「メェェ」
スティーブは分かっていたはずだった。
夜になれば暗がりからモンスターが湧き出てくることを…
しかしそれに対して何の対策もできなかった。いや、しなかったのだ。
「メェ」
木の板を自分の周りに、壁のように立てて、上に空いた穴も木の板で塞ぐ。
真四角の暗闇でできた空間が、スティーブの周りを覆い尽くしていた。
「ンメー」
ゾンビのうめき声、スケルトンが移動するたびに鳴る骨の音、蜘蛛の鳴き声…。
それらはまだ脅威ではなかった。
それ以上に恐ろしいモンスターがいることを、知識として彼は知っていた。
本当に木を切ることにしか集中していなかったスティーブは、道具の中で一番攻撃力が高く、モンスターや動物を狩ること専用の道具である『剣』を作る事も忘れていた。
身の回りを完全に木の板で塞いだ後で、後悔し始めた。
それだけではない。
彼は石を削り取ることやそのために必要となる道具を作るのを忘れていた。
「メェエェェー」
つまり、木を切るだけ切って他は何もしなかったのだ。
スティーブは今朝とった牛の生肉を貪り食っていた。
食あたりになりそうな勢いで、バチが当たりそうな行儀の悪さで。
暗くて手元が見えない。
時々吐き気がするが、その気持ち悪さをどうにか押しとどめていた。
こんな狭いところで吐けば、確実に夜明けまでにゲロくさいクラフターが出来上がる。
何としてもそれだけは避けたかった。
汚いヒゲの男でも最低限のエチケットくらいは守っていたかった。
肉を食べ尽くした後は、作業台で、昼間作って余っていた棒と木の板二つを縦に組み合わせ、剣を作った。
こんなところで作っても何もできない。
外ではまだカランコロンと骨が鳴り、うーうーとゾンビの鳴く声がする。
…待つこと数時間。
気がつくと朝日が昇り始めたのか、スケルトンやゾンビが苦しそうな音や声を上げる。
そして完全にその音が消え去った後、彼は木の板の壁に穴を開け、木の剣を携えて羊の群れへ飛び込んでいった。
決して飢えながら、気持ち悪さに耐えながら徹夜したイライラを発散させるとか、夜に響いた鳴き声が妙に腹立たしかったからとかじゃない。
彼らはベッドの素材になる、羊毛を落とすのだ。
…そういえば、ここは昨日牛を大量に撲殺した、リスポーン地点の平原だった。
しかし、スティーブはベッドの素材に必要な個数の羊毛をゲットしてもその剣を振るうのをやめなかった。
絨毯になるから、色を付けられるから。
誰にも言い訳しないのに、スティーブの心の中にそんな言葉たちが浮かんだが、一瞬で消えた。
かくしてここに哀れな羊と牛の墓標の代わりに、目の下に深いクマを作ったクラフターが立つことになる。
わあお