ポラリスの朝は遅い。早いのではない、遅い。
毎朝登校ギリギリの時間に起き、いつもの服から駒王学園の制服に着替える。否、正確には、着替えさせられる。
ポラリスがベッドから起きてぼーっとしていると、畳まれた少し膨らんだ制服がトコトコと這って移動してくる。
しかしてその正体はいつも彼の肩の上に乗っているリスである。
今回は、そんな
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吾輩はリスである。
名など必要ない。
吾輩は主人に仕える忠実な下僕だ。
吾輩の朝は早い。とても早い。主人が起きる3時間前に起きるのが鉄則だ。
そんなに早く起きてもリスの身体で何をするのかって?決まっている。
主人への貢献である。
AM5:00
まずはじめにする事は、主人が創り出した創造物であるフェストゥム達の定時報告と点呼、及び指示を出す。
彼らはいかなる状況であろうとも任務と命令を忠実にこなし、かならずや我が主人に貢献してくれる。頼もしい限りである。
AM6:00
次に行う事は森の動物への教育だ。まだ幼く無知な動物達に、森を綺麗で美しく保つための努力と研鑽を怠って欲しくはない。何せ、この森は主人が守護する祝福された森なのだ。
無駄な食物の浪費を抑えることを教え込み、糞をいたるところでしないよう、指定の場所、又は成長の芳しくない樹木の下でするよう教育する。
森の美しく、清潔で優雅な見た目を守る為だ。
時には景観を守る為に伐採や切り揃えたりなどの事も重要である。
AM7:00
森で行う事はそれだけではなく、パトロールも吾輩の仕事の一つだ。
この森はいわば主人の体と同じである。動物達や創造物達は別ではあるが、何かが侵入すれば主人は気分を害す。その前に早急に撲滅する必要があるのだ。
吾輩実の所この森で主人の次に強い生命体であるという自負がある。
ドラゴン程度5秒と掛からないだろう。
そうして念入りに1時間という長時間をかけて森を散策、パトロールするのだ。
ざっと見るだけならば10分とかからない。
AM8:00
そしてこの時間が吾輩にとって最も重要な時間である。
我らが主人が起床する時間なのだ。吾輩の仕事はそれまでに主人の望む朝食を用意し、主人が通う学園の制服を用意し、そして
AM8:20
主人の虚数空間によるゼロ時空移動により駒王学園の生徒会室へと転移する。
そこで一度ポケットから脱出、生徒会長であるソーナ嬢に挨拶をする。
「おはようございます。いつも彼のお世話、お疲れ様です」
にこやかな笑顔と共に挨拶を返してくる
ソーナ・シトリー嬢
教育の行き届いた実に素晴らしい令嬢である。
「オハザースッ!!!!アニキ!今日もお疲れ様ですッ!!!」
ふと横を見れば、そこにはクッキーと吾輩用であろう小さいタオルが置いてある。
そして腰を九十度に折って挨拶をしてきたこの少年の名は匙 元士郎。
彼が吾輩にこの対応をするようになったのは、校則違反として吾輩を校外に連れ出そうとした時、思わず第三宇宙速度で突進してしまったのだ。
体長が定規一本分にも満たない吾輩が、彼にそのような速度で突進してしまったことには、誠に申し訳なく思っている。
クッキーを食べ、タオルで汗を拭き、未だに腰を折ったままの匙少年に「お疲れ」の意味を込めて頭に触れる。
「アリガッリャース!!!!!」(謎の体育会系言語)
そして一連の流れの中、我が主人はソーナ嬢の膝の上でお菓子を食べながら寝癖を直される。それがここでの一連の流れである。
AM9:00
生徒会室を後にし、吾輩と主人は教室に行き授業を受ける。無論、吾輩にかかれば高校程度の問題など、赤子の手を捻るよりも楽な仕事である。
主人の分からない箇所は吾輩が補う。もちろんこっそりと。
テストなども主人が寝てしまったら吾輩が代わりに解く。もちろんこっそりと。
PM12:30
ここからはお昼の時間である。
主人は弁当を持参しない、吾輩が作る事も可能だが、それでは“彼女達”に申し訳が立たない。
「あらあらうふふ…そんなに慌てなくてもお弁当は逃げませんわ?」
主人の口元を拭きながら笑顔を絶やさぬ母性溢れる美少女。
姫島 朱乃
数年前に主人が彼女の窮地を助けてから彼女は主人の事を想い続けているのだとか。
実に微笑ましく一途な少女である。
「ポラリス君?お野菜も食べないと大きくなれませんよ?」
そして、最近この食卓に混ざってくるようになったソーナ・シトリー嬢。
彼女も又主人の為にお弁当を用意してくれる献身的な少女なのだ。
余談だが、主人は野菜が嫌いだ。
それもピーマン、ゴーヤ、セロリが大の苦手で食卓に並ぼうものなら皿の隅っこに寄せて食べ、最後は必ず残そうとする。
「うぅ…ピーマン嫌い…」
「ダメです。ちゃんと食べないといけませんよ?」
「…だって…」うゅぅ
「そ、そんな可愛い顔してもダメなものはダメです!ほ、ほら半分は食べてあげますから!」
妥協した。
モノの見事に妥協した。
まぁ主人が可愛らしいのは森羅万象自然の摂理ですから仕方がありませんな。
そうして主人の昼食はピーマンを食べ終わる昼休みギリギリまで続き、最終的に朱乃嬢とソーナ嬢の二人がピーマンの3分の2を食べて事が収束するのがお約束となっている。
PM4:00
ここからはオカルト研究部の部室か生徒会室で時間を潰すのだが、最近は専らオカルト研究部の部室である。
理由は、
「おーい、祐人。この漫画の続き何処だー?」
「えーと、確か棚の一番下だったと思うよ?」
「おい一騎。ついでに冷蔵庫からドクターペッパーを取ってきてくれ」
「あ、一騎くーん私もそれ読みたーい」
彼ら【アルヴィス】が居るからである。
なんでも我が主人はこことは違う並行世界からやって来た存在であり、その世界に居た【アルヴィス】と彼等が瓜二つなのだそうだ。
「総士、またドクぺか?あれ何処が美味しんだよ」
「ドクぺを舐めるなよ、あれは人類が生み出した偉大な発明の1つだ。個人的に発明者はニコラ・テスラやエジソンよりも素晴らしい発明家だと思っている!」
それには吾輩も多いに賛同する。
一度飲めば病みつきなるあの飲み物は吾輩の人生を大きく左右してきたのだから。(特にそんな場面も描写も事実もない)
「リスさんこんにちわ…」
不意に吾輩の体が持ち上がり小さな手に掴まれる。まぁ、誰なのかは分かっているのだが。
主人ととてもよく似た絹のような美しい黒髪を持つこの少女、
皆城
彼女は【黄金の巫女】という存在であり、我々…ひいては私と同様に主人の因子が多く身体に存在する特異な存在である。
「ふふ…今日もフカフカだね」
吾輩のお腹あたりをグリグリとして来たりなどツボを心得た聡明?な少女である。
同じ様な存在だからなのか、吾輩は彼女に一種の仲間意識を持っていたりする。
「…辰宮先輩、この羊羹美味しいですよ?」
「…たべる……」
羊羹の甘い匂いに誘われ、主人は両手を前にしてフラフラと白い髪の表情の薄い幼じ…少女、
塔城 子猫
の元へと歩き出す。
「……」サッ
「…ッ!」
主人が羊羹を貰おうと近づくと、子猫嬢が羊羹を主人から遠ざける。
「……」ササッ
「…ッ!」
主人は子猫嬢の動かす羊羹に釣られて右往左往と動き回る。
うむ、実に微笑ましい。
「はぁ、なんだか最近は平和でいいわねぇ…」
「そうっすねぇ…平和でいいっすねぇ…」
「まぁ、【
あそこ一帯は実にほのぼのとお茶を飲んでいるようだ。
どれ、吾輩も御相伴に預かるとしよう。
「え?そういうのって脆くなる…みたいな感じじゃ無いんですか?」
「ええ、
「へぇ…なんか風船みたいっすね…」
ふむ、イッセー少年の意見は的を得ておるな。
確かに主人がいるお陰で結界の張りは良くなっている。だが、元々魔力は一級品であったリアス嬢とソーナ嬢がいた為に並大抵の悪魔は侵入し辛かっただろうて。
「そういえばイッセー。貴方とアーシアはまだ使い魔は持っていなかったわよね?」
「使い魔?」
「そう、使い魔よ。見たことあるでしょう?私の場合は蝙蝠だけれど、とても優秀で便利なのよ?」
そう言ってリアス嬢は掌の上にコウモリを呼び出す。
「僕も使い魔は小鳥かな」
「私は小鬼の使い魔ですわ」
「…私は猫です」
「それで辰宮は
む?イッセー少年よ、吾輩は使い魔ではないぞ?主人の忠実で優秀で堅実に仕事をこなす下僕である。
「はは、そうっすよねぇ!サーセン」
さて、お気付きだろうか?イッセー少年も、吾輩の事を【アニキ】と呼ぶ。
理由はまぁ、察したまえ。
「だから、イッセー。今度貴方達の使い魔を見つけに行きましょうか」
そしてリアス嬢はにっこりとイッセー少年に微笑むのだった。