ハイスクールD×F 蒼穹のフェストゥム   作:HA.KO3

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第11話 特訓〜という名の憂さ晴らし〜

 

 

 

 

 

 

「なぁ辰宮、俺は部長たちと離れて何をするんだ?」

 

僕達はリアス達とは約20キロほど離れた小さな小島…といっても人が三人入れば狭く感じるくらいの岩場のような所だ。周りは一面海、少し遠くに僕等が居た島が見える程度の距離。

イッセーは小島の上でキョロキョロしながら僕に授業内容を聞こうとする。

正直聞くのはオススメしない。

ここならどれだけ暴れてもリアス達には何も被害は無い。因みにリアス達は民家とかがある場所で特訓している。

だから僕もそれなりに全力で殴れる(・・・)

 

「…ん…」

 

僕はイッセーの前で構えを取る。いわゆるファイティングポーズというやつだ。

 

「え?俺と…辰宮が闘うのか?」

 

「…そう…」

 

「って言ってもさぁ…《ボゴォォ!!!!!》」

 

 

イッセーは構えない様子だったのでとりあえず顔面に1発ぶち込んでみる。

個人的には軽く小突いた程度なのだが、それでもイッセーは己の体を余す所なく使いながら海面で水切りをして飛んでいった。

水切りが落ち着くとそのままブクブクと海の底に落ちていった。

ふむ。これでは僕がイッセーにやらせたい事はまだまだ時間が掛かりそうだ。

 

「…あ…とりあえず回収…」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

3時間後

 

起きたイッセーを再度吹き飛ばしK.O

 

さらに2時間後

 

起きたイッセーを(以下略)

 

さらに2時間後

 

〜中略〜

 

 

 

 

計3日経過【実時間24時間経過】

 

 

「ちょっ!辰宮!待って!!」

 

ビュオォン!ビュオォン!

 

 

イッセーが避けた拳は文字通り空を切りながら旋風を巻き起こす。

イッセーは飲み込みは遅いが“成長”は早い。

頭で覚えるのはかなり時間が掛かるが体に染みるのが早いのだ。これは一種の才能だろう。

 

 

その証拠に“生き残る為”に生存本能が身体に空中移動を“無理矢理”させている。

 

 

イッセーは理論や口で説明するよりこうやって身体と本能に刻み込んだ方が早い。祐人との訓練を見ていて確信した。僕もその方が楽で良いし…。

イッセーは僕の拳を見事に2発ほど避けた。だが、直ぐに集中力が切れて…

 

 

ドガンッ!!!

 

 

3発目の拳が当たってしまった。イッセーがなんとか空中で踏ん張り、吹き飛びはしないものの完全に意識は落ちている。

海に叩き込んで無理矢理起こす為に拳を握りこむ。だが、そこでイッセーに変化が起こる。

 

ギュンッ!!

 

意識が無い(・・・・・)にも関わらず、イッセーは空中で仰け反り、僕の拳を避ける。

 

そして流れるように回転し、そのまま僕に体当たりをかましてきた。

 

ガッ!

 

だけど僕も痛いの嫌だからイッセーの頭を掴んでそれを止める。

 

「…ん?あれ?俺は…」

 

どうやら意識が戻ったようだ。目を回しながら周りを見回している。器用な奴だ。

 

ようやく形になって来た。

 

そう、僕がイッセーにやらせたかったのは意識が無い状態…つまり“無意識下”での回避と反撃を行うことだ。

 

ゴキブリ

 

という害虫を知っているだろうか?

よく台所とかジメジメした薄汚い所に住み、物凄い生命力を持つ…あれだ。

先日朱乃がゴキブリが出てきた時にわざわざ雷を使って消し炭にしていた。

何故そこまでする?と聞いたら、

 

「あの害虫は生命力が凄まじいのですわ。だから100パーセント再起不能という必殺の一撃を与えなければなりません…」

 

と真剣で必死な顔で言っていた。敵をいたぶるのが好きな朱乃が“一撃☆必殺”を信条にする程の虫だ。

とても気になってしまったので本を読んで調べてみた。確か『ふぁーぶる昆虫記』なるものだった気がする。

そうしたら面白い項目を目にした。

 

ゴキブリは頭を切られても、そのまま1週間は生活し続ける。

しかもその死因は、頭を切り取らたことによるダメージからくるものではなく、

 

『餓死』

 

であるらしい。

 

それならば同じゴキブリくらいの生命力と根性を持ち合わせるイッセーにもできるのでは無いかと思い、生存本能が勝手に身体を動かしてくれるようにイッセーを何度も気絶させ続けていたのだ。(※根拠はありません)

ちゃんと身体に限界がきたら同化能力で回復しているから大丈夫だ。(※根拠はありません)

お陰で効果はあったようだ。元々虫にできることが人間にできない筈は無い。(適当)

 

そして戦いにおいて最も恐怖する相手、それは

 

 

倒れない相手

 

 

である。

どれだけ攻撃しても倒れない相手ほど恐怖したくなる相手はいない。それが自分の理解の外であり、己の技で倒れない場合は尚更だ。

ではその先の…

 

 

 

倒れても戦う相手はどうだろうか?

 

 

イッセーは理性よりも本能で行動するタイプだ。よく行うスケベ行動がその最たる例であろう。理性を押し退け女性に対して過剰に反応している。だから理性に訴えるよりも本能に刻み込んだ方が余程早い。

そうしてこの特訓が生まれた。

これでイッセーは修行のスタートラインに立てたのだ。

個人的にはもっと時間が掛かるものと思っていた。

 

目が使えないならば聴力と嗅覚で避ければ良い。

 

五感が使えないならば本能で避ければ良い。

 

本能が作動しないならば避ける事を刻み込んだ肉体に避けさせれば良い。

 

「な、なるほど…。そういう事だったのか…でも一言言っておいて欲しかったぜ…」

 

イッセーは溜息を吐きながら肩を落としていた。ボコボコにされているだけなので強くなっている実感が湧かないことにかなり複雑な心境なのだろう。

 

「…言ったら絶対逃げる…」

 

「そりゃ逃げるわ!!こんな恐ろしい特訓聞いた事ないぞ!!俺はてっきりドライグへの復讐だとばかり…」

 

「…それもある…」

 

「それもあるの!?!?!!?!?」

 

あ、つい口が滑ってしまった。慌てて口をふさぐがもう遅いようだ。

 

「ちくしょう!!!!このクソドラゴンが!!お前のお陰で俺のメンタルは既にボロボロだよ!!!ライフはゼロだよ!!!!」

 

『誰がクソドラゴンだ!!!!

それにお前の痛みは俺も共有してるんだよ!!もっとちゃんと避けろよ!!!お前は気絶できるだろうけど俺はできないんだ!!肉を捻られ骨が折られる感触を何度味わったことか…』

 

実は少しだけワーム・スフィアを使っちゃった…。てへ…。

 

「……なんか…ごめん…」

 

『……いや…こっちこそ…』

 

何やら変な空気になっている。まぁ、気絶できれば多少なりとも軽くなるが気絶できないのは辛いことだろう。

よっしゃ。

 

「…今辰宮が何考えたか分かった気がした…」

 

む?今回の特訓で読心も会得できたのか?それはすごい…。

 

「…とりあえずこれを繰り返す…。…1週間くらい経てば意識がある状態でも感覚的に避けられるようになる…たぶん…」

 

「うおぉい!!最後ので一気に不安になったぞ!!」

 

取り敢えず蹴りも混ぜる事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

計2週間と5日経過【実時間152時間経過】

 

残り2日【実時間16時間】

 

 

 

 

 

「…イッセー、どんな修行をしていたの?なんて野暮なことは聞かないわ…祐人と戦って“最強”の【黄金の虚無】に鍛えられたその成果!!私達に見せてみなさい!!」

 

ライザーとの決戦が残り2日に差し迫った事で特訓の成果を見せ合おうという話になり、ポラリスとイッセーはリアス達のいる場所に来ていた。

 

「…辛かった…何度死にたいと思ったことか…もう俺を起こしてくれるこの綺麗な海を嫌いになりそうだ…」

 

イッセーはあまりの過酷な特訓でジャージはノースリーブになり、身体中傷だらけ、ついでに殴られ過ぎて肉体が少しでもポラリスの拳を耐える為に筋肉が少しだけ発達されていた。

 

「…なんか内容が気になってきたわね…」

 

リアスはイッセーの姿と島の向こう側から時たま聞こえてくる轟音により、イッセーの修行の内容が気になり始めていた。

 

「…じゃあイッセーくん…本気で行っていいんだね?」

 

「おう!!俺も辰宮の地獄のしごきに耐えたんだ…この前みたいに簡単には負けねぇぜ!!!」

 

闘志の籠った二人の瞳が交差する。

 

「では…始めっ!!!!」

 

リアスの掛け声と同時に祐人が自慢のスピードをフルに活かして木刀をイッセーに振り被る。

 

ガッ!

 

しかしその一撃はイッセーに届く事はなく、イッセーは祐人の木刀を左手の掌底で横にそらし、ガラ空きの祐人の顔面に拳を当てようと殴りかかる。

 

ブンッ!!!

 

だが、その拳も空を切り、祐人は身体の重心を後ろにしてなんとか避け切った。

 

ババッ!

 

二人はほぼ同時に間隔を空ける。

先に攻めた祐人は若干息が切れており、対してイッセーは目をパチクリさせていただけであった。

 

「あ、あっぶねー!今の完全に見えなかった!!」

 

「え!?イッセーくん今の見えてなかってのかい!?」

 

イッセーの発言に、祐人は驚きを隠せていないようだ。

つまりは見えていないにも関わらず、自分の最速の一撃を避け切り、その上拳で反撃までしてきた。

 

「当たり前だ!!いくら辰宮の拳を何回も受けたとはいえ俺に木場のスピードなんて見切れる訳ねぇじゃんか!!」

 

自信満々に胸を張り言い放つイッセーの姿はボロボロのジャージと相まってなかなかにシュールだった。

普通あれだけ打てば目もなれることだろうと思っていたポラリスだが、イッセーの才能の無さは此処で発揮されると今知ったのだった。

 

「じゃ、じゃあ…今のを直感で避けたのかい?」

 

「へへっ!まぁずっとその特訓だったしな!お陰で辰宮のラッシュも5発までなら自力で避けられるようになったぜ!!」

 

自力で(・・・)なら…。

イッセーの成長が凄まじ過ぎてその言葉の意味を…彼女達は理解できていなかった。

何せいつの間にか祐人のスピードの乗った一撃を避けて、反撃するまでに成長していたのだ。この前まで手も足もどころか完全に赤子の手をひねるが如しだった彼が…だ。

もちろん祐人が成長していないわけではない。むしろポラリスとの一戦を経験して、自分の課題を見つけてそれをこなしてきたはずだ。にも関わらずイッセーはそれに追い付いてきたのだ。しかも、祐人がイッセーの反撃を避ける事が出来たのは、単なるマグレであった。

 

「…凄まじい…ってものじゃないな…」

 

見て聞いただけでは地味に感じるだろう。何せ本人自身の地力が強くなった訳ではない。

その上相手の攻撃を避ける、地味に感じるのも無理はないだろう。だがイッセーは最強の拳を何度も避け切るほどの回避能力を持ち、それを持続する継続能力も維持できる。

それにポラリスの拳や蹴りを受けすぎて尋常じゃないほどタフネスになっている。

生半可な攻撃では倒れないだろう。

その恐ろしさを、対峙した祐人は理解してしまった。

この技術の恐ろしい所は、その恐ろしさを相手が理解してしまうところにある。

見えている訳ではないのに避けられる。つまりは不意打ちも闇討ちもイッセーには実質効果がないということだ。

どれだけ死角をついた一撃でも、本能で避けられる。

 

当たらない。

 

というものほど歯がゆい事はないだろう。攻撃が当たらないことへの焦りと苛立ちは溜まり続ける上に、その内当たっても効果はないんじゃないかと思い始めてしまう。それがこの技術の恐ろしい所だ。

ポラリスから言わせればまだまだ練度が足りないようだが。

 

 

そのあとイッセーと祐人の攻防が数時間続き、結局勝負はつかず、リアスの掛け声で引き分けとなった。

イッセーは決定打に掛け、祐人はイッセーの回避能力の高さを警戒して攻めあぐねていた。

だが、これは神器を使わなかった場合の闘いである。

もし、イッセーが【赤龍の籠手(ブーステット・ギア)】を使えていたら?

反撃の一撃は必殺の一撃に変わり、相手は数回の攻撃で再起不能であろう。

 

もし、祐人に【魔剣創造(ソード・バース)】が使えていたら?

回避のし難い広範攻撃が超の付くほどの連撃で襲い掛かることだろう。

 

だが、これはあくまで模擬戦だ。

そこまでする必要はない。

 

 

そしてライザーとの決戦に向けて、各々は特訓の最後の仕上げに取り掛かった。

 

 

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