雷が提督に着任したわ! これより艦隊の全ては、ガンプラバトルで決定するわねっ!   作:亀川ダイブ

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第壱話『誕生、ガンプラ鎮守府』

「雷が提督に着任したわ! これより艦隊の全ては、ガンプラバトルで決定するわねっ!」

 

 突然の宣言に、艦娘たちは目が点になった。

 理由も告げられず招集され提督執務室に出頭すれば、そこに提督は不在。のみならず、鎮守府最古参艦娘の一人である雷が、提督用の白い軍装に身を包み、待ち構えていたのだ。

 そして、この宣言である。まったく意味が分からない。

 

「なぁ、雷。まったく意味がわかんねぇんだけどよ」

 

 そう切り込むのは、軽巡洋艦娘・天龍である。止めようとする龍田の手を優しく抑え、雷に詰め寄る。

 

「まず、提督はどこに行った。いくら大規模作戦を成功させた直後だからって、鎮守府を離れるなんてあいつらしくねぇ。次に、その格好は何のつもりだァ? 古参のお前に艦隊の指揮を任せるのはまぁ、わかるにしても――」

「ふっふっふー……それが、知りたいのなら! ぽちっとな!」

 

 雷は幼い顔に不敵な笑みを浮かべ、天龍の言葉を遮った。そして、執務机の上に意味ありげに置かれていたがツッコんだら負けだと思って誰も(龍驤でさえも!)触れなかったあからさまにあやしい古典的なボタンを、ぽちっと押した。

 ヴィィィィィーーン……ッ!

 低い唸りを上げて、執務室が様変わりしていく――床が割れ、壁が動き、本棚が引っ込み――執務室のど真ん中に、巨大な六角形の筐体が出現した。艦娘たちは驚き、息をのむ。

 

「ガンプラバトルシステム……提督の野郎、こんなものを執務室に仕込んでやがったのか……!」

 

 天龍の驚き目を見張る表情に、雷は満足げに頷きながら、ポケットから携帯電話ほどの大きさの板状の機械――GPベースを取り出し、バトルシステムにセットした。

 

『Beginning Plavsky particle dispersal』

 

 GPベースを認識したバトルシステムにぶぉんと鈍く火が入り、雷の得意げな顔を下から照らす。

 

「私と、ガンプラバトルをしなさいっ」

 

 どんっ。雷は、バトルシステムに一体のガンプラをセットした。

 ガンダムバルバトス・第四形態。背中に滑空砲、右手にはメイスを装備。ゲート処理はもちろん完璧。スミ入れ、つや消し加工済み。基本的には成形色仕上げではあるものの、全身の赤い刻印(エングレーブ)はメタリック仕上げで、カメラアイも同様。部分塗装は抜かりない。その完成度は――高い。

 

「勝てば教えてやる、ってか。はンッ、めんどくせぇ……」

 

 天龍は両掌を上げて「やれやれ」と肩を竦めるジェスチャーをするが、

 

「けどよ!」

 

 ざんっ。バトルシステムに、GPベースとガンプラがセットされた。

 

「オレのガンプラは、世界水準軽く超えてるぜ?」

 

 漆黒のガンダム、ストライクノワール。光沢仕上げのボディに、ガンメタリックの二丁拳銃(ビームライフル・ショーティー)がよく映える。

 

『GANPRA BATTLE.Combat Mode. Damage Level,Set to A.』

 

 二機のガンプラと二人の艦娘を、青白いプラフスキー粒子の煌めきが包んでいく。

 

『Field1,Navy base.』

 

 そして構築されたフィールドは、鎮守府周辺海域。年季の入った赤煉瓦倉庫が独特の風情を醸し出す港湾施設と、その眼前に広がる正面海域を再現したフィールドだ。

 仮想のカタパルトが構築され、雷と天龍、それぞれのガンプラがフットロックに足を乗せる。

 

「雷、ガンダムバルバトス。出撃しちゃうねっ」

「天龍、ストライクノワール、出撃するぜ!」

『BATTLE START!!』

 

 出撃宣告と共に、二機のガンプラが鎮守府へと飛び出した。

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

『……さて、始まりました雷提督プレゼンツ、第一回鎮守府内ガンプラバトル。戦いますのは鎮守府最古参の一人、ダメ提督製造機こと、提督代行駆逐艦・雷。対するは、鎮守府の切り込み隊長にして遠征番長、軽巡・天龍です』

 

 冷静沈着、を通り越してもはや無感動ともとれる落ち着き過ぎた声色。バトルシステムの仮想の空に四角くモニター画面が開き、駆逐艦離れした鋭い眼光を持つ艦娘が映し出されていた。

 

『申し遅れました。私、落ち度のない解説でお馴染み、駆逐艦・不知火です。どうぞよろしく』

 

 無表情のまま、ぺこりと頭を下げる。

 

『今回のバトルの見どころは、フェイズシフト装甲を持つストライクノワールに、実体兵器しか持たないバルバトスがどうダメージを与えるか。また、ストライクノワールの武器でナノラミネート装甲をどう突破するか。お互いに強靭な装甲を持つガンダム同士、どう有効打を叩き込むかといったところでしょう。それでは。ガンプラバトル――』

 

 まるで親の仇でも睨むかのような眼光でウィンクからの、仏頂面のまま横ピース。

 

『レディー、ゴー』

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

「おらおらおらおらぁっ! どうした、怖いのかああ!」

「ふふん! そんな射撃じゃあ、雷は落とせないわよ!」

 

 無数にばら撒かれるショーティーのビーム弾を、バルバトスは最小限の動きで華麗に回避する。

 

『雷提督のバルバトス、特徴的な回避機動です。装甲表面をかする程度ならばむしろ当たってもいいというほどの、度胸と思い切りと、なにより効率のいい回避。雷提督のガンプラファイターとしての非凡な才能が見て取れます』

「雷、反撃しちゃうねっ」

 

 乱射の途切れた一瞬に、バルバトスは滑空砲を三連射。二発は赤煉瓦倉庫に直撃するが、それも計算のうち。回避方向を誘導されたストライクノワールの顔面部に、三発目の大口径徹甲榴弾が直撃した。

 

『艦娘換算で重巡クラスの大口径砲が直撃。天龍、これは痛いか。いや――』

「効か……ねぇなあっ!」

VPS装甲(ヴァリアブルフェイズシフト)に、実弾は通らない!』

 

 ずあっ! 弾着の爆煙を突き破るようにして、フラガラッハ3を二刀流に構えたストライクノワールが突撃してきた。叩き付けるような二刀の連撃を、バルバトスは右手のメイスを駆使して捌き、弾く。

 ガァンッ! ゴォン、ギィィン……ッ!

 重い金属音が轟く。二刀のストライクノワールが手数で押しているように見えるが、その実、天龍は攻めきれずにいた。重く長く、小回りの利きにくいはずのメイスを操るバルバトスの手技は繊細かつ大胆。操縦する雷の技量は相当なものだ。

 

「ちっ……めんどくせぇ! おらぁぁッ!」

『天龍、力押しに出ました。ノワールストライカーの推進力を突撃力に変え、無理やり鍔迫り合いへと持ち込む構えです』

「お見通しなんだからっ!」

 

 雷はメイスを斜めに構え、押し付けられる二刀のフラガラッハ3を受け流した。姿勢を崩したストライクノワールの背中に、メイスの一撃を振り下ろす。

 バッキャアアアアンッ!

 

「くっ、ストライカーが!?」

 

 VPS装甲とて、叩き込まれたメイスの質量そのものは消すことはできない。打撃を受けたストライカーパックそのものは無傷だが――パックと機体との接続部は、根元からへし折れていた。

 

「ふふん、狙い通りねっ♪」

『なんと、雷提督の狙いは武器破壊。いや正確には強制武装解除、というべきでしょうか。たしかに関節部や接続部など、機体フレームそのものにはVPS装甲はありません』

「それはそっちも……同じだろっ!」

 

 一度はぐしゃりと地に倒れ伏したストライクノワールだが、まるでブレイクダンスのように両足を振り回しながら跳び上がり、バルバトスの懐へと飛び込んでくる。逆手に構えたフラガラッハ3で狙うのは、ナノラミネート装甲のない、大きく露出した腰部フレーム。左右のビーム刃で挟み込むように、二刀を一息に振り抜いた。

 

「ぶった斬られろおおおおっ!」

『天龍、勝負をかけた二刀流です。逆転なるか――ならない!』

「そんな攻撃、当たんないわよっ」

 

 ふわり――バルバトスはメイスを棒高跳びの要領で地面に突き立て、足先が天を向くアクロバティックな姿勢で宙を舞っていた。そのまま右手が滑空砲を掴み、その砲身をストライクノワールの背中――ストライカーパック接続部が破損し、フレームがむき出しになっている――に押し付ける。

 

「滑空砲、ってー!」

 

 ガオォンッ! 滑空砲、零距離射撃。ストライクノワールの内部を衝撃波が吹き荒れ、ビクンと電撃が走ったように機体の四肢が跳ねる。背中に大穴を開けたストライクノワールは、それっきりまったく動かなくなった。

 

「ふふん、雷の勝利ねっ。司令官のために頑張ったわ――って、今は私が司令官か」

 

 着地したバルバトスはメイスを振り上げ振り下ろし、ガンプラのパッケージ絵と同じ決めポーズをとった。その背後に、キラキラと輝く『YOU WIN』の文字がポップアップする。

 

『勝者、雷提督・ガンダムバルバトス。決まり手は、滑空砲零距離射撃です』

『BATTLE ENDED!!』

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

「……お疲れ様です、雷」

「うん。ありがと、不知火」

 

 バトルが終わり、半泣きになった天龍が龍田たちに慰められながら出て行ったあと、提督執務室に残っている艦娘は二人だけだった。

 白い軍装に身を包み、大きすぎる提督用の執務椅子に半分埋まるようにぐんにゃりと座っている雷。そしてクリップボードを片手に、書類の束の仕分けをしている不知火だ。

 

「これから忙しくなりますね、雷。ガンプラバトルとはいいところに目を付けましたが……提督不在の間、あなたにかかる負担が大きいことには変わりはない」

「ううん、いいのよ。司令官が私に任せてくれたんだもの。雷、司令官のためにがんばっちゃうわ!」

「そうですか。ではまずは、こちらの書類に署名と押印を。遠征計画の立案と出撃艦隊の編成。哨戒ルートの見直し計画。工廠への視察と指示。間宮から物資の追加要求も来ています。それから……」

「うっ……ね、ねぇ不知火。それって今すぐやらなきゃ……ダメ?」

「ええ、すぐにでも。……なんです雷、その顔は。不知火に何か落ち度でも?」

 

 不知火は雷の返事も待たずに、執務机に書類の束をどさっと置いた。朱肉と提督代行の印鑑、羽ペンとインク瓶を素早く用意し、次の書類を胸に抱えた状態で、執務机の脇に控える。

 

「実戦部隊では雷が最古参かもしれませんが……秘書艦歴では、不知火が鎮守府で一番です。さあ仕事ですよ、雷提督」

「よ、よぉ~しっ。雷、がんばっちゃうからねっ」

 

 雷は袖まくりをして、羽ペンを手に書類の山と向き合った。

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

 ザッ、ガッ、ピー……ザザッ……

『雷……私の愛する雷。君がこのビデオレターを見ているころ、私は鎮守府にはいないだろう。

 ある理由により、私は少しの間、鎮守府を離れることとなった。

 本当に申し訳なく思う……だが、申し訳ないついでに、君に一つ、頼みごとをしたい。

 私が不在の間、艦隊の全指揮権を君に預けたい。

 我が鎮守府最古参にして、私の初めてのケッコンカッコカリ相手である君にしか、こんなことは頼めない。

 どうか、引き受けてくれないだろうか。

 艦隊の運営は、心労の多い仕事だ――士気の維持向上、兵站の管理配当、雑多な事務処理――だが君ならば、必ずやり遂げてくれると信じている。

 もしもストレスが溜まったら、私の部屋のバトルシステムを使ってくれて構わない。ガンプラバトル大会でも開くといいだろう。

 我が鎮守府には、スミ入れもまともにできないような艦娘は、一人もいない。艦娘全員に、私の全てを賭けてガンプラ英才教育を施したと自負している。

 何か困ったことがあれば、不知火に相談するといい――彼女もまた、最古参の一人。ケッコンこそしていないが、私の信頼する艦娘の一人だ。

 あぁ、しかし勘違いしないでくれ。私が本当に愛しているのは、雷、君だけだ。帰ったらまたひざまくらを――』

『あっ、こっちだ! 見つけたぞーっ!』

『アイエエ!? 憲兵=サン!? 憲兵=サンナンデ!?』

『何を白々しい! さあ、少し話を聞かせてもらいましょうか。黒タイツ着用の駆逐艦とばかりケッコンを繰り返している件について!』

『な、なにを言う、濡れ衣だ! 私は黒ニーソ駆逐艦ともケッコンしている!』

『えぇい、それが変態だというんです! そんな提督、修正してやる!』

『ちぃっ、三十六計逃げるに如かず! 雷、私は必ず帰る! それまで待っていてくr』

 ブチッ、ザザーッ、ガッ。ピー……ピー……

 




 みなさんこんばんは。初めましての方、ありがとうございます。亀川ダイブです。
 
 本作品は、私のもう一つの連載作品『ガンダムビルドファイターズ ドライヴレッド』の執筆中の息抜きとして書いたものです。よって、今後も更新は超絶不定期を予定しております。どうか気長にお付き合いいただければ幸いです。
 
 いやしかし、好きなもの同士を好きなように組み合わせて執筆するって気持ちが楽でいいですね。二次創作のいいところだよなあ、こういうの。

 感想、批評等いただければ嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。
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