うめき声は突如として響いた。
スティーブはいきなりの音にビクッと肩を震わせた。
闇の中から絶えず聞こえてくる。
1日目の夜の合間に聞いた、あの忌々しい声だった。
何かが腐った、凄まじい匂いがする。
間違いない。
スティーブは腕を伸ばし、松明で奥を探った。
程なくして、暗闇から一体のゾンビが現れた。
「ヴォォ…」
体を引きずり、布切れのような服を身に纏い、一歩歩くごとにぐにゃぐにゃと音がする。
肌は緑に変色し、異臭を放ちながら近づいてくる。
後ろを向いて脱兎のごとく逃げ去りたいのだが、こんな気色の悪いものを道端に放っておいては、またいつ遭遇するかもわからない。
危険は排除すべきだ。
そう決断して、スティーブは一歩踏み込んだ。
首を狙って横に剣を薙いだ。
しかし常に相手はフラフラしているため、目的の場所には当たらず、ゾンビの体を叩いただけだった。
へっぴり腰ながら数回叩くと、ゾンビは煙を上げて消えた。
消えたゾンビの代わりに、得体の知れない肉、小さな緑色の玉が数個散らばっている。
近づいて手を伸ばすと、緑の玉はスティーブに吸い込まれ、消えた。
何かが自分の中に蓄積されたような気がして、伸ばしたてを見つめた。
次に、変色しかけた謎の肉に目をやった。
いやどう考えても先程のゾンビのものであるのは明白だ。
肉は通路のど真ん中を陣取り、ただならぬオーラをオーラを漂わせている。
かといってこの先に進むのにあれを踏むのも気がひける。
スティーブは腐った肉を拾った。
出口は相変わらず見えては来ない。
歩き続けたスティーブは、当然腹が減っており、しかもいつの間にか食料が消えていた。
食い尽くしてしまったのである。
スティーブは手元に残った戦勝の品を睨んだ。
(…食うしか、無いか?)
気色の悪い色をした、人の肉。
しばらく悩んでいたが、スティーブはもう餓死寸前だった。
食べても食べても空腹感に襲われ続ける。
その時だった。
何の前触れもなく、スティーブのすぐ後ろから、何かが発火したような、
シューッ
という音が聞こえた。
振り向いた時には、もう遅かった。
気配なく忍び寄り、人に近寄って自爆するモンスター。
その地を大きく形状変化させ、土豆腐であろうが豪邸であろうが木っ端微塵に爆発、もといリフォームすることから、なぜか後に『匠』と呼ばれるようになる。
直接巻き込まれはしなかったものの、爆風によって吹き飛ばされたスティーブは、覗き込んでいた、あの暗く深い穴に、綺麗な放物線を描いて落ちていった。
ヒューン…ベチャッ
穴の中で、スティーブが顔面着地した音が響いた。
それでも強運といおうか、不運といおうか。
全身(特に顔)に強烈な痛みを感じながら、それでもまだ彼は生きていたのだ。
そしてさらに不幸は続く。
深く暗く、広い洞窟の中に蠢くモンスターの大群がそこにいた。
一斉に振り返るモンスター達にたじろぎつつ、松明片手に必死で逃げるスティーブ。
飛びかう矢。
降りかかる蜘蛛。
スティーブを喰おうとするゾンビ。
近づいては爆発しようとするクリーパー。
スティーブはまた、深い穴底へ吸い込まれ…。
血に染まる目の前に眩み、そのまま意識を失った。
「スティーブはモンスターに襲われ、高所から落下した」
スティーブはベッドから転がり落ちた。
死んだと思ったが、スティーブの体は死んでも復活するようにできているらしい。
未だに恐怖で胸がばくばくいっている。
これが噂のデス○ーラか。
とにかく、今の装備では無理だ。
スティーブは洞窟前の拠点を崩し、最初にいた平原へ帰って行った。
もちろん洞窟の入り口は土で封印した。もとい埋めた。
お疲れ様でした。