12年前、流星の滝上空にて謎の光が出現した。
警察は流星の滝に住む竜の民達が何かしらの行事を行い、その光が漏れたと言う見解を公表した。
その日、竜の民達は困惑していた。
空が割れ、そこから年端も行かぬ少女が落ちてきたからだ。
「あの切れ目、我らの伝承には一切の記述がない…一体あの娘は」
「その事だがおばば様、私は以前ホウエン以外に我らの同胞を探す旅をしていましたが…"あれ"に似た物を見たことがあります」
一同はざわつくが、長であるおばばと呼ばれた人物が諌める。
「それについて話すがよい」
「はい、あれはアローラ地方という4つの島々からなる地方を巡っていた時です、アローラにも様々な伝承がありその1つにあの裂け目の事が書いてあったのです……そして規模こそは小さいのですが実際に私もこの目で見ました」
「アローラだって…?」
「ホウエンよりも温暖な場所だよな…」
「何でそんなところの現象がこっちでも…?」
「気になった私はその裂け目について調べたのですが…どうやら異なる世界のポケモンや人が落ちてくる事もあり…つまりあの少女は」
「異なる世界の者か…身寄りが無いのなら致し方無い、あの娘を竜の民として迎え入れる事も視野に入れよう」
おばばが辺りを見回すと皆、異論はないと顔で示していた。
「今は確か…歳の近そうなシガナが見ているのだったな?」
「えぇ、目覚めたときに歳の近い方が話しやすいと思いまして……待てよ異なる世界の者なら言葉は…」
沈黙が辺りを包む、おばばもそれは考えていなかったとばかりに煙草を吸って誤魔化す。
すると向こうから件の少女の手を繋いだ少年が歩いてきた。
「おばば様!ヒガナの目が覚めました!」
「シガナか、ん?ヒガナとはその娘の名か?」
ヒガナと呼ばれた少女は少し緊張した様子で辺りを見回す。
「私…ヒガナって言います、流星の滝に暮らしている竜の民…なんですけど」
自分の知っている流星の滝ではない。
その目はそう語っていた。
「…ヒガナよ、いきなりこんなことを言われても理解できぬだろうがお主は異なる世界から"何か"あってこの世界へ迷い混んだのだ…まさか異なる世界の同胞だとはな」
「てことは迎え入れなくても同胞だったのか!安心だな」
「とりあえず勝手が違うだろうから皆で色々教えていこうね」
竜の民達は突然の新入りを拒むことなく受け入れた、ヒガナは静かに頭を下げ、感謝の意を示すのだった。
そしてヒガナは竜の民に迎え入れられた。
時は流れ、ヒガナとシガナは互いに17歳と19歳になっていた。
二人はとても仲睦まじく、来年、シガナが20になった時に正式に婚約する事が決まっていた。
「ねぇ、シガナは本当に伝承者になるの?」
ヒガナはシガナに寄り添いながら疑問を口にする。
「あぁ、俺は珍しく外の世界と関わらなかった若い民だからな、より期待されてるんだ…今さら断るつもりもないさ」
「…私もね、元の場所だと伝承者…の予定だったんだ」
「でもヒガナの所の伝承者って」
ヒガナは静かに目を閉じる
「うん、伝承の語り部として死ぬまで流星の滝から出られない…こっちとはかなり違うね」
シガナはそっとヒガナを抱き寄せる。
「…お前があの裂け目からこっちに落ちてきて…俺は良かったと思ってる」
「…私もよ」
そして、月日は流れ…二人は正式な夫婦となり、暫くたったある日。
「てぇへんだ!シガナ!馬鹿野郎訓練は後だ後!」
竜の民の一人が慌ただしくコモルーの訓練をしていたシガナの元に駆け付ける。
「えっ!ちょ…コモルー!少し待っててくれ」
「おけおけ、いてらー」
引き摺られながら家に戻るシガナ、そして家に入るとヒガナがベットで横になり医師が様子を見ていた
「先生!?…まさか何か病気に…?」
「いんや逆だよ逆…おめっとさんシガナ、妊娠だよ」
「…シガナ、これからは自分だけの身体じゃなくなっちゃったね」
幸せな時間、ヒガナは確かにそれを噛み締めていた。
しかし…あの日はやってきた。
あの忌まわしき星墜の日が。
その日、竜の民達は慌ただしかった。
それもそうだ、小型の隕石が里の近くに落ち、ドラゴンポケモン達が混乱して滝の中で暴れまわっているからだ。
「シガナ!」
以前よりも少しだけお腹が大きくなったヒガナがボーマンダに跨がるシガナの元へ駆け寄る。
「ヒガナ!?危ないから家で待っててくれ…ドラゴン達は驚いてしまってるだけだ、皆の力を合わせればすぐに収まる。」
そう告げるなりシガナは飛び立ってしまった。
シガナの宣告の通りドラゴン達は落ち着きを取り戻しシガナも怪我無く帰ってきた、そうここまでは。
ここまでは何の問題もなかった。
ヒガナは里の入り口で暴れるドラゴンポケモン達に怪我を負わされたポケモンの手当てをしていた。
「いたいンゴ」
「はいはい…えーと、ルナトーンだからこっちのが良いかな………よし、大丈夫」
そしてポケモン達が掃け出した頃、里の入り口に二人の男がやって来る。
「やぁ、あなたってここの人かな?」
男の片方はカメラを手にしていて、そのカメラで里を撮影していた。
「ッ!?ここは竜の民の里よ!余所者は出ていきなさい!」
男を睨み付け立ち去るように促すヒガナ。
しかし男はニコニコと笑みを浮かべる。
「いやぁー竜の民は怖いね、まさかドラゴン達を暴走させるなんてなんて凶悪な民族なんだろ!おい!カメラ回せ!」
ヒガナはシガナと違い定期的に滝の外で買い出し等を行っていた。
だから知っている、コイツらは他人を餌に飯を食べる奴等だと。
「やめろ!」
やや重たい身体でも男からカメラを奪い取ろうとするヒガナ、しかし男はそれを避けてヒガナの背中を押す。
ヒガナの正面には崖、里の中なら柵が設置されているがここは里の入り口から出たところ。
掴めるものはない、崖から落ちるヒガナの目にはいったのは全速力でこちらに走ってくるシガナの姿だった。
「ッ……ヒガナ!」
崖から飛び降り、落下するヒガナを抱き止めるシガナ。
下は川…だがシガナは理解していた、あまり深さが無く、ゴツゴツとした岩が多い場所であると。
「ヒガナ……ありがとう」
ゴッ!
「…えっ………あれ…?シ…ガナ?ねぇ、起きてよ…ねぇ、嫌だよ…なんで?……何で頭から血が…あっ、うっ」
朦朧とするヒガナ、そして…腹部に強烈な痛みが走り……意識を手放した。
ヒガナが目覚めたのは翌日であった。
目覚めたヒガナに告げられたのはシガナと…子供の死。
ボーマンダはヒガナを責めなかった、むしろ己が駆け付けるのが遅かったから二つの命を救えなかったと。
「…何でなのかな……ははっ、もっと色々考えて…こうなる可能性とかもっと…もっと考えていれば……ははは」
「想像力が…足りないよぉ…!」
それからヒガナはシガナがやってきた仕事を全て引き受け、こなしてきた。
まるであの悲劇を忘れようとするかの様に。
竜の民達は彼女が回復しつつあると思っていた。
そんな希望は打ち砕かれた。
「よしよし、いいこだねシガナ」
ヒガナの心は壊れたままだった、迷子のゴニョニョに夫の名前を付け、子として育て出したのだ。
そしてある日「龍神さまを呼び起こしてくる」
そう告げ里を去った。
そして現在、ヒガナは目的のためにメガストーンを強奪し続けていた。
そして…遂に再びボウシ達と対峙する。
やめて!メガボーマンダのドラゴンダイブで、赤い宝石を砕かれたら、物理的に身体と繋がってるSIDENの宝石まで砕かれちゃう!
お願い、死なないでSIDEN!あんたが今ここで倒れたら、ユキメノコさんやボウシとの約束はどうなっちゃうの? ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、ヒガナに勝てるんだから!
次回、「SIDEN死す」。デュエルスタンバイ! byうまま棒