雷が提督に着任したわ! これより艦隊の全ては、ガンプラバトルで決定するわねっ!   作:亀川ダイブ

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第参話『暴食のナイチンゲール』

 ある日のガンプラ鎮守府。

 資材の備蓄を確認していた不知火は、クリップボードに留めた書類と、目の前の資材の山を何度も見比べ、そして深い深いため息をついた。

 

「ふぅ。また〝彼女〟ね……」

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

「……へぇ、書類上の備蓄量と合わない。不思議なことがありますね」

「白を切るなら、せめて唇の食べかすをぬぐってからにしなさい、赤城」

 

 雷提督のいない執務室。いつも以上に不機嫌な顔をした不知火と、澄ました顔で白を切る赤城とが、ソファに座って向き合っていた。応接机に出された日本茶とお茶菓子は、赤城側だけ空っぽになっている。

 

「その手には乗りませんよ、不知火さん。私がボーキサイトをいただくときには、一欠片すら食べ残しません」

「私がいつ、足りないのはボーキサイトだと言いましたか?」

 

 ゴゴゴゴゴ……ッ!

 二人が発する無言の圧力に押されて、日本茶の水面がざわざわと波立ち、湯呑にピシッとヒビが入った。片や、駆逐艦離れした殺人的な眼光。片や、慢心ともとれるほどの余裕の微笑み。

 

「正規空母たちの姉役であるあなたがそんな体たらくでは、鎮守府全体の士気に関わる。風紀粛清の対象となりうる事態です――鎮守府七大罪〝暴食〟の赤城」

「あらあら、そんな古い名前まで持ち出さなくても……私は、知らないものは知りません」

 

 落ちついた声で言い切り、赤城は不知火の分のお茶菓子をぱくりとほおばった。口の中に広がる甘味に、幸せそのものという満面の笑みを浮かべながら、包み紙をきれいに折りたたんで皿に戻す。

 

「どうしても、私のせいにしたいのなら――」

 

 刹那、赤城の表情がすっと引き締まる。赤城はどこから取り出したのか、高級和菓子でも入っていそうな風呂敷包みを応接机の上に出し、するりと結び目をほどいた。

 その中に、あったのは――

 

「――このナイチンゲールに勝ってからにしてくださいね」

 

 赤城のイメージカラーと同じ、赤に塗られた異形のモビルスーツ。ただでさえ大柄なボディに、大きく前後に張り出した装甲やバインダー、プロペラントタンクの数々。肩部装甲のようにも見える大型バインダーユニットには、円錐形の大型ファンネルが左右で計十基、まるで剣山のように突き立っている。

 小説版・逆襲のシャアに登場し、現在ではサザビーの後継機として広く認知されている真紅の異形、ナイチンゲールのガンプラであった。

 

「いいでしょう。ただし、雷提督がお風呂から戻るまでです」

 

 不知火はすっと立ち上がり、執務机の例のボタンを押した。

 ヴィィィィィーーン……ッ! 床板がぱかっと割れ、ソファと応接机がレール上をスライドして壁際へと消えていく。赤城は慌ててナイチンゲールとお茶菓子を応接机から持ちあげ、お茶菓子を口に放り込んで幸せそうにほおを緩ませながら飲み込んだ。

 

「まったく……一航戦の誇りはどうしたのです」

「それは今からお見せするわ、不知火さん。ガンプラバトルでね」

 

 床下から姿を現したバトルシステムに、赤城のGPベースとナイチンゲールがセットされる。

 

『Beginning Plavsky particle dispersal』

 

 ぶぉん……プラフスキー粒子が散布され、バトルシステムが起動した。

 

『GANPRA BATTLE.Combat Mode. Damage Level,Set to A.』

 

 機械音声が、まるで不知火を急かすようにバトルの準備を進める。

 不知火は窓際のキャビネットから自分のGPベースとガンプラを取り出し、バトルシステムにセットした。

 夜空色のボディに、真紅の両肩。陸戦型ガンダムをベースにしつつも、全身各所に空間戦闘に対応したバーニアスラスターや追加武装が施されたガンプラ。

 ブルーディスティニー2号機。ジオンに強奪された〝戦慄のブルー〟の一機である。

 

『Field2, Satellite orbit.』

 

 プラフスキー粒子が満ち、二人の艦娘と二つのガンプラを包み込む執務室は、広大な宇宙空間へと変貌した。遠くには軌道エレベーターや円筒形のスペースコロニーが見え、眼下には青い地球がその威容を湛えている。今回の作戦領域(フィールド)は、地球衛星軌道宙域のようだ。

 

艦載機(ファンネル)を飛ばすにはいいフィールドね。……よかったわ、不知火さん。雷ちゃんがお風呂を出るまでに、無事に勝負は決まりそうです」

「慢心は敗北を呼ぶわよ、一航戦・赤城」

 

 不知火はコントローラをぎゅっと握り、鋭い目つきで戦場を睨んだ。

 カタパルトのシグナルが変わっていく。赤、赤、――青。

 瞬間、凄まじい加速度で、二機のガンプラは射出された。

 

「不知火。ブルーディスティニー2号機。出撃します」

「一航戦、赤城。ナイチンゲール、出ます!」

『BATTLE START!!』

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

「んく、んく、んく……ぷはーっ。くぅ~~~~っ♪」

 

 湯上りほかほか、バスタオル一枚きりの雷が、ビン入りのコーヒー牛乳を一気飲みしていた。

 大規模作戦も終わり、長風呂の戦艦・空母勢がいないここ数日、鎮守府大浴場は意外なほどに空いている。今も雷は、遅めのお風呂を貸し切り状態で楽しんできたところだった。

 

「うん、やっぱりお風呂上りはコレよねっ。あ~あ、司令官、早く帰ってこないかなぁ……また牛乳早飲み競争したいなぁ……」

 

 雷は、空っぽになった牛乳ビンを寂しげに見つめる。

お風呂上がりの恒例行事だった、第六駆逐隊対提督での早飲み競争。みんなコーヒー牛乳だったが、暁だけはフルーツ牛乳での参加。毎回、優勝は提督で、最下位は暁だった。暁は一人前のレディはどうたらこうたらと言い訳をしていたが、五回に一回はむせかえって鼻から牛乳を垂らすレディなどいるものか、と提督から突っ込まれていた。

 

「そういえば最近、みんなともお風呂バラバラね……」

 

 思い返せば、提督代行に着任してからこっち、六駆の姉妹たちともお風呂は別々だった。

 

「よしっ、決めた! 明日はみんなでお風呂パーティーねっ♪」

 

 黒目がちな瞳にぱっと星マークを輝かせ、雷は牛乳ビンを回収箱にぽんと置いた。

 そのときだった。脱衣所の端に置かれた古めかしいブラウン管のテレビに、ぐぽーんと電源が入った。

 

『あー、あー、ワレアオバ、ワレアオバ。ども、恐縮です、青葉ですぅ!』

 

 画面には、インカムをつけて解説ブースに着席した重巡・青葉の姿が映されていた。さらにその背後には、たった今、カタパルトから飛び立った二機のガンプラ――真紅の異形・ナイチンゲールと、戦慄のブルー・BD(ブルーディスティニー)2号機の姿が。

 

「あの機体は……赤城ちゃんと不知火!?」

『さーてさてさて、始まりました第三回鎮守府内ガンプラバトル! しゅざ……いえ、実況解説は、僭越ながらこの青葉が務めさせていただきまーすっ!』

 

 きらりん、と星の飛びそうな元気いっぱいのウィンク、そして横ピース。当鎮守府の実況解説係、お決まりのポーズである。

 

『今回戦いますのは、この二人! まずはっ、鎮守府の全てを知り尽くした筆頭秘書艦、深海棲艦は目で殺せ(物理)! この駆逐艦に落ち度はないぞ! 陽炎型2番艦、駆逐艦・不知火だぁーっ!』

 

 青葉のハイテンションな選手紹介とともに、BD2号機がアップで表示される。原作とは違い、ビームライフルを両手に一丁ずつ装備。シールドも、両腕に一枚ずつの装備となっている。

 

『対するは! 誇り高き一航戦、我が鎮守府空母勢のお姉さん! その二つ名は物騒にも、鎮守府七大罪〝暴食〟の赤城! 赤城型1番艦、正規空母・赤城だぁーっ!』

 

 何度見てもモビルアーマーにしか見えない巨大な異形、真紅の墓場鳥(ナイチンゲール)が衛星軌道を翔ける。バインダーから射出されたファンネルが、空母から飛び立った艦載機のように、ナイチンゲールの周囲を護衛しながら敵機(エモノ)を探している。

 

「まったくもー、何があったのかしら。私がいないとすぐケンカするんだから!」

 

 雷はバスタオル姿で腕組みをし、ぷんすかと頬を膨らませる。しかしその表情はとても柔らかく、どこか満足げにも見えた。

 

『それでは参りましょーう! ガンプラバトルぅ……レディー、ゴぉーーっ!』

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

「第一次攻撃隊……敵はあそこです、行きなさいっ!」

 

 ヒュンヒュン――ビイィィッ!

 目にも止まらぬ高機動で、ファンネルたちがBD2号機に襲い掛かる。細く絞り込まれた高出力ビームが四方八方から降り注ぐ中を、不知火は眉一つ動かさずに翔け抜けていた。

 

『さすがは華の一航戦! 赤城選手のファンネルさばきは、まるで艦載機を運用するがごとくです! しかしながら不知火選手の回避機動も負けていない、いまだ一発の被弾もないぞーっ!』

「ファンネルの制御が甘い。これでは、抜けてくれと言っているようなものね」

「ええ、そうですよ――ここです!」

 

 ファンネルによるビームの檻を抜けた先に、ナイチンゲールが待ち構えていた。腹部メガ粒子砲にプラフスキー粒子が収束し、圧倒的なビームの奔流が吐き出された。まばゆい閃光がBD2号機のモニターを焼くが、不知火はむしろそのビームの中へと飛び込んでいった。シールドを一枚まるごと犠牲にして、ナイチンゲールに肉薄。

 

「砲撃、開始」

 

 手を伸ばせば触れるほどの近距離で、二丁のビームライフルを連続発射。ナイチンゲールを直撃するが、その巨体の前には針で刺した程度のダメージしか与えられない。

 

『ナイチンゲール、ビームライフルの直撃をものともしません! なんという装甲、ジオン驚異のメカニズムだぁーーっ! まるで格闘技の体重差のように、18m級のブルーディスティニーでは、30m近いナイチンゲールに有効打は与えられないのかーーっ!?』

「その火力では、このナイチンゲールの相手は厳しいようですね」

 

 赤城は被弾しながら悠々とビームトマホークを抜刀、横薙ぎに振り抜いた。距離を取ってかわすBD2号機に、追撃のファンネルが迫る。ナイチンゲール自身もシールド裏からマイクロミサイルを放ち、ビームとミサイルの弾幕で、BD2号機を追い込んでいく。

 シュババッ、ドォン――ヒュンヒュン、ビイィィッ!

 

『不知火選手、防戦一方! 反撃のチャンスは見つからないかーっ!?』

「……青葉。まだまだあなたの実況は三流ね」

 

 不知火は左右のライフルでそれぞれ違うファンネルを狙い撃ち、撃墜。同時に頭部バルカンでマイクロミサイルを迎撃し、胸部バルカンと有線ミサイルまでも同時発射して、さらに二基のファンネルを撃ち落とした。

 

「誰が防戦一方なのかしら?」

『―――絶技! 鮮やかな迎撃です! ナイチンゲールのファンネルを、一瞬で半数近く撃ち落としたぞーっ! 青葉はお詫びと訂正をしなければなりませんっ。不知火選手、余裕の笑み……笑み……? いや、余裕の仏頂面だぁーーっ!』

「だからって、私の優位は揺るぎません!」

 

 ミサイルの爆煙を吹き散らす、バーニアスラスターの炎。ナイチンゲールがビームトマホークを振りかざして、BD2号機へと突っ込んできた。

 

「まだ六基のファンネルと、このナイチンゲールの出力があるんです!」

 

 ファンネルで牽制し、トマホークを振り下ろす。不知火はBD2号機を巧みに操り回避し続けるが、何度目かの攻防でシールドにトマホークを受けてしまった。高レベルのABC(アンチビームコーティング)を施されているはずのシールドが、たった一撃で大きく抉られた。

 

「あら、いい攻撃。やるわね」

 

この損傷では、もうビームの一発にも耐えられないだろう。無用の長物(デッドウェイト)と化したシールドを、不知火は躊躇なく廃棄(パージ)、ナイチンゲールに向けて蹴り飛ばす。

 

「ファンネルっ!」

 

 赤城の叫びに応じて、ファンネルたちが一斉にシールドに群がりビームを放つ。ビームコーティングの剥げ落ちたシールドはズタズタに引き裂かれ、宇宙の藻屑と成り果てた。

 その瞬間を狙い、不知火は最後の有線ミサイルを発射、ファンネルを一基撃墜する。これで五基、ナイチンゲールのファンネルは残り半分だ。不知火は両手のビームライフルを連射しながら距離を取るが、その途中で画面に警告が表示される。

 ――ビームライフル、残弾僅か。撃ち過ぎたか。

 

『おーっと不知火選手、シールドに続いてビームライフルまでも手放したーっ! 思い切りの良さはいいのですが、これでBD2号機の武装はバルカンとビームサーベルのみっ。重装甲高火力のナイチンゲール相手に、いったいどうやって戦うつもりだーっ!?』

「ナイチンゲールを落とすには、火力が足りなかったようですね!」

 

 赤城は勝利を確信し、ナイチンゲールにファンネルを戻し、メガ・ビームライフルを構えさせた。照準の先のBD2号機は、ビームサーベルを抜きもせず、脱力したように衛星軌道を漂っている。

 

「私が勝ったら、つまみ食いの件は見逃してもらいますよ!」

「やはり、あなただったのね」

「うふふ、口が滑りました……でも私が勝てば、すべては!」

 

 メガ・ビームライフルにプラフスキー粒子が収束し、ナイチンゲールの指がトリガーにかかる。赤城がにっこりとほほ笑んで、勝利を宣言しようとした、その時だった。

 

「……もう雷も、お風呂から上がっている時間ね」

 

 ――キュイィィィィン!

 戦慄のブルーが、赤い光を身に纏った。

 

《Exam-System,Standby.》

 

 赤城の目には、その瞬間が見えなかった。いつの間にかメガ・ビームライフルの銃身が真っ二つに切り裂かれていて、ナイチンゲールの背後にビームサーベルを抜刀したBD2号機がいたのだ。

 

『えっ……今、何が……あ、青葉、見えませんでしたっ!?』

「ふ、ふふ……やっぱりそう来るのね、不知火さん……!」

 

 赤城の頬に、つーっと一筋の冷や汗が流れる。大破したメガ・ビームライフルを投げ捨て、ビームトマホークを引き抜きながら振り返る。

 そこにいるのは、両目を赤く染めたBD2号機――EXAM、発動状態である。

 

「鎮守府七大罪――〝憤怒〟の不知火!」

「古い名前ね。やめてちょうだい」

 

 野性剥き出しで飛びかかるBD2号機を、赤城はトマホークで迎え撃つ。大型機故の高出力を誇るはずのビームトマホークが、BD2号機の暴走ビームサーベルに押し負ける。撃ち合うたびに、真っ赤なビームの粒子を散らして、暴走ビームサーベルがナイチンゲールに迫り来る。

 

『な、なんという連続攻撃! 不知火選手、いつものクールな武人然とした立ち振る舞いからは想像できない、野性的な戦闘スタイルだーーっ! 悲鳴を上げる自機の関節部にも一切構わず! 暴走し、赤く染まったビームサーベルで、斬るというより叩く! 叩いて叩いて叩いて叩くぅーっ! 赤城選手のさっきまでの優勢が、嘘のような試合展開だぁーーっ!』

「ふぁ、ファンネル! 頼みます!」

 

 赤城はファンネルを展開、自分を巻き込むのも覚悟で至近距離のBD2号機に向けてビームを撃たせる。しかし、

 

『不知火選手、まるでニュータイプのような回避っ! ファンネルの射撃はナイチンゲール自身を直撃っ、赤城選手、痛恨のミスだーっ!』

 

 BD2号機は背中にも目があるかのようにファンネルを回避し、そのビームはナイチンゲール自身を直撃した。右手の指が飛び、トマホークが使えなくなる。赤城の表情に焦りの色が混じる。

 

「徹底的に、追い詰めてやるわ」

「なっ、何を……っ!?」

 

 BD2号機はナイチンゲールの巨大なバインダーに暴走ビームサーベルを突き立ててしがみつき、その関節部分に向けて、頭部と胸部のバルカンをゼロ距離で撃ちまくった。シリンダーや動力パイプが弾け飛び、火花を散らしてフレームが穿たれる。

 ズガガガガガガガガガガガガガバッキャアァァッッ!

 

『お、折れたぁーーっ! ビームライフルの直撃にも動じなかった重装甲のナイチンゲール、その関節部が! バルカンで! バッキャリと折れてしまいましたぁーーっ!』

「くっ……一航戦の誇り、こんなところで失うわけにはあぁっ!」

 

 赤城はナイチンゲールの推進力に任せて機体を振り回し、BD2号機を振り払った。バインダーを一枚失い機体バランスは崩れているが、そんなことに構っていられない。即座に姿勢を立て直して突っ込んでくるBD2号機に、ファンネルを差し向ける。牽制射撃で時間稼ぎをしつつ、赤城は腹部メガ粒子砲にプラフスキー粒子を充填させた。充填率、50%……60%……70%……機体損傷の影響か、チャージが遅い。その間にもファンネルたちはBD2号機に切り払われて、もう残り二基、一基……全滅した!

 

「ま、間に合わ……」

「沈め」

 

 ザシュウゥゥンッ!

 メガ粒子砲の砲口を、真っ赤な粒子を散らす暴走ビームサーベルが貫いた。

行き場を失ったプラフスキー粒子の高エネルギーがナイチンゲール内部を駆け巡り、荒れ狂い――真紅の異形は、内部から膨れ上がるようにして、爆散した。

 

『き、決まったぁーーっ! EXAMシステムを発動したBD2号機、不知火選手の勝利です! 決まり手は、暴走ビームサーベル一本突きだぁーーっ!』

『BATTLE ENDED!!』

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

「では、雷提督。ご一考のほど、重ねてお願い申し上げます」

 

 そう言って深々と頭を下げ、正規空母・加賀は執務室を後にした。

 

「加賀ちゃんもああ言っていることだし……そろそろ許してあげてもいいんじゃない、不知火?」

 

 雷は執務椅子をくるりと回して、執務机横に背筋の伸びた姿勢で立つ不知火に問いかけた。

 ガンプラバトルに負けた赤城は、いままでのつまみ食いの件を正座で三時間ほど不知火に説教されたうえ、一週間のおやつ禁止令が言い渡されていた。それから三日、ゾンビようにげっそりとやせ細り、まるで深海棲艦のように青白い顔で間宮食堂の前を行ったり来たりしている赤城の目撃談が、艦娘たちの間で怪談話のようにささやかれているという次第だ。加賀の雷への直訴も、姉妹艦として見るに見かねて、というものだった。

 しかし不知火は、まったく取り付く島もない様子で、雷の前に次の書類を置くのだった。

 

「赤城さんのつまみ食いは、昨日今日の話ではありません。雷、あなたには……司令を相手にしている時も同じだけれど、もっと厳しさが必要ね」

「も~う、不知火は厳しすぎるのよっ。赤城さんのおやつ禁止令は、現時刻を持って解除とする! これは提督代行としての命令よっ、いいわねっ?」

「……はい。まあ。雷が、そう、言うのなら」

「ふふん、よろしいっ!」

 

 雷はにこっと太陽のように笑い、いつもは遅い書類へのサインをさらさらっと書きつけると、提督代行のハンコをぺたんと押して、不知火の胸に押し付けた。赤城のおやつ禁止令、解除の書面だ。

 不知火は不服そう眉間にしわを寄せながらも、諦めたようにため息を一つ、書類を受け取った。

 

「では、加賀に伝えてもらいましょう――まだそこいらにいるでしょう。渡してきます」

「うんっ、よろしくっ。あ、それと不知火っ!」

「なんです、雷。不知火に何か落ち度でも?」

 

 振り返った不知火に見せつけるように、雷は執務机の上にお風呂セットを取り出した。

 

「今日はお仕事終わったら、いっしょにお風呂入るわよっ。牛乳早飲み競争もするんだからねっ!」

 

 いたずらっぽい笑みを浮かべてウィンク、バッチリ親指を立てている。

 不知火は眉間のしわをふっと緩め、はあっとため息を一つ。

 

「わかりました。雷が、そう、言うのなら」

「髪、洗ってあげるから、シャンプーハット忘れちゃだめよっ」

「……陽炎型は、もう全員シャンプーハットは卒業しています」

「え、えぇっ!? ほ、ホントにっ!?」

 

 ――その日の早飲み競争は、不知火の圧勝だったらしい。

 




 クリスマスなんてなかった。(断言)
 ……いや、ありましたよ! 家族サービスって大切だなぁ、としみじみ思いました。
 
 それはともかく、雷提督第参話です。今回はぬいぬいに戦ってもらいました。鎮守府七大罪なんてものが出てきましたが、あとの五つは決まっていません。まあ艦これ二次創作でよくあるキャラ付けを当てはめようとは思っているのですが……どーしましょー。アイデア求ム!!(笑)

 赤城さんが使ったナイチンゲールは、HGのサザビーをベースに改造したもの、という設定です。RE/100シリーズでナイチンゲールは出ていますが、やっぱりGBFでは1/144だろうということで。
 腹部メガ粒子砲の設定はガンダムにはよくある後付なので、RE/100にはないんですよね~。HGのサザビーベースだからこそ、ということで。
 ぬいぬいの機体はけっこう悩みましたが、BD2号機でよかったかと。EXAMシステムの、お話の展開上の便利さよ。(笑)


 ああ、ドライヴレッドの方の続きも書かないと……なんとなく雷提督のほうを書いてしまう……!!
 今後も不定期更新が続きますが、お付き合いいただければ幸いです。感想・批評もいただければ喜びます!!
 
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