「確かに、新一の小さい頃にそっくりじゃのぅ」
阿笠は、目の前に立つ新一を見てそうつぶやいた。
家に帰った快斗と新一は、すぐ隣に住む阿笠博士を呼び、状況を説明した。コナンと阿笠は新一の好奇心に多少飽きれながら、話を黙って聞いていた。
「その男。いや、その組織のことも気になるけど、今はまず新一をどうするかだな」
「なんでだよ。俺なら隠れでもすれば」
「バカ、蘭ちゃんだよ蘭ちゃん。お前、蘭ちゃんに連絡してねえだろ?」
「あ......」
快斗の言葉に新一は冷や汗を流す。
今の新一は小学生ほどの身長にまで縮んでいる。若返ったと言うほうがいいだろう。コナンの洋服を着た姿に高校生探偵の面影はない。
「あの蘭ちゃんだぞ!?うちに来るに決まってんだろうが」
「お、俺は出かけたことにすればいいだろ!」
「じゃあおかしいだろこの状況!新一がいなくなってコナンが増えてるんだぞ!」
「そ、それは......」
そんな議論を交わしているうちに、家のインターホンが鳴る。外から聞こえてくる声は紛れもなく蘭の声。四人は一斉に慌て始めた。
「どどどうすんだよー」
「とりあえず!蘭ちゃんは俺に任せろ。その間になにかごまかせること考えといて!」
「僕は?」
「コナンは......いい!ここにいろ!」
快斗は慌ただしく玄関へ向かう。
「確かに引き出しに優作くんの眼鏡があったはずじゃ。それなら少しは誤魔化せるじゃろ」
「おお、サンキュー」
新一は慌てて引き出しを開け、眼鏡を取り出す。当然、眼鏡には度の入ったレンズが入っており、新一は慌ててレンズを外す。眼鏡をかけた新一は、やはりコナンと似てはいるものの、どうにか瓜二つとは思わない程度に誤魔化すことはできたようだ。
「快斗くん、そこどいて。あのバカには一回言ってやんないと」
「わわっ、ちょっと蘭ちゃん!?だから新一はいないって!」
玄関から聞こえる声に新一は冷や汗をかく。快斗の慌てる声と近づいてくる足音。姿が見えなくても、蘭が鬼のような顔をしていることは容易に想像できた。
「新一!いるんでしょ!」
バンッという音と共に扉が開かれる。蘭はじっくりと部屋を見回し新一を探す。蘭の後ろで必死に声に出さず謝罪をする快斗を見て、コナンはため息をついた。
「蘭姉ちゃん。新一兄ちゃんは事件でここにはいないよ。警察に説明しに行ってるんじゃないかな?」
ナイスコナン!と新一は心の中でガッツポーズをする。
「本当に?」
「ほ、本当に」
蘭はコナンをじっくり観察したあと、諦めたようにため息をついた。もう一度部屋に視線を巡らせると、新一を見て動きを止めた。どうやら蘭は新一を探すことに集中していたようで、小さくなった新一の存在に気づいていなかったようだった。
「あら、誰?」
「え......えっと」
「僕の双子のお兄ちゃんだよ」
「双子?」
「うん。体が弱くてお母さんたちのところにいたんだけど、今日からこっちに住むようになったんだ。ね、乱歩兄ちゃん」
「う、うん。そう。僕、工藤 乱歩。よろしくね」
新一こと乱歩は、蘭の視線に笑顔を引きつらせる。乱歩というのは後ろにある『江戸川乱歩』の文字からとったのだろう。そんなばれるかもしれない名前より、太郎とか二郎のほうがよかっただろうに。乱歩はそう考えながら目を泳がせる。
「乱歩くん......ね。わたし毛利 蘭。よろしくね。乱歩くん」
「う、うん」
「快斗くん。新一のやつ帰ってきたら教えてくれる?」
「あ、うん」
「それじゃあお邪魔しました」
蘭は玄関まで向かうと一度振り返り、乱歩とコナンに笑顔で手を振った後家を出て行った。残った四人は互いに顔を見合わせる。
「誤魔化せた?」
「はああ。コナン、乱歩ってなんだよ乱歩って。俺はそんな名前じゃねえぞ?」
「だってとっさのことだったから」
「そうじゃぞ、新一くん。コナンくんはなかなかうまく誤魔化してくれたじゃろ」
「そうだぞ新一。さすがコナン」
「えへへへ」
褒められ上機嫌なコナンと打って変わって、乱歩は納得いかないというような顔で三人を見ていた。