大変長らくお待たせいたしました!
気が付いたら一か月以上経っていたという←
今回は夜の過去が少しだけわかります。そう、少しだけ←
ていうことで、はっじまっるよー!
~竹井side~
吸血鬼。文字通り、人間や動物血を吸うことによって生きる、近世のヨーロッパや、アメリカで恐れられた悪魔の一種。太陽の光が苦手なため、主に人々が眠りにつく夜中に行動すると言われていた。
発現理由は、現世に何らかの恨みを残したなど、色々な言い伝えがあるが、詳細は未だ不明。そもそも吸血鬼なんか存在せず、空想の中だけだった…………はず。
しかし、今私の目の前には―――
「どう? 驚きました? 驚きましたよね。本当に吸血鬼がいたなんて思ってもみなかったはずです。残念、15年前に一人だけ現れたんですよ。これが」
鋭くとがった犬歯を見え隠れさせながら、満面の笑みを浮かべている吸血姫がいた。敬語で話しているのに、まるでいたずらが成功した子供のような笑い方をしている。
あれ? この子ってこんな性格だったかしら。もっとシャキッとしているような気がするんだけど…………。
あと、なんかカミングアウトしてから鼻歌をちょくちょくしてるし、テンション高くなってるわね。
「え、えぇ。正直驚いたわ。それと、あなたが今テンションが高くなっているのもね」
「ですよね。咲も初めて知ったときは、開いた口が閉じないくらいびっくりしてましたし。あぁ、私がこんなにテンションが高いのは、久しぶりに咲以外の人の血を吸ったからですね。部長の血も美味でしたよ」
そう言って、夜は座っている椅子をくるくると回し始める。多分私が気を失っている間にも、気持ちは高ぶっていたんだろうけど、咲に怒られ、そのあとに他の人が入ってきたから抑え込んでいた。そして、誰もいなくなったから、それを爆発させた――――ってところかしら。
…………このことが咲に知られたら、ただじゃ済まない気がするけど。
やっぱり、吸血姫にとって血はうまいものなのね。どんな味なのかしら。気になるわね。
「ねぇ、私の血、どんな味だったのかしら」
「ん~っと、甘くてアセロラジュースみたいな味かな」
ア、アセロラって、また凄いところね。ていうか、そこまで分かっちゃうんだ。私が舐めても鉄の味しかしないのに。
「けど」
「?」
「その中に、決して甘くはない、辛い状況が続いても挫けず、ずっと耐え続けたその先にある幸福の味が一番強いですね。悪い待ちをすればするほどその見返りが大きい。それを求め、得るために待ち続けた部長の強さが溢れ出てます。甘味の中に隠れている苦さっていうやつですね」
「ッ!!」
回していた椅子を止め、にこにこと笑っていた顔から悲しそうな顔に変わっていた夜から発せられた言葉に、私は驚きを隠せなかった。
まさかそこまで分かってしまうとは…………。
「今まで苦労してきたんですよね? その先にある何かを求めて――。そして今、その何かがもう目の前にある…………そうですよね?」
「…………えぇ、そうよ。私は団体戦で、5人で大会に出たかった。けど、ここに入部した時は私以外誰もいなかったわ」
インターミドルの予選に個人戦で挑んだとき、これじゃないと思った。自分のためじゃなく、チームのために勝つことに意味があると思ったの。だから、団体戦に出たかった。
「正直辛かったわ。団体戦に出ることはできないのかしらって。…………でも、諦めることが出来なかった。だから待ち続けた。個人戦も出ずに」
その時から私は悪い待ちをすればいい方向へ行くと分かっていた。だからこそ、今回もそれに賭けた。風越に行かずに一人で待ち続けるという悪待ちに。
「そうしたら、二年生になった時にまこが入部してきた。その時はうれしかったわ。まこ一人しか入ってこなかったけど、まだまだ可能性はあるってね」
あの時は本当にうれしかった。まこが入ってくれたおかげで、私は諦めずに待つことが出来たんだもん。そのまこも飽きずに一緒に待ってくれたし。感謝しても感謝しきれないわ。
「そして、三年になった今年。まず優希、和、須賀君が入部してきた。須賀君は男子だったけど、優希と和の二人が入ってくれたおかげで夢まであと一歩のところまで来た。そして………」
「私たち姉妹が入って夢が実現したと」
「Exactly!」
これで団体戦に出れるようになったと思ったら、体の震えが止まらなかったわ。しかも、インターミドルチャンピオンに、それを超す強さを持った姉妹―――全国を目指せるかもしれないというオマケまでついてきた。これほどの見返りは想像以上よ。
「だから、あなたたちには感謝してるわ」
「どうぞ、存分に感謝してください」
そこまで話、私たちはお互いに微笑みあう。そして、夜は再びグルグルと回り始めた。
本当にテンション高いわね。でも、夜にもこんな一面があったのね。
「ていうか、麻雀だけじゃなく、人生でも悪待ちが成功するってどういうことですか」
「!? よく気付いたわね。それも吸血したからかしら?」
「えぇ。前に話しましたが、私は三、四局見ただけで、劣化ですがコピーすることが出来ます」
夜はくるくると回り続けながら説明を始める。…………回転は止めないのね。
確か、初めて打った時にこの説明をしたわよね。その時に、咲のコピーでダントツの一位になって、終わってから話があった。数局見ただけで劣化コピーが出来る、と。
ただ、もう一つ、ある条件を満たすことによって、劣化から完全に変わるとも言っていたわね。まさか――
「その顔は大体理解したようですね。お察しの通り、その時に話した完コピの条件というのが、対象の相手を吸血することです」
…………なるほど。夜が吸血姫って知っているのは宮永家だけ。そして、血を吸わなければ生きてはいけない。その相手はおそらく咲。だから、夜は咲の打ち方を完璧に再現出来るってわけね。
ん? となると…………
「もしかして、私の打ち方出来る感じ?」
「もちのろんです」
ウソダドンドコドー。あれ? これって私が夜に勝つ確率限りなくゼロに近いんじゃないかしら。打ち方を真似出来るってことは、その弱点も知っているわけで………これ、勝てないわ。
「あなたとは出来るだけ打ちたくないわね」
「いきなり何を言い出すんですか」
いや、だって、ねぇ? あれがあれであれだから。
「っと、話がだいぶ逸れましたね。えっと…………どこまで話しましたっけ?」
「あなたが吸血姫ってところまでしか話してないわよ」
「あぁ、そうだったそうだった。――――って、全然話してないじゃないですか。ていうか、目回った……。気持ち悪い……うえぇ」
手を口に当て、回転を止める夜。だったら回らなければいいのに……。意外と天然なところがあるのね。
「そういえば、あなたが吸血姫ってことは咲も――」
「咲はちゃんとした人間ですよ。家族でも吸血姫は私だけです。まぁ人外ではありますけど」
かぶさるように否定された。確かに世界でたった一人とか言ってたもんね。ていうか、宮永家は人外の集まりだったのね。もし、夜のほかに姉がいたら怖いわね。
ん? 吸血姫が夜一人ってことは………。
「あなた、養子?」
「Exactly!」
本日二回目のExactly! で、肯定する夜。似てないと思ったけど、まさか本当に血がつながってなかったとは。まぁ吸血鬼一家がいなくてよかったのかな? 人外一家らしいけど。
「私は咲たちに会う前、鹿児島のある森の中で過ごしていたんです」
酔いから復活した夜が話始める。
鹿児島とはこれまた遠いところね。確かあそこは巫女さんで有名だったはず。去年のインターハイ鹿児島代表の永水女子は巫女さんの学校だったような………。
「よく巫女さんにばれなかったわね」
「いや、あとから聞いた話なんですけど、その森に生息する動物の不可解な死について調べていたらしいですよ? 私、その時そこら辺の生き物の血を手当たり次第に吸ってましたし」
やっぱり調べてたのね。巫女さんたちってオカルトについて敏感だし。でも、吸血鬼は対象外だと思うのだけれど………。どっちかというと、シスターのほうの専門分野じゃないかしら。
「で、ひたすら血を吸うだけの生活を六年間過ごしたある日。二人(・・)の少女と出会った」
「ん? 二人?」
話の流れ的に、一人は咲で間違いないと思うけど、もう一人は? 大人なら親だけど、二人の少女(・・)っていってたし………
「一人は咲。そして、もう一人は」
――――宮永 照
思わぬ人物に、私は驚きを隠せなかった。
宮永 照。白糸台高校三年で、私たちの目指すインターハイで二年連続優勝した現チャンピオン。親に低い打点から上がるごとに点数が上がっていく連続和了を最大の武器とする、怪物中の怪物。個人二位の荒川さん曰く、あれは人間じゃない、とのことらしい。
同じ苗字、しかもチャンピオンの面影があったから、もしかしたらって思ったけど、本当に妹だったのね。確かに人外揃いね。
「驚いてますね? 咲が宮永照の妹と聞いて」
「…………えぇ。ものすごくね。妹がいるとは言ってなかったはずだし」
「あぁ~。あれは照姉なりの気遣いですね」
「気遣い?」
「Yes! 例えば、有名人、しかも全国の頂点に立つほどの実力を持った人に、弟や妹がいたとしたらどうなると思います?」
? 某鈍感主人公のハーレムものだと思えばいいのかしら。確か、姉の影響で弟である主人公は周りの人たちに期待されて…………まさか!?
「その通りです。姉が異常な打つ手だとしたら、その親族も同じじゃないかと期待される。そして、もし咲がその期待に応えられなかったら、出来損ないだの照姉の恥だの色々なことを言われ、いじめになるんじゃないかと考えた。だから―――」
「妹の存在をあえて公表せず、周りが咲に危害を加えないようにした………と」
「そういうことです。でも、このことを誰にも話さずに言うもんですから、初めて聞いた咲はものすごくショックを受けてましたよ。まぁその後の説明で誤解はなくなりましたけど」
…………チャンピオンって不器用なのね。家族思いでとても優しい姉なのだけれど、誰かに相談するとかしなかったのかしら。
「まぁ話を戻しますけど、二人にあったのがもう日が沈み切った夜だったんです」
「………なんで夜なのよ」
「なんでも、旅行中で鹿児島に来ていたらしいです。それで、午後になって森の中に入ったら道に迷ったとかなんとかで、私がねぐらにしていた洞窟の入り口にいたんです」
百歩譲って森に入ったのはいいとする。でも、なんでそこで遭難するのよ。ていうか親は? 親はどこに行ったのよ。
「顔が疑問に満ちてますね」
「逆に疑問しかないわよ」
「ははっ。確かに」
くすくすと笑う夜。これをなんとも思わないほうがおかしいわ。
「まぁ私も今思えば、なんであんな時間にいたんだろうとは思いますね」
でも、と夜は区切り、笑っていた顔が少し寂しそうな表情に変わる。
「当時は人間なんて初めて見たんですから、なんとも思いませんでした」
「? 初めて?」
「そうです。その時まで穴倉でずっと一人でしたから」
…………きっと感情なんてなかったんでしょう。けど、咲たちと生活していくうちに感情を得ていき、今ではその六年間を寂しく思えるようになっているのね。
ていうか、夜って絶対純血よね。死者から蘇ったのなら、前世の記憶があるはずだし。
「ッ!!」
「?」
「…………もう一時間か」
夜はピクッと何かに反応し、扉のほうに向いた後、聞き取れなかったけど、ボソッと呟いてからため息をついた。咲たちが帰ってきたのかしら。
「まぁそんなこんなで二人に出会い、一晩過ごしてから宮永家に引き取られ、今ここにいるって感じですかね」
「相当大雑把にまとめたわね」
「もう時間ですし、詳しくは合宿の時に話しますよ。もう咲たちが「ただいま戻りました」…………戻ってきましたからね」
本当に帰ってきたわ。私が寝ている間にまこの家へ行った咲と和。それに、夜がお使いを頼んだ優希。そして、その優希に捕まったであろう須賀君が部室に入ってくる。
咲と和を見る限り、うまくいったみたいね。顔つきが昨日とは大違いだわ。
「部長、大丈夫ですか?」
「えぇ、問題ないわ。まだくらくらするけど、寝たら少しましになったわ」
真っ先に私の元へ来た和は、私の様子を見てほっとする。どうやら随分と心配をかけたようね。後でみんなに謝っておかなくちゃ。
「(なぁ、部長に何があったんだ?)」
「(色々あって、お楽しみだったらしいじぇ)」
「それより部長!」
今度は咲が一歩前に出てくる。それよりもってひどいわね。ま、言いたいことはわかるし、咲は事情を知ってるからいいけど。
「わかってるわ。夜」
「イエス、マイロード」
いつから私はあなたの主になったのよ…………。
心の中で突っ込んでいるうちに、夜はあらかじめ昨日書いておいたホワイトボードの隣に移動していた。今のままだと「目指せ! 全国高校生麻雀大会県予選突破!!」と、しか書いていない。そ、今のままだと。
「は~い。みんなこの前にきて~」
「? 県予選突破という目標しか書いてないじぇ」
「お姉ちゃん、これにどんな関係が?」
「何のためにもなりませんね」
「まるで意味が分からんぞ」
おぅ。期待以上の反応ね。これは面白くなりそうだわ。
私は片手をあげて夜に合図を送る。それに気づいた夜は、うんと頷き、ホワイトボードに手をかける。
「確かにこれだと何もわからないね。だけど―――」
そして、夜は思いっ切りホワイトボードを回転させる。目の前にいた四人は、回転で起こった風に吹き飛ばされないようにしていた。
…………あれ、やりたかったな。
何回転かした後に、夜は手を叩きつけて回転を止める。
そこには「強化合宿」と大きく書かれていた。私が書いたんだけど。
「部長、これはどういう意味ですか?」
まず、和が私のほうを振り向き、尋ねてくる。その後に続くように、三人も私のほうへ振り向く。
表情を見るに驚いているわね。効果は抜群のようだわ。
「そのまんまの意味よ。ゴールデンウィークに二泊三日で強化合宿をするわ。全国へ行くためにね」
説明を聞いた咲と和は満足そうに頷く。他の二人はなぜ? という顔をしているけど。夜はわかってたから四人の反応を楽しんでるわね。
とにかく、この合宿でやるべくことは全てやるわよ。そして、待ってなさい。全国!!
~side end~
――――――――――――――――――――
「「ただいまー!」」
動けない部長を家に送り届け、すっかり日が落ちてから私と咲は帰宅した。
部長をおんぶで送ったけど、何故か部長の顔が真っ赤だった。なんでだろう。隣では咲が終始ニヤニヤしてたし………解せぬ。
「はぁ~、疲れた。ちゃっちゃかご飯たべt「ちょっと待とうか」………」
私がリビングへ向かおうとした時、後ろから肩に手を置かれる。更にどす黒いオーラを間近に感じる。
恐る恐る振り返ると、黒い笑みを浮かべた咲が立っていた。
ヤバい……。私の第六感が警報を鳴らしている。早いとこ逃げようとするが、信じられないほどの力が加わっていて抜け出すことが出来ない。クソッ!
「まさか、忘れてたなんて言わないよね?」
「ま、まて咲! 話せばわk「問答無用」誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
首根っこを掴まれ、強制的に咲の部屋へ連行される。くそっ! 何で今日に限って父さんはいないんだ!
ふと、外を見ると、まん丸い満月が……。い、いやだー! あの月を最後に見るなんていやだー!
「さぁ、覚悟はいいか。私は出来ている」
「い、いや。私が出来て――――」
「言っておくけど、今夜は寝かさないから☆」
「それはこんな時に使う言葉じゃ「少し黙ろうか」ギャー!」
その後、私を行方を知るものは誰もいなかった。
第一部完!
終わりません。いや、終わらせません←
少しだけ判明しましたね。あと、照がものすごく優しい。
能力の限定条件も判明しましたね。まぁ感想で気づいていた人もいたようですが。
次回はついに合宿でございます。
多分二、三話に分かれるかもしれないです。一話で終わったらごめんなさい。
そういえば、今日は咲-saki-15巻及びシノハユ6巻、さらに咲日和、立-Ritz-の発売日ですね。後で買いに行かないと(使命感)
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