下がった。本当に興味あったんだ。
「さっきの打ちについては以上ですね」
「ありがとう。それじゃあ、もう遅いし各自寄り道せずに帰るように。解散!」
部長がパン! と手を叩き、全員「ありがとうございました〜」と言いながら部室を出た。
はぁ……久しぶりに咲の嶺上開花使ったから疲れたわ。帰って咲にでも癒してもらおう。うんそうしよう。
––––––––––––––––––––––––––––––
「ただいまー」
すっかり暗くなり、車通りも少なくなった道を歩いて、ようやく家に辿り着く。まぁ夜は好きだからもうちょっと外にいても良かったけど、父さんがしんぱいしそうだし、疲れし、何より咲に会いたい。
「あ、夜お姉ちゃんおかえり。遅かっt「さきぃぃぃぃぃぃぃ!」うわっ!」
私の声に気付いた咲がリビングからひょこっと現れる。すかさず私は咲成分を補充するために飛びついた。
はぁ〜、癒されるぅ。
「よ、夜お姉ちゃん。帰って来てすぐに抱きつかないで。そして離れて」
「えぇー。もっと咲とハグハグしたいぃ」
「い・や・だ」
咲に嫌われたくないから仕方なく離れる。
ちぇ……1日我慢してたんだからもうちょっといいじゃないか。咲のケチ。
「ほら、お前ら。晩飯できたぞ。夜は手を洗ってこい」
「「はーい」」
キッチンの方から父さんの声がかかる。うちは私を含めて5人家族なのだけど、母さんは仕事の関係で、そして姉が母さんについていって東京にいる。そのため、今この家には3人しか居らず、家事は父さんが全部やっている。休日は出来る限り手伝ってるけど。
私は手を洗い、食卓へ向かう。今日はハンバーグだ。因みに昨日がトンカツで、一昨日がステーキとまさかの3日連続肉料理。胃が重い………
「「「いただきます(ま〜す)」」」
3人で声を揃えていい、食べ始める。
うん、美味しい。メニューに偏りはあるけど、父さんの料理美味しいから文句が言えないんだよね。
「にしても、まさか咲が麻雀を打つとはな」
食べ始めてから数分後、父さんから話が振られる。私が含まれなかったのは、凄くたまに染谷先輩の家に行って打っていたことを、知っているからだ。
「モグモグ……ゴクン。ふぅ……成り行きでね。あんまり乗り気じゃなかったけど」
「ふーん……その割には楽しそうだったけど? ご馳走様でした」
「ちょ! お姉ちゃん⁉︎ ていうか食べるの早すぎ!」
「お粗末様でした。へぇー、そうだったのか。確かに帰ってきた時、なんか清々しい顔してたもんな」
「お、お父さんまで⁉︎ しかも食べ終わってる!」
ケラケラと私と父さんが笑い、咲は顔を真っ赤にしながら急いで食べる。
食べる速さは、私が1番早く、次に父さんが早いため、咲がいつも最後まで1人で食べている。
「ご馳走様でした。そういえば、照お姉ちゃん元気にしてるかな」
やっと食べ終わった咲がふと呟く。
咲の言う照お姉ちゃんとは、母さんと東京に行った私たちの2個上の姉のこと。
そして、今その姉はと言うと……
「ちょーピンピンしてる」
「え⁉︎ 本当⁉︎」
「おう。確かここら辺に……」
父さんは本棚の方に行き、ある本……というか、雑誌を探し出す。
「お、あったあった」
父さんが取り出したのは、麻雀の雑誌。今の時代、麻雀の競技人口が世界で1億人を突破したため、こう言った雑誌が普通に発売されている。当然、うちも毎回買っているのである。
父さんは取り出した雑誌を咲に渡し、「57P」と言う。
咲は、首を傾げながらも、言われたページを開き、目を見開いた。
「ちょ! 照お姉ちゃんのこの笑顔初めて見たんだけど⁉︎」
「照姉曰く、営業スマイルだって」
「普段はいつも通り、無表情のお菓子好きらしいから安心しろ」
安心させるところそこなの? と思わずツッコミそうになったが、ギリギリのところで抑える。
そのページに写っていたのは、咲と同じような、髪で出来たツノがあり、咲よりも髪が少し長く、ピンクに近い髪色で、笑顔でピースをしている高校生。
この高校生こそ、私たちの姉にして、2年連続全国大会優勝した現チャンピオン。宮永照である。
約4年前、家族麻雀で負けず嫌いだった照姉は、咲のプラマイゼロで上がるという打ち方に不満を持ち、咲に怒鳴りつけてしまった。そして、2人の間に大きな溝ができた。
その後、母さんが仕事で東京に行くと同時に、当時中3だった照姉は、東京にある白糸台高校への進学を決める。
出発の日まで、2人は一言も話すことは無く、流石にやばいと思った私は、その日に2人で話す場を設け、無事に仲を直すことに成功。あの時はマジで焦ったわー。
「夜に感謝しろよ、咲。夜がいなかったらお前らずっと喧嘩したまま過ごしていたぞ」
「そうだよ。咲は内気だし、照姉なんか「咲と話すことなんてない」の一点張りで話させる段階まで持っていくのに苦労したんだから」
「うへぇ……ありがとう。夜お姉ちゃん」
「どういたしまして」
本当に苦労したわ。1ヶ月前に計画して、解決したのが出発当日って……
咲は仲直りしたかったからあっさり済んだし、話す場も父さんと母さんに言ったら協力してくれるって言ってくれて、直ぐに用意できた。父さんと母さんも2人の仲が直ることが本心だったからね。
問題は照姉だった。照姉は何度言っても、咲とは口を利かないと言い張るんだもん。引っ張り出すだけでも凄く疲れた。しかも、あの時の照姉は凄く荒れてたから、常時ドス黒いオーラがダダ漏れだったんだよね……部屋に入るだけで精神力がめっちゃ持ってかれたわ。
「照お姉ちゃんと久しぶりに会いたいなぁ」
咲は雑誌の中の照姉を見ながら、何処か寂しそうに呟いた。もう、照姉が東京に行って3年か……早いね。
「でも理由も無しに会いに行ったら迷惑だよね」
「照姉に会いに行く方法なら、他にもあるよ」
私は咲に近づき、雑誌のある場所を指す。そこには、「今年も全国狙います」と書かれていた。もちろん、照姉のコメントだ。
それを見た咲は何か気付いたように、「あっ!」と声を漏らす。
「そ、照姉に会いたかったら全国へいけばいい。それも麻雀ができるというおまけ付きでね」
その言葉を聞いた瞬間、咲の目は輝き始め、顔がパッと明るくなった。
麻雀が嫌いとか言ってるけど、本当は照姉と打ちたかったんだろうな。
「そうと決まれば、明日入部しにいくよ」
「うん! これで照お姉ちゃんに会える!」
「その前に、県予選を突破しないとね」
全国へ行くには、まず各都道府県で行われる予選を勝ち抜かなければならない。
私たちがいる長野には、名門風越や、去年その風越を破った龍門渕などの強豪校がいるし、一筋縄では行けないかもだけど、今の咲なら大丈夫だろう。私もいるし。
「っと、もうこんな時間か。咲、いつもの頼むよ。今日は久しぶりに本気になったから、少し量が多くなるかもしれないけど」
「えぇー、多いの? 遅かったからてっきりゆっくりやってたのかと思ったけど、わざと時間を掛けたってことなの?」
「Exactly!」
そっちの方が面白いからね。ついやっちゃうんだよ。
「はぁ……分かった。お風呂に入ってからね」
「了解」
全国…………か。どのくらいの異常な打ち手がいるのだろうか。“牌に愛された子”。果たしてどのくらいの強さなのだろうか。どのくらいの人が私を“楽しませて”くれるのだろうか………夏が楽しみだ。
咲side
「ッ⁉︎」
この威圧、この空気。まさしく夜お姉ちゃんのものだ。思わず鳥肌がたったよ。お姉ちゃんの黒い笑みが想像できる………怖ッ!
それほどまでに楽しみなのかな……夜お姉ちゃんの全力についていけるの、私が知ってる限りだと照お姉ちゃんしかいないんだよね。しかも、追いつくのがやっとで逆転なんか出来なさそうな感じだったし……まぁ本人はそれじゃあつまらないとか言って滅多に使わないけどね。それでも強いんだけど……
全国か……仲直りしたって言っても、それから一度も打ってないし……でも、もう縛るものも何もない………だから–––––全部、倒す!
「そろそろ出ようかな」
はぁ……この後、“アレ”をやられるのか……明日絶対にダルやつじゃん。しかも、多いって言ってたし……授業中に寝ちゃったら本でも買ってもらおう。
後日、本当に寝てしまった私は夜お姉ちゃんに大量の本を買ってもらい、財布の中を綺麗さっぱり無くしたのはまた別のお話。
side out
––––––––––––––––––––––––––––––––
「ふぁぁぁぁぁぁぁ……」
翌日、私は再び旧校舎にある麻雀部に向けて歩いていた。………隣で眠そうにしている咲と一緒に。
「咲ー! 大丈夫かー! 後もうちょっとで着くぞー!」
「……誰のせいでこんなに体調が悪いと思っているのやら」
「はて? 誰のせいでしょうか」
「誰のせいでしょうね」
咲が私のことをジト目で見てくる。まぁ私のせいなんですけどね。
因みに、私と咲は同じ教室だから、授業中に咲がウトウトと舟を漕いでいたことを確認済み。午前中は頑張って起きていたけど、お昼を食べた午後の授業では、疲れに加え、食べたことによる睡魔によって思いっきり寝ていた。
「っと、着いたよ」
いつの間にか、麻雀部部室の扉の前に立っていた。眠そうにしていた咲も、キリッと表情を変えた。
これで、ここに来るのも3回目。1回目は強制的に連れてこられ、2回目は部長のお願いということで来た。
けど、今日は私たちの意思でここの前に立っている。そして、これから3年間は毎日のように来る事となる。
「んじゃ、入りますか」
咲が頷いたのを確認し、扉を開く。
「お、来たね」
「2人ともいらっしゃいだじぇ!」
「咲さん……」
「なんだ? お前らまた来たのか」
「これは、もしかすると……」
中に入るとすでに全員揃っていた。
和、優希、京太郎は座っていて、染谷先輩がお茶を配っている途中。
部長はというと、私たちが来るのが分かっていたのかのように扉の前で立っていたようで、開けた瞬間に目の前にいた。
「私をここに入れさせてください」
「プラスで私もお願いします」
咲に入った私の隣に咲が立ち、咲が行ったのに続けていう。
「もちろん、大歓迎よ」
「これからよろしくの。咲、それに夜」
「よろしくだじぇ!」
「こちらこそ、宜しくお願いします」
「一緒に頑張ろうな! 夜、咲!」
部長の言葉に続いて、染谷先輩、優希、和、京太郎の順に歓迎の挨拶をもらう。
私と咲は互いの顔を見てから微笑み、「「はい!」」と返事をする。
そして、私、咲の麻雀部への入部が決定した。
「今年は全国狙います!」
私は雑誌の照姉のように右手でピースを作り、照姉のコメントを少し変えて言った。
「パロった」
「パロったの」
「パロったわね」
「パロリましたね」
「パロったじぇ」
「え? 何が?」
京太郎。雑誌を読もう。
以上です。
照と咲の中は直っていることにして、全国に行く理由を、阿知賀の人たちと同じ理由にしてみました。
せめて、咲と照だけでも団体戦で戦わせてあげたい……
阿知賀と和どう足掻いても無理です←
夜が大将戦で出ることによって副将から変えようと思ったんですけど、枠がありませんでした。
2週間も開けていたから、前書きと後書きどう書いていたか忘れてしまった自分←
ご意見・ご指摘・ノーマルで普通な感想等を募集中です。
意見等を頂けると嬉しいです
そして、近々咲-saki-のものをもう一本出すかもしれません。
出さなかったらごめんなさいm(_ _)m
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