ハイスクールD×F 蒼穹のフェストゥム   作:HA.KO3

8 / 16
第8話 修行〜木の棒だってやればできる〜

三大勢力の大戦の末期

二天龍がお互いの覇を競い合い、その争いで世界は崩壊しかけた。

 

二体が争った大地は荒れ、緑は死に絶え、残るのは死だけであったという。

 

天使、悪魔、堕天使の三大勢力は、二天龍を封印する為に力を合わせて立ち向かう。

だが、二体の力は凄まじく、三大勢力の力を持ってしても、二体を封印することは到底叶わなかった。

そして二体は、最も手を出してはならないモノに手を出してしまう。

 

その場所は美しく、儚く、優しい光を放っていたという。

 

二体は己の前に立ち塞がるその“森”を、己が持てる最大の一撃で吹き飛ばそうとした。だが、その攻撃は、“森”を覆う淡い光の膜に阻まれ、森のほんの一部を削ることしかできなかった。

しかしその一撃が、

 

 

 

 

災厄の逆鱗に触れた。

 

 

 

 

その日大戦に参加していた者は語る。

 

アレは美だ。

 

アレは災いだ。

 

アレは奇跡だ。

 

アレは怒りだ。

 

アレは痛みだ。

 

アレは恐怖だ。

 

アレは否定だ。

 

アレは虚無だ。

 

アレこそーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー絶望ーーーー

 

 

 

 

黄金の体躯は天を操り、二天龍と共に空へと舞い上がり、空には暗雲が渦巻き、幾千もの雷を光らせ、堕ちるのは天の名を冠する龍のみ。

そして黄金の絶望は、地に降り立ち、傷ついた戦士達を癒した。

 

 

二天龍が封印され、多くの命が救われたこの日のことを後に人々は、

 

 

 

 

 

 

【黄金の祝祭】

 

 

 

 

 

 

そう名付けた。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「とまぁ、これが【黄金の虚無】とその【黄金の祝祭】の伝承についての簡単な説明かな?」

 

「へーなるほど…」

 

オッス兵藤 一誠だ!

今俺とアーシアは部室で木場に【黄金の虚無】と【黄金の祝祭】についての講義をして貰っている。

 

「その日からその森に立ち入る事は禁止され、手を出す事は禁忌とされて来たんだ」

 

まぁ、そりゃそうだろうな…。そんだけ強い相手に手を出すなんて、物凄い被害が出る事くらい、馬鹿な俺でも分かる。

 

「なぁ…木場…その【黄金の虚無】である辰宮は強いって事か?」

 

俺の質問に、木場は顎を手で支えて、少しだけ考える。

 

「恐らく…最強…だろうね…彼が本気を出せば三大勢力は簡単に滅ぶだろうし、【無限の龍神】であるオーフィスや、【赤龍神帝】グレートレッドと同じくらい…もしかしたらそれ以上に強いだろうね…」

 

な!?まじかよ!被害が凄いとかそんなレベルじゃないじゃねえか!

 

「あの…だったらその【黄金の虚無】の神話や宗教系は存在しないのですか?」

 

 

「いや…一つだけ…。

 

【アルヴィス】っていう宗教団体があるらしいんだ。

 

そこは【黄金の虚無】を信仰する団体らしいんだけど…実際には存在するかすら不明な点が多いんだ」

 

 

ってことは辰宮は一種の神様にみたいに扱われてるって事か?やっぱりすげぇ奴なんだな…。

 

「………」

 

俺は…強くなりたい…。この前ライザーが来た時、戦おうとした時、俺は内心ビビってた。こいつには勝てないんじゃないかって…心のどっかで思ってた。

だから強くなりたい。辰宮に頼めば、俺を強くしてくれるのかな…。

 

バタンッ

 

「あら、勉強中だったようね…」

 

どうやらリアス部長と朱乃さんが帰ってきたみたいだ。

 

「どうかしたんですか?部長」

 

部長は艶やかな紅い髪を後ろにやり、腕を組んで俺らにその内容を教える。

 

 

 

「ええ、今度のレーティングゲームに向けて、特訓をしようと思うの」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ…はぁ…ぜぇ…はぁ…」

 

き、きつい…!何でこんなにきついんだ…!

 

「ほーら、イッセー!早くなさーい!」

 

「オ、オォッス!」

 

俺は今、険しい山を駆け登っていた。それも身の丈ほどもあるリュックサックを背負って。

お陰で今俺の息は女子の着替えを覗いて興奮してる時よりも荒い。

 

「お先に」

 

木場が俺の横をスイスイと進んでいった。くそう!木場の奴!余裕見せやがって!

だけど…俺は絶対に木場よりも前には行かない!というより、みんなより早く行かない!

なぜなら…

 

下からならスカートを履いている部長のパンツが見えるから!!

くぅぅ!これが無けりゃ今頃ダウンしてたな絶対!

というか山を登るのにスカートを履いてくる部長は、絶対に俺がちゃんと付いてくるようにスカートを履いて来たに違いないね!絶対にそうだね!

 

「…イッセー…変態…」

 

ふと横から気の抜けた…それでいて透き通る声が響く。

 

「うぇぇえ?!!な、たた、辰宮!何でこんなところに!!」

 

「…イッセー達が何してるか気になった…」

 

な、何だそれ…。やっぱりこいつの考えはなんか理解できん…。普通気になったくらいで学校休んでこんなところまで来るか?

よく見てみれば当たり前だけど制服ではなく、真っ白な衣装に身を包んでいて、いつもとは違う印象を受ける。

 

「…学校には僕の分身が行ってる…」

 

は?分身?どういう事だ?

 

「………」

 

あれ?黙った。にしてもこいつは本当に小さいな…。子猫ちゃんとあんまり変わらないくらいじゃないか?

 

「…重い…?」

 

辰宮が俺の背中のリュックサックを見て聞いてきた。

無茶苦茶重いに決まってんだろ!今にも肩が削ぎ落とされそうだわ!あ…なんか死んだおじいちゃんが見えてきた…やばい。

 

「……イッセー弱い…」

 

かっちーん。

ちょぉっと今のは聞き捨てならないぞ?だったら本気出しちゃうもんねぇ!

 

「ぬぉぉぉお!!」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

山を登り切ると、俺たちの目的地の別荘に辿り着いた。

はは…足が生まれたてのバンビだぜ…。

別荘は木造で、グレモリー家の別荘なんだそうだ。普段は魔力で風景に紛れているが、俺たちが来る事になっていたから今は見えるようになっているらしい。

 

「ふぃーーー…」

 

俺はリビングに荷物を置き、水を一杯飲んだ後、部屋の床に座り込んだ。

女性陣は動き易い服装に着替えるために二階に行ったようだ。

 

「じゃあ、僕も着替えてくるよ」

 

木場も青いジャージを持って一階の浴室へと向かって行く。

 

「覗かないでね?」

 

「張っ倒すぞ!!!」

 

あまりにもふざけた事をぬかしてきやがったからつい殺意が湧いてしまった。

 

「さて、それで?お前はなんでこんなところにいるんだ?」

 

俺は俺の真似をして同じように座ってる辰宮に話しかける。

 

「…さっきも言った…」

 

俺たちが何してるか気になったってヤツ?

 

「…そう…」

 

「いやいやだから…それが…ん?ちょっと待てよ?今俺…何も言ってなかったよな?」

 

じゃあなんでこいつは俺の疑問を答えられたんだ?

 

「……僕…読心ができる…」

 

「はぁぁ!?」

 

なんだよソレ!じゃあ俺の考えとか全部筒抜けなわけ?

 

「…今はそう…普段は使ってない…」

 

なんで普段は使ってないんだ?まぁ、事情があるのかな?まぁ良い。

 

「…イッセー…赤い羽虫(ドラゴン)

と話した…?」

 

「は、羽虫!?しかも赤い羽虫とか…そんなもん見た事ないわ!」

 

「……言い方変える…。ドラゴンと話した…?」

 

え?なんで知ってるんだ?辰宮はあの変な夢の事を知ってるのか?

 

少し前のある日、ちょうどライザーが部室に来る前の日に俺は、部長と結婚する夢を見て、その後にドラゴンに正気に戻された。

 

「辰宮は…あのドラゴンの事を知ってるのか?」

 

「…知ってる…というより…僕の森に危害を加えた奴だから…今度こそ捻り切りたい…」

 

 

ね、捻り切りたい!?世の中にそんなも恐ろしい表現があったのか!?部長の「見たければ見てもいいのよ?」くらい衝撃的だぞ!!

俺はビビりつつも服を着替え、リビングに向かうと、俺以外の全員が集合していた。

 

「さて、皆集まったよう…ね…」

 

部長が俺を…正確には俺の横を見て言葉を失ってしまった。

 

「な、なんで【黄金の虚無】が…ここに居るのかしら…?」

 

え?部長知らなかったんですか?!てっきり知ってて容認してるものと…。

 

「…さっきまで僕の事が見えてたのは…イッセーだけだった…」

 

え?そうなの?じゃあ部長達には見えてなかったのか?

 

「どういう事?イッセー…」

 

「え?い、いや部長!俺はてっきり知ってて見逃してるものと…!」

 

「はぁ…まぁ良いわ…但し、この合宿に参加するからには私達の特訓に手伝ってもらいたいのだけれど…良いかしら?」

 

「………」ぴーす

 

どうやらオッケーらしい。

こうして、世界最強を交えた特訓は始まった。

 

 

 

 

 

レッスン1

木場との剣術修行

 

「よっはっ」

 

「どおりゃあ!ぬりゃぁあ!」

 

俺は木刀を力一杯ブンブンと振り回すが、木場は軽い足取りで全てを避け、全く当たる気がしない。

 

バシッ!

 

また木刀を木場に弾かれた。

 

「そうじゃないよ、もっと視野を広げて、剣だけじゃなくて相手と周囲の事ももっと見なきゃダメだ」

 

頭では分かっていても、そう簡単にできるものでもなく、やればやるほど自分と木場との差を思い知らされる。

才能だけじゃない。努力の面でも俺は今木場に劣っている。

 

「そろそろ休憩にしましょう」

 

部長が休憩するように言ってくるが、

 

「部長、俺はまだまだ行ます!」

 

「ダメよイッセー…分かっていないだけで貴方はかなり消耗しているわ…少しやすみなさい…」

 

部長に言われて俺は渋々了承する。

 

「分かりました…」

 

そう言うと今度は辰宮の方を向いて、部長はとんでもないことを言ってきた。

 

「辰宮…君…少しだけ、

 

 

 

 

…祐人と試合をしてみてくれないかしら…」

 

 

「…ん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

リアスはポラリスに祐人との試合をするように頼んできた。

祝はその頼みに簡単に了承し、そして当の祐人は少しだけワクワクしていた。

ぶっちゃけた話、先ほどのイッセーではあまり相手にならなかった。

そしてポラリスは、イッセーの木刀を借りるでもなく、新しい木刀を用意するでもなく、

 

 

 

 

そこら辺に落ちていた木の棒を拾い上げた。

 

 

 

 

「……来ると良い……」

 

その行動に、リアスも朱乃もイッセーもアーシアも小猫も、全員が目を丸くしていた。

ただ一人、ポラリスと対峙していた祐人以外は…。

 

 

 

 

 

 

(ダメだ……今の僕では…この人に勝つビジョンがまるで見えない…!)

 

祐人はポラリスの圧倒的なまでの迫力に飲まれてしまっていた。

そして祐人は考えた。

 

これが不意打ちならば違っただろうか?

 

神器を使えればまだ怖くなかっただろうか?

 

祐人はすでに、ポラリスに対して恐怖していた。

棒を構えてすらいない祝に、

身長の所為で自分を少しだけ見上げている祝に、

 

恐怖していた。

 

「おいおい!辰宮!流石にそりゃあ木場の事舐めすぎだろ!」

 

イッセーは木場の事をポラリスが舐めていると思い、少しだけ怒ったが、祐人の顔を見て、直ぐにそうではないと気がついた。

 

(違う…舐めているんじゃない…辰宮君は僕に合わせている

(・・・・・・)んだ…)

 

祐人とポラリスには絶対的なまでの力の差が存在している。

 

種としての差。

 

場数の差。

 

生きてきた年月の差。

 

実力の差。

 

力の差。

 

何を見ても、祐人がポラリスに勝てる理由は一つたりとて存在しなかった。

自分と相手の差を埋めるため、ポラリスはあえて木刀ではなく、木の棒を選んだのだ…。弱者が強者に勝つために行う行動を、ポラリスは弱者の代わりに行ったのだ。

しかし、それでも差は歴然。縮まった差はスズメの涙ほどだった。

そして次にポラリスが取った行動は、

 

 

 

「……10秒待つ…好きなタイミングで来ると良い…」

 

 

不意打ちをしてみろ…。暗にそう言っていた祝の言葉に、誰もが驚きを隠せないでいた。

 

「……本気で

(・・・)

来る…」

 

そして、その言葉の意味は…

 

 

 

神器を使え

 

 

 

普通ならば憤慨するレベルであろうこの言葉だが、祐人は…

 

 

 

バッ!

 

 

 

瞬時に近くの木々の中に消えていった。

【騎士】としての駒の特性を最大限に使っての全力の移動は、常人では見えなくなるほどの速さだった。

木々と木々の間を行ったり来たりして、自分の居場所を悟られないように動き回り、

 

 

ビュンッ!

 

 

そして祐人は木々の間からなんの前触れもなく現れ、

 

光喰剣

(ホーリー・イレイザー)

 

 

炎凍剣

(フレイム・デリート)

 

 

祐人の神器【魔剣創造

(ソード・バース)】で創り上げた二振りの魔剣。

その二振りを、ポラリスに向かって振り下ろす。

 

 

 

 

スッ…

 

 

 

 

「なっ!?」

 

だが、ポラリスはその攻撃を、流れるような動作で避けた。

魔剣は空を切り、祐人は即座に距離を広げる。

 

 

「……それはダメ…」

 

瞬間…数メートル先にいるはずの祝が、いきなり目の前に現れた。

 

「…避けられたなら…折角手数が多いんだから…距離を広げるのではなく詰め寄って反撃できなくさせるべき…」

 

ポラリスは木の棒を魔剣の剣先に触れさせる。

 

 

 

パリンッ!

 

 

 

剣先に木の棒が触れた瞬間、魔剣は音を立てて砕け散ってしまった。

 

「そんな…!」

 

「……だからこうなる…」

 

砕け散った魔剣を木の棒で指しながら祐人を見ている。

 

「…完全に気配を消せたと思ったんだけどね…」

 

祐人の言葉に、ポラリスはキョトンと首をかしげる。

 

「…木場はそこに居る…。それは当たり前のこと…なのに気配を消すなんてできない…やるなら気配を誤魔化す…」

 

「なるほど…確かにその通りだね…」

 

祐人は何か疲れ切った…それでいてやりきった顔をしていた。

 

「…ありがとうございました…僕もまだまだだってことがわかりました…」

 

「…ん…」

 

そう言ってポラリスは木の棒を投げ捨てて一人別荘に戻った。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「……はぁ…」

 

ポラリスは一人別荘の窓際の壁にもたれ掛かり、空を見ている。

 

あの日、己は奪う側だった。

 

今、己は見守る側だ。

 

正直な所、グレモリー眷属がどうなろうとも彼には関係ない事だった。

 

それでも、己は彼らに手を貸そうとしている。

 

これが感情ならば、ポラリスは歓喜しただろう。

 

だが、ソレが感情だと、彼には分からない。

 

分からないこその…それは彼だけの…

 

 

 

 

 

 

悲しみ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。